第7話 生活の中心はワタシではありません
「さて、用がないなら帰るか?」
クロさんがボコボコに凹んだ車にボスンッと飛び乗る。
「ヒ~メ~帰るよ~」
チョビさんがワタシを呼んでいる。
袋に色々と詰め込んでワタシも車に戻った。
食料やら服やらを車に積むだけ積んでワタシはハンドルを握る…。
ふと思った。
「ココで暮らせばいいんじゃない?」
声にして後部シートで丸まっている2匹のネコを見た。
不思議そうな顔でワタシを見ているクロさんとチョビさん。
その表情は「正気か?」そう言っているようであり、事実クロさんはこう言った。
「正気か?ヒメ」
「えっ?なんで?」
「あそこは暮らすとこじゃないぞ」
「そうなの? だって色々、暮らすに便利そうだったよ、色んな物があるし、第一、車で来て戻らなくてもいいんじゃない? ワタシそこそこストレスだよ運転」
「やれやれ…よく考えろよヒメ、ヒトはな土から離れたらダメなんだよ」
(クロさん…ネコじゃん)
「便利さばかりを追い求めた結果、ソレがこの場所だ」
(やはり便利の極地じゃん)
「少し歩いて話そうかヒメ」
ワタシは車を停めてクロさんと少し歩きながら話した。
チョビさんは興味無さそうに車から身を乗り出して街を見ていた。
「裸足になってごらんヒメ」
ワタシはクロさんに言われるがまま裸足になった。
「なっ?ヒメ」
「なにが?」
「地面、熱くない? なんか肉球、火傷しそう」
「………えっ?」
「夏は、ココに住みたくない…肉球熱いから」
「…冬は?」
「適度に雪が降る程度の場所で、コタツの中で暮らす、たまに雪の上を歩いてみたい、すぐ戻るけど」
真顔で話すクロさん。
車に戻って、田舎道を走る。
「ヒ~メ~少し川で遊んでいこうよ~」
チョビさんに言われるがまま河原で涼んで、そこら中に生えている野生のスイカを冷やして食べた。
思えば城から出て暮らすなんて考えたことなかったな~。
「暮らしやすい場所で暮らすか…」
そんな感じでワタシは今も、この地を巡っているのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます