第6話 ルックをアウェイするな

9月6日


「なぁ、なんで俺、応援隊長になってるん?」


纏わりつくような暑さをまだ振り切れていない9月。アシーナが運動祭を優勝すると宣言した日の、その翌々日だった。

朝礼前の教室で京太郎は愕然とした。

1か月先の運動祭に向けて、アシーナ編成のメンバーが発表されていたのだ。


運動祭の競技は、クラス全員参加のものと、選抜が必要なものがある。

後者は、

①男女混合スウェーデンリレー(4人)

②借り物競争(4人)

③二人三脚リレー(8人)


計16人である。

クラスは30人のため、残り14人は応援だ。

そう、14人も応援がいるのに、だ。


「私、分かったのよ」


夏休みを経ても日焼けの跡があまりないアシーナが自信ありげに宣言する。


「いや、お前は何も分かってない」

「獅子は我が子を谷に落とすべきって」

「人の話を聞けよ。てか俺、いつお前から生まれたん?ママって呼んでいい?それからどうせならかわいい子には旅をさせよの方にしてくれない?」

「私、あなたのママじゃないわ、何言ってんの?」

「その、本当に意味が分からない、みたいな顔やめてね?お前が言ったんだからね?」


要するに、のっぴきならない立場にしてしまえばこいつも頑張らざるを得ない、という魂胆だろう。


「これは確定事項なので」

「えーーーーーーーーーやだぁーーーーーーーーーーーー応援とかださいーーーーーー熱血嫌いーーーーーーーーーーーーーーーーー助けてめぐるぅうぅぅぅぅぅぅ」


京太郎はめぐるに膝立ちで抱き着く。


「おぉぉ、よしよし京くん。学校でめぐると呼ぶほどに嫌なんだねぇ。ママがなんとかしてあげよう」

「ママぁ!!」

「あなたたちっ!!!ここ教室よ、ふしだらだわ!!」


京太郎はめぐるの胸の柔らかさを感じながら、もうここを離れないというようにがっつりと彼女の腰に手を回す。すでにクラスでは公認カップルとなってしまったので京太郎も遠慮がなくなってきたらしい。


「よーしよし。ママがあなたを絶対に守るから。応援に隊長なんて役職つけて、皆が平等であるという人権思想に反する、悪しき軍国主義の名残だって、学校に何回も電話かけて、教育委員会にも手紙出して、それからSNSで(#息子が応援団長で日本終了)って拡散するからね」


なんで日本が終了するのかは不明だが、今はめぐるに戦ってもらおう。

アシーナは、手で顔を覆いつつ、お約束的に指の間から二人の抱擁をがっつりと見ていた。


「そういうことで、うちの京くんはみんなの雑用係が良いと思います。雑用こそ、京くんの一番の使い道です。それが適材適所というものです。それ以外は何もできません」

「そんなことは私も分かっているわ」

「おい、二人ともひどいぞ」

「でももう無理よ。来道先生から、夏休みの宿題を出してない罰としていいんじゃないかって許可貰ってるもの。というか、あなた葉乃坂さんと一緒に宿題やってたでしょ」


アシーナが不可解だと眉を寄せる。

京太郎は依然、めぐるの胸に顔を埋めながら、


「いや、めぐるが宿題をしているとき、俺はカントの純粋理性批判を原文で読んでた」

「変な嘘つかないでよ」

「アシーナちゃん、嘘じゃないよ。ほんとに京くん読んでた。結局1か月で2ページしか進まなかったけど」

「、、、、、、あなたってなんでそんなに馬鹿なの?」


結局、京太郎は不本意ながら応援隊長を拝命することとなった。


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そんなやり取りの後、せっちゃんが慌てながら教室に入ってきて朝礼を始める。

そして2ヵ月ごとの席替えがまた行われた。


「一番前、一番廊下側って何の罰ゲームだよ、これ以上俺を苦しめるなよ、なぁ佐沼」

「えっ!?わたし!?」


丸眼鏡にボブカットの少女が驚きの声を上げる。


「驚きすぎだろ、どうした、俺がイケメン過ぎたか?」

「ご、ごめん!!、、、、、、、カッコ、、、悪くはないと思うよ、、、」

「いや、そこは突っ込んでくれよ、本気で言ったみたいじゃん」

「あ、ごめんなさい」


かみ合わない。絶望的に。

これならアシーナが隣だった時の方がマシだったかもしれん。いや、それはない。


「まぁ、同じ応援隊だし、ゆる~くやろうぜ」

「う、、、うん、、、」


佐沼は眼鏡をかちゃかちゃと直しながら、小さく頷いた。

その様子はまるで猛獣を前にした子猫のよう。

俺、本当に獅子の子かもしれない、というかそんな指先震わすほど怖い?金髪だからか?新しい隣人とはなかなか仲良くなれなさそうである。


1日、テキトーに授業をこなして放課後。

授業中に寝ているとき、何度か隣の佐沼が「三橋君、三橋君、、、すいません、先生、起きません、、、」みたいなことを言っていたような気がする。大変申し訳ない。


だって仕方ないだろう。

授業中寝ないと今後寝る時間少なくなりそうなんだから。


運動祭の練習は明日の早朝から行う、とアシーナからお達しがあった。

この学園には運動場が3つある。普通の校庭である第一運動場、タータンのトラックがあり、主に陸上部とラグビー部が使う第二運動場、第三はサッカーである。野球場は学園の敷地の他にあって少し距離がある。学年毎、持ち回りでそれら3つの運動場を使って練習して良いらしい。まぁ借り物競争に練習もくそもないから、主にリレーと応援の練習だ。朝練のある部活から不平が出てもおかしくないが、なにせ体育祭は動画配信もされ、学校の宣伝にも使われるため、運動部も含め皆かなり本気で取り組むらしい。なんかめぐるの取り巻きがそんなようなことを言っていた。


「よっし帰るか、、、、、、じゃないよなぁ、、、、、、」


京太郎はカバンを勢いよく持って、それからすぐに項垂れる。

そして一緒に帰ろうと近づいてきためぐるに、


「すまん、、、今日は所用があるため先に帰ってくれ」

「京くんに用事なんてかなりレアだね。もはやレア通り越してブルーだね」

「それはあれか、肉の焼き具合のことか」

「おお、さすが京くん博識ぃ」

「お前はストレートに会話できない病気なのか、ちょっとめんどくさいぞ」

「うん、それは友達に良く言われてる。ツッコむのめんどくさいし、拾えないから彼氏だけにやってって、最近はよくスルーされる」

「泣くなよ、お前。意外に可哀そうなやつだな」

「京くん、そこは、Non piangere, Liu!(泣くな、リュー!)って言ってよ、むしろ歌って」


京太郎は一瞬、まじで何言ってんだこいつ、と思ったが、


「、、、、、、ああ、トゥーランドットね、オペラの。俺そんなイケボじゃねぇよ」

「おおおおお、さすが京くん、それでこそわたしのソウルメイト」


なんで急にオペラだよ、肉のブルーはフランス語で、オペラはイタリアじゃねぇか、と思ったが、めぐるのことだから深い意味はない言葉遊びだろう。

俺が教養ある両親の、良いとこのおぼっちゃんだったことに感謝するんだな。


「もういくぞ、また明日な」


俺はカバンを再度肩に担いで、手をひらひらと振る。


「朝練遅刻するなよ~、わたしの雄姿をしっかりと見たまえ」

「お前、スウェーデンリレーの1走だもんな、分かってるよ」


そうして教室を出ようとしたとき、めぐるがその京太郎の背中に向かって、両手をメガホンのようにしながら言った。


「3つの謎、ちゃんと解くんだからねっ!」


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青いタータンに、人がぞろぞろと出てくる。

心臓が、少しだけ大きく鼓動するよう。


「3つの謎って何だよ」


京太郎は観客席からトラックを見て独り言つ。


夜に生まれ、夜明けとともに消える幻。

炎のように燃え、それでいて炎にはならない、激しい情熱。

氷のように冷たく、それでいて周囲を焦がすもの。


トゥーラドットは謎かけの姫とも呼ばれている。

その3つの文章が示すものを解き明かせば、野郎の求婚を受け入れると。


まぁ、めぐるのいつもの言葉遊びだろうと流す気持ちが、最後に振り返ったときに見えた彼女の表情がかき消す。あれはいつになく真剣な表情だった。


トラックでは準備運動のランニングが開始される。

と、人影が2つ、観客席に至る階段を登って京太郎の方に近づいてきた。

その表情が見えるぐらいになって、京太郎は「サイアクだ、、、」と誰にでもなく呟いた。


「あらあら?、あらあら、あらあらあらあら、こりゃまぁ、どっこい、ゴールド京太郎選手じゃないっ!」

「あんたがつけたそのあだ名、マジで恨んでますからね」


連坊春子れんぼうはるこ

陸上競技の強豪である明峰みょうほう大学の監督であり、有名解説者。

雑誌などにも連載を持っており、陸上界隈で知らない人はいない有名人。

サツマイモ色の、クソださい学校ジャージみたいな服に上下身を包んで、首にスカーフを巻いているのが彼女のいつものスタイルだ。


それからもう1人、


「春子さん、良い子がそろってますよぉ、じゅるるうるるるうるるっ!!!ど・の・子・に・し・よ・う・か・な、天の神様の言う通り、、、あべばばばばばばばばば」


目が血走って、よだれを垂らしながら意味不明な言葉を発している巻き毛のアラサー女。スポーツ専門のフリーアナウンサー、猿石美影さるいしみかげである。


「2人ともどうしたんすか」

「ん~?ほら、今度"リプロ秋季新人陸上競技大会東京都予選"があるじゃない?」


連坊春子が手帳を取り出しながら言う。

リプロとは、アシーナの母の会社だ。そこが協賛の新人大会がある。


「で、今週末はその東京都予選のさらに予選、支部大会があるのよ」

「まさか支部大会から選手をチェックしてるんすか、、、?」


春子は何を当たり前のことを、というとぼけ顔で京太郎のことをちらりと見て、またトラックに目を向ける。


「もちろんよ。特にこの"菱星学園りょうせいがくえん"は、スポーツに力を入れ始めて2年目、新城理事長の頼みもあってね、取材させてもらってるのよ」


そうなのだ。あの理事長。

団体スポーツはいくら良い選手を集めても不確定要素が大きすぎると、確実に結果を残せて、かつ少人数に対する投資で済む、陸上や水泳に重きを置いてスポーツ特待を集めたらしい。


「それに今の1~2年生の世代は、間違いなく日本陸上界の黄金世代だわ。こんなの取材しないわけないじゃない、特に400メートル女子はヤバいわよ」

「春子さん春子さん春子さん!いません!高校歴代50傑かつ特級にして、七大地獄が1人、大叫喚だいきょうかんの"まだらいさら"がいません!100メートルの桃原武ももはらたけしはいますが、、、」


なんか陸上とは絶対に無縁の言葉が聞こえたんだが、聞き間違いだろうか。


「あの、美影アナ、お言葉ですがイケメン俳優にフラれて頭おかしくなってます?」


そう、ちょっと前ネットニュースで話題になってた。

高校陸上の話題を毎晩延々とされ、我満ならなくなったその俳優から別れを切り出した、と。

美影アナはタイトなスカートをぱつっと張らせて、仁王立ちになりながら、


「おい小童こわっぱ、その話は二度とするな、アヒージョ食べ終わった後の余った油を1適づつ目玉に垂らすぞ。美影は陸上を辞めた奴に興味はねぇーんだよ」


こっわ。

仕返しの発想が怖すぎる。そして大きすぎるハリウッド女優のようなサングラスの奥の目が笑ってない。

ネットでは、小料理屋で別れ話を切り出され、泣き喚き暴れた挙句、かえって憎悪が芽生えたのか、刺身についてきたワサビをその俳優の両の鼻の穴に突っ込んで置き去りにしたという。そのため現在は事務所の意向なのか、地方のスポーツ大会以外は若干露出控えめだ。


「出過ぎたことを言いました、ほんとすんません。で、だい、、、なんですかそれ。特級だの50傑は分かりますけど」


特級とは全国上位15人に与えられる位であり、他1級と2級がある。〇〇傑というのは良く陸上界隈で使われる表現で、東京都50傑などと呼称する。歴代50傑というのは、つまり、高校生の歴代50人に入る記録を持っているということだろう。速いなんてもんじゃない。


猿石美影に変わって、今度は連坊春子が自慢げにスカーフをくねくねいじりながら、


大叫喚だいきょうかんの"まだらいさら"よ。2年生にいるはずなんだけど。ちなみに、今の400メートル女子・1~2年生の世代は丁度8人が突出していてね、他の選手は全国決勝のチャンスが皆無に近いということから、八大地獄と名付けました。何を隠そう、この私がっ!」

「50超えてそのクソださ恥ずかし中二病的なネーミングセンス、自分の人生を反省した方がいいでえええええええええええええっ!!!」


春子にではなく、美影アナの高いヒールに足の甲を思いっきり踏まれた。

グラウンドまで悲鳴が届いたのか、アシーナの綺麗な黒髪がふわっとなびいてこちらを振り向いた。俺は慌てて座席の陰へ身を隠す。

というかアイツ、なんで1人だけ学校ジャージなんだ?それにシューズもいつもと違ったような、、、?


「何考えてんすか!?陸上ファンの癖に人の足ヒールで刺すなよ!」

「ファン?そんなものと一緒にしないでよ、フーリガンと呼んで。春子さんのネーミングセンスはピカイチよ、七大地獄、カッコ良すぎるじゃない」


フーリガンは暴徒化したサッカーファンのことであって、自慢げに呼称するカテゴリーではない。そして、女子高生を捕まえて地獄と言うのは辞めてあげて欲しい。


その後、仲良く3人観客席に腰を下ろして、しばらくウォーミングアップを見ていた。

最初に口を開いたのは春子だった。


「で、なんでゴールド京太郎がここにいるのかは、まぁ聞かないであげるけど、何やら理事長いわく存在自体隠しているらしいし、でも誰が目当てなの?」

「あぁ、、、まぁ、、、」


京太郎は1人、他の選手から離れたところでスポドリを飲んでいるアシーナを指さす。


「美影としたことがまったくのノーマークだったわ、、、ねぇ誰なのあの子、誰よ!?まさかただ美人で好きだからとかいう青臭い理由だったら殺すからねゴールド」

「まずそのゴールド呼びやめません?金城でゴールドってそのまますぎて八大なんちゃらよりダサいんで、それに今は三橋なんで」

「それならスリーブリッチ京太郎にする?」


と、美影アナが悪魔のような提案をしてくるので無視した。


「まぁ、見てれば分かりますよ、、、」


=====================================


リプロ秋季新人陸上競技大会東京都予選。

その都大会に出れるのは、6支部に分けられたエリアから各8人だ。菱星学園が属しているのは第4支部。


「お、始まるんじゃないですか?タイムトライアルやるから取材には丁度いいって来道先生言ってましたもんね」


美影アナが注意を促す。

そう、今日は実戦形式のタイムトライアルの日だ。


「金城くん、1つお願いがあるの、、、」


清楚系メイドのような濃いグリーンの服を着たアシーナが、画面の向こうで人差し指同士をもじもじとさせながらだった。ただ声のトーンはいつもより低めに聞こえる。

それは昨日のことだった。


「おお、なんだい?なんでも言ってごらん」

「明日、急遽タイムトライアルをすることになったの」

「タイムトライアル?今日が水曜日で、今週の土日が支部大会、で月末には都大会でしょ?こんなタイミングでタイムトライアルするかな」


都大会に照準を定め、支部大会はあくまで通過とするなら、支部大会をタイムトライアル的に扱って調整に励んだ方が疲労も溜まらなくていいのではないか。そんなことを思ったが、京太郎もその辺のスケジュール調整、いわゆるピーキングは正直疎い方だから、せっちゃんの経験値的にOKなら大丈夫なのだろうと信じるしかない。


「残り100メートルは流しで、300メートルまで全力なら良いって」


なるほどね。

でも、「急遽」というのがどうにも引っかかる。


「それで、お願いって?」


作戦とか、アドバイスとかだろうか?

正直、今のアシーナは作戦どうこうというレベルではないが、、、。

が、京太郎の予測にはまったくなかった言葉がアシーナの口から出た。


「金城くんが、私に顔を見せたくないっていうのは、分かってるの。でも、、、どうしても、、、私の走りを見て欲しくて、、、」


アシーナはサメのぬいぐるみを胸に抱え込むようにしてそう言った。


走りを見て欲しい。

わざわざそう言うってことは、それはおそらく、、、


「動画じゃなくて、見に来て欲しいってこと?」

「うん、、、ごめんなさい。わがままばかりで。でも、私、、、自信なくて、、、だから、どこかで金城くんが見てくれているって思えば、頑張れるかなって」


弱気だ。あまりにも。

アシーナは、きっと本来、すごく自分に自信がないタイプの人間なのだろう。

さぁ、どうしようか。

京太郎は、何か言いかけた言葉をすっと飲み込んで、アシーナからは見えない笑顔を作った。


「分かった、いいよ。必ずどこかで見てるから、頑張って」

「、、、え?ほんとうに?ほんとうに見てくれるの?」

「うん、アシーナさんからのお願いだからね」

「や、やったやった、頑張る、すっごく頑張るから!あと電車賃払うから!どこに住んでるか分からないけど、払うから!」


変なところに気を遣うアシーナは、にっこりとした笑顔で地団駄を踏んでいた。


そんなことがあって、京太郎は陸上トラックのある第二運動場まで足を運んだのだ。

4人の選手が3~6レーンに入り、スタートのチェックを行う。


「そういえば支部大会って出場枠数に制限ないんすか?」


そもそもアシーナが支部大会に出るかどうかすら聞いていなかったことを思い出した。正直、彼女のレースについては余り興味がないというか、まだその段階ではないからだ。


「支部大会はないよ、1人2種目まで、ただしリレー競技は除く、だね」


と、美影アナ。

あれ、アシーナは400以外何に出るんだろう。全然その辺教えてもらってないな。

適正で言えば、、、と京太郎が考えていると、隣の美影アナが急に大きな声を出した。


「第3レーン!良く知らんがゴールド京太郎大注目の色白美人!」

「うぉっ、びっくりしたぁ、、、。急に大きな声出さないでくださいよ、それに恥ずかしい、あ、ちなみにそいつはアシーナ・新城・スミスです」


京太郎はまた観客席の背に隠れながら助言する。

俺がここにいるとなったら、いろいろとめんどくさいことが起きそうだ。金城京太郎を呼んだのに、なんでお前が?って絶対なる。


「新城?新城って理事長の?まぁいいか、第4レーン!甘利美知留あまりみちる、第1学年の特待生、自己ベストは59秒75!今回は関東大会進出が大きな目標か!?」


みちる、みちる、、、ってあれか、アシーナのことをやっかんでる奴か。

京太郎は美影アナが他2人の紹介をしている間、その「みちる」という生徒を見ていた。

59秒75ね、都大会出場は余裕、関東大会は微妙ってところか。1年生にしては有望だが、傑出しているとも言えない。まぁ、まだ学園の歴史も浅く、スポーツに力を入れ始めたのも最近だから、トップオブトップの選手が簡単に集まるはずもないのが道理だ。

短髪の髪に、褐色の肌のそのみちるという生徒は、


「アシーナのこと見て笑ってる?」


京太郎には遠くてよく分からなかったが、直観的にそう思った。

何か嫌な予感が、枝葉から落ちる1適の雨水のように思考を波立たせたのも束の間、美影アナの高い声がそれをかき消した。


「さぁ絶対的エース、斑いさらに追随するのは誰か、今、熱き戦いの火蓋が切って落とされる!!」










































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