第36話 双子達の新たな出発

※かなり文字数があり長い話となります。ご了承ください。


「え~っと,この箱は……。」

「常盤副会長,箱の荷運びは俺達がするから大丈夫だよ。」


 生徒会で一緒に活動していた星稜学園の男子生徒が私にそう言った。


 よく見かける彼は星稜学園側の1年生のまとめ役であり,こういった肉体労働を良く任されているらしい。父親がメジャーリーグで活躍しており,彼も中学校までは父に習って野球部で活躍していたので身体を動かすことは得意なのだそうだ。


「気にしなくて大丈夫ですよ。こういった仕事も慣れていますから。」

「…………。」

「あのう,何か?」

「いや,何て言えばいいんだろう……。」


 チラッと私の隣にいる亜麻色の髪をした女の子を見た。彼の視線に気付くと彼女は可愛らしく首を傾げて不思議そうにしていた。


「常盤さん,常盤副会長ってどっちが本当の彼女なのかな?」

「え~っと,教室でいる時が素かな。こっちに来てからはほとんどしなくなったけど,たまに出ちゃうみたいだから。」

「教室の時が素なのか……。てっきり生徒会に居る時が素だと思ってたよ。」

「あはは……。生徒会ではまだ猫被っていたんだ。」


 乾いた声で笑う美月と色々と話し込んでいる彼を見て私は不思議そうにした。本当に美月ってこっちの男子達と接点多いわねぇと彼女の交流関係に驚いていた。


「それにしても,こういった時はいつも遙人が手伝ってくれていたに……。まだ,彼のお兄さんと果たし合いしているんだったかな?……ん?話合い?」

「一文字違うだけで物騒になるわねぇ,んんっ,物騒になりますね。」


 素の自分が出てしまったのか,生徒会での喋り方に変えようと咳払いすると美月は手で口を押えて笑いそうになり,そんな彼女をジト目で見た。


「常盤副会長,無理しなくても俺達の時も素の喋り方で大丈夫だから。正直言うと,あの喋り方だとこっちも気を使って……。」


 私は溜息を吐くといつもの喋り方に戻した。私達は現在,旧校舎にて資料整理をしており,隣にいた彼を筆頭に誠央学園と星稜学園の1年生が肉体労働に励んでいた。そして,美月も一緒に手伝いながら,ある連絡を待っていたのだ。


「ユウ達の話ってまだ続いているのかしら?」

「続いているんじゃないかな?終わったら遙人君がメッセージを送るって言ってたから分かるはずなんだけど。」

「長いわね……。様子でも見に行こう……。」

「常盤さ~ん,じゃない。常盤副会長,これって何処に運べはいいんでしたっけ?」

「どれかしら?……ああ,これは隣の部屋ね。お願いしていいかしら?」


 自分にそう言われて誠央学園の男子生徒は言われた通りにその箱を隣の部屋に運んで行った。その光景を見て美月は目を丸くしていた。


「妹さんは驚きかな?僕達が常盤副会長と一緒に仕事をしているのが?」


 先ほどの彼の隣で資料を見ていた誠央学園の男子生徒が美月に声を掛けて来た。彼に言われてもう一度姉を見ると誠央学園の男子達に彼是と指示を出していた。


「男の子に触れるのは駄目なのにどうして皆は大丈夫なんだろう?」

「生徒会の皆は常盤副会長の体質のことを分かっているからね。適度な距離っていうのを把握しているんだよ。まあ,一学期の時は苦労したけどね。」


 距離感を間違えた男子が彼女に叫ばれて女子達から説教を食らったこともあるらしいのだ。それを思うとその男子生徒に申し訳なく思い,美月は心の中で謝罪をした。


「そういえば,来た時は俺達も苦労したな。対面して喋るのは大丈夫なのに一定の距離に近付くと叫ばれて女子達に睨まれたから大変な目にあったよ。」

織斑おりむら君,お姉ちゃんがごめんなさい!」


 姉の変わりに申し訳なく謝る美月を見て彼は気にしてなさそうに笑った。


「でも,常盤副会長って男子から狙われてたりしてないのかな?常盤さんには遙人がいるけど彼女はフリーなんでしょう?御神も恋人のこと否定しているし……。」

「彼女を狙っている男子はいるよ。ただ,彼女を狙っているのは一人だけどね。」

「一人?何でまた……。」

「狙っている男子生徒が訳ありでね。それに,表立って彼は学園の英雄だから皆常盤さんを諦めている,いや,諦めるしかないんだよ。周りがうるさいからね。ただ,真実を知っている僕達に取っては似非ヒーローだけど。」


 彼にそう言われて二人は不思議そうに首を傾げた。気になるなら常盤さんに今度聞いてみるといいよと言われて彼は資料を持ったまま別の男子生徒の所に行った。


「何か誠央学園も色々とありそうだね。未だにこっちに編入してきた理由も教えてくれないし,先生達に聞いてもニュース以上のことは話してくれないし。」

「そうだね。どうしてだろう?」


 誠央学園が星稜学園に編入して来た理由。その理由が未だに学園の理事会は学生達は愚か,学園の後援会,保護者の方に説明をしていないのだ。ただ,分かっていることが1つ。誠央学園の理事会が学費の横領をしていたことが分かり,運営が難しいと言われていることだけだ。


 それだけのことで態々1年生と2年生をこちらに編入させて3年生だけ誠央学園に卒業まで残して廃校にするのは皆おかしいと思っているのだ。そして,この問題は更に謎に包まれた問題があったのだ。


「横領していた理事会から保護者を含めて一切の説明はなし,おまけに在籍していた学生の一部が強制退学,自主退学をしているって何でだろう?」

「お姉ちゃんに聞いても全然教えてくれないから私も分からないかも。」

「常盤副会長も教える気がないのか……。他の誠央学園の生徒達に聞いても濁されるし,本当にどうなっているだろう。常盤さん,もしよかったらもう一度その時のことも含めて常盤副会長に色々と聞いてもらっておいてもいいかな?」

「うん。今度聞いてみるね。」


 長話が終わると彼は話すのを止めて肉体労働に精を出した。そして,彼と別れた美月は姉の傍にやって来て何か手伝うことはないか訪ねた。


「お姉ちゃん,何か手伝うことはない?」

「そうね。この資料をそこに置いてもらえるかしら?脚立に上がって色々と仕訳しないと駄目何だけど……。」

「大丈夫だよ。え~と,これとこれをっと……。」


 身軽そうに脚立に上り,言われた通りに資料を並べて片付けていった。この子は大人しそうに見えて結構運動神経も良く身軽なのでこういった作業も得意なのだ。


 だが,そんな彼女であっても常盤家の中では優秀ではないと周りから言われているのだ。それは彼女が悪いわけでない。彼女以外の家族全員が自分を含めて異常な天才ばかりしかいないからだ。


 そう思うとあの子は何て不憫何だろうと私は妹と哀れんだ。すると,美月は作業が終わったのか,脚立の上から声を掛けて来た。


「お姉ちゃん,終わったよ。」

「終わったなら降りてきて。次の作業を教えるから。」

「は~い。」


 返事をすると美月は大丈夫と判断して脚立から飛び降りると見事に着地した。だが,その反動で少しスカートが捲れてしまい,美月は慌ててスカート抑えた。


「…………。」

「お姉ちゃん?」

「あなた,今日は際どいのじゃなくて普通の履いてるのね?」

「!?~~~!!」


 美月は顔を赤らめると周りの男子生徒達を気にした。彼等は自分の仕事で忙しいため,こちらのことに気にするほどの余裕はなかったみたいだ。


「お姉ちゃん!!今男の子達しかいないからそんなこと言わないでよ!聞かれていたらどうするの!」

「大丈夫よ。ちゃんと周りを見ているから。ところで,どうして今日はそっちを?」

「う~~~,は、遙人君にこの間,色々と言われて少し自重しようかと……。」

「なるほどね。まあ,それに関しては神条君の言うとおりよ。それにしても,美月。よく神条君の実家に行った時にそれを履いて行こうと思ったわね?言いたくないけどそれ自分から誘っていると同じに見えるわよ?彼が不憫でしかたないわ。」


 今日までに色々とあって彼のことをは少し見方が変わったかもしれないが,その点に関しては彼に同情した。姉として,一人の女の子としても美月の行動は色々と問題があると思い、そのような行動をとられたら偽装とはいえ勘違いされるのは仕方がないと思ってしまったのだ。正直,この件は美月が100%悪いと断言できる。


「お姉ちゃんも遙人君の味方って酷いよー!!」

「そう思うなら少しは自重しなさい!!まったく,この子は何処でこんなませた子になっちゃたのかしら。」


 ここ最近知った妹の状況を見て私は盛大な溜息を吐いた。


「あれ?常盤副会長,何か問題でも起きたかな?」

「「何でもないわ(何でもないから)!!」」


 二人同時にそう言わてしまい,彼だけでなくそこに居た男の子達は顔を見合わせて何があった?と不思議に二人を見つめていた。


 ********************


 刻々と時間が過ぎて行き,旧校舎の整理は大方片付いてしまったが,未だに遙人からメッセージが来ず、二人は悩んでしまった。


「よし、皆!今日の作業はここまで!撤収するよ!それと,帰りにファミレスに寄るから食べたいものある人は参加してね!費用は会長持ちだから遠慮はいらないよ!」


 片付けに参加していた男子達は声を上げた。やはりご褒美があると皆やる気が変わるのか,先程まで彼等は必死になって片付けを頑張っていたのだ。


「常盤さん達はどうする?遙人達を待っているんだっけ?」

「うん。連絡してくれると言ってたんだけど,返事がまったくなくて。」

「そっか。それじゃ、二人を探しに行ってみる?戸締りはこっちでしておくから。」


 お互いに顔を見合わせるとその好意に甘えることにした。そして,鞄を持つと皆と別れて二人は悠人と遙人を探しに向かった。


「まったく,相談場所ぐらい教えてくれてもよかったのに……。」

「御神君を狙っている彼女達が来たら話が出来ないから教えないって言ってたよ。」

「神条君って用意周到ね。それにしても,本当に何処へ行ったのかしら。学園内も結構広いのにあちこち探していると疲れるだけ……。」

「君はそんなことをしていたのか!?」


 言い掛けると声が聞こえてきて二人は顔を見合わせた。今の声は遙人の声だ。すると,直ぐにもう一人の怒鳴り声が聞こえて来た。

   

「それはこっちの台詞だ!お前こそ何やっているんだよ!」

「……今のって御神君かな?」

「そうね。もしかして,喧嘩でも始めちゃったのかしら!?急ぎましょう!」


 二人は声がした場所,体育館に向かって走って行った。そして,体育館に着くと明かりは付いておらず,薄暗い体育館の中には悠人と遙人の二人しかいなかった。だが,その二人は何故か睨み合っていたのだ。


「ちょっと二人とも!何やっているのよ!喧嘩になったんじゃないでしょうね!?」

「美陽?何でお前がここに……。」

「あなた達の声が聞こえてきたからよ。それで,何で喧嘩をしているわけ?」

「それは……。」

「常盤さん,この話に入らないでくれるかな?家族の問題のことだから。」


 真剣な表情で言う遙人を見るとただ事ではないと感じた。その顔を見て美月も止めようとしたが,二人が争っている内容を聞くと私達は呆れ返ってしまった。


「遙人君,喧嘩は駄目だよ!落ち着いてね!……ね?」

「ごめん,美月ちゃん。それはできないよ。彼に,妹の幸せを踏み躙ることをさせるわけいはいかないんだよ。」

「……へ?」

「何が妹の幸せだ!遙人,そいつが碌な奴じゃなかったどうするんだ!?」

「ユ,ユウ?」


 いつもより迫力のある顔だが,話を聞いていると驚く処か困惑までしてきたのだ。


「それじゃ,悠人は一生妹に恋人ができなくてもいいの!?少しでも大丈夫そうな子がいるなら学ばせるべきでしょう!ずっと,自分の手元に置いておく気なの!?」

「どんな奴か知らないのに信用できるか!それならまだ手元に居た方が安全だろう!何で分からないんだ,遙人!」

「分かりたくないよ!そんなのただの妹離れできない駄目シスコンじゃない!」

「誰が駄目シスコンだ,この変態シスコン!さっきの話が本当なら許さないぞ!」

「あれは僕からじゃないって何回も言ってるでしょう!それから,僕は変態じゃなくてド変態だからね!」

「……何,これ?」


 何の話をしているかと思えば,お互いに妹の恋人のことについて熱く語っているだけであったのだ。この二人って大事な話があるから二人になったんじゃないの?何で妹さんの話になっているわけ?


 最早,私の頭の中は様々な情報量が多過ぎてパニックになりつつあった。


「は,遙人君,落ち着いて。御神君も……。」

「美月ちゃんは黙っていて!これは譲れない戦い何だから!」 

「それはこっちの台詞だ!常盤さん,あんまりこの話には関わらないでくれ!」


 お互いに美月に関わるなと言うと美月は黙り込んでしまった。いくら何でも言い過ぎだと思い,私が怒ろうとすると美月がうっすらと声を出した。


「遙人君……御神君……。」

「さっきから何なの,美月ちゃん!?今は悠人……と……!?」

「と,常盤さん!?」

「…………。」


 二人は美月から出るオーラを見て背筋が凍りそうになっていた。それは,隣にいる自分も同様であり,久しぶりにその顔を見て若干顔を引き攣らせていた。


「二人とも,とりあえず,頭冷やそうか?」


 彼女に絶対零度のような冷めた目で見られた二人は彼女の余りの怖さに首を縦に振るしかできなかった。それから数十分。体育館に正座させられた二人は事情を話し,そのことを聞くと二人は呆れ返った。


「仲直りできたのに,妹の話になった途端に喧嘩になったって何やっているのよ!」

「仕方ないだろう!文句があるなら遙人の奴に言えよ!」

「悠人には言われたくないね!まったく,あの子が本当に可哀そうだよ。やっぱり,あの子に近付か……。」

「二人とも,もう1回,頭冷やす?」

「「すみませんでした!!もう言いませんから許してください!!」」


 美月にまた冷めた口調で言われた二人は勢いよく頭を下げた。美月って本当に怒らすと怖いわね……。心の中でこの子は絶対に怒らせては駄目だと固く決意した。


「それで仲直りは出来たの?」

「まあ,な。」


 立ち上がり,遙人を見るとお互いに肩をすくめた。どうやら何事もなく無事仲直りをすることができたそうだ。それ思うと私は安堵し,美月も先ほどの怒った顔ではなく仲直りをしてくれた二人を見て微笑んでいた。


「常盤さん,昨日は色々とごめん。改めて言うけど僕が悪かったよ。」

「もう謝らなくていいわよ。今朝にも謝ってもらったから。ただし,次自分のことを粗末にしたら許さないわよ。」

「肝に銘じておくよ。それに,これ以上さっきの美月ちゃんみたいに怒られたくないからね。やはり,この中で最強は美月ちゃんか……。」

「遙人君ひどい!あんな風に怒るのは滅多にないからね!」

「本当かな?」


 遙人に抗議をする美月を見て悠人は少し笑った。自分も彼女みたいな子が隣に居てくれたら少しは【女性恐怖症】が大丈夫であったのではと思ってしまったようだ。


「それで,結局何が原因で喧嘩していたわけ?」

「……絶対に言わん。」

「それってどういう意味よ?神条君も何だったの?」

「……ごめん。馬鹿らしいというか,恥ずかしいことだから教えられない。」

「教えてくれてもいいでしょう!何二人して黙り込んでいるのよ!」

「悪いな,美陽。これに関しては秘密だ。」


 体育館の扉を開けると悠人と遙人は走って先に体育館を出て行き、その後を私達は後を追い掛けて行った。外に出ると夕焼けが沈みかけており,いつもより遅い時間となっていたのだ。


 ただ,外に出ると気持ちいい風が吹いており,二人は夕焼けを見ながら吹いていた風を受けていた。


「気持ちのいい風だな。さて,美陽をどう巻いたものか……。」

「多分,追及して来るからね。どうしようか?」

「こらぁ,二人とも!どうして逃げるのよ!教えてくれても……。」


 後から追ってきた彼女は美月を連れて出て,そう叫ぶと二人はお互いの顔を見て困り果てた顔をした。すると,先程よりも強い風が急に4人を襲った。


「キャアッ!?」

「何,この風!?」

「……凄い風だな。」

「そうだね。二人とも大丈……!?」


 そう言い掛けて振り向いた遙人は目を見開いて固まってしまい,同じように心配だと思って振り向いていた悠人も目の前の光景を見て固まってしまった。


 何せ,二人の目の前には急な突風によって二人のスカートが勢いよく捲れてしまい,あられもない姿が広がっていたのだ。だが,それも一瞬であり,二人はほぼ同時にスカートを押さえると顔を真っ赤にしてフルフルと身体を震え出した。


「……二人とも,見た?」

「い,いや,そのだな……。」


 顔を真っ赤にしてどう言えばいいか迷っていると急に遙人は悠人の肩を叩いた。どうしたんだろうと思うと何故かニッコリ笑っていた。


「悠人,覚えておいてね。こういう時はこう言うんだよ。」


 そう言って二人の前に行くと彼は勢いよく頭を下げた。やはり,素直に謝るべきなんだなと思っていると遙人が言った次の言葉に顔を引き攣らせるしかなかった。


「大変,眼福な物を見せて頂き誠にありが……ぐはぁっ!?」

「……何,素直な感想を言ってるのよ!!神条君のド変態!!」


 私は顔を真っ赤にして涙目になりながら素直な感想を言った遙人を殴り飛ばした。だが,その光景を見ると悠人と美月は目を見開いて驚いてしまった。


「お,お姉ちゃん!?大丈夫なの!?」

「えっ?どういう意味よ?」

「美陽,お前今,遙人のこと殴ったぞ?」

「あ……。」


 そう言われて私ははっとした。そう,私は今彼に触れたのだ。今まで男性に一切触れることができなかった自分が殴り飛ばしたとはいえ触れることができたのだ。


「どうしてなのかしら。まさか,ユウが平気なように私も御神君が平気だとか?」

「まあ,それは一理あり得るかもしれないね。僕と悠人も双子だから。」

「「!?」」


 何故か殴り飛ばされたら遙人は何事もなかったかのように普通に会話に参加していて3人はビクッと驚いてしまった。


「お前,結構勢いよく殴られたけど大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。それに,とある業界ではああいうことはご褒美だっていうしね。僕はまだその領域に辿り着いてはいないけど……。」

「はぁ~。あのね,御神君!あなたって本当にどうしてそんな……。」


 遙人の態度に思うことがあるのか,色々と抗議したが,遙人はのらりくらりと交わしながら楽しそうに笑っていた。


「あの美陽が弄ばれている……。」

「遙人君って私の時もいつもああだから。……ところで,御神君。」

「ん?」

「その,御神君も,見たのか,な……?」

「うっ……。」


 恥ずかしそうに顔を真っ赤にして上目遣いで言われた悠人は顔を赤くすると頭をかいた。その姿を見ると美月も理解したのか,縮こまってしまった。


「御神君のエッチ。」

「……本当にごめん。」


 初々しいような雰囲気を出している二人を他所に体育館前には遙人に抗議をする私の声が夕焼けが沈み切るまで続いていたのだった。

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