第6話 再生

 教会の焼け跡から、崩れた梁や屋根材に押し潰された拓哉の遺体が発見された。

 文哉はすんでのところで脱出し、SITが回収。命の別状はなかった。

 拓哉のスマホの中には、殺害された被害者たちの動画が残っていたため、ハングマン連続殺人事件、並びに自白の有った奈々未殺害及び拓哉と文哉の実父殺害については被疑者死亡のまま書類送検となった。

 しかし、高知の久江の隣人のミヨコの死については、証拠不十分の為、不起訴となっている。

 

 後の捜査で新たに分かったことがある。

 それは、拓哉が話したように、奈々未には二面性があった事だった。

 また、驚いたことに、検査結果がテレコなっていた件についても、奈々未によるものだった事が後の調べで明らかになった。

 これは、当時、横井の研究所で研究員をしていた男の供述による。

 男は奈々未に金を渡され、結果をすり替えたと言う。

 その理由は定かではないが、横井儀一の息子、聡の推測ではこうだ。

 

 母親の奈々未は自身の二面性に気付いており、自分自身がサイコパスなのではないかという疑いを持っていたのではないか。

 そこへ夫が検査の話を持ってきた。

 検査において、万が一『自身の遺伝子の影響』であるとされては困る。

 その為、結果をすり替えるように研究員に依頼したのではないか。


 しかし、奈々未が既に亡くなってしまっている以上、真相は闇の中である。


 あれから八年が経った。

 現在も私は捜査一課で刑事として日々事件を追っている。

 以前のように、慎重になりすぎるあまり、自分の判断に自信が持てずに『ぐずぐず』する事はなくなったが、昔のように見切り発車をすることもない。

 一端のベテラン捜査員として、後輩の教育にも当たるようになった。


 相棒はあの後、刑事を辞めた。

 彼女にとって、あまりに非現実的なあの事件は、生涯心の傷として残るだろう。

 とはいえ、現在も私の相棒として傍にいる。死が二人を分かつまでそれは変わらない。

 私たちは神前でそう誓った。

 

 ところで、八年が経った今でも、私の耳から離れない拓哉の言葉がある。

 あれは一体どういう意味だったのだろうか。


 

 

 ── 離せ! あいつも同じ悪魔の子や! 悪魔ながや! 殺しちゃる!



 

 ──悪魔ながや!

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