ステップ2 犬になりなさい
(校庭からの、部活にいそしむ部員たちの声)
「このわたしの催眠術にかかれるなんて、あなたは幸せ者よ。昇天しそうなほど気持ちよくさせてあげる」
「なんてったって、将来わたしは歴史に名を残す超能力者になるんだから!」
「……本当になれるのかって? ななな、何をいうのっ?」
「こーんなに……超能力についてたくさん勉強してるんだからっ! いつかは使えるようになるに決まってるじゃない! こんなにがんばってるんだから! 必ず使えるようになるの!」
「……予定では、今年中には使えるようになるはず」
「だから、あなたは運がいいわ! もしかしたら、これからとんでもない体験を得られるかもしれないわよ」
「ほら、この偉大なわたしの催眠術にかかりたくなってきたでしょう?」
「あら、なにその顔」
「あーわかった。わたしのこと、疑ってるんでしょー」
「催眠術にかかったら、白状させる以外にも、何かするつもりじゃないのかって」
「ふふふ、何してやろっかな~」
「催眠術の定番といったら、アレよね。きらいな食べ物が、すきな味になるってやつ」
「あなたのきらいな食べ物ってたしか……酢豚のパイナップルだったかしら」
「……当たり前でしょ? とーぜん、覚えてるわよっ」
「じゃあ、パイナップルを豚肉の味に変えてあげたら、『酢豚パイナップルテロ』にも対抗できるんじゃない?」
「どう? わたしの催眠術、役に立つでしょ。すごいでしょ。心の底から、かかりたくなったでしょ」
「……何よ、その不満そうな顔っ。たいしたことないって、いいたげね!」
「あ! あと、外せないのはこれよね!」
「……『犬になりなさい』ってやつ。んふふ」
(耳元でささやくように)
「あなた……このわたしの、『犬』になりなさい」
「ふふっ。ちょっと、顔真っ赤。まだ催眠術、使っていないんだけど」
「あなた、どことなーく、うちの犬に似ているし、お似合いよ?」
「うちの犬? シバイヌだけど……。とっても可愛いのよ。もふもふの毛並みをさわると、どれだけ疲れていても、すーっとちからがぬけていくのよ」
「どこが似てるのかって……そこ気になるの?」
「あっ。もしかして、あなたも犬派なの? 最近は、猫派ばっかりでうんざりしてたのよね~! ふふ、さすがサイキックス部の部員ね」
(耳元でささやくように)
「わたしと気があうじゃない」
「たしかに猫もかわいいけれど、やっぱり犬のほうがかわいいと思うのよ。だって、わたしが帰ってきたらシッポをブンブン振って出迎えてくれるのよ。すっごくかわいいでしょ!」
「玄関あがったら、わたしの足元をくるくる回って、全身から大喜びしてくれるのよ。これがうれしくないやつ、いるっ?」
「あなたに『犬になりなさい』って、催眠術をかけたら……これをやってもらおうかしら」
「うちのシバイヌみたいに」
「あなたにも……癒してもらおうかしら」
「なーんてね。……冗談よ、冗談」
「でも、いい調子ね。ノってきたんじゃない? 催眠術」
「あなたには、洗いざらい白状してもらわないといけないからね。ていねいに、ていねいに、催眠術をかけてあげるわ」
「さあ、からだのちからをぬいて……。リラックスして……」
「気持ちいい気分になりましょう」
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