ステップ4 さっさと吐きなさい

「いよいよ、本番よ」


「今から、あなたに披露するわ。このわたしの、本物の催眠術をね」


「本物の催眠術よ……? 気持ちよすぎて、ブッとんでも知らないわよ……ふふ、ぜったい白状させてやるんだから」


「……何を白状させるのか? もう……わかってるでしょう」


「あなたが、サイキックス部に来なかった理由よ」


「さあ、白状してもらうわよ。わたしを部室に、ひとりぼっちにした理由をね」


「……あっ、ちがっ」


「まち、間違えたあ……っ!」


「えっと……わたっ、わたしは、部活なんて、ひとりでもできるんだけどねっ?」


「だって、あなたが入部する前は、わたしひとりだったんだし!」


「サイキックス部は、わたしが立ちあげた部活なんだもの」


「……えっ。この学校では、部員は最低三人はいないと部活にならない?」


「ひとりしかいない場合は、同好会扱い?」


「正式な部活じゃない……?」


「うそでしょ?」


「たしかにうちの部活は、部費ももらってないし、顧問の先生もいないけど!」


「サイキックス部は孤高の存在! おとなに見てもらわなくたって、かんぺきな部活態度だし、お金なんて必要ない!」


「なぜなら、超能力とは崇高なるものなのだから……!」


「お金のあるなしに左右されるものではないのよ!」


「ええ……? じゃあ、うちって……サイキックス同好会なの?」


「同好会なんて、いやー! なんか響きがかっこよくない気がするー!」


「じゃあ、あなたのほかに、も……もうひとり部員がいるの……?」


「そうよね。正式な部活にするなら、もうひとりいるわよね……」


「え……うちのクラスに、ふさわしい子がいる? ああ、メガネをかけている女子? たしかに、いつも本を読んでいるわよね」


「SF小説がすきなの? 超能力にも興味があるらしいって……」


「ねえ。あなた、どうしてその女子にくわしいの?」


「……サイキックス部に勧誘しようとしてた? 正式な部活にするために、わたしへのサプライズとして?」


「そんなこと、考えてくれてたのね。……まあ、気持ちはありがたく受け取っておくわ」


(ささやき声で)

「わたしは、あなたとふたりっきりの部活が、楽しいと思ってたんだけど……あなたは違ったわけ?」


「……いいえ。何でもない! 何にもいってない!」


「とーにーかーく。部活の件は置いといて。今は、目の前のことに集中しなさい!」


「目の前のことは、目の前のことよ」


「わかってるでしょ。吐けっていってんの」


「あ、あなたが部活をサボった理由よ!」


「ふん。あなたがサプライズするまえに、わたしがサプライズすることになりそうね?」


(耳元に近づいて)

「さあ……わたしに隠しているわるいこと、洗いざらい、ぜーんぶ吐き出しちゃいなさい」


「吐いたら、気持ちよーくなれるわよ?」

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