第754話 魔族はこっちでやっておく
他は色ガラスの作り方、どの金属がどの色になるかは自分たちで考えて貰うけど、金属の酸化反応で色が変わる事を教え、赤色は難しいと伝えておく。金を混ぜるけれど酸化反応が強いと色が出ないのだ。ドン爺にはそもそも酸化とはからの説明になってしまったが。
後は魔法陣を組むときにピカピカ光るとかでなく、1秒間に3回点滅するとか具体的に文言を組み込む必要があることを説明。温度調整には◯◯度とか具体的に書かれていたのですぐに理解出来るだろう。
各調理器具もなぜこのような仕組みが必要なのか理屈を教えておいた。他はスパイスの種と砂糖大根の種を渡し、植物魔法が使える人に栽培してもらおう。ミーシャが食うからな。
時間を再び動かせ、ドン爺を送った後にラムザゲイルとラムザとでドン爺の星の魔王に会いに行った。
「なんだお前達は?」
「俺はゲイル、こっちはラムザ。ドン爺、ここの神の使いだよ」
「ふんっ、あんな神の事は知らんっ」
「まぁ、そう言うな。お前の事をドン爺が心配しててな、なぜお前がそんな役目になったのか説明しに来たんだ。それに俺達はお前の先輩だからな、話は参考になると思うぞ」
「えっ?」
「ラムザは魔界の魔王。全ての星の魔王でもある。言わば真なる魔王って奴だ。で、俺はラムザの旦那。お前達が言うつがいって奴だな」
「貴様は人ではないのか?」
「この星の魔王よ、ゲイルは魔神。すなわち魔王でも有り、神でもあり、人でもあるのだ。数多の星の中でもこんな存在はゲイルだけだ。我はその妻になり、子を産んだ事で永遠の幸せを手にした」
「どっ、どういうことなの?」
あ、この魔王、素になると普通の女の子みたいだな。それに可愛いし。ドン爺好みだよな・・・ 胸もムホホホホホッだし。
「ん? ゲイル、まさかこの魔王に魅かれたんじゃない・・・よね? 確かにゲイル好みの顔だけど・・・」
ラムザも感情が出ると途端に可愛い口調になる。
「馬鹿だなぁ。俺はラムザ一筋じゃないかっ」
「ゲイルっ」
ムチューーーーーっ
俺達を見て真っ赤になる魔王。
「あ、すまんすまん、ついロマンチックが止まらなくなってしまった」
「い、いや構わぬ・・・」
「あ、それでな、魔王の役割のことなんだが、お前がやってることは人類の救いなんだよ。言わば神の代行って奴だ」
「救い?」
「お前達がいないと人類は争って滅びるんだよ。だからお前達がこの星の平和と発展を握る重要な存在だ。お前をこの星に誕生させたのはドン爺だけど、役割を与えたのはどちらかというと俺だな」
「は?」
「俺達は色々な星に行って直接介入している。争いを起こすような奴は魂が汚れているからそいつを駆除しているんだ。まぁ、人間から見たら問答無用で殺されるから恐怖の対象になっているな。俺は自分でその道を選んだ」
「自ら・・・?」
「初めは辛かったけどな。しかし、俺を生涯守ってくれた仲間にそれは人類への救いだと言われた。それ以上悪さをさせないためのものだと。それからはそう思ってやっている。お前も同じだ。人類から恐怖の対象となることで人類を救ってるんだよ」
「でっ、でも嫌われたくないんだもんっ」
「別に見ず知らずの奴に嫌われてもいいだろ? 寂しいなら俺達が時々遊びに来てやるよ」
「えっ? 遊びに来てくれるの?」
「お前に匹敵する生物はここにおらんからな。魔族の誰かを育てて遊べるぐらいに力を付けてもいいと思うぞ。それまでは時間が掛かるだろうから遊びがてらどんな勇者が来ても殺されないように色々と攻撃魔法を教えたり、戦いの特訓をしてやるよ」
ぐすっ ぐすっ
「本当?」
「な、ラムザ。構わないよな?」
「うむ、初めて出会った他の星の同種であるからな。我も胸を貸してやろう」
という事で、ラムザゲイルとラムザはしばらくこの魔王と遊びがてらここの魔族達の特訓をすることにしたのであった。
「戻ったぞい」
「お帰り・・・」
まだハヅキは拗ねておるのか・・・
ドン爺は魔界で1年以上ゲイルと料理やそのほかの特訓をしていたが、ハヅキにとってはドン爺が出掛けて帰って来るまで3時間ほどしか経ってないので当然だった。
「皆、すまんかった。知りもせん物を作れと言うたのは無謀じゃったな。外を散歩しているうちに色々と思い出してきての。まずはハンバーグとはどのような物か試してみようではないか」
と、ドン爺は包丁で肉を細かくする所から皆に見せて調理を始めた。味付けは塩のみだが。
「これが肉を擂り潰すという奴か?」
「そうじゃ。手でやるのは大変じゃろ? だからこれをもっと簡単に作れる道具が必要なのじゃ」
とようやく出来たミンチと玉ねぎを混ぜあわせて合挽きミンチでハンバーグを成形し、焼いていく。水を掛けてしばし蒸し焼き。棒で少し刺してみて透明な汁がでたら完成。
「ほれ、これがハンバーグじゃ」
皆は一口食べて驚いてから残りをガツガツと食べてしまった。
「ドン爺、これすっごく柔くて美味しいっ」
「じゃろ? ワシの孫もこれが好きだったのじゃ」
あ、ドン爺・・・ もしかして亡くなったお孫さんの好物だったから思い出さないようにしてたんじゃ・・・
「ごっ、ごめんなさいドン爺」
「これっ、何を泣いておるのじゃ?」
「ううん、辛い目に合わせるつもりはなかったの」
あぁ、さっき口喧嘩したことを気に病んでくれておるのか。
「いや、悪かったのはワシじゃ。メガン、機械の仕組みも思い出したから一緒に作ってはくれぬか」
「あぁ、ワシもどういうものを作りたいのかわかったからの。きっちりやらせて貰うわい」
「ホーテン、ワシの説明が悪かったの。ビカピカとはライトが自動的に1秒間に2回とか3回とか光って消える事をいうのじゃ。これなら魔法陣に組み込めるかの?」
「わ、わかった。やってみる」
「ハヅキよ。ガラスにほんの少量金属の粉を混ぜてやると色が着く。どの金属をどれぐらい混ぜるかは色々と試さねばならんがやってみてくれぬか?」
「わかった。金属をいれると色が着くんだね」
「ならワシが工房から色々と金属を持って来てやろう。それで試すのじゃ」
こうしてメガドンジホーテハヅキ店は上手く回り出したのであった。
「おー、これじゃこれじゃ。何とも目立つ看板が出来たの。みな素晴らしい腕前じゃ」
褒めてやらねば人は動かんらの。努力の成果が実った時は褒めねばならん。
「ドン爺、ありがとう。色付きのガラスが作れるようになったから、創作意欲がどんどん沸いてくるよっ」
「なら、ガラスのアクセサリーを作れば良いのではないか? 宝石類みたいに作れば庶民でも買える値段で作れるじゃろ?」
「あっ、そうだねっ」
「ならそれようのショーケースを作らねばならぬな。ホーテンよ、明かりの多いショーケースを作るのじゃ。アクセサリーは光ってる方が見映えがよいからの。メガンは指環とかも作れるのか?」
「いや、あまり得意ではないな。しかし、知り合いにそういうの好きな奴がいるから連れて来るわい。武具の飾りとか作っておるから作れると思うぞ」
「うむ、ではワシはレシピの登録と植物魔法を使えるエルフがおらぬか探しに行くことにするわい」
ドン爺はエルフ集落までテクテク歩いていく。エルフは寿命の違いもあることからどうしても同胞同士で集まる事が多い。そしてこの国ではワイン作りをするエルフが多かった。
「おーい、ちと一緒に仕事をしてくれる者を探しておるのじゃが植物魔法を使える奴はおらぬか?」
「誰だ貴様は?」
「ワシは庶民街の居候でドン爺というものじゃ。珍しい種を色々と持っておるのじゃが育て方がわからん。ここで育ててくれる奴はおらぬか?」
「珍しい種?」
「そうじゃ。飯をぐんと旨くするためのものじゃ。ここでは気候が合わん奴もあるが魔法を使えば育つはずなんじゃ」
どれどれ? とエルフ達が集まりだす。寿命の長いエルフは退屈している者が多く、それが野次馬となる。
「なんだこれは?」
ドン爺は胡椒や唐辛子、山椒、ワサビ、砂糖大根とか色々と説明していく。
「どうやって食べるのだ?」
「これその物は食わぬ、肉や魚の味付けに使うのじゃ。試しに胡椒を育ててくれれば肉で試してみるが良い」
「おいっ、オリーブ。お前がやってみろ」
まだ子供みたいなエルフの女の子か呼ばれて胡椒を育てていく。
ドン爺はそれを潰してエルフ達が持ってきた肉に掛け、塩を振って味付けした。ゲイル譲りのミディアムステーキだ。
「まだ生焼けだぞ?」
「中まで火が通っておるから安心せよ。その方が柔らかく旨いのじゃ」
恐る恐る食べるエルフ達。が、今まで食べていた肉より断然旨く、胡椒で更なる旨さになっていた。
「よし、こちらでやろう。報酬はどうする?」
「折半でどうじゃ? 売り先もこちらで探すからお主達は生産してくれるだけで良いぞ。出来た半分をこちらに貰うというのでどうじゃ? 生産量がもっともっと増えたら取引内容を見直しても構わんしの」
「全部やってくれるのか?」
「エルフは商売が下手じゃろ? 人族相手の商売はワシに任せておけ。そのうち何でも手に入るぐらい儲けさせてやるわい」
「わかった」
「後はここでワインを作っておるじゃろ?安く卸してくれることは可能か? ワシの所でもっとうまい酒に作り変えたいのじゃ」
「酒を作り変える?」
「そうじゃ。ワインの5倍ぐらい酒精の強い酒に作り変えるんじゃ。後は他の穀物からも酒を作る方法を教えてやるから一緒にやらぬか?」
「酒精が強いとはどういうものだ?」
「喉が焼けるような酒じゃ。酒好きはこれを飲んだらもう他の酒が飲めんようになるかもしれんぞ?」
ごくっと唾を飲むエルフ達。退屈をまぎらわすのに酒は持って来いなのだ。
「ワシらは商売を始めたばかりでまだ金がないからの、稼ぎが出たら買いに来るから考えておいてくれ」
「なら、酒を樽で渡すから試しに作ってみてくれ」
「樽のワインが1/5以下に減るが良いか? それで気に入ったなら共同生産でもええがの」
という事でワイン樽をエルフが運んでくれて、酒作りも始まるのであった。
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