第13話:双子娘冒険者エマとリナ
「分かったわ、パーティーを組みます、でも、守られるだけは嫌です」
「そうよ、私たちだって1人前の猟師よ、助けてもらった分は獲物で返すわ」
予想していた通り、勝ち気で良識を持つ姉妹のようだ。
姉妹なのがひと目で分かるくらい良く似ているが……双子なのか?
「ショウは運が良いようだ、こんな誇りと意地を持った冒険者はめったにいない。
パーティーメンバーにするなら、実力よりも生死をかけた状況で信用できるかどうかが1番大切だ」
「モートンさんの言う通りです、2人と出会えた僕は運が良い」
「も、持ち上げたって何にも良い事ないわよ!」
「く、口説気だったらムダだからね!」
かわいい、僕と似たような歳だと思うけれど、とてもかわいい。
「改めて自己紹介する、僕はショウと言う」
「私はエマよ」
「私はリナ」
「買い取りの計算が終わったぞ。
19人分の武器と防具、小物と古着を合わせた金額だ」
モートンさんの言葉にエマとリナ、他の冒険者たちも黙り込んだ。
冒険者や猟師は魔境に入って命懸けで金を稼いでいる。
狩った獲物の総額がいくらになるのか、気になるのは当然だ。
「端数は切り上げておまけしてやる、254万アルだ。
昨日と同じように、運び賃1割を等分にしていいんだな?」
「「え?!」」
何も言っていなかったエマとリナが思いっきり驚いている。
それはそうだろう、254万アルの1割だと、25万4000アルを12人で分けるから、1人2万1166アルずつ分ける事になる。
「はい、構いません、ここまで運ぶとなれば、敵対しているクランに襲われるかもしれないのです、命がけの仕事に2万くらい払うのは当然です」
「分かった、ショウに渡す分は金貨と銀貨で良いんだな?」
「はい、銅貨だとかさばるので、襲われた時にじゃまになります」
多過ぎると文句を言おうとしていたエマとリナだが、逆恨みした大人数に襲われるかもしれなかったと分かって黙り込んだ。
自分たちが文句を言ったら、命がけで荷物を運んだ10人が不当にお金をもらった事になるし、自分たちが何も分かっていない未熟者だと言っているようなものだ。
「ショウと女の子たちは危険だから先に渡す、さっさと安全なホテルに行け。
他の10人は順番に渡すから待っていてくれ」
「当然ね、ショウと女の子たちは陽のあるうちにホテルに行かないと危険だわ」
「こんな楽な仕事で2万以上もらえたんだ、待つくらいで文句は言わんよ」
「いくらでも待つから、また荷運びをさせてくれ」
「「「「「俺たちも!」」」」」
ほとんど金貨と銀貨で228万6000アルもらった。
19人の財布に入っていたお金が3万1077アルだった。
昨日の102万アルと合わせて334万9987アルになった。
「寝ている間に泊り客を売る事がない、安心できるホテルに行く」
ブラー古物商店を出て直ぐにエマとリナに言った。
「……王都がこんなひどい所だとは思っていなかったわ」
「村だと狩った獲物を買い叩かれるから出てきたけれど、王都の方が酷いわ」
「自分の縄張り、絶対に味方してくれる者がいる場所はとても貴重なんだ。
敵が拠点としている場所に行って生活するのは、もの凄く不利なんだ。
次にどこかに行く時には、時間をかけて調べてからにした方が良い。
狩りをする時には周囲の状況を注意深く調べるだろう、同じ事さ」
「ふん、偉そうに、私たちだけでもあの程度の連中なら倒せたわ」
「そうよ、その気になったら一瞬で倒せていたわよ」
「2人の実力は分からないが、たぶん無理だ。
2人とも両親や知り合いの中で幸せに暮らして来たんだろう?
どんな悪人であろうと、最初の1人を殺すのは難しい。
一瞬でもためらったら、その隙をつかれて殺される。
殺されるだけなら良いが、死ぬよりもつらい目にあわされる」
「バカな事を言わないで、私たちは1人前の狩人よ、人だって殺せるわ」
「ええ、殺せるわ、舐めないで!」
「分かったよ、そこまで言うなら信じるよ。
ここだよ、ここが安心できるホテルだ。
朝晩のご飯がついて1人800アルだけど、2人部屋は分からない。
800アルだったとしても26日は泊まれる。
それまでに1日800アル稼げるようになれば良い」
「1人1日800アル稼げるような狩りをしないといけないの……」
「だいじょうぶよ、私たちならそれくらい稼げるわよ」
真剣に話し合うエマとリナを連れてヒューズホテルに入った。
「パーティーを組んだのですが、女性2人が泊れる部屋はありますか?」
「ございます、ツインでもダブルでも1人600アルになります。
部屋の広さはショウ様が泊っておられる部屋の5割増しになります。
ショウ様も泊られるのですか?」
「ああ、僕も泊らせてもらう。
エマ、リナ、1人600アルだが、それでいいな?」
「「いいわ」」
「冒険者ギルドで新人を食い物にしていた連中と揉めたのですが、黒幕に有力貴族がいるようで、ホテルを襲ってくるかもしれません、良いですか?」
念のためにホテルの従業員に聞いてみた。
「ホテルに泊まられる方には、色んな事情の方がおられます。
母国を逃げて来られた貴族や士族の方が泊られる事もあります。
刺客に襲われるような事もございますが、お客様を守るのもホテルの仕事です。
相手が貴族であろうと冒険者であろうと、ホテル内で勝手はさせません。
安心してお泊りください」
「そう言ってくださると安心して休めます」
手持ち金:334万9987アル
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