46.チビとの出会い
コロンボンさんの浮遊バイク訓練はスパルタだった。
突風を起こす役目のオニキスも容赦がなかった。
トウマは私の訓練そっちのけで警備隊のバイクのメインテナンスに没頭。
チビは頑張れーと言うだけ言って、苦手なのに菜園作業の草むしりの手伝いにほいほいと逃げていった。
「ほーらほらほら、気流の乱れ~」
「! キィちゃんっ! うわっ! わっわっあーっ!」
突然乱入してきたキィちゃんに弄ばれ、オニキスの起こしていた風の流れと違う方向からの風にバイクの制御が不能になり、これで何度目の緊急着陸だろう。
オニキスがムッとしてキィちゃんを怒ってくれた。
「キィ、遊ぶな」
「なーにーよー、乱気流での制御訓練でしょ? オニキスの風だと甘っちょろいのよ」
「中級だと言ったろ。上級じゃない」
「あら、そうなの? ごめんごめん」
キィちゃん……、レベルをいきなり引き上げないで……。
浮遊バイク中級ライセンス訓練初日の十数分でこの状態。
トウマよ、お付き合いし始めた彼女たる私のことは心配じゃないのか?
「やっぱりこの型のエンジンは惚れ惚れする作りだな」
管理所にある車両訓練場の隅っこでエンジンなのか何かの機械の一部を見て微笑んでいるトウマ。バイクいじりたさに車両整備免許をとったほどのバイク馬鹿だった、そうだった。私の訓練の補佐よりバイクの整備が本命だよね、そうだよね。なんか悔しい。
中級ライセンスでは五メートル前後の高さでの空中停止、突風対応などが試験にある。実際の試験会場は大型の乱気流発生装置のある施設内専用空間だが、現在の試験制度になる前は各地の管理所が浮遊バイクの試験を請け負っていたため、管理所にも古いが施設が残っていて今でも練習に使っている。
今回の訓練は私一人なのでその施設装置は動かさず、施設の半屋外の場所でオニキスの異能で乱気流を作り出しての訓練だ。妖獣の異能の助けが借りられるなら大型の装置を動かすよりもコスト面も安いという世知辛い事情。
オニキスは、私が緑連豆メニュー開発や伯父のことなどで右往左往している間、トウマともども連日不規則勤務が続いて結構忙しくしていた。そんなことを踏まえ、私の浮遊バイク訓練期間は緊急がない限りはゆるゆるとした依頼しかこなさない半休暇となったのだ。
同じくトウマも緊急依頼続きでキツキツな勤務になってしまった勤務調整で、私の浮遊バイクの訓練補佐をしながら管理所所有のバイクの整備というトウマにとってはほぼご褒美。そして「リリカといられるのもご褒美だしな」と言っていた彼氏のはずのトウマは、私の訓練そっちのけで完全にバイクに夢中。あの言葉は何だったのさ。ふん!
そうは思っても私も真面目に訓練中で、トウマはバイクの整備も仕事ではある。付き合い始めのドキドキはあってもイチャイチャする時間じゃないことはわかっている。私とトウマでイチャイチャする絵は全く想像できないし。
でも、なんだろう。このムカッとする気持ちは。
そんなことを思ったら、苛つきながらちょびっと悲しくもなってきた。
意識を切り替えよう。
コロンボンさんはこの五日間で私が中級ライセンスの試験をクリアできるよう、とてもありがたい熱血指導。
「中級が取れたらリリカさんは第十五エリアに行きたいって聞いてるけど、あのあたりは思いがけない風に巻き込まれることがあるから、さっきのキィちゃんが起こした乱気流は実はいい訓練ではあったよ。……だーけーど、キィちゃん、もう乱入はしないでくれって」
「えー、つまんなーい」
管理所管轄の原始の森の第十五エリアにある洞窟に発光苔が自生している。コロンボンさんは誰かから私がそこに行きたがっているのを聞いたようだ。犯人はバイクが恋人のトウマだろうか? またはリーダー。もしくはシード先輩、ペニンダさん。メイリンさんかもしれない。
「チビから聞いたよ。出会った場所だって。チビが『あの頃のオレっちは小さかった』って言ってて。小さいチビがぜんぜん想像つかなかった」
犯人はチビだった。
学院にいた約三年前の冬、フィールドワーク体験に参加した。フィールドワークに体験参加できるもので、次代の研究者育成の一環で国の研究機関が費用補助してくれる学生に人気のものだ。学院での成績が一定以上じゃないと申し込みができず、フィールドワーク体験後も一定期間、専門課程レポート提出を続けられる者かと審査される。
学院に入って苔の研究に師事する教授と出会ってすぐに、そのフィールドワーク体験のことは教授から聞いて知っていたが、倍率が高くてなかなか参加ができなかった。
レポート提出でフィールドワーク体験にかかる費用を免除してもらえるなら何年でも書く! と、開催の告知が出るるたびに先輩たちと合同で毎回申し込みし、参加権利書が届いたときは飛び上がって喜んだ。
そのときのフィールドワークの行き先がシャーヤランの原始の森でのフィールドワークだった。
体験期間は三ヶ月間。苔の専門チームは教授を引率者に研究室の先輩三名、私の四名で、他校からの菌植物の研究チームとともに楽しく地面に這いつくばった。今でもいい思い出だ。
フィールドワークもあと三日で終わる日、拠点としていた観察場所の洞窟の手前で小さなトカゲを見つけた。小指の長さほどの細い小さなトカゲ。
最初は死んでいると思ったが、近づくとヒクヒクと動き、人が寄ったのに逃げる力もなく虫の息。薄っすら目を開けたがすぐに閉じてしまい、放っておけなくてシャーレにそっとつまみ上げて、フィールドワークに参加していた大人に訊き回った。
「魔素毒にやられたようだな」
「よくなる方法はありますか?」
「こんなに小さいと解毒剤自体が劇薬で使えんし、自然界では発光苔のテテラウラ種が魔素毒を吸収するのは知られてはいるが、小動物の治癒に使えるわけじゃない。可哀想だが自然界で動けない個体は生きられない。これは自然の
そう言われて勝手にトカゲを殺されそうなり、私は咄嗟にシャーレを奪い返してトカゲを守りたいと考えた。
菌植物チームの引率教授の言ったことはわかる。けれど、助けたいという気持ちが大きかった。
私が師事する教授からも「自然のままに」と諭されたが、ちょうど研究室でテテラウラの魔素吸収の経過観察をしている最中だったため、言い逃れだと自分に突っ込みながら、苦しむトカゲをその経過観察中のテテラウラでの魔毒素の実験個体にしたいと提案した。
生き物にしてみればとても残酷なことで、こうした実験は生き物への残酷だと非難されることもあり、実例に接する機会は多くない。
私の提案を受けて、教授と准教授クラスの面々が協議してくれて、森を管轄する管理所に打診してくれることになった。
フィールドワークの観察対象としてきたところにも発光苔はあったが、テテラウラ種ではなかったので学院に戻るまでにトカゲの命が潰えたらそれまで。
フィールドワークについていた管理所の人に、持ち出したい動植物、土や石を見せる際、トカゲも出した。死体だと思われた。生きていて実験体に使いたいと伝え、シャーヤラン周辺によくいるクサムラトカゲの子どもだろうと鑑定され、持ち出しの許可をもらえて学院に戻ることができた。
学院の研究室で観察生育しているテテラウラ種の苔を分けて、別の水槽に苔を部分的に敷き詰め、トカゲの体温が下がらないよう苔から離れた対角線に小さい人工温石を設置してトカゲを近くに置く。
学院に帰ってくるまでスポイトで水や薄めた果物の汁などを与えていたが、餌になりそうな虫を与えても食べられなくて、よく三日間生き延びたと思った。
クサムラトカゲの生態を調べてみたり、爬虫類研究室に相談してミルワーム粉を分けてもらって薄めた果実の汁に少し混ぜてみたりした。
発光苔のテテラウラ種は比較的生育させやすいが、果実水やトカゲの排泄物で汚れたままだと枯れてしまうので毎日水洗い。
二十四日間、つきっきりで観察兼看病した。
二十五日目の昼過ぎの観察で、スポイトでミルワーム粉が僅かに入っている水を与えていたら、トカゲがスポイトの口をそっと噛んだ。初めてのことだった。
「チビ? チビ、今、スポイト噛んだよね? 噛んだー! 噛んだよー! あ、水じゃなくてワーム食べてみる? え、え、生と乾燥どっちがいいだろ? どっちも与えてみる?」
その頃には勝手にチビと名付けて呼ぶほどになっていた。
爬虫類研究室に駆け込んで一番小さいミルワームの生きたものと乾燥したものを貰って、チビに与えてみたら、生きたほうは駄目だったが、乾燥したミルワームを四等分にした欠片を時間をかけて食べた。
テテラウラ種の苔に含まれる魔素毒を測ると僅かに増えていて、チビを寝かせず通常生育しているシャーレの苔は二十五日前とぜんぜん変わりがない。
「呼気からも魔素毒は排出されているけど、めっちゃ微量。やっぱりおしっこからの魔毒素排出は多いから、チビ、よくなるようにもっとおしっこしよ? うんち出して? ん? もうちょっと食べられる? リンゴの汁もあるよ?」
なんとか起き上がろうとしてくたばるチビが健気で、浮かれて食用花を買ってきてチビに与えてみたりした。食べられなかったけれど前脚で花びらを握って寝ている姿を見て、涙が出そうだった。
チビと名付けているけれど、この国では愛玩目的の動物飼育は法律で禁止されている。トカゲを実験体として所有しているが、実験が終わったら殺処分か、再許可を得て自然に戻すかの二択。微かな望みをかけて助けたのに殺処分なんて嫌だ。
元気になったら自然に返したい。生態系の維持も踏まえて、拾ってきたシャーヤランの森に戻す許可を何がなんでもの取ろうと考えた。
「そのときに困るのは旅費だよな〜」
フィールドワーク体験の費用はほぼ補助だが、一万ウルダーは払わないとならなくて、苦学生のわたしはどうにかこうにか工面したばかり。親に頼りたくない気持ちとバイトを増やすと研究が疎かになる葛藤。
「ま、いっか。なんとかなるだろ。チビ元気になってね。シャーヤランに戻してあげるからね」
スポイトを噛んでからチビが走り回れるほど元気になるまで、それから半月くらいかかった。
チビをシャーヤランの森に戻さねばと行き来の船代稼ぎの捻出も開始。最短三ヶ月間目標でバイトを増やし、その間にチビをシャーヤランの森に戻したいと五回申請しての差し戻し却下を受けたが、粘って六回目で許可を得た。
私は教授の手伝いバイトと学院外の喫茶店バイトに明け暮れ、食費を切り詰め過ぎて倒れたときはめちゃくちゃ怒られた。
理由を知った教授と先輩たちに呆れられ、「利子はつけないし、返済期限も決めないから、儂が貸すから食費を切り詰めるのは止めなさい」と教授がお金を出してくれる約束になった。
点滴を受けてヨロヨロと学院寮に戻ってチビに報告したら、チョロチョロと私の前を何度も行き来していたのが、なんだかオロオロしているようで可愛かった。
シャーヤランに行くにしても、とにかく体調を戻せと言われ、教授と先輩とバイト先の方々に会うと「食ったか?」と食え食え
体調も回復していざ行こうと思えば、シャーヤランの観光繁忙期の夏で船代がめちゃくちゃ高く、宿がぜんぜん取れない。
単純計算だと朝一番便に乗って、最終便で帰れれば日帰り可能だが、学院の寮から発着場までの移動時間を考えると朝一番便に間に合わないし、最終便で帰ってきても寮に帰りつけない。つまり日帰りは無理。シャーヤランに泊まるか、首都の発着場近くで一泊となる。夏の時期なので宿も一杯。船代よりも高い超高級ホテルしか空室がなく、教授に借りる金額を大きくしたくない。我、苦学生なり、安宿を求む。
「夏の終わり秋に入る頃なら往復で五万ウルダーが最安かー。冬まで引き伸ばしてもまた上がるー。くぅ! さすが原始の森で人気のシャーヤランだなー。素泊まりなのに八千ウルダー? んー、んー、でも冬も値上がるし、このあたりか。雑魚寝のシェア宿のキャンセル枠があればなー。そう考えるとあのフィールドワーク参加費用が諸々全部込みで一万ウルダーだけの支払いでよかったのは本当に破格だったわ。最低五年はレポート提出だけど」
ぶつぶつと独り言を言って情報端末を枕にポイッと放置したら、チビがチョロチョロ窓の外を見ていた。元気になってから虫を取ったりし始めたので、餌を取りに行きたい催促だとわかった。
「チビ、餌取り行く? 中庭行こっか」
手のひらを差し出すと登ってくるほど懐いてしまった愛くるしいチビ。
シャーヤランの森に戻す申請で何度も差し戻しを受けた際、特例の飼育申請を出してみようかとも考えたが却下確実だと言われて森に帰すことを粘りに粘った。
チビがシャーヤランの森に戻っても、ヘビや鳥などの他の動物に捕食される可能性だってある。いた場所に戻すなんて言うだけの綺麗事。単なるエゴだ。
実験に使って殺処分しなければならない研究もある。私も教授の下で研究生になってそういうことも理解している。
それでもチビに対してはどうしても抵抗があった。
それにしてもトカゲにこんなに懐かれるとは思わなかった。外に出しても私の見える範囲しか動かず、ちゃんと私のところに戻って来る。クラムラトカゲの生態を何回読んでもそこまで知能が高いとは書いてないので、不思議だったがあまり気にしていなかった。
元気になったくらいのときにクサムラトカゲが懐くことをおかしいと思い、生物再鑑定したら大騒ぎにならなかったのかもしれない。
学院の寮から外に出て、昼過ぎの中庭にいる学生はまばら。普通の学生は授業中の時間だ。私はがむしゃらに基本単位を取るために頑張り、飛び級試験を受けて、早々に選択専門課程の授業しかない研究生になったのでけっこう自由。
中庭を見回してチビが捕食できる虫がいそうな花壇を見繕う。
「虫いるかな? って、チビどこ行くの? そっちは何もないよー?」
花壇にある背の低い木の上に降ろしたチビが花壇から飛び出し、ピョーッと走って中庭広場に走っていってしまったのでチビを追いかけた次の瞬間、目の前が真っ白に光った気がして咄嗟に両腕で頭と顔を庇った。その直後、極太の枝のようなものが脇腹にあたってきた感覚に驚き、足の裏が地面から離れたことにも驚き、顔を庇った腕の隙間から見えた鋭い牙と赤い口内に思考が一時停止。
「やっと戻れたー! リリカー! ありがとー!」
「ッ! ッ!」
ベロンと舐められ、あまりの恐怖に悲鳴すら出せず、中庭にまばらにいた学生の叫び声と悲鳴──
巨大竜現る。
本当に大騒ぎだったな。
管理所第十五エリアの洞窟前でチビに出会った……というか拾ったというか、残酷にも実験体として連れ帰ったことを思い出す。
全部ひっくるめてチビは許してくれている。
妖獣のチビは異能を使い切って次の体を作る間、クサムラトカゲの姿に化けて森に潜みながら、次はどんな姿になろうかと思案している最中、魔毒素を多く含むキノコってどんな味なんだろうと興味本位で食べてしまった。新しい姿の体を作るために異能のほぼすべてをそちらの構築に使っていて、化けた体は化けた姿に引きづられて非常に弱く、うっかり死にそうになっていたと知ったときは「なんで毒キノコと知っていたのに食べるかな?」と思った私は悪くないと思う。オニキスやフェフェ、キィちゃんもチビが死にかけていたときの話を知ったら、「馬鹿なのか?」と容赦がなかった。
そんな馬鹿げたことをしでかして死にかけていたチビのところに現れたのが私。私が近づいたときに逃げなかったのは、「相棒にしてもいいニンゲンだ!」とピンと来たのだという。人の話も全部聞こえて理解して、私の戸惑いなどから助けてくれる予感がしたから身を任せた。「握り潰されたり、踏み潰されたり、切り刻まれる実験になるなら逃げていたけど、テテラウラの苔の話ししてたし、助けてもらえる方向だったから逃げなかったの。スポイトでごはんを色々考えてくれてすっごい嬉しかったー!」と言われた。
そのチビは、今、随分と離れた場所でセイから雑草駆除の指導を受けている。巨体を屈ませていたと思えば、ボコリと大きな土の塊が空を舞い、セイとナタリオさんが項垂れている姿も見えた。チビがまた畑を荒らしてすみません。
チビ自身、細かな異能制御が得意ではない自覚があり、でも私と生きていくならできたことを増やそうと自分から指導を受けに行く努力家。
私も頑張らねば。
管理所第十五エリアの洞窟に行きたいのは事実。あそこに発光苔があるのはフィールドワーク体験の際に見たので知っている。そして、今あの洞窟の苔を観察対象にしている管理所研究職員はいないから、私の研究領域として申請したいのだ。そのためには「行くことができる」ことが必要だと言われた。
十メートル以上の上空に浮上するのは上級ライセンスが必要だが、元々いる場所から十メートル以上を下降するのは中級ライセンスの訓練範囲。
管理所第十五エリアの洞窟へ行くルートには階段上の崖のような斜面をいくつも超える。浮遊バイクの中級ライセンスがあるとその階段状の崖を
「コロンボンさん、もう一回お願いします。あの洞窟、私のものにしたいんです」
「あの十五エリアの洞窟をほしがるなんて珍しいなと思ったけど、研究の専門が苔って聞いたら納得かな。オニキス、風の方向をもう少し不規則にしてもらっていいか?」
「さっきキィが乱入してきたときの乱れ方にするか?」
「あそこまで強くなくていいかな。三段階くらいで訓練レベル分けたほうがよさそうだ」
「承知した」
「じゃ、リリカさん、さっきと同じで五メートル浮上したら待機。旋回して気流計を意識して。あー、キィちゃんは乱入しないで応援だけにしてくれな?」
「つまんなーい。けど、リリカ頑張れ~」
気合を入れて浮遊バイクを起動とともに垂直に浮上。
オニキスにいつ風をぶつけられるかは予測不能。気流計をしっかりと見る。
気流計に動きがあったのを視認したのと同時に風が叩きつけてきた。実際の現場では地形などから予測して瞬時に対応となるが、平地なのにいびつな地形で起きる乱気流訓練は予測が難しい。だから気流計と瞬時の対応力が身につく面もあるのかもしれない。
何度か繰り返して休憩。
前回の訓練時に合格圏内に達していなかった手動操作は、部分的に定期訓練の条件付きなら合格圏内になりそうで、これは新しく買った浮遊バイクの車体が重めで、普段の低空飛行走行を手動操作で慣らしているのがよかったようだ。トウマのアドバイスは正しかった。
今日以降のあと四日間で気流計などの計測器への意識が課題。低空飛行中は気流計なんてぜんぜん見ず、目視判断でも問題がなかったが、五メートル上空を走行するのは地面スレスレと走行しているのとはぜんぜん変わってくる。
「最悪、条件付き合格に漕ぎつけられれば、その後はトウマや俺とかでもいいけど、上級ライセンス所持者に習って慣らすのもありだから。今回は絶対に採点を落とせないところを確実に訓練しよう」
「よろしくお願いします!」
「コロンボンは教えるのがうまいから今のうちにがっちり教えてもらっとけー」
バイクの車体を分解して私のことはぜんぜん見ていないのに話だけは聞いているトウマ。
「……あのさ、こんなこと聞くのも何だけど、君たち付き合っているんだよね?」
「……多分?」
「付き合ってるぞー。なんで『多分』なんだ、こら」
付き合っている彼女を放置で、バイク整備にのめり込んでいるのは誰だ、こら。
でも、トウマが付き合ってるとしっかり言ってくれたのは初めてだ。顔がニヨニヨしてしまう。
あ、そうだ。腹いせに今日のお昼はトウマに奢ってもらおう、そうしよう。
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