第27話:無礼討ち

「無礼者、我らを王国騎士と知っての礼儀知らずか?!」


 東南魔境に行って狩りをしようと東大城門に行ったら、待ち受けていた騎士に因縁をつけられてしまった。


「ストックトン宮中伯閣下に命じられて僕を殺す気ですか?

 余りにも露骨で恥知らずなやり方ですね。

 王都行政官閣下に追い込まれる前に、僕を殺せばどうにかなると思ったのでしょうが、刺客に使った家臣10人もの証言があるのです、逃げきれませんよ?」


「な、何を言っている、誰にも頼まれていない!

 お前が無礼だから罰するだけだ!」


「平民とはいえこれだけの人間が見ているんですよ。

 そんな見えすいたウソが通用するとでも思っているのですか?

 大城門を警備している騎士や兵士は王都行政官閣下の配下ですよ。

 貴方たちの罪を証言すれば出世できるんですよ。

 こんなアクドイ事をしたら、家族まで厳しい罰を受けると分かりませんか?」


「だまれ、だまれ、黙れ、無礼に加えての悪口雑言、この場で斬ってくれる」


「分かりました、だったら騎士同士の決闘と言う事にしましょう。

 互いの持ち物、身につけている下着まで賭けて決闘しましょう」


「バカめ、平民の分際で騎士と対等の決闘ができると思っているのか?!」


「やっぱり卑怯で憶病な、騎士の風上にも置けないクズでしたね。

 身分差を使って一方的に殺す事しかできない、無能な卑怯者。

 商人ギルドの会員が怖くて対等の決闘もできない、それが王国騎士なのですね。

 いやはや、建国王陛下と共に戦った勇猛果敢な騎士はどこに行ったのか?

 誇り高い騎士様は全て死に絶えてしまい、残っているのは、先祖代々卑怯で憶病な王国騎士だけなのでしょうね!」


「貴様らのせいで王国騎士の名誉が地に落ちた!

 この者と決闘しないと言うのなら、先に私と決闘してもらおう!

 1対21でも関係ない、王国騎士の名誉を守るためなら命を賭ける!」


 東大城門の当番兵を率いていた騎士が、僕に因縁をつけた騎士たちに言った。


「ま、待たれよ、我らは貴殿と決闘する気はない!」


「黙れ、王国騎士の恥さらし!

 お前たちのせいで王国騎士の名誉が地に落ちて泥にまみれた!

 ここで命を賭けて名誉を回復しなければ、先祖にも子供にも顔向けできぬ!

 我を殺してすむと思うなよ、心ある騎士が必ずお前たちを殺す!」


「隊長を見殺しにするな、王都警備隊の名誉にかけて恥知らずを殺せ!」

「「「「「おう!」」」」」


 隊長に続いて配下の兵士たちも槍を持って腐れ騎士たちに向かって行った。


「かんばれ王都警備隊!」

「恥知らずな王国騎士を許すな!」

「こいつらは普段から平民をおどして金を奪っているんだ!」

「平民の店をおどしては商品や金を奪って行くんだ!」


 大城門が開くのを待っていた平民たちが警備隊を応援しだした。

 

「だまれ、黙らんと無礼討ちするぞ!」


「もう逃れようがありませんよ。

 ここで警備隊や平民たちを皆殺しにしても、厳しい処分から逃れられない。

 警備隊の騎士殿を殺しても、貴方たちが泥にまみれさせた王国騎士の名誉が更に汚れるだけ、心ある王国騎士たちが必ず貴方たちを殺す。

 貴方たちだけでなく、奥方も子供たちも皆殺しにされて家が絶える。

 そんな貴方たちを、あのストックトン宮中伯が助けると思いますか?」


「だまれ、だまれ、黙れ、全部お前の無礼が悪いんだ!」


「1つだけ逃れられる方法がありますが、知りたくないですか?」


「逃れられる方法だと、言ってみろ!」


「僕と決闘をして生き残る事です。

 1対21であろうと、正々堂々の決闘をした結果だと言えば、僕を殺しても罰せられませんよ」


「……我らに平民と決闘しろと言うのか……」


「僕は商人ギルドの会員だけではなく、冒険者ギルドの会員でもあります。

 若く見られますが、それなりの年齢で戦闘経験も豊富です。

 何より自由騎士として何カ国も渡り歩いてもいます」


「……よかろう、自由騎士だと言い張るのなら、騎士だと認めてやる。

 21対1でもいいと言ったのはお前だからな、構え、ランスチャージ!」


 僕の誘いに乗った愚かな騎士たちが、襲い掛かって来た。

 ランスを構えて軍馬に拍車を入れて、僕に準備も与えず襲い掛かって来た。


 王国騎士が21騎そろって槍を構えて突撃するのだ。

 腐れ騎士たちは、自分たちが負けるとは全く思っていないだろう。


 だけど僕も、負けるとは全く思っていない。

 身体強化と言霊で武装した僕が、負けるはずがない。


 冒険者同士の争いだと、相手を殺す事は許されない。

 有力貴族が黒幕になっている連中を殺してしまうと、罰せられる。

 だが、騎士を相手に名誉の決闘に持ち込めれば、話が違ってくる。


 互いの名誉を賭けた決闘では、相手を殺しても罪に問われない。

 普通の自由騎士はお金に汚いから、通常は決闘相手を生け捕りにして身代金を取るのだが、僕は身代金目的ではない。


 最初に互いの持ち物を賭けての決闘だと言ってある。

 途中で色々あったから、愚かな騎士たちは忘れてしまっているかもしれない。


 自分たちは騎士だから、自由騎士を自称する平民の僕を殺せる。

 だけど平民でしかない僕は王国騎士を殺せない、と思い込んでいるのだろう。


 だけど、僕は最初から騎士たちを殺す気だった。

 生かして逃がしたら、これからも多くの人たちが傷つけられ殺されていく。

 ここで確実に殺しておかないと多くの人が苦しむ、だから確実に殺す。


 それに、騎士用に作られた武器や鎧はとても高価だ。

 軍用に育てられた馬も、とんでもなく高価だ。

 日本円で3億円はくだらないくらい、良く鍛えられた軍馬は高価なのだ。


 だから軍馬はもちろん武器や鎧にも傷1つ付けずに騎士たちを殺す!

 軽く殴って騎士鎧と兜の間に隙間を作り、剣で首を刺して即死させる。

 21騎士全員をその方法で突き殺す!

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