第757話 やることを思い出したドン爺は強引

ドン爺は貴族街への進出をするこを決める。世話になったハズキ達は人と場所が揃えば後はなんとかなるだろう。


ちょうど良い具合にメガドンジホーテの店舗に利益の匂いを嗅ぎ付けた貴族がちょっかいを出し始めて来た。


「いや、それは・・・」


「これはこの街を治める領主の命令である、さっさと製法を教えろっ」


「どうしたのじゃ?」


「あ、ドン爺」


「なんだ貴様は?」


「ワシは商会の代表をしておるものじゃ。貴様らこそなんじゃっ、店先で大きな声を出しおって。他の客に迷惑じゃろがっ」


「何様の分際でかような物言いをしておるのかっ。無礼打ちにするぞっ」


「ほう、ワシを斬るというのか? 面白いの。やってみるがよい。その代わりワシを斬ると魂が一気に汚れるぞ。そうなればワシも容赦はせぬ。人を斬る時は自分も殺される覚悟で斬ってみよ」


ドン爺は王の威圧を放ちながら領主の使いにニヤッと笑いながらそう言う。


威圧にたじろぐ使いの者達。


「どうせ貴様らは庶民が考え出した珍しい物を掠め取ろうとしておるのじゃろ。ろくでも無い領主じゃの。ちと領主の元へ案内せよ。ワシが説教をしてやるでの」


「な、何を申しておるのか・・・ 貴様ら庶民を領主様に会わせろなどと」


「カーーーーーッ!」


ドン爺は食い気味に更に威圧を放つ。


「ぐたぐだ抜かすで無いっ! さっさと案内せぬかっ!」


ビクッ


「くっ、この爺を連行しろっ」


使者は従者にドン爺を連行しろと命令する。


「ド、ドン爺・・・」


「ハヅキよ、心配するでない。暫くは戻らぬが次に会うときはワシは王になっておるであろう。商会の人と場所は手配済みじゃ。やることは事務の従業員に伝えてあるでの。メガン、お前がここの代表をやるのじゃ。細かい事務作業は他の奴に任せてお前は指示だしだけすればよい」


「なんでワシが・・・」


「メガンが一番長生きするじゃろ。末永くこの商会を発展させていくのじゃ。良いな」


「さっさと来いジジイッ」


ギロンっ


ドン爺は従者を一睨みし、静かに話す。


「貴様ら、ワシに無礼を働くと神罰が下るぞ。次は無いものと思え」


ビクッ


「じゃ、皆達者での」


そう言ってドン爺は馬車に乗り込んで行った。


「どうしよう、ホーテン。ドン爺が連れて行かれちゃったよ」


「ドン爺が次に会うときは王になるとか言ってなかった?」


「そんなの私達を心配させない為の嘘に決まってるじゃないっ」


「いや、わからんぞ。ドン爺は本気だったんじゃ。じゃから自分がいなくなっても問題ないようにしておったのではないか?」


「え?」


「事務方に伝えてあると言うておったじゃろ? ワシはどこまで準備をしてあるのか確認してくるわい」



庶民街の領主の元に連れて行かれたというか案内させたドン爺。


「貴様が偉そうな口を叩いたじじいか。使者を脅したそうだな」


「無礼な振る舞いをするからじゃ。貴様の所の税を増やしてやってるのじゃ。まず礼を述べるのが先であろ?」


「税を支払うのは義務だっ! なぜ礼を言わねばならんのだっ」


「では貴様は税を増やすために何をしたか申してみよっ。お前は領主として何をしたんじゃっ」


「領主に向かってその口の・・・」


「カーーーーーッ! 早く答えぬかっ。貴様は領主として何をしたのか言えと言うておるじゃろうがっ!」


遺憾無く威圧を放つドン爺。


「くっ、貴様っ・・・」


「答えられぬであろうがっ。何も成してないものが身分を盾に偉そうな口をきくでないっ! 貴族とは、領主とは何をするものか言うてみよっ」


「ええーい、うるさいっ。こんな無礼な奴は無礼打ちにして」


「カーーーーーッ! 黙れいっ! そこへ座れっ!」


「なっ、何を」


「座らぬかっ!」


ドン爺は領主に正座をさせてこんこんと説教をした。


「良いかっ、領主ともあろうものが領民が苦労して考え出した物を掠め取ろうとするとは何事じゃっ。立場が逆であろうがっ。領主は領民を導き、豊かに暮らせるようにするためのものじゃっ。それを貴様は・・・」


ドン爺は自分で言っててどんどんヒートアップしていく。


「そこの者っ、剣を貸せっ。こんなろくでもない領主などおらん方が国の為じゃっ。ワシが手打ちにしてくれるっ」


「お、お止め下さいっ」


「貴様も同罪か?」


威圧を放ちながら兵士にすごむドン爺。


「い、いえっ、その様な・・・」


「他の者にも言うておく。庇いだてするなら同罪じゃ。共に斬られると覚悟せよ。ワシの言うておることと、こやつの日頃の行い、どちらが正しいか心して判断せいっ」


そう言われた兵士は剣をドン爺に差し出した。


「のう、領主よ。お主には言うてもわからんようじゃから、この星には不要じゃ。魂も汚れ始めておるからの。天に還って魂を洗うて来いっ」


ジャッと剣を抜くドン爺。


「待って待ってくれっ」


「待ってくれ? まだ自分が偉いと思うておるからその様な物言いになるのじゃ」


ドン爺は剣を振り上げる。


「待って下さいっ。お待ち下さいっ」


「何を待つのじゃ?」


「やっ、やりますっ。心を入れ替えてやり直しますっ」


「もう良い、ワシが代わりにやってやるから天に還れっ」


「いやぁぁぁぁっっ。まだ死にたくないぃぃぃぃっ」


「父上っ」


領主の叫び声を聞いて子供が飛び込んで来た。


「お主はこやつの息子か?」


「はっ、はい」


「息子よ、このろくでもない領主を見てどう思うのじゃ? 領民が寝ずに働いて努力したものを掠め取ろうとした盗賊みたいなものじゃぞ?」


「父上はそんな事はしませんっ」


「ほう、ならば直接そやつに聞いてみるがよい」


「父上、父上嘘ですよねっ?」


「・・・・・」


「正直に話せ。さもなくばこの子もろとも成敗されると覚悟せよっ」


「この子は何も・・・」


「お主の教育を受けておるじゃろ。お主と同じような考え方になっておるのではないか?」


「いえっ、そのような事はっ」


「ならば正直に話せ。そして反面教師になるのじゃ」


そう言われて領主は子供に自分が何をしてきたのか話した。


「ち、父上・・・」


「うむ、反省の色が見えておるの。では命は助けてやるから領主の座をこの子供に譲るのじゃ。そして正しい領主としてやり直しじゃ」


「はっ、寛大なる処置をありがとうございます」


「うむ」


ドン爺から醸しでるそのオーラは正に王。庶民であるにも関わらず逆らえない領主達はドン爺に下った。


「領主よ、ここの貴族共の役割と組織がどうなってるのか教えるのじゃ」


「は、はいっ」



ふむ、やはりウエストランドとほぼ同じじゃの。押さえねばならんのは軍部じゃな。


ドン爺は急ピッチで国の改革に取り組む為に中心貴族を配下に下らせ、軍部そして王族を解体し、国を作り直そうとしていたのである。


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