第8話 チョロインな兄貴
休みの日。
極稀に出かけていた兄貴が帰ってきた。
半日は帰ってこないという話。
出かけてからまだ一時間もたっていない。
早すぎる帰宅に、俺はどうしたのかと膝立ちで、目線を合わせながら問いかける。
「……面倒だったから、帰ってきた」
巫女服を煌びやかに意匠したような和装。
それを着込み、薄い化粧をした兄貴。
石竹色の瞳に愁いを帯びさせ、上目遣い。
俺は距離をとる様に「そうか」と返し、立ち上がる。
―――ぐいッ。
何事もなかったかのように自室へ戻ろうとしたところ。
後ろから服の裾を引っ張られた。
誰に?。
兄貴しかいない。
「だっこ」
「甘えんな、ガキじゃあるめぇし」
「……むぅ」
見た目は子供。
中身も子供。
しかし、その年齢は少し前に19歳となったばかり。
必要以上に甘やかす訳にはいかない。
俺は優しく兄貴の手を振りほどいたあと、自室にある金庫からお菓子の山を取り出した。
映画やアニメを存分に鑑賞できるようセッティングした部屋。
そこへもっていき、ソファーの前に置かれたテーブルへ、抱えた菓子を山にして詰む。
「宴でもしながら、今日は一日中アニメでもみるか」
「いいねッ!!」
お菓子とアニメが大好き過ぎる兄貴。
ご機嫌斜めは一瞬。
はっぴーはっぴーはぁーっぴー、である。
ちょろすぎる。
「別に見たくないけど、まずはプリルキュアでも観て肩慣らしでもするか」
「女児向けアニメとか興味ねぇ、兄貴一人のときに観ろよ」
「はぁ?、プリリキュアは女児向けじゃないんですけど、紳士向けアニメなんですけど」
「はいはい」
「ハイは一回、小学校の頃、先生に習わなかったか?」
「うぜぇ」
その後、俺たちは山のように在った菓子を一時間足らずで平らげ、片方(兄貴)が寝落ちするまでアニメを視聴した。
終始、着飾った推しが気になって、アニメに集中できなかったことは言うまでもない。
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