第26話:刺客
ギィイイイイイ
商業ギルドの男性用仮眠室に密かに入ってくる者がいた。
冒険者クランを使って悪逆非道な事をやってきた有力貴族、大臣級のストックトン宮中伯がよくやるのが、刺客を使った暗殺だ。
異神眼で知っていたので、誘いをかけたのだ。
商業ギルドに泊まれば必ず刺客を放つと思って試してみたのだ。
警戒厳重なヒューズホテルだと刺客は侵入できないが、ストックトン宮中伯の手先がいる商業ギルドに泊まったら、必ず刺客を放つと思った。
僕の事よりもエマとリナの事が心配だったので、存在感のある男性ギルド職員に事情を話して、商業ギルドの女性警備員に護ってもらった。
エマとリナは2人部屋ではなく、安全優先で女性職員さんと同じ大部屋で眠った。
同時に僕の方は警備を甘くしてもらった。
商業ギルドの会員のために用意してある、個室を使って眠った。
そこに黙って入ってくる奴は刺客以外の何者でもない!
「動くな!」
殺気と威圧を込めた言霊で刺客の動きを封じる。
事前にオキナガタラシヒメノミコトに身体強化をお願いして、ウカノミタマとアマテラス様に言霊魔術を使えるようにお願いしてあった。
ウカノミタマとアマテラス様は戦いや魔術の神様ではないが、2柱とも諸願成就の御利益があると言うので、欲深くお願いしてみた。
僕は慎重な性格なので、今回初めてお願いした訳ではない。
コンスタンティナさんの所で暮らしている時に何度も試している。
だから安心して刺客を迎え、捕らえることができた。
「楽に死ねると思わない事です。
ストックトン宮中伯の命令で何人もの貴族を殺してきた事を証言してもらいます。
僕だけなら権力で抑え込めるでしょうが、同じ貴族を何人も殺してきた事は隠しようがありませんし、厳罰を逃れる事もできません!」
僕を殺そうとした刺客5人を前にして言った。
ストックトン宮中伯は強欲で悪逆非道なだけではなく、慎重でもあった。
1人の刺客にやらせるのではなく、刺客チームで敵を殺して来た。
僕を狙ったのも5人1組の実行チームと5人1組のサポートチームだ。
その内の実行チーム5人を捕らえて言霊でしばった。
これで自殺する事なくストックトン宮中伯の命令だったと証言する。
「貴方たちが証言しなくてもサポートチームが証言します。
彼らよりも早く証言しなければ、主君であるストックトン宮中伯の命令でしかたがなく殺したと言っても、減刑してもらえませんよ。
自分だけでなく、家族も連座で処刑されますよ。
己の罪のせいで、妹や娘さんが性ドレイにされるのは嫌でしょう?」
僕は更なる言霊で刺客が証言するしか生き残れないようにしばる。
本人たちは、良心と家族への愛情で主君を裏切り証言したと思うだろう。
だけど実際は違う、異神の加護を受けた僕の魔術、言霊で証言させられている。
2重の言霊で実行刺客チーム5人をしばってからサポートチームの所に行った。
実行チーム5人に加えてサポートチーム5人にも証言させた方が、ストックトン宮中伯の悪逆非道さが際立つ、だから生け捕りにする。
身体強化した上に言霊で敵をしばれるようになった僕に、実行刺客チームよりも実力が劣る、ある意味2軍と言える刺客サポートチーム5人が勝てはずがない。
勝つ事はもちろん、逃げる事もできない。
「許さん、大臣級のストックトン宮中伯であろうと、ギルドハウスに刺客を送られて黙っていられるか!
裏切者、ストックトン宮中伯の命令で刺客を引き入れた事を証言しろ。
他の奴の名前を言ったり、自分の独断だと言ったりしたら、家族がどうなるか分かっているだろうな?!」
存在感のあるギルド職員から、僕が刺客に襲われたと連絡を受けて、商業ギルドのマスターが急いで家からギルドハウスに戻ってきた。
僕が事情を話して直ぐに、存在感のあるギルド職員が報告していたのに、信じずに自宅に帰っていたのだから、マスター失格だと思う。
僕が実際に襲われてさすがに危機感を持ったのだろう。
戻ってきて直ぐに、ギルドを裏切ってストックトン宮中伯の刺客をギルドハウスに引き入れた、男性職員を吊し上げて証言するように命じていた。
ギルド職員が裏切ってギルド会員を殺そうとするなんて、絶対に許されない会員への裏切りで、商業ギルドの存続すら危うくなる大事件だ。
ギルドマスターが辞職した程度では許されない。
裏切った職員を処刑した程度でも許されない。
元凶であるストックトン宮中伯に罰を与えられなければ、会員を守れる組織でなければ、商人が商業ギルドに入会する意味がない。
★★★★★★
「王都行政官閣下、商業ギルドハウスに侵入して会員を殺そうとした刺客です。
会員のショウ殿が自分の手で捕らえられ、証言するように説得されました。
こいつは刺客をギルドハウスに引き入れた職員です。
商業ギルドのめんもくに賭けて捕らえ、証言するようにおどしました。
どうかストックトン宮中伯に罰を与えて下さい」
僕は商業ギルドのマスターと一緒に王都行政官の屋敷に行った。
商業ギルドのマスターに頼まれて、捕らえた刺客と一緒に行った。
王都行政官の前で、もう1度捕らえた者たちを徹底的におどした。
途中で証言を変えないくらい徹底的におどした。
刺客たちが僕を恐れている所を見せつけて、王都行政官が安心してストックトン宮中伯を追い込めるようにした。
「分かった、これほどの証人を11人も捕らえてくれたのなら、大臣格のストックトン宮中伯であろうと厳罰を与えられる」
刺客10人と職員を何度も厳しく問いただして、絶対に証言すると確認した王都行政官は、意気揚々と王城に向かって行った。
追い詰められたストックトン宮中伯の襲撃に備えて、直属の家臣だけでなく配下の王都警備隊も護衛に使って、王城に向かって行った。
「狩りに行く契約をしていますので、これで失礼させていただきます」
忙しい夜を終えて、荷役たちと約束している夜明け2時間前が迫っていた。
200人分の日当と手数料、パン代をムダにはできない。
利益は出なくても良いが、経費分の1万6000アルは手に入れたい。
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