ステップ6 えっと……何かやっちゃいました?

「……さあ、頭がぼーっとしてきたんじゃない?」


「うんっ。じゅうぶん、催眠がかかっているわね」


「いよいよ、吐き出したくなってきたでしょう?」


「ね……。なにもかも、わたしにさらけだして」


「……サイキックス部には、あなたが必要なの」


「そのためにも、お互い、隠し事はなし。……部員同士の絆を深めるためよ」


「……わたしに隠し事はないのかって? あっ、あるわけないじゃない」


「ないっ。ないってば、本当に」


「隠し事がヘタって……ば、ばかにしてるっ?」


「そ、そうねっ。わたしは部長ですからっ? 部員のためを思っての隠し事なら、多少はあるかもしれないわね?」


「歴史に名を残す偉大なサイキッカーは、案外身近にいるかもしれない、とかね?」


(ぼそっと)

「小さいころから尊敬していた超能力者が、実はウソツキだったこととか……わたしはまだ信じられていないしっ」


「な、なんでもない。とにかく、わたしはあなたに隠し事はしていないわっ」


「だから、あなたも包み隠さず、すべてをわたしにいってもらわないといけない」


「……わたしを傷つけるかもしれないから、いえないっていうの? 何よ、それ」


「ふんっ。まだ、催眠が足りないようね」


「わたしが、あなたに傷つけられる? そんなこと、ありえないわ」


「わたしは、超能力者になろうとしている人間よっ」


「あなたに傷つけられたていどで、へこたれるようなら、そんなもの目指せられるわけないじゃない!」


「さあ。もう一度、催眠にかかりなさい。ゆったりと……からだのちからを抜いて……?」


「わたしの催眠は、気持ちがいいでしょう……? さあ、理性なんか吹っ飛ばして」


「いいなさい。なぜ、部室に来なかったのか」


「……え?」


「わたしのそばに、いられないからって……どういうこと?」


「わたしのこと……きらい、だったの?」


「あの、えっと……わたし……ごめんなさい。あなたにきらわれてるなんて、夢にも思ってなくってえ……」


(泣きながら)

「ひっく……その……わたし、やっぱり……変人だものね。ごめんね……」


「……え? 誤解?」


(泣き止んで)

「そうじゃない、って……じゃあ、そういうことなのよ!」


「わたしの近くにいると、心臓がはじけ飛びそうになる?」


「はじけ、って……グロ系の話?」


「体温があがって、息が苦しくなる? ……だから、近くにいられないって」


「……風邪ひいてたの?」


「だから、気をつかって、部活を休んでくれてたの?」


「でも、学校には来てたんでしょ。じゃあ、顔を出すくらいしてくれたって、よかったんじゃないのっ?」


「……落ち着けっていわれたって、こんなの落ち着けないわよ!」


「ちょっとお。頭かかえないでよ~!」


「ため息、つかないで~!」


「白状したのに、損したって……そんなに落胆しなくたっていいじゃない」


「わかったわよ。もう、催眠術は解くから」


「でも、少なくとも、あなたがわたしに気をつかってくれてたっていうのがわかったわ。だから、わたしは大満足」


「わたしの催眠術、すごいでしょう?」


「そして、さすがわたしの後輩。気づかいのできる、いいやつね」


「……こんなに褒めてあげてるのに、なんでそんなに落ちこんでるのよ」


「……へんなの」

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