第12話 最終決戦!!


 階段を下りていくと、そこには巨大な地下室が広がっていた。


 ここが工場の中だということを忘れてしまう。

 一階の様子とは異なり、ちゃんと整備された最新の機械がたくさん並んでいる。


 機械といっても工場で使うものではなく、研究所で使うもののように見えた。


 先ほどから、桐生の目がキラキラと輝いているのがその証拠だろう。


「すごいよ、これ。大きな研究施設みたい」


 いろんな機械が所狭しと並んでいる。いったいこれだけの施設をつくるのにどれだけの金額をかけたのだろうか。

 実験道具もあちこちに放置され、すべてが高価そうな代物しろものだった。


 俺達は機械の影に隠れながら、ゆっくりと進んでいく。


 視線の先に川野を捉えた。

 川野は誰かと話している。その人物を見た俺は衝撃で目が大きく開いた。


「あいつ……」

「確か、カフェのマスター、だよね?」


 川野と話しているのは、沙羅の勤め先のカフェのマスターだった。


 あのときの違和感はこれだったのか。


 沙羅のことを話すとき、何かひっかかるものを感じていた。

 今さらながら俺の鈍感ぶりに嫌気がさす。


 どうもあのカフェのマスターはこの組織のリーダーのようだ。

 先ほどから周りの者たちに支持を出している。

 川野をそそのかしたのも多分こいつだろう。


 俺達は二人の会話に耳を澄ませた。


「もうすぐ、完成だ」


 マスターが嬉しそうに微笑むと、川野が興奮した様子で語りかける。


「やりましたね、山本さん。これでやっと新時代がはじまります」


 マスターは山本というらしい。


「ああ、まずは手始めに地下鉄を狙ってみるか」

「いいですね、ははっ、今から皆がパニックになって逃げ惑う姿が浮かびますよ」


 恐ろしい言葉が飛び交っている。

 川野たちはこれから大規模なテロを起こそうと計画しているようだった。


 人探しから、とんでもないことに巻き込まれてしまった。

 いったいしがない探偵にどうしろというんだ。


 とにかく今は一刻も早く沙羅を見つけ出すことだ。


「はじめちゃんが何かに反応したよ!」


 桐生がはじめのあとを追いかけていく。


「お、おい。気を付けろよ。気づかれないように慎重にな」


 俺達ははじめと桐生の後ろに続いた。


「あっち」


 はじめの指差す方を見ると、そこには沙羅がいた。

 手足を縄で拘束され、口をガムテープで塞がれている。


 川野たちからは遠く、機械などが邪魔をしていて目に入らない位置だ。

 俺は物音を立てないように慎重に沙羅へと近づいていく。


 俺の存在に気づいた沙羅は驚き、逃げようともがく。

 しかし、俺が人差し指を口にあてウインクすると、彼女はいぶかしげに俺を見つめ、その動きが止まった。


「あなたを助けにきました。黒猫に宝石をつけて助けを求めたのも、メモにメッセージを残してこの場所を知らせたのも、あなたですよね?」


 彼女ははっとして俺を見つめる。そして涙目になった。

 俺は彼女の口のガムテープをがして、手足の縄を解いた。


「あなたは……」


 彼女が不思議そうな顔で見つめる。


「ただのしがない探偵ですよ」


 俺が微笑んだそのとき、


「おい! 何してる!」


 振り向くと、男がこちらを険しい顔で見つめている。


 しまった、見つかった! どうする。


 そのとき、何かが爆発する音がして、煙が辺り一面にモクモクと立ち込めていく。


 なんだ、何が起きた?


「輪島くん、こうなったらやるしかないよ! 俺が煙幕えんまくで加勢するから。

 リリーは只今戦闘中!

 佐々木くんもやる気だよっ。

 僕とはじめちゃんはここで沙羅さんを守るよ」


 な、なんだか、桐生が頼りになる奴に見えるのは気のせいか。

 何でこんなにこいつらはやる気なんだ?

 まあ、こうなったらこいつらの作戦にのるしかない。


 俺は覚悟を決めた。


「わかった、沙羅さんを頼むぞ!」


 俺が立ち上がると、桐生がゴーグルを差し出した。


「これ、煙幕の中でも人を感知できるんだ。つけてって」

「サンキュ」


 ゴーグルをつけると俺は煙の中へと突進していった。

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