4.ブレない私
暑い。とても暑い。
ここシャーヤラン領南部の初夏の雨季が終わってしまった。報道で今夏の雨季明けは早かったと言っていた。そして中期予報で、今年の夏は長く、涼しくなるのは遅そうだと。
なんだとー。
去って行った雨季に戻ってこいとは言わないが、秋は早く来てほしいと思ってしまう。
朝からギラギラの太陽光線。
ぷかぷか浮かぶ白い雲。
澄んだ青空。
昨日までの曇天が恋しい。
「おおおっ! 本当にすまなかったあああッ!」
「すまなかったあああッ!」
オパールたちと
いい光景だが、もう十数分この調子。そろそろ暑苦しい。おもに私兵さんが。
オパールたちが妊娠していたとわかった騒動から三日目。
採集隊のいるところと行き来している物資補給船が戻り、オパールたちの番の妖獣と、やんごとなき方々の私兵数名と、ついでに所長も帰還してきた。
オパールたちは双子で、番も双子で、ここに来た私兵さんも双子。双子がここまで揃う凄い確率を誰か計算してくれないか。
オパールたちの番の妖獣はフクロウに似ていた。
感動の再会の場に立ち合い、馬に似た姿のオパールたちとフクロウにしか見えない番が、どうやって妊娠したのか疑問符をぶっ飛ばしたのは言うまでもない。私の頭の中が疑問符で埋め尽くされていたのはバレバレで、リーダーに妖獣はそもそも雌雄がなく性交渉はないと教えてもらった。
お互いの異能を混ぜ合わせて新しい命を宿す担当が、一時的に人で言うところの
「妖獣同士の繁殖自体が珍しいからな」
若干疲れ気味のリーダーが大あくびしながら私の疑問に答えてくれた。
私は小さなトカゲだったチビが、突如巨大な竜になってから、必要に迫られて妖獣について詳しく学び始めて二年と少し。知らないこともまだ多い。
妖獣世話班のリーダーも稀に妖獣も妊娠するという知識だけはあったが、実際に妊娠している妖獣と接するのはオパールたちが初めてなのだという。
昨日リーダー室に籠城して出てこなかったのは、情報端末で国立図書館の書物を検索しまくり、各地の管理所で妖獣の世話をしている部隊に問い合わせて、妊娠している妖獣の世話の注意点などを聞きまくったりしていたそうだ。なかなか情報は少なく、むしろ今回の世話の内容をレポートにしろと依頼されたとボヤきつつも、どこか嬉しそう。
しかし、昨日何度ノックしても出てこないと思ったらオパールたちのためだった。そんなリーダーの情熱に尊敬しつつ、私の申請した経費を承認してくださいと迫る。いつもは申請したらすぐに次に回してくれるのに、今回なんで遅いんですか! と言いに行ったのに出てこないし!
「その
「単に
「トーマスめ……」
リーダーから見ればトーマスは後輩。マドリーナと結婚する前は妖獣世話班にいたけれど、マドリーナと結婚を機に牧場へ。
今現在で妖獣世話班のメンバーではない者の言うことは信用するなと言うけれど、何かわからないことがあったらトーマスに習えと言ったのもリーダーですが。
リーダー、そろ~と視線を外さないでほしい。
トーマスが大型妖獣に助けを乞うために必要とした物品は経費になると言ったので!
あの言葉は牧場の従業員が数名聞いてますので!
はい、承認してください!
などと、リーダーに経費承認をゴリ押ししていたら、感動の再会もようやく落ち着いた。
「お二人とも船でも食べておられませんし、軽くでも何か腹に入れましょう」
「申し訳ない」
「ありがとうございます」
管理所に帰還してどこか晴れ晴れとした顔の所長がとりなし、山小屋の側にある泉の横に張ったテントで野外ランチ。
オパールたちが悪阻の不調でぐったり動けず、番と私兵さんにこの場まで来てもらったのだ。関係者以外立ち入り禁止の区域になるが、所長が許可したなら大丈夫なんだろう。
妖獣は暑かろうが寒かろうが異能で温度管理する。しかし、今のオパールたちは異能も乱れてうまく調整できないらしい。暑さに耐えかねドボーンと泉に飛び込んだかと思えば、ブルブル震えて暖を求めたりする。
十数分前にオパールたちと再会してすぐ、番のフクロウ二匹がせっせと世話をし始めたことで、朝より格段に落ち着いた。
「世話係殿、申し訳ないが青いトマトを……」
「あ、はい、持ってきてもらいますね」
オパール一号がオドオドしながらでも、声をかけてきてほしいものを言ってくれるのが嬉しい。これまでの警戒を解除してくれて、ようやくの交流なのだ。
「青いトマト?」
「完熟していないトマトです。なぜか一口でいいから噛みつきたくなるそうで」
「美味しくはないよな?」
「齧ってすぐに吐き出します。でもなぜかしばらくの間は落ち着きます」
番のフクロウと私兵さんたちが驚いて訊いてくるのも無理はない。
オパール一号のほうが食べ悪阻が酷く、なおかつ熟していない緑色のトマトを噛りたいと謎なことを言いだしたのは昨日から。
番と再会したけれど、オパール一号はちょっと前から小さい雷を収めきれなくなっているから、異能が不安定になっているのだろう。それでまた齧りたくなったに違いない。
オパール一号の近くに積んでおいたのだが見れば在庫ゼロ。それで声をかけてきたのだ。
菜園に連絡して、未熟なトマトと完熟しているトマトの両方を届けてもらう。ついでに他の収獲した野菜や調理場から他の食材も詰め合わせしてくれるというので、何かは食べてほしい。今日からは番もいることだし、食べられるものが少しでも増えるといい。
番のフクロウたちに保冷ボックスの中の肉を見せて食べたいものを選んでもらう。番が差し出せばちょっとだけ食べるオパールたち。そのちょっとを無理せずに積み重ねて栄養を摂ってくれ。
私兵さんには調理場から届けてもらった料理を所長とリーダーが並べているが、よく言えばバラエティー豊か。正直に言おう、とりとめがない。私兵さんらの好き嫌いがわからなかったので、あれこれ作ってもらって持ってきたのは私だ。私が調理場に取りに行ったときにつまみ食いしてきているのはバレている。どうぞどうぞ、皆様でどうぞ。
「世話係殿、レモンはまだあるかしら?」
「ありますよ〜。原液で? 希釈で?」
「希釈して、その、できれば氷入りで」
「この桶でいいです?」
「ええ、ごめんなさいね」
「いえいえ」
オパール二号とも話しができるようになった。
オパール二号は人の食べ悪阻に近く、酸っぱいものを欲しがち。ならばと愚直にレモン水を試してみたら、気持ち悪くならずに飲めるのでよかったと思う。
サッと番のフクロウが近くにやってきて、私が準備するレモン水を見ていた。
「キィちゃん、氷を作ってもらってもいい?」
「えっへへ〜、ハイ!」
モモンガのような姿の妖獣のキィちゃんは、氷を生成したり、あれこれ凍らすのが得意。特定の相棒はいないが、二百年は管理所に居着いている妖獣だと自分で説明してくれたのは、私がここに採用されてすぐの頃。去年まではキィくんと呼べと言っていたのが、今朝会ったらキィちゃんと呼べと言われたのでその通りにしている。こういう大先輩には逆らわない。
随分長いこと見かけなかったが、旅に出ていたという。自由なキィちゃんである。
今朝、キィちゃんが山小屋にふらっとやってきて、体の中に籠もる熱に唸りまくるオパールたちを見て、まあまあ落ち着きなさいなと氷を作ってくれた。氷をガリガリ齧る様子を見て、キィちゃんにしばらく山小屋付近を活動範囲にしてもらえないかと言ってみたら、仕事の対価としてキィちゃんが満足するまで遊ぶことを求められた。私の代役でチビとオニキスがクタクタになっている。代役ありがとう。
キィちゃんはたくさん遊んでもらったらしくとてもご機嫌で、テントの側にもドカンとバカでかい氷を作り出してくれた。泉の水が原材料だが、今のところ枯渇してないから大丈夫、……だよな?
「世話係殿、レモンの希釈はどれくらいだろうか?」
「今はこの小瓶半分の果汁に対して、桶いっぱいになる水の量です。氷を入れたので水の量はその分減らしましたがかなり薄めです。酸っぱみを求めたら、果汁は足せます」
「そうか。果実から作るとなると何個分だろうか」
「うーん。五個くらいでしょうか。濃縮液を使っていましたが果実を絞ったほうがいいですかね?」
「この液体は大丈夫だが、できるだけ自然に近いものがよいような気がする」
「わかりました」
とても真剣に尋ねてきたオパール二号の番のフクロウは、桶を異能で浮かせて運ぼうとして自分が地面に落ちてしまった。異能封じの魔導具のせいで本来の力が出せないでいる。悔しがっていたが、私が運べる重さなので大丈夫。焦らないで欲しい。
「上からこんにちは! リリカ、先にトマト!」
「速い! ありがとうございます!」
木々の上から浮遊バイク特有のフォーンという音とともに、高度十メートル以上を飛行するときに鳴らさないといけないピコンピコンという音が聞こえてきたと思えば、菜園で見かける職員が高速でトマトを持ってきて、とんぼ返りで去っていった。
オパール一号の謎のトマト齧りは共有してあるので、急いで配達してくれたらしい。ありがたい。
オパール一号の口元にトマトを置く。ここから番のフクロウに任せた。未熟なトマトを齧ったあとの口直しが完熟トマト。オパール一号が落ち着いたら、何か食べられないか聞いて欲しい。ほとんど食べられなくて肋骨が浮いて見えてきていて心配なのだ。あれこれ用意はしてあるからとフクロウたちに声をかけて、所長たちのいるテーブルに向かった。
チビがチビよりデカい氷に抱きついているが放置でいいだろう。オニキスも同様だ。
……それにしても本当にデカい氷だな。泉の水、枯らさないでね? キィちゃん加減はしてね?
テーブルに並んでいたとりとめのない料理は、まあまあなくなっていた。残ったものは夕食の惣菜としてありがたく私がいただく。
「コストゥ殿、カレイドとカロンへのきめ細やかな対応に感謝する」
「感謝する」
「あぅ、え、その、いえ、仕事ですし」
席に着いた途端、私兵さん二人に礼を言われたが、あれこれ妖獣の世話をするのが私の仕事。それでもこうして感謝されると嬉しい。
「あの、この管理所にはコストゥの家名が多いので、リリカと呼んでください」
私の家名コストゥは、この国で一番多い家名なんじゃないかと思うほど多い。隣に座るリーダーも、トーマスの前の姓も、研究職二人も臨時で来てくれる医務員さんもコストゥ姓。全員親戚関係ではまったくない。
「では、リリカ嬢」
「じ、じょ……う……」
慣れねぇ!
「ぶふっ」
リーダー笑うな!
「リリカ殿でよろしいか?」
「はい、よろしいです、はい」
「リリカ、落ち着け」
所長も笑わないで!
リリカ嬢なんて呼ばれ慣れなくてドキドキしちゃった。
パッと見だと判別しにくいほどよく似た双子の私兵さんは、ニコラさんとモルガンさん。
私たちは仮名でオパール一号、二号と呼んでいるけれど、カレイドとカロンというのが、その昔に二匹が認めた者が呼んでいた名前だという。妖獣自身から名前呼びの許可をもらってないので私はそう呼べないけど。
オパール一号がカレルド。番はピサラ。
オパール二号のカロン。番はカッサラ。
番となるフクロウたちからも名前呼びは拒否された。どう呼ぼうか悩む。フクロウ一号、フクロウ二号でもいいだろうか。
所長とリーダーをチラリと見ると、二人の話を聞けと目で叱られた。ハイ、半分はオパールたちから聞いてもう知っているんですけど、『人から聞いた』が必要でしたね。
真面目な顔をして、ニコラさんとモルガンさんの話しを聞く。
「先々代の意思を受け継ぎ、我が家はカレルドとカロンを護ることを使命としてきましたが、当代の側に置くのはもう無理だと判断したのです」
妖獣の鱗や角、牙などは宝飾品として高値で取引されてきた。脱皮や生え変わりのものなら問題ないが、カレルドとカロンの鱗は私たちがオパールに例えたように美しい。無理矢理に鱗を剥ぎ取ろうと考える愚か者はいるものだ。普通なら返り討ちに遭うだけだけど例外もある。
「異能封じか」
「強力な魔導具ではない聞いていたため、重要視していなかった我々が間違っていました」
「ピサラとカッサラの力があれほど封じられてしまうとは思わなかったのです」
「番を人質にして、オパールたちに言うことを聞かせる。ロクデナシの見本だね」
「お恥ずかしい話です」
所長の穏やかな合いの手がとっても怖い。
それにしても聞いているだけでムカムカする話しだった。
ニコラさんとモルガンさんが仕える現当主はわかりやすく金の亡者。そんな当主が異能封じという特殊な魔導具を手にしたら悪いことに使うに決まっている。そして、本当に悪いことに使ってた。
オパールたちは番の身を守るために鱗を剥ぎ取られていた。血だらけになりながら耐えていたのだと。
「クソかな」
「リリカ、言葉遣い」
「すみません……」
所長が断固拒否の姿勢だった採集依頼を、何がなんでも決行させるように水面下で仕向けたのが、ニコラさんやモルガンさんたちオパールを助けようと動いていた人たち。その裏に陛下もいたというから、採集の裏事情はなかなか複雑だった。
とにかく当主からオパールたちを離す突破口を作りたかったのだという。
「カレルドとカロンの飛翔能力がなければ難しい採集の話をして、希少な花の蜜で得られる金に目を眩ませました」
妖獣の鱗はそんなに短期間に生え変わらない。だから無理矢理剥ぎ取った大量の鱗を大放出して大稼ぎすることができず、計画通りいかなくて苛立っていた当主に、妖獣の異能を使って稼ぐことを囁いたのは当主の妹だという。
「妹さんはまともなんですね」
「彼女が当主になればと願っていたのですが、叶いませんでした」
ピサラとカッサラは魔導具の異能封じの力でねじ伏せられ、無理矢理に当主と相棒契約を結ばれている。
本来、相棒契約は妖獣が認めて成り立つ契約。人から契約できるものではない。妖獣が認めていないものと契約するのは苦痛でしかないという。相棒契約は妖獣主体なのでいつでも解錠できるが、魔導具で縛られていて何度となく苦痛を与えられ、間接的に捉えられているオパールたちに何をされるかわからない不安から相棒契約を解除できずにいた。
とにかく当主と妖獣を離す機会はないものか。
なかなか妙案はなかった。
いくつか出た案を水面下で根回し続け、動いたのが今回の採集依頼だったクリスタルフラワーの蜜の採集。破れかぶれで辻褄の合わない案のつなぎ合わせだったので、当主に悟られるとボツになりかけていたものだった。
「こちらにおられる妖獣でとても飛翔能力のある妖獣が大怪我をしたと聞き、依頼が受理されるようゴリ押ししました」
「花の蜜にはカレルドとカロンが必要だと説き伏せ連れ出すことに成功しました」
「当主はピサラとカッサラと相棒契約しているので、採集に同行させればつぶさに状況がわかるでしょうと言い」
「ピサラとカッサラも離すことができました」
奇跡かと。
あとはタイミングを見計らって野生に還らせることができれば、自分たちも逃げよう。そう考えていたが、この管理所に着いてからオパールたちの様子がとてもおかしい。
それに当主もそこまで馬鹿じゃない。ニコラさんやモルガンさんを監視する人を私兵に紛れ込ませていたので、採集隊を監視する私兵間で監視しあう奇妙な日々。ニコラさんとモルガンさんが監視することに全力で他のことをしないと言われていたが、要は腹の探り合いだった。
野生に還すとしても足枷となったのが、ピサラとカッサラにかけられた異能封じの魔導具の存在。当主の側で魔導具の破壊または奪取の計画は遅々として進まず、誰が味方で、誰は敵なのか。何を演じ続けるのが正解なのかもわからなくなりかけていたらしい。
もうため息。
当初は当主もこの採集に同行してくる予定だったが、首都で陛下主催のパーティーに招待されたので来ていない。無論そちらも仕込みのこと。
オパールたちにボロ泣きされた日に概要は聞いていたけど、馬鹿馬鹿しいというか、なんというか。
ニコラさんとモルガンさん、ピサラとカッサラが知らなかったのは、オパールたちが妊娠していたこと。
番としばらく離れ離れとなる覚悟をした日、お互いに異能を流しあって別れを惜しんだ。体の中に残る番の異能を長く自分の中に留めようとして、それが妊娠に繋がった。そう願っていたわけではないのだと言うが、生命の誕生とは不思議なものだ。
番が採集隊とともに連れて行かれ、その後にオパールたちは自分たちが妊娠したと気付くものの、私たちに言い出せなかった。
言えばピサラとカッサラにも伝わってしまう。そうすると計画が狂う。
ニコラさんとモルガンさんも自分たちを優先させてさらなる無茶をしてしまいかねない。
どこまで計画が進んでいるのかもわからない。ニコラさんとモルガンさんたちの仲間の逃亡の道筋などもできているのか。
オパールたちは賢く、また優しかった。
人は人を簡単に殺める。
ぐるぐると考えて、言えなかった。
相手を思う気持ちの掛け違いみたいな状況に陥っていたのだ。
陛下まで呼び出した会議のあと、当主にもオパールたちが妊娠していることは伝わっている。絶対ろくでもないことしか考えてないだろうことも予想できる。
「それでこれからどうするんですか?」
「もう簡単に行こう。陛下に当主交代の命令を下してもらうさ」
素朴な私の疑問に所長が答えてくれた。わかりやすく、真っ当な方法。陛下も裏で採集依頼に噛んでいたから、いくつも用意したシナリオのなかで、鉄槌を下すことも織り込み済みだろう。穏便に済ませたかったみたいだけど。
「そうですね。変な画策はやめましょう。先にあらかたオパールたちに話は聞いていたんですが、内部告発の手紙でもよかったのではと思ってしまいましたよ」
「内部告発を送った先に敵がいないとも限りません」
「当主の『目』や『耳』がどこにあるか、それが不安でできませんでした」
リーダーの疑問へ答えてくれたニコラさんもモルガンさんの言葉がいう意味がオソロシイ。
改めて思う。貴族の世界オソロシイ。
オパールたちがニコラさんたちが逃げる手立てを整えたのか心配するのも頷ける。
手紙一枚で済んだかどうかは、内部告発する先が真摯に受けとめるかによるから怖かったのはわかる。立てた計画も綱渡りだっただろうし、綻びも起きかけていた。オパールたちを正式に保護することに間に合ったからよしとするしかない。
「とりあえず、ピサラとカッサラともう一度話して、当主との相棒契約は解除して繋がりは切ってしまおう。もうバレているだろうしね。魔導具の回収が厄介だが、そちらは陛下にどうにかしてもらおう」
この状況に至ったのだから、所長の言う通りだと思う。
所長が帰ってきたのはこの対応のためだったのか。何で帰ってきたのかなと思っていたけど、陛下との交渉、とってもとっても頑張ってください。ついでに私の経費承認が所長のところまで行ったら、速やかに承認してください。醤を使い切っちゃったから買いたいよぉ。
「……今この場で経費承認の催促を言う度胸は流石がリリカだ。ぶれないな」
「私、口に出てました?」
「『所長頑張って』以降、驚くほど全部ね」
失敗失敗。
まあ、完全解決するまでのオパールたちの日々の世話はお任せを!
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