第746話 アーノルドのとの対決

アーノルドは飛べるといっても俺やラムザのように自由に飛べるようではないみたいでジャンプする距離が飛躍的に伸びた感じだった。そして着地の時にあちこちに仕掛けられた魔法陣に引っ掛かる。


ブオン


ビタンっ


勢いよくジャンプした瞬間に転送させられその勢いのまま壁にぶつかりカエルアーノルドになる。それを見たアイナは大笑いだ。自分の為に戦ってくれてるってのに酷い女だ・・・


「くっそっ、この土壁めっ」


自爆したアーノルドはムカついて前の土壁を刀で斬ったら爆発した。


ボカンッ


「フギャッ!」


「キャーハッハッハッ。全部読まれてるわよアーノルドっ」


その後も魔法陣を踏んではゴーレムの前に飛ばされ反射的に斬っては爆発に巻き込まれる。それもアイナは大喜びだ。本当に酷い。


まぁ、どれだけやられても死ぬことはないと解っているからなのだろうけど。


死ぬことはないが、実体化しているので肉体は傷付きぼろぼろになっていく。それでも立ち上がるアーノルドにアイナは次第に笑わなくなっていた。



「ねぇ、ラムザ。今どーなってるの?」


「うむ、ゲイルが完全に押している。まだゲイルは自分の魔法すら使ってないからな」


そして、ここでアーノルドは戦法を変えてきた。爆発に巻き込まれるのを承知でゴーレムを殲滅しだしたのだ。


「ヤバイな・・・」


ゲイルはそう呟く。このままではいずれゴーレムがなくなり、直接対決になってしまう。アーノルドは絶対に諦めないだろう。死なない相手には心を折るしか勝ち目はないからな。


ゲイルはようやく自身も参戦した。ゴーレムに攻撃する前に雷を落とす。刀を投げれば落雷を防げるかもしれないが、予備の刀を持たないアーノルドはそれをすることはない。


ビシャーンッと雷がアーノルドを直撃して一瞬動きが止まったあとにゴーレムの強烈な一撃がアーノルドを襲う。ぶっ飛んだアーノルドを更に土魔法でドカンと撃ってやる。通常ならここで動けなくなるはずなのにアーノルドは立ち上がるので、続いてどんどん攻撃していく。


アーノルドを見守るアイナは心配そうな顔をしはじめた。


「クソッ、ゲイルはここまで強くなってやがったのかっ」


アーノルドは想像していたよりもはるかに強くなっていたゲイルに驚愕すると共に嬉しくもあった。


「まさか息子にここまで手も足も出んとはなっ」


そう言ってその場で刀を振ったアーノルド。


スパンっ


「えっ?」


アーノルドが斬撃を放ち、ゲイルの身体を斬りつけた。


ブシュッとゲイルの身体から血飛沫が飛ぶ。


「ぶちょー!」


「めぐみっ、来るなっ」


ゲートから飛び出そうとしためぐみ。ゲイルは自身を治癒してそう叫ぶ。


アーノルドからは遠距離攻撃が無いと油断してしまった。まさかあんな離れた所からこんな攻撃が出来るとは・・・


アーノルドは斬撃を飛ばして攻撃してくる。ほぼ接近戦と変わらない状況になってしまったのでお互いに高速で動きながら攻撃を繰り出す戦いへと変わっていき、刀と魔法の乱れ撃ちへとなっていく。


押していたのが一転、互角の攻防となったことでめぐみ達が声を上げて応援を始めた。


「やっぱり、父さんの全盛期は凄いわ」


どんなのだったのだろう? と思っていたが想像をはるかに凌ぐ強さに惚れ惚れする。そして、この強さはアイナを守る為に手にしたものだと理解した。


「でもね、試合には負ける訳にはいかないんだよ。3人の嫁さんの前でカッコ悪いところを見せる訳にはいかないからね」


「ふんっ、俺もアイナにカッコいいとこ見せなきゃならんのだ。いい加減降参しろっ」


お互いが妻にカッコいいところを見せたいだけの戦いに変わっていく。


なんか、アーノルドとこうやって互角に戦えている自分が誇らしく、そして楽しくなってきた。


そして遠慮せずに攻撃の威力を上げていく。もう刀で受け流すのは無理だ。


「あーはっはっはっ。父さんこそ降参したら? もう勝ち目はないよ」


「うるせえっ!」


アーノルドも楽しそうだ。初めてアーノルドの剣を俺がダメにした時と同じ顔をしている。その顔を見てあぁ、見た目は若いけど、俺はアーノルドの息子なんだなと嬉しくなった。


「デバフッ」


「ぬおっ、汚ぇぞっ」


アーノルドの強化が薄れた隙に雷をバンバン撃ち込み動きが止まった所に土の柱をドーン


「ぐほぉっ」


もろに土の柱をくらったアーノルドはぶっ飛びながら斬撃を飛ばして来た。


ズバンッ


ゲイルの腕が斬り飛ばされる。


「チッ、あの体制からよく攻撃出来た・・・」


「ぶちょーっ!」


「バカっ、なに飛び出して来てんだめぐみっ」


アーノルドは無意識にもう一撃斬撃を放った。ヤバいっ! めぐみに当たるっ。


バッとめぐみを抱き締め背中を向き、その斬撃から守った。


「グハッ」


「えっ? ぶちょー! ぶちょーっ!!」


「飛び出して来んなよ、めぐみ。いくら死なないからって当たると痛いんだぞ」


「だってだって」


めぐみは泣いて俺から離れようとしない。


グッ・・・ まずい・・・ これは早く決着を付けねば。


意識が飛んでいるアーノルドの手が動こうとしている。まずい、今の俺にはめぐみを守り切れる自信がない・・・


ズババババッ


ゲイルはまだ動こうとしたアーノルドの手足身体を土魔法で串刺しにして動きを止めた。


「きゃーーーーっ! アーノルドっ!!」


その様子を見たアイナがアーノルドに駆け寄る。死んではいないとはいえ、身体中が串刺しにされたのだ。


「父さん、もう動けないだろ? 俺はこの通り動けるから俺の勝ちだね」


「お、俺は・・・ アイナを・・・」


「母さん、勝敗を決めて。このままだと俺は父さんを生滅させない限り勝てないから」


「勝者ゲイルっ!」


アイナは俺を勝者にしたので土魔法を解除した。


「ア、アイナ。俺は・・・ お前がいないと・・・」


「そんなの分かってるわよっ。試合はゲイルの勝ちだけど、勝負はアーノルドの勝ちよ。ゲイルはめぐみ達を選ぶんでしょ?」


「そうだよ。可愛い子供もいるしね。お幸せに父さん、母さん。俺はやることがあるから暫くいなくなるよ」


俺は泣きじゃくるめぐみを片手で抱いてゲートを開き、魔界へ戻った。


「さすがはゲイルだ。見事な勝利だったぞ」


「ゲイルっ」


「ラムザもシルフィにも心配かけたな・・・ もうこれで」


ドサッ


「ゲイル? ゲイルっ!」


「ぶちょーっ! ぶちょーーっ!!」


ゲイルはアーノルドから貰った最後の一撃で魂に傷が入っていた。無限のはずの魔力が急速に失われていく。



「うそっ、ぶちょーが死んじゃうっ。魂に傷が入ってるっ」


「えっ? 魂は昇華するのではないのかっ」


「その前に壊れちゃうっ。カスに言えばなんとかなるかもっ・・・ あっ」


めぐみは実体化が解けていない。カスの場所を知っているゼウちゃんも実体化したままだ。


「どうしようっ、どうしようっ。このままじゃぶちょーが死んじゃうっ」


「めぐみ・・・ もし・・・ 死んで・・父さん達には黙ってて・・・ くれ」


「いやぁーーーっ、死ぬなんて言わないでーーーっ」


「分身も 出ないから   ごめん」


ゲイルは最後に謝った後に意識がなくなった。



ビーーーーーーーーーッ


「うおっ! ゲイルの魂が壊れ掛けてるじゃないかっ。こりゃいかんっ」


カスの所の警報がけたたましくなり響き、カスは魔界へと飛んで行った。



めぐみはゲイルの魂が壊れないように必死で手を魂に添える。


「死んじゃいや、死んじゃいや、死んじゃいやーーーーっ! わっ、私が飛び出したからっ、私のせいでーーーっ。ぶちょー死なないでーーっ!」


シルフィードとラムザには何もできない。ただゲイルが死なないように祈るしかなかったのだった。




ー次回予告ー


エンディング「魔人ゲイルは忙しい」

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