第6話 楽しみ方が解りません

「ヒメ…車ボコボコのガリガリだな…」

「僕…気持ち悪い…」

 目的地には着いた。

 チョビさんは酔った。

 その間に色々な出来事があった。

 自動車はおしゃべりだ。

 右だとか左だとか案内だけでなく、ご苦労様とか労ってくる。

「ご苦労?そう思うなら、自分で走ってほしい…」

 そう自動車は喋るだけで、動かすのはワタシなのだ。

「とりあえずヒメ、ドア開けて」

「僕…吐きそう…」

 車から降りてチョビさんが落ち着くのを待って、ワタシ達は大きな塔に入った。

「ヒ~メ~、ここなら色んな服が置いてあるよ」

「そうだな、好き勝手に選ぶがいい、その前にご飯を用意していくといい」

 この塔の階段は自動で動く。

「エスカレーターって言うんだよ、アッチのはエレベーター」

 チョビさんが教えてくれた。

 これなら鎧に身を包んだ騎士も楽に登ることができるだろう。

「便利なものだ」

 エレベーターは最初怖かったが、意味もなく何度も往復してしまった。


 しかし、この塔は高く、服やら靴やらが詰め込まれている。

 独りでグルグル歩くだけで疲れる。

「とんでもねぇ規模の倉庫だな…どんな商人が管理しているのか?」

 かなりの商才の持ち主だったのだろう。


 適当に何着か選んで入口に戻った。

 大分迷ったが。

「やっと帰ってきた、僕飽きてきたから帰ろう」

「そうだな、そろそろ夜ご飯だヒメ、そこらの店で飯を食おう」

 この辺りは相当の人が暮らしていたのだろうか?

 にしては生活感を感じないのだが…。


「僕、あんまりこの辺好きじゃないな、ゴミゴミしてて」

「そうだな、落ち着かない場所だな…」

 猫にとって、この辺りは住みにくかったのかもしれない。

 いつものように缶詰を開けて水を皿に注いで夕ご飯の準備をする。

 ワタシは今日『牛丼』なるものを食べた。

「ご飯に何かを乗せて食べたのは初めてだ…」

 シラタキなる食べ物は最初、虫かと思ってゾワッとした。

 美味しかった。


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