第11話 お遊びも一苦労

「常盤さん,お待たせ。」


 拓海を連れて待ち合わせ場所の駅前に着くと既に美陽と美月,そして友人の葵と結衣は待っていた。チラッと周りを見ると誠央学園と星稜学園の学生達が帰り際にこちらを見ており,学生でない通行人もこれだけの美少女たちが固まっているとやはり目を離せないのか,視線を移す人もいた。


「4人とも大丈夫だった?誰かに声を掛けられたりとかは?」

「たっくん,気にし過ぎだよ?それに葵がいるから大丈夫だもん。」

「青葉さんって腕っぷし強いの?」

「おにぃに武術教わっているからね。柔な男なら何も問題なしよ。」


 流石は蒼一郎先輩の義妹さんなのか,頼もしいことだなと僕は苦笑するともう一度チラッと周りを見渡した。よく見ると,こちらを観察している星稜学園の学生達が数名ほどこちらを見ており,その中には昔お世話になった先輩達もいたのだ。


「(蒼一郎先輩,過保護な気がするけど私用で彼等を使っていいのかな……。それにもいるってことは特に問題はなさそうかな。)」

「遙人君,どうしたの?」


 一人苦笑していた僕を見て何かあったのかなと美月は首を傾げると何でもないよと言いつつ,彼女を手招きすると,小声でヒソヒソと美月にだけ聞こえる声で昼休みに拓海と話していたことを相談した。


「美月ちゃん,あの話どうする?一応,拓海には報告したけど,そろそろ常盤さんぐらいには話した方がいいと思う?」

「うん……。あと,葵ちゃんと結衣ちゃんに教えてもいいかなって。それに,そろそろ話しておかないと恥ずかしい質問もされてきているから……。」

「恥ずかしい質問?」


 そう言った途端,美月は顔を赤くして俯いてしまった。これは色々と根掘り葉掘り聞かれているなと思い,女の子は恋バナが本当に大好きだなと微笑んでた。だが,こちらの状況に気付いたのか,拓海以外の3人がじーーーっと見つめていた。


「ねぇ,美陽。私達お邪魔じゃない?あの二人だけ二人っきりにさせてあげた方がいいんじゃないの?」

「でも,今日って趣旨が違うよね?どうする,みはるん?」

「美月,神条君とデートしたいのは分かるけど,今日は我慢しなさい。」

「ち,違うよ!何でそんな話になるの!?」

「あはは……。」


 3人に勘違いされたことで更に真っ赤な顔して抗議をする美月を見て僕は困ったような顔で笑うしかなかった。


 本当にどうやって説明しようか……。


 彼女達が納得してくれるかはわからないが,特に常盤さんだけには早いうちに教えておいた方が後の為だろうと思ってしまった。


 すると,後ろから聞き慣れた声で美陽は呼ばれた。


「美陽,悪い。少し遅れたわ。」

「気にしなくていいわよ。特に時間は指定していないから。」


 声をした方を振り向くとそこには僕よりも背が高い金髪の男子生徒と今絶賛喧嘩?中の双子の兄がそこに居た。その姿を見て何故彼女達が僕達を誘ったのか理解すると大きな溜息を吐いた。


「……美月ちゃん,もしかしてこのことを知っていて黙ってたの?」

「え~っと……」

「ちょっと,お話しようか?色々と。」


 ニコニコと笑いながら顔を近付けて問い詰めると,彼女は冷や汗を掻きながら視線を逸らした。その光景を美陽は顔を赤くし,葵と結衣はドキドキしながら二人の行動を見つめ,後から来た二人は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして見ていた。


「遙人,近い近い。外だと人目があるからまたトミー達に見付かると何か言われちゃうよ?……それに,これ以上勘違いされたら色々とまずいでしょう?」


 最後は小声で言われて流石にやり過ぎだと思ったのか,彼女から顔を離した。


「美月ちゃん,あとで事情聴くからね。」

「……うん。」


 申し訳なさそうに彼女が言うと今度は美陽の方を見た。彼女もまた申し訳なさそうな顔をしているのを見ると共犯だなと理解した。そんなやり取りをしていると今まで黙っていた悠人が溜息を一つ付き,美陽に苦言を称した。


「美陽,やはり俺は帰った方がいいんじゃないか?言いたくはないが,空気は最悪になる自信はあるぞ。」


 チラッとこちら見ると,それはこっちも同様なので同じように美陽を見た。そんな二人の目線を見て美陽は呆れた顔で二人に怒りそうになった。


「あのね,何があったかは知らないけど二人ともいい加減に……。」

「はい,美陽。少し抑えましょうね,どうどう……。」

「ゆ,悠人君も,神条君も遊ぶことは問題ないんじゃないかな?折角,誠央学園と星稜学園の知り合いがこうやって集まったんだし……ね?」


 僕は悠人と顔を見合せたが,直ぐに目線を逸らしお互いに溜息を吐いた。


「僕は一緒でも構わないよ。ただ,最初に言っておくけど彼とは仲良くするつもりはないから。少し飲み物だけ買ってくるね。」

「あ,遙人。ごめん,僕も付いて行くから。」


 そう言い残して,僕は近くの自販機に飲み物を買いに行った。


「……神条君,悠人君にだけどうしてあんな態度取るんだろう?折角,皆で遊びに行くって聞いてたから今日楽しみにしていたのに。」

「御神,本当にあなた何をやったの?」

「……悪い。それは教えられない。」

「教えられないって,ユウもいい加減教えてくれても……。」

「はいはい,そこまで。美陽,周りを少しは気にした方がいいぞ。何人かさっきからこっちのことチラチラ見ている。」


 周りを見ると興味津々にこちらの状況を見ていた学生達がいることに気付き,流石の美陽も外でに合うことはまずいと考えたのか,納得はしてくれないが,それ以上は悠人に問い詰めることはしなかった。


 そして,僕が自動販売機で飲み物を購入して合流すると,商業施設を目指した。


 商業施設,【スターライトモール(別名:スタモル)】は白星財閥が運営している超巨大な商業施設であり,名前の通り星の如く無数のお店があることから家族連れや恋人,放課後帰りの学生達が多く利用していた。


 また,学園側も学生達の息抜きとして利用してもらうために生徒手帳を出すだけで商業施設が置いている駅までは無料で交通の便を利用できるようにしていた。そのためか,放課後になれば遊びに来る学生達が後を絶たない状況となっていた。


「星稜学園って学生達に色々と金を懸けているよな。話には聞いてたけど学園への登校も生徒手帳を出すだけで近くの駅まで無料なんだろう?」

「桐原君って知り合いに星稜学園のOBいたりするのかな?こっちの学園のこと詳しそうだけど……。」

「身内に星稜学園の卒業生がいるからな……。」


 一番前を翔琉と拓海が星稜学園の話をしながら歩き,その後に悠人,美陽,美月が続いて,その後ろでは葵と結衣が美月との関係を色々と僕に聞いていた。その二人からの質問にどうしたものかと考えながら質問に答えていた。


「えっ!?神条君って美月ちゃんとまだ何もしてないの!?」

「まあ,ね。……おかしいかな?」

「おかしいというよりも凄いわね。あの子,あんなに可愛いのに全く手を出さない何て。…………もしかして,神条君って意外とヘタレ?」

「その言い方は傷付くなぁ。それに,自慢じゃないけど僕って結構……」


 そんな後ろにいた3人の話を聞くと美月が少し恥ずかしがりながらあまり教えないで!と抗議をして僕も笑いながら美月に謝罪した。ただ,僕の姿を見て彼女の取り名に居た美陽は不思議そうにした。


「他の人とは普通なのよね。」

「お姉ちゃん?」

「ねぇ,ユウ。真面目に聞くけど本当にこのままでいいと思っているの?お節介かもしれないとは思っているけど。」

「そう思うなら自重してくれ。お前も色々とこっちに踏み込み過ぎだ。」


 流石にそう強い口調で言われると美陽も少しムッとなりいつものように怒りながら悠人に反論した。


「あなたのことを思って言ってあげているんでしょう!そもそも,二人がそんな関係だから……。」

「ああ!!悠人君だ!!」

「!?」


 美陽が抗議しようとした瞬間,こちらに声を掛けて来る女性達が居た。見ると誠央学園の制服を来た同学年の女子生徒達であり,彼女が気にしていたではないことに安堵した。


 しかし,声を掛けられた悠人は【女性恐怖症】の影響か顔を引き攣りながら彼女達に対応した。


「あれ?隣にいるのって星稜学園の子じゃ…………。意外!?悠人君が常盤さん達以外の女の子と一緒にいる何て!?」

「いや,彼女は……。」

「その子は私の妹ですよ。美月,自己紹介をしてあげて。」

「う,うん。」


 美陽に言われて彼女達に自己紹介をすると彼女達は驚いていた。


「常盤さんの双子の妹さんなんだ!そう言えば,噂で聞いたことあるかも……。ねね,悠人君。今度私達とも遊ばない?妹さんとも遊べるなら私達とも遊べるよね?」

「あ,ああ。時間があったら,な……。」


 彼女達は悠人にそう言われてやったー!と喜んだ。それを聞くと約束だよー!と言って彼女達は嬉しそうに走り去っていった。すると,こちらに気付いたのか,また同じように他の誠央学園の女子生徒達からも声を掛けられてしまった。


「相変わらずね,ユウの女子からの人気振りは……。正直,ユウの何処がいいのか私には分からないわね。」

「えっ?御神君,カッコいいと私は思うけど?」

「……美月,それ本気で言っている?あと,言われているわよ,ユウ?」

「常盤さん,ごめん。今,マジでその話はしないでくれるか?そろそろ,本気で吐きそう…………うぷっ……。」

「あわわわわわ……。」


 青ざめている彼を見て美月は慌ててしまい,そんな彼女を見て美陽はいつものことだから気にしなくていいわよと言った。しかし,3人のやり取りを後ろから見ていた僕は改めて周りを見渡した。


 よく見ると未だに悠人のことを見ている誠央学園の女子生徒がおり,彼女達の目を見ると僕は思うことがあるのかいつもより強い口調で囁いた。


「人の過去を知らないのは仕方ないとはいえ,彼女達は自重をすることができないのかな。……中学から状況がまったく変わらないんだね,悠人。」

「御神君?」

「今のってどういうこと?」

「何でもないよ。それよりも,拓海達が先に行っているから僕達も急ごうか。」


 葵と結衣にそう言われたことを気にせずに悠人達よりも先に歩いて拓海達が待つ所まで向かった。その過ぎ去っていく背中を見ると何か悲しそうな,そして何か怒りを露わにしているよな感じがしたと先ほどまで話していた二人は思うのだった。

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