第744話 魂のことは広めた方がいいかも

ポーション売り場で乗り物酔い止めを購入しておいて、孤児院行くことに。


「モモ、キラキラ孤児院に行くか?」


「行くっ! メルモをみんなに紹介する」


「じゃ飛んで行こうか」


「えっ?」


酔い止めポーションを飲ませて、王都の外に出てから飛行機に乗せる。


認識阻害スイッチオンして飛び立つ。


「わっ、わっ、わっ」


モモもメルモも飛行機は初めてだ。


ふわふわと浮いて空から案内してやる。


「パパっ、あの金色の建物何?」


「この街はドラゴンシティっていってね、あのタワーはドラゴンの寝床なんだよ。もうずいぶん前にどこかに寝に行ってそのままだな」


「ドラゴンって本当にいるの?」


「あいつ寝てばっかりのカスなのよっ。本当に使えないやつなの」


「そんな事を言ってやるな。必要な時にはちゃんと役に立ってただろうが」


「パパもママも見たことあるの?」


「ドラゴンの名前はチャンプっていうんだよ。この星で一番強いんじゃないかな?」


「ぶちょーの方が強いって」


「えっ? モモパパはドラゴンより強いの?」


「どうだろうな。戦う事はないからどっちが強いかわからんよ」


「モモパパ、ドラゴンってどんなのっ」


「真っ黒で大きいよ。街の一つぐらいならブレス一発で吹き飛ばせるぐらい強いしね。飛ぶのも凄く速いよ」


「へぇ、見てみたいなぁ。ねぇモモちゃん」


「うんっ、ドラゴン来ないかなぁ?」


「呼んでやろうか?」


「えっ?」


「呼べば来ると思うぞ。俺もずいぶん会ってないしな」


「えー、呼ぶのぉ?」


「チャンプが来たら世界中ぐるっと回って見れるぞ。南の島に行って遊ぶか? あそこなら誰もいないからのんびりできるぞ」


「じゃ、あそこで焼き鳥焼いて♪」



ということで、セントラルは後回しにして元大N国に移動。ここはもう誰も住んではいない。


「ここは魔物が出るから離れるなよ」


そう言うと二人はビクビクした。特にモモははっきり覚えてないみたいだが、魔物はとても怖いだろう。


と、思ってるとゴブリン達のお出ましだ。


「きゃーーーーっ」


ズガガガガガッ


大きめの弾で吹っ飛ばしておいた。目の前で血だらけになって死んだらトラウマになるからな。


「大丈夫。パパは強いから」


「今のパパがやったの?」


「そうだよ。どんな魔物が来てもやっつけてやるから大丈夫。ちゃんとくっついてろ」


メルモは初めて見る魔物が相当怖かったようでガクガク震えていた。


「メルモ、おいで」


震えるメルモをギュッと抱き締めてやる。


「大丈夫だ。モモパパは強いんだ。どんな魔物が来ても必ず守ってやるから」


ギュッと抱き締め返してくるメルモ。


「うん」


少し落ち着いたのでチャンプを呼ぶ。


魔力をぐっと込めて、


「チャーンプっ、いつまで寝てんだ。起きて来いっ」


「モモ、メルモ。チャンプは見た目はめちゃくちゃ怖いけど、絶対に襲って来ないから怖がらないであげて」


「わかった」


しばらく待つとチャンプが飛んで来た。


「ぶちょー、また暴れるのか?」


「きゃーーーーっ」


「ん? 誰だ?」


「俺とめぐみの子供とその友達だ」


「えっ? 子供・・・」


「まぁ、気にすんな。お前が寝ている間に色々とあったんだよ」


「ぶちょーも神に・・・」


「似たようなもんだがな。まだ魂があるから違うぞ。俺達を乗せてちょっと飛んでくれ」


震えているモモとメルモを魔法で浮かせてチャンプに乗せる。


「抱っこ」


めぐみを抱き上げて一緒に乗る。


「どこに行けばいい?」


「適当に飛んでから南の島に行く。そこは説明するわ」



怖がる二人を膝に乗せてチャンプで飛んで行くと暫くしたら二人とも慣れてキャッキャはしゃぎだした。



世界中を見て回った後に南の島に到着。チャンプに魔力を補充してやるとまたその場で寝てしまった。それを見ためぐみに本当にカスねっと言われていた。



焼き鳥をじゅうじゅうと焼いていく。


「モモパパはどうしてドラゴンと友達なの?」


「昔、一緒に戦ってたんだよ。魔物が大量に発生したり、他国から攻め込まれてた時にね」


「へぇ、いつ頃の話?」


「もうずっとずっと昔の話だよ。その時は魂が汚れた人も多くてね」


「魂が汚れる?」


「人にはね、魂があって、悪いことをすると魂が汚れていくんだよ。人が死んだら神様のところでその汚れを洗うんだけど、すっごく汚れた人はもう洗っても落ちなくてね。生まれ変わってもまた悪いことをするんだ。俺はその汚れた魂をこの世からなくすお仕事をしてたんだよ」


「えっ? 神様の所で魂を洗うの?」


「そうだよ。つい出来心で悪い事をしちゃったり、食べるものが無くて人の物を盗んじゃったりとかすると少しずつ汚れていくからね。そういう事を反省出来る人は洗えば汚れは落ちるんだ」


「どうしてそんな事を知ってるの?」


「それはママが女神だからなのっ」


「えっ?」


「ママはダメダメだからパパがそのお手伝いをしてるんだって」


「ちょっとー、誰がダメダメなのよっ」


「まぁ、めぐみには俺がずっと一緒にいてくれとお願いしたからね。だからパパが代わりにやってるんだよ。そうしないとママはすぐにどっか行っちゃうからね」


「行きたくて行った訳じゃないでしょっ」


「それはそうだけど、また100年とか会えなくなるの嫌なんだよ」


「んふふふふっ。ね、ぶちょーが私に惚れているのが分かったでしょ? ずっと一緒にいて欲しいってお願いされたからずっと一緒にいるの♪」


「モモパパも神様なの?」


「神様の代行ってやつかな」


メルモにはちゃんと魂のことや星がいくつもあってそれぞれの星に神様がいる事を教えてあげた。この子はモモの大切な友達だ。ずっと見ててあげることはできないけど、昇華してくれればいいなと思う。


「本当に神様なの・・・?」


「神様っていっても何かをしてくれるわけじゃないからな。ただみんなの発展を願うだけだ。そして人が発展に大きく貢献して魂を汚さずにもう何も思い残す事はないってなったら、その人も神様になれるんだよ」


「本当っ?」


「あぁ、本当だよ。だからモモもメルモも何か人の役に立つものを作ったり、幸せにする事をやり続けると神様になれるよ」


「モモママは何をして神様になったの?」


「めぐみは初めから神様だったからなぁ。でも俺を幸せにしてくれたよ。だから俺が代わりにめぐみの仕事をしてるんだ」


「へぇーーーっ」


この話が広まるかどうかは解らないけど、皆がそう思って生きてくれれば汚魂も出て来なくなるのかもしれないな。



そして翌日ドラゴンシティに移動してチャンプをドラゴンタワーに寝かせておいた。ドラゴンシティの成り立ちは皆歴史で知ってはいるが本当にドラゴンが来たことで大騒ぎになった。


「チャンプ、ここの魔力は街で使ってるから吸うなよ。また魔力を補充しに来てやるから」


「分かった」


チャンプにそう言い聞かせてゲートでキラキラ孤児院に移動した。



「ゲイルーっ!」


孤児院に到着するなりシルフィードが嬉しそうに抱き付いて来た。


「モモが学校を卒業したから友達と一緒に観光旅行してきたんだ」


モモはメルモをみんなに紹介するとポップコーンやらコーラとかを持ってきてくれた。



「え? ぼっちゃんは自分達の事を話したのか?」


「あぁ、本当の孫のように可愛いがってくれてた老夫婦が逝った時にな」


とダン達にその時の話をした。


「ほならゲイルはうちらの事も話したんか?」


「魔女っ娘のことも話したぞ」


「まだあれやっとんのかいな?」


「まだ大人気だったぞ。西の街に行って見るか?」


「いらんわ。またワラワラ囲まれんなあかんようになるやん」


「そうだ、ぼっちゃん。イーストからこっちに向かう北側の街道でまた盗賊が増えだしてるらしいわ」


「そうか、なら駆除しに行くか。ちょうどチャンプもドラゴンシティにいるからな。俺達が恐怖の対象になって駆除してくるわ。ラムザ、行こうか」


「え? パパは何をしに行くの?」


「チャンプとラムザと一緒に汚魂を駆除してくる。モモはここでママと待ってなさい」


もう汚魂が増えて来ているならチャンプをここで隠す必要はない。皆にも本当にドラゴンがいて、悪いことをしたら容赦なく駆除されることを知っておいて貰う方がいいからな。


チャンプを呼び出すと阿鼻叫喚になるセントラル。それがキラキラ孤児院の上空に旋回している。


ゲイルはラムザと二人でチャンプに飛び乗り北ルートの街道へと飛んで行った。


ダン達は孤児院の子供達にゲイルが何をしに行ったか説明をする。そして魂の話も。



ゲイル達は街道にヤギを放ち、イーストランド方面に向かって進んでいく。ついでにイーストランドの中の汚魂も駆除しておいた。戻ってセントラルの中にもヤギを放つ。数は少ないけど、やはりいる。チャンプを上空で旋回させ、地下に逃げ込んだ奴らは俺とラムザで殲滅しておいた。


ヤギは久しぶりの呼び出しだったので俺から離れたがらない。仕方がないのでこのまま孤児院に連れて行った。


ラムザも元の姿だし、ヤギを見て案の定、子供達は怯えた。その子供達にこう伝える。


「汚れた魂になるとヤギに喰われたり、俺達に駆除される。それがお前達であってもだ。だから俺達にそんな悲しい思いをさせないでくれ」


今は恐怖しか感じないだろう。だが恐怖でもいいから汚魂にならないと魂に刻み込んでおいてくれ。そうすれば生まれ変わっても必ず全うに生きられる。闇落ちしそうになっても耐えてその道に行かないようにと。


ヤギにたっぷりと魔力を補充してやると満足したのか帰っていった。そしてラムザも巻き角に戻る。


「怖かっただろ?」


そう俺に声を掛けられてビクッとするモモとメルモ。心がズキッと痛む。


「ぼっちゃん、ラムザ。お疲れ。これで不幸になるやつがぐんと減る。ぼっちゃん達はまた皆を救ったんだ。もう100年ぐらいは大丈夫なんじゃねーか?」


セントラルの汚魂には普通の人っぽいのもいたからな。奥さんや子供もいただろうと思う。きっと俺はまた辛そうな顔をしていたのだろう。


「そうだな。ダン。いつもありがとうな」


チャンプはまた前の寝床に寝に行ったがセントラルのざわめきは収まらない。キラキラ孤児院がドラゴンと魔王の関係者とバレてしまったからな。安全は担保されたけど、商売ができなくなるかもしれん。


「キキ、ララ悪かったな。ここでの商売ができなくなるかもしれん」


「ううん。ありがとうパパ。もう私達みたいな子供が出ないようになる方が良いもの」


ゲイルは二人を抱き締める。あの時の光景がありありと浮かんで来て少し泣いていた。


「いっそのことこの孤児院をエデンに移すか?」


「えっ?」


「元々エデンは引退した人や世界中の孤児、それに人種を問わず好きに生きて行けるように作った場所だ。汚魂の駆除は俺がやるから、お前達は恵まれない孤児を見付けてその孤児院に連れてきてやってくれないか?」


「ここだけじゃなく世界中の?」


「そうだ。言葉のインストール方法も教えてやる。エデンの通貨はまだたくさんあるから学校と孤児院を兼ねた物を建ててやるよ。引退したおじいちゃんおばあちゃんにもそこを手伝って貰え。卒院する時に元の国に帰りたいなら連れてってやれ。俺が初めにやってたことだ」


「そんな事をパパはしてたの?」


「汚魂駆除しながらな。どうする?」


「やるっ!」


こうしてキラキラ孤児院はエデンで世界中の孤児達を受け入れる事になったのである。




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