ステップ8 覚悟しなさい

「……わたしのことがすきで、気持ちがバレるのを避けるために、部活に来なくなったって……」


「……何それ」


「あなた、わたしのことがすきなの?」


「……いつから?」


「入学式で、わたしを見かけて……ききき、きれいな人がいるなって、気になってたあっ?」


「そそそ、それで、サイキックス部のことを調べたのね……」


「わたしなんかのどこを……すきになるわけ?」


「超能力のことを話すときのわたしの顔が、かわいい?」


「ちょっとポンコツなところも、意外性があってすき?」


「ば、ばばばっ、ばかみたいっ」


「恋愛感情なんて、脳内のホルモンによってもたらされるただの錯覚なんだからっ」


「あなたはさっき、わたしといると心臓が破裂しそうになる、みたいなことをいっていたわね。それが、恋愛感情からくるものだとしたら」


「それは恋をしたときに発生するPEAという脳内ホルモン物質による影響よ」


「わたしのことがすきだと思っているときには、すでに脳が麻痺状態となっていて、正常な判断ができなくなっているのよ」


「つまり、あなたがわたしをすきなのは、そういう理由があって」


「きっと、すぐに錯覚だったと気づいてしまう」


「だから、わ、わたしは……恋愛感情なんて、信じない」


(彼が主人公に近づく布ずれの音)

「ちょ、来ないでよっ。まだ、催眠は解いてないんだから、おとなしく……」


「わたしの気持ちが知りたいって……なんのつもり?」


「錯覚だっていったじゃない」


「あなたもどうせ、わたしの変人ぶりにいつかドン引きして、離れていくんだから!」


「……よくそんなまっすぐな目、わたしに向けられるわね」


「どこまでも、ばか正直なんだから」


「……本気なの?」


「あなた、本当に、このわたしと恋愛をするつもりなの?」


「……はあっ。あきれた」


「わ……わたしだって……あなたのこと……」


「あなたはわたしのことがすきっていったけど、わたしのほうがあなたのこと、もっともっと、すきよ」


「証明できるのって……わかるでしょう?」


「ずっとずっと、部室で待ってたんだからね」


「あなたが来るまで、最後の下校のチャイムが鳴るまでずっと……待ってたんだから」


「今さら謝ったって、遅いっ」


「責任をとってもらうわ」


「明日、部室に来なさい」


「あなたに、今日とは違う催眠術をかけるわ」


「今度こそ、かかってもらう。かかったフリなんて……もうさせないわ」


「逃げたってむだよ」


「来ない選択肢なんて、ありえない」


「わたしのこと、すきっていったわよね」


「あなたには、今日以上に恥ずかしいことを告白してもらうわ」


「わたしへの、すきの気持ちをすべて……しぼり出してあげる」


「恋愛だなんて、なまっちょろい感情を口に出せなくなるくらいにね」


「……覚悟してくることね?」

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