第743話 久しぶりに王都の西の街
モモは義務教育を卒業した。上の学校には進まず、俺とあちこちに行くのに付いてくると言った。
「メルモ達と離れる事も多いから今の間に一緒に旅行に連れてってやろうか?」
「ほんとっ?」
「ウエストランドの王都に行こうか? 感謝祭シーズンだから人がたくさんいるけど、劇とか色々と見れるぞ」
「行きたいっ! メルモ誘って来るっ」
まだ日にちを決めてないのにモモはメルモのうちに走って行った。
「ええっ? ウエストランドの王都に旅行ですって?」
「うんっ、モモパパがウエストランドに詳しいんだって。行ってもいいよねっ?」
「ご迷惑なんじゃないの?」
「モモちゃんち、もうすぐあちこちに行って、ここにはあまりいなくなっちゃうんだって」
「だからメルモを誘ってくれたのね?」
「うん。でも時々は帰って来るからって」
「父さん達は行けないけど・・・」
「モモパパがいるから大丈夫っ!」
「そ、そうか・・・」
メルモパパは娘が他のお父さんの方に懐いてしまったのが少し寂しかった。
遊びに行く日が決まって、ゲイルは最高級宿のスイートを予約した。何度か改装をしているみたいで、老舗高級宿としてまだ存在していたのだ。他にも高級宿は出来ていたがめぐみがマネキンボディで風呂に乱入してきたのが懐かしかったのでここにした。
「いつも申し訳ありません」
「いや、王都は詳しいので気にしないで下さい。庶民街にしか行きませんし」
「お小遣いも持たせてありますので、自分の物は自分で買うようにさせてくださいね」
「分かりました」
行き道は魔道列車で行くことに。なかなか快適だ。子供達も初めて乗るのでめっちゃはしゃいでいた。
さすがに昔の紋章を出すと怪しいので冒険者証と住民票を見せて普通に入国。Sランクなので待たずに入れる。
「先にご飯食べようか? なんか食べたいものあるか?」
「こってりっ!」
真っ先に答えるめぐみ。子供達は? なのでラーメン屋に行くことに。
「こってりと餃子っ!」
子供達と俺はこっさりにして餃子も人数分を頼んでおいた。
「わぁ、美味しいねぇ」
「本当。ラーメンって美味しいね」
子供達もラーメンは好きなようだ。めぐみもラーメンとか麺類は自分で食うんだよな。
お腹いっぱいになった後はクリーン魔法をかけてニンニク臭いのを消してから劇を見に行く。
懐かしいディノ討伐の内容だった。まだやってるのねこれ・・・ 小さな恋の物語でなくて良かった。
「この物語は、俺のお父さんとお母さんがモデルなんだよ」
「わぁっ! すっごーい」
アーノルド達にモモと合わせたいな・・・ 2人が生きてる間に俺の子供を見せてやれなかったからな。キキとララも孫だけど、実感なかったろうし。モモはめぐみ似だからアイナと血が繋がってると思えるかもしれない。
劇の後はパレード見学。魔女っ娘と竜玉の人気は相変わらずだ。ここまで続いて人気があるのは本当に凄い。飽きないということは偉大だな。
「あの魔女っ娘はシルフィママがモデルなんだよ。で、あれはミケママ」
「そうなのっ? 紫のは」
そういや、ミグル達と全く会ってないな。
「あれも知り合いだよ。魔法使いからウエストランドの王妃様になったんだよ」
俺の母親だった事もあるとは言えない。
「モモちゃん、シルフィママとミケママって?」
「キラキラ孤児院のママ達だよ」
「孤児院?」
「モモは孤児院の出身なんだ。本当のお父さんとお母さんは死んじゃって、パパとママがモモのパパとママになってくれたの」
「えっ? でもモモちゃんとモモママって似てるよね?」
「うん、だから私も女神様になるんだっ」
言うなよと口止めはしてなかったけど、言うとは思わなかった・・・ まぁ、バレてもいいんだけど。
しかし、メルモは何を言われてるのかわからなかったようだ。
夜になると今着ている服は寒そうなので皆の服を買ってあげることに。
ミサが立ち上げたブランドは高級老舗ブランドどしてまだ君臨している。
「じゃ、ここで好きなの買って良いぞ」
「やったぁ!」
「私のお小遣いじゃこんな高いの買えない・・・」
「お小遣いはおやつを買うのにとっとけ。服はモモパパが買ってあげるから好きなの選んでいいぞ。店員さん、うちの奥さんと子供達にも一式見立ててやって」
「かしこまりました」
高級ブランドといっても庶民向けだからそこまで高いものではない。3人お揃いのアウターから靴までの一式で金貨1枚ほどだった。
「うわぁ、お姫様みたーい」
みんなよく似合ってる。
「ねー、ぶちょー。可愛い?」
「よく似合ってるよ」
とバカ夫婦をしてるとおっさんに声を掛けられた。
「おっ、べっぴんさんの奥さんつれてるじゃねーか?」
子供達は地元のおっさんに声を掛けられてビクッとして俺の後ろに隠れる。
「こらこら、おっちゃんガラ悪いんだから子供が怖がってるだろ?」
「なんでぇ、ちょっと声掛けただけじゃねーか」
「わかってるよそんなこと。よそもんにそんな声の掛け方したら衛兵呼ばれんぞ」
「えっ? そりゃねぇぜ」
「俺はおっちゃんらみたいなのに慣れてるからいいけどさ。あ、小熊亭ってまだあるか?」
「えれぇ、懐かしい所知ってやがんな?」
「まあな」
「あそこはもうずいぶん前になくなっちまったよ。俺が生まれるずっと前にな。死んだ親父やじいちゃんがよく小熊亭の話をしてたから俺も名前ぐらいしか知らんからな」
そうか、それは残念だな。
「ありがとうなおっちゃん」
「いや、初めて会うのによ、なんか懐かしい感じがして声かけちまっただけだ」
「俺もなんかそんな感じするよ。たまには奥さんと子供連れてケーキでも食いにいけよ」
「おうっ」
「パパ、知り合いだったの?」
「いや、この街はこういう所なんだよ。口は悪いけど人は悪くない。昔から変わらんよ」
「パパはこの街を昔から知ってるの?」
「あぁ、よく知ってるよ。本当によく知ってる」
苦労したけど、本当に色々とあって楽しかった。ちゃんと発展したままで嬉しいよ。
街中の屋台とかぷらぷら見ながら宿に入る。女将に案内されてロイヤルスイートルームへ。
「わぁー、すっごーい」
「じゃ、ご飯の前にお風呂に入ろうか」
一人でゆっくりと入るつもりだったのにめぐみがこっちに来たので頭を洗ってやる。寝るなよと言っておいた。
「ねぇ、モモパパとモモママはいつも一緒にお風呂に入るの?」
「私が小さい時は3人で入ってたよ」
「へぇ。うちはみんな別々だよ」
「パパは髪の毛洗うの上手なんだ。ママはいつも洗って貰ってるの」
「モモパパってそんなことまでしてあげるんだねぇ」
「ママはダ女神だからってパパはいつも笑ってるよ。ママはそう言われると怒るけど」
「うん、モモママは女神様みたいに可愛いよね」
「パパは私の事も女神だって言ってくれるの」
「うん、モモママとモモちゃんよく似てるもん。きっと本当のママも可愛いかったんだよ」
「そうだったらいいな。もうあんまり顔を覚えてないけど」
「ごめん、変な事を言って・・・」
「ううん。パパがね、本当のお父さんとお母さんはいつもモモの事を見守ってくれてるって言ってたから大丈夫」
「めぐみ、寝るなって言ったろ?」
髪の毛洗ってる間にグラっとして寝てしまっためぐみはゲイルに抱き抱えられて風呂に浸かる。今は膝に乗せられてゲイルに持たれてスースー寝ていた。
もう、ゆっくりと浸かれなかったじゃないか。
「めぐみ、起きろ。身体を拭くぞ」
むにゃむにゃ言うめぐみの身体と髪の毛を拭いて髪の毛を温風で乾かしていく。ドライヤーもあるけど自分でやった方が早いのだ。
部屋に行くとモモ達も出て来たので髪の毛を乾かしてやる。
そしておまちかねの料理が次々と運ばれてくるとめぐみは目をぱちくりと開けて食べだした。本当はずっと起きてたんじゃないのか?
自分で食べたり食べさせたりしながらデザートへ。美味しいけど、やっぱりポットのには敵わないな。
「お酒は如何いたしましょうか?」
「ぶちょー、あれ飲みたい」
マイタイか。
パイナップルジュースとオレンジジュースを貰って作ってやる。子供達にはアルコール抜きだ。
「ぶちょー、これお風呂で飲もうよっ」
というので再び風呂へ。子供達も風呂で飲みたいらしいので好きにさせた。
「やっぱりお風呂で飲むの美味しいね♪」
「そうだな」
窓から差し込む月明かりの中で嬉しそうに飲むめぐみはとても可愛らしかった。
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