第7話 波と責の話
波。
大波、小波。さざ波など様々な形で寄せては返す。
寄せては返す波を、ただただ、ぼぅっと眺めるのが個人的に好きだ。時が穏やかに過ぎ去っていくのが、心地よく、頭が空っぽになる感覚になれる。
しかし、穏やかばかりではなく、津波など、時に猛威を振るい、人々に襲い掛かる。
人間の調子にも波がある。
誰しも経験があるだろう良い時、悪い時だ。
私の内にも波がある。
調子が良い時もあれば悪い時もある。
私の悪い時は、本当に何もできない。
鬱を最初に患った時には、先ず、起き上がることすらできず、当時はサブスクの映像配信サービスなどなく、ネット小説もない時代。暇を持て余し、一日中横になってテレビを見るか何かを読んでいた。それすらもできないことが、ままあった。
やらない。ではなく、できない。のだ。
この辺の言葉のニュアンスは、精神疾患等を患っておられる方には伝わりやすく、それ以外の方にはなかなか伝わらないのが、残念だが、近年ではそれを理解してくれる人が増えてきているのを肌で感じてもいる。
自分の調子が良ければできるのに、それが、調子の良し悪しでできないに変わってしまうのが厄介で、周囲から見ればできるのにやらないという評価を下されてしまうことになりかねない。
そういう時は、自分でもただのサボりなのでは? と、思うのだ。
他者からそう見られても仕方がないとは、思っている。
思ってはいるが、わかって欲しい。そういう矛盾を私は常々抱えている。
もし、近しい人にそういう方がいるのなら、どうか、あなただけは、その人の事を信じて待ってあげて欲しい。
あなたのことが大切だと、ただ、そばにいてくれるだけで嬉しいのです。
私を含め、そういう時は、自分で自分を信じられない。
経験上、症状が出るほどストレスが強く掛かると、同じ病気でも表出する反応として、概ね2パターンに分かれる。
自責と他責。
自責にも他責にも行き過ぎなければストレスへの対処法としてのメリットがある。
しかし、どちらも行き過ぎれば危険な状態になってしまう。
自責とは、自身を(とことんまで)責めて(追い詰めて)しまう人。
他責とは、他者を(とことんまで)責めて(追い詰めて)しまう人。
人によってその症状は、様々だが、大きく括ると、このどちらかに寄りやすい。
この相反する2つの症状が、同じ病名で括られている所が、世間の認知を歪ませている原因なのかなと思っている。
ただ、病気としては同じ所、脳の神経伝達物質に原因があるのだから、同じ病名であるのは致し方ない。なので、私たちが正しく認知することで、病気への理解や、症状への対処法などを学んでいければ、調子の波が穏やかになるのではないかと、愚考している。
実際に、私は、自分を責めることで他者を責めないようにしているように思う。
昔は、他者、とりわけ両親を責めてきた。
「生まれて来なきゃよかった!!」
「産んでくれなんて頼んでない!!」
今、我が子に言われたら相当にショックな言葉を投げつけていた。親を否定する、これ以上ない暴言である。
突然だが、無責というストレスとの関わり方も紹介させていただく。
無責とは、自分にも相手にも責任がないという関わり方だ。
今思えば、父は、無責の人だった。決して無責任なわけではなく、責任感は寧ろ誰よりも強かったように思う。しかし、解決困難な問題に直面した時に、あるがままを受け入れ、やり過ごせる稀有な精神の持ち主だったのだろう。
母は、他責の人だった。幼いころの家庭環境によって、理不尽な思いをしてきたようだ。そうして、他責が行き過ぎて精神疾患を持つようになっていったのだろう。
他責と無責は、大きなトラブルになり
例えるなら、相手が低反発枕のようなもので、こちらを包み込んで快適な睡眠を提供すらしてくれるのだ。
他責と他責は、それはもう酷い状況に陥る。お互いに一歩も引けず、押し合いへし合い言葉でぶん殴り合う。私は、言葉で敵わず、手が出てしまっていたが。
例えるなら、ごつごつした石が敷き詰められた河原で寝転がるようなもので、痛みが不快で仕方がなく、寝る処の騒ぎではなくなる。
話しが逸れたが、私はこれらの経験と、当時、無責という考え方を知らなかったことから、他者を傷付けないよう自分を責めるようになっていったのだと思われる。
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