夏休み前の事件をきっかけに誠央学園と星稜学園が合併するところから物語はスタートします。新たな学園生活の中で、誠央学園の御神悠人と星稜学園の神条遙人という双子の兄弟が、星稜学園の双子の姉妹である常盤美陽と常盤美月にそれぞれ出会い、兄弟と姉妹、それぞれが抱える問題や過去の確執を乗り越えながら、新しい絆を築いていく青春学園小説です。
登場人物たちが抱える内面的な葛藤や課題に向き合い、それを乗り越えようとする姿勢が良いです。特に双子という設定がキャラクター間の関係性をより深く、そして面白いものにしています。
御神悠人は人づきあいに悩みを抱えていますが、常盤美陽や常盤美月との交流を通じて少しずつ成長していく姿が丁寧に描かれており、読み手に共感を抱かせます。弟の神条遙人は明るく社交的ですが、兄との確執や美月との関係に悩み、成長していきます。
常盤美陽は誠央学園の生徒会長として責任感が強く、凛とした強さと内面の繊細さが魅力です。妹の常盤美月は明るく社交的で、「妖精姫」と呼ばれるほど周囲から愛されています。
遙人と美月、そして悠人と美陽の関係の変化と進展が、読者の心を掴みます。互いの弱さを理解し支え合う姿は、青春ならではの甘酸っぱさと切なさを感じさせます。
青春小説らしい爽やかなイベントを通じてキャラクターたちが協力し合い、絆を深めていく様子が描かれる一方で、家族の問題や過去のトラウマといった重い問題にも踏み込み、物語全体に奥行きを与えています。
「克服」「成長」「絆」というテーマを一貫して描き、それぞれのキャラクターが自分自身や他者との関係性に向き合う姿勢。青春小説として、人間ドラマとしての魅力を兼ね備えた本作は、多くの読者にお勧めできます。