夜の天使は俺に堕天する

エリートぱんつ

第1話 プロローグ

「うっ寒。もうちょっと厚着してくればよかった」


 12月も半ばとなり吐いた息は降ってくる雪に消えていく。道路には雪が少しばかり積もっていて、消雪パイプから出ている水を避けながら俺はコンビニへ向かっていた。今日は「ラッキーエンジェル」の最新刊の発売日。朝起きた時の寒さから買いに行くのを今度にするか迷ったが、発売日に読みたい気持ちが勝ったのでこうして寒い外に身を投じている。コンビニに到着し、俺は端の書籍コーナーで最新刊を手に取る。最新刊の表紙には我が推しレリエルが大きく描かれている。今日もレリエルはマジ天使。天使に天使と言うのはおかしいが、言葉の綾ってやつだ。


 雪が本格的に積もる前に、と俺はカップ麺や飲み物、お菓子などをカゴに入れ会計を済ませ外にでる。さっきよりも雪が降っていたので持ってきた傘をさし帰路に着く。早くこたつに入りながら読みたいという気持ちを抑えながら歩くスピードを早める。しかし傘で前が見えなくなっていたのもあり俺は向こう側から向かってくる人の気配に気付かなかった。そして相手とぶつかってしまう。俺はよろめいて、その際に袋から新刊が道に落ちてしまい水と雪で汚れてしまった。


「おーごめん、気づかなかったよ」

「いえ、僕も前を見ていなかったので…」


 俺はラッキーエンジェルを拾う。買い直す金は持ち合わせていない。帰って乾かして読むか、時間はかかるがネットで注文しようと思い相手に「すみませんでした」と言いその場から去ろうとすると、相手からちょっと待ってと呼びかけられた。


 「もしかして君が買った本、やっぱりラッキーエンジェルじゃん。僕も今本屋で買ってきたんだけどこれあげるよ」

「あ、いやそんな」

「いいっていいって、これも運命ってやつさ♪」


 その人はそう言って俺に新刊を渡し、俺の手から濡れた本を取り、その場を離れていく。顔は外の暗さでよく見えず、声は中性的で男性か女性かわからなかった。俺は貰ったラッキーエンジェルの表紙を見る。なんか表紙のレリエルがちょっと違うような…そんなことを考えながら俺は家へ帰った。


 帰ってきて体を拭き部屋に行く。早速読もうと袋から本を取り出すとぴかっと光を放ち部屋が明るい光に包まれる。え、何このアニメみたいな展開…。


 煌々と照らされていた光が収まる。俺は何が起こったんだと目を開けると目の前に女性が倒れている。

 

 え、なんで女性が、てか誰?そんなことを思っていると倒れていた彼女が起き上がる。その顔を見て俺は息を呑んだ。


 レリエルだ。本物だ。彼女が俺の前にいる。どういう事だ、これは現実か?頭の回転が追いつかない。目の前の状況に理解が出来ず混乱しているとレリエルの方からぐーっと音がなった。


「お腹減った…」

「え」

「お腹減った」

「…」

「…」


 俺は困惑しながらも先ほどコンビニで買ってきたものを準備する。ポテチにカップラーメン、コーラなどなど…


 彼女は目を輝かせながらいただきますと言い目の前にあるご飯を食べる。食べている姿も本当に可愛いな。ついつい見惚れてしまう。 


 本当にレリエルが目の前にいる。俺の部屋でご飯を食べている。これは夢か?頬を抓るがどうやら現実らしい。

彼女はあっという間に食べ終わりとても満足そうにしている。


「んやー。美味しかった!!ありがとう少年、君の名前は?」

「え、あ、未徠みらいです」

「未徠ね、これからよろしくね」

「…これから?」

「そう、私しばらくここに住むから」

「…は?」



  これが俺とレリエルの出会いだった。

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