第8話 水を愉しむらしい
「ヒ~メ~暑いときはね水にはいるんだよ~」
野生のスイカをシャクシャク食べているワタシにチョビさんが話しかけてきた。
「川遊びのこと?」
「川でも海でもプールでも」
「プール?」
川も海も知っているがプールとは?
「なんかこうね~水入れて……」
チョビさんが説明に困る。
「買うか?ヒメ」
クロさんが軒下の日陰からノソッと這い出して来た。
なんだか知らないが『プール』なるものを買いにワタシ達は街へ向かったのである。
「どうせならデカい車で行けばいいのに~」
運転に自身が持てないので、もっぱら軽自動車を利用しているワタシ。
どうも猫にとっても軽自動車は狭いらしい。
「高級車も、いっぱい転がっているのにな…ヒメの運転技術が追い付いていないばっかりに…」
クロさんが嘆く。
猫に嘆かれるワタシって?
いつもの街、乱立する塔に入り『プール』なのものを探す。
「コレだヒメ、そしてコレも必要になる」
クロさんが早々に前足で箱をカキカキした。
「後は水着がいるよ」
チョビさんの案内で水着なる服も手に入れた。
また車で田舎の方へ戻り、空気入れなる道具でシュコ…シュコと円形のプールなるものを膨らます。
「疲れた…ツライ…涼しくなるまえに汗が止まらない…倒れそう」
「ヒ~メ~、まだ半分も膨らんでないよ~」
ワタシは休み休み、膨らました。
頑張って膨らみ切る頃には遊ぼうなどとミジンコ程にも思えないくらい疲れた。
クロさんに言われるがままに水を張り、ワタシも水着なる服に着替えることにした。
「なんか涼しい~」
チョビさんとクロさんは、早々にプールの水に足を突っ込んで涼んでいる。
「ヒ~メ~早くしなよ、水がぬるくなるよ~」
チョビさんが端を前足でパシパシ叩いた…。
思えば不幸な事故だった。
プシュー……。
うっかり爪を立てたチョビさん穴をあけてしまい空気が抜けた。
ワタシが着替えて戻る頃にはズブ濡れた猫2匹が水たまりのなかに突っ立っていた。
「スマンなヒメ…」
ワタシの苦労は彼らの為にある。
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