第735話 死ぬかもしれない
神であることを明かした後は遠慮することなく世界を発展させる。
エルフ達には植物魔法や音楽や劇を教え、獣人達にはスポーツとかを教えていく。こういうものも必要なのだ。
アーノルド達は魔物討伐、ジョンは騎士団の訓練を兼ねてタワー攻略に乗り出した。
俺は各地の鉱山を巡り、金属をインゴットにして渡していく。通貨に使う金と銀はスライムを倒して持ってきた。これ以上は自分達で鉱山開発やタワー攻略で手に入れてくれ。
ドワンは物作り、酒作りを中心に行い、チュールは飯屋を、ブリックとポットはお料理教室を、シルフィードはポーションを教え、チルチルは基本の魔法陣を教えていった。
ここもエデンと同じく、魂が汚れる事をするなというのがメインでやりたいことをやらせている。きっとこれが礎になってくれるだろう。
その傍ら、女神達の祝福を望む者達はドワンやジョンに戦いを挑み負けていく。ただ本気で勝ちにくるので上達は早かった。
通貨が出来た事によってデーレンの活躍の場が増えていく。露店から始まった商売は店舗を持つようになり、街としての機能が出来てきていた。
そして、あの魂がこの世に生を受けた。
「坊主、話がある」
俺はドワンに呼び出された。
「どうしたの?」
「どうしてミゲルの魂がここにあるんじゃ?」
「おやっさんに見届けて貰おうと思って」
「記憶は?」
「普通にセットしたから消えてると思う。でもこの世界に木工加工技術を広めてくれるんじゃないかな?」
「ふむ、奴はこれで最後か?」
「多分ね」
「後は未練か・・・」
「親方の未練って何か知ってるの?」
「多分じゃがな」
「何?」
「ミサじゃ」
「え? 他の人と結婚したんだよね?」
「あぁ、上手く行かんかったみたいじゃがな」
「ミサは?」
「あいつは誰と結婚したかしらん。王都で手広くやってたからの。しかし、ミゲルと仲は良かったはずなんじゃ。お互いあっちゃこっちゃ行ってたからくっつくことはなかったがの」
ぜんぜん知らなかった・・・
「ミサの魂がどうなっておるか知っておるか?」
「いや、俺は途中で皆の魂を探すのやめちゃったからね。見届けなくても昇華する人はするし」
「ちと探して来てくれんか? 無いかもしれんがの」
というとこでめぐみをゼウちゃんに預けて魂庫を見に行く。大きなカラーボールがたまったようなところから探すのは大変だ。ドワーフの魂を選別していくとあったあった。それとバンデスとタバサのも発見。いつからあったんだろ?
バンデスとタバサのはドワンに相談しよう。
そして、ドワンはバンデスとタバサの魂もこっちにもって来てくれとのことだった。二人の未練が何か調べてみたいらしい。
勝手に魂持っていくの禁止らしいから、最期の時はエデンに連れて帰ろうと話をした。あそこは老後を過ごすのに適しているからな。
四半期ペースで時間を止め、俺達はめぐみの星で遊ぶ。バイクレースはタイヤの消耗が激しいので、浮遊石を使ったホバークラフトみたいな物を作り、レース会場は海でやることに。
難易度が高くてめちゃくちゃ面白い。スピードを出すとカーブを曲がるのがとても難しいのだ。アーノルドとドワンはしょっちゅう曲がれずにすっ飛んで行ってた。1人乗りから2人乗りにしてペアで操縦するのも作った。
ペアの時は俺は見学だ。分裂してやるのも危ないし、一人だと誰を乗せるのかで揉めるのだ。ラムザは引いてくれるけど、シルフィードが来ている時はめぐみと揉める。めぐみは実体化してから焼きもち焼きになっていた。感覚がより人に近づくのだろうか?
めぐみはチルチルや子供達に祝福すると必ず上書きしにくる。このまま人にならないよね?
「なぁ、めぐみ。お前本当の人にならないだろうな?」
「どうして?」
「今までと感覚違うだろ?」
「そう? 同じだよ」
ならいいんだけど。
こんな生活が続き、シルフィードとシルビアが成人する歳になった。シルフィードはシルビアと同じように成長した姿になっていく。人族と同じように成長してみたかったのかもしれない。
キキとララはまだまだ子供だ。
「魔王パパ、私大人になったよ」
「おめでとう。早いものだね。何かお祝いに欲しい物があるか?」
「んー、魔王パパは子供好きなんだよね?」
「そうだね」
「じゃあ、赤ちゃん生んであげようか?」
「あ、あ、あなたは何を言ってるのかな? ゲイルは私の・・・」
「うん、でも赤ちゃん生むくらいいいよね? 私も嬉しいし、魔王パパも嬉しいし。別にお嫁さんじゃなくても大丈夫だよね?」
変わらんなこの娘は・・・
「シルビア、俺にはキキとララがいるからね。シルビアはちゃんと他の人と結婚してその人の赤ちゃんを産みなさい」
「えー、ちょっとぐらいいいじゃない」
「赤ちゃんをちょっとぐらいとか言わないの」
シルビアも大人になったからこのままここにいると良くないな。
その夜にシルフィードと話をする。
「シルフィ、俺はちょっと本業に戻るわ」
「え?」
「汚魂救いをずいぶんとしてないからな。ちょっと他の世界をめぐってくるよ。ヤギ達も寂しそうだし」
「ここにはもう来ないの?」
「もう俺がいなくても大丈夫だろ? みんないるしな」
「わ、私も行こうかな」
「いや、シルビアが誰かと結婚するまでは見届けてやれ。いきなりお前までいなくなったら寂しいだろ。俺はまだ魂があるからここの人達の魂を刺激するんだよ。シルビアがいい例だ。本能を刺激しちゃうからこれ以上一緒にいるのはまずいんだ」
「そうなんだ・・・」
「父さん達も次の段階に入るからね。そろそろみんなタワー攻略に向かうからシルフィも友達をちゃんとここの住人として幸せになるように導いてやってくれ」
「次はいつ来るの?」
「んー・・・ おやっさん、これからの休みはどうする?」
「1年後とかでかまわんじゃろ。飯も酒もそれなりになってきたからの」
「父さん達はどんな感じ?」
「こっちは遠征に出すつもりだ。死ぬ奴も出てくるかもしれんな」
「ジョンは?」
「タワー攻略に向かう。こっちも準備しては行くが命懸けになるだろうな」
「了解。みなそろそろ独り立ちさせるんだね」
無茶はさせないということだけど、俺達がいなくなった後の事を考えるとそういうステップだな。
「ゲイル」
「何?」
「今夜は独り占めしたいな・・・」
翌日以降、俺はしばらくラムザとめぐみ、キキとララを連れて各世界をめぐった。
各世界では汚魂自動駆除をしていない所も多く、汚魂が多い所も結構ある。
そして一度、そこの管理者とバトルになった。
汚魂だらけのバイオレンスな世界の管理者。わざとそうなるようにして楽しんでたサイコヤローだ。いくら楽しみ方は自由とはいえ、生物には意思もあるし感情もある。こんな胸くそ悪い管理者は初めてだ。実体化しているめぐみに痛い目を合わせたくないのでラムザに頼んでキキララと共に魔界へ返して貰った。
「お前は何者だ? 人の世界に勝手に潜り込んで来やがって」
「勝手に入ったのは俺がそういう権限を持ってるからだ」
「魂があるところをみるとどこかの生物なのだろ? この星の管理者に敵うとでも思ってるのか?」
「さあね? 管理者を殺したことはないが、殺せるというか消せるんじゃないかとかと思ってる。魂はお前らに作られたものかもしれないが、感情も意識も想いも持ってるんだよ。それを弄ぶな」
「うるさいっ。俺の星だ。何をしても自由なんだっ」
「じゃ、生物からの逆襲と思え」
魔力を吸うのと同じ要領でエネルギーを吸ってやる。
「なっ! やめろっ やめてくれっ」
「お前の星の魂もそう言ってたな。同じ事をされたらどんな気持ちだ?」
「たっ、頼むっやめてくれーー」
「俺はな汚魂を救ってるんだ。お前には魂がないけど汚れたエネルギーを俺が浄化してやるよ。じゃな」
エネルギーを吸い付くして消滅させてやった。汚れた奴は綺麗にならん。生物も管理者も同じだ。
ゲートを開けてヤギに汚魂を食わせ続けることに。
「ぶちょー、さっきの奴どうしたの?」
「消したよ。ちょっとこいつの世界に行って汚魂駆除オンにしてくるよ」
と勝手にこの星を全オートにして生物達は自分達で暮らせるようにしておいた。この先どうなるかは自分達でなんとかしてくれ。神は死んだのだ。
「その後、魔界へ戻った」
「ゲイルは神すら殺せるのだな」
「殺すというか消滅だね。あんな胸クソ悪いやつ不要だろ?」
「ふむ、さすがに神殺しというのは我にでも無理だな。その吸ったエネルギーはどうするのだ?」
「別に、俺は増えようが減ろうが関係ないんだよね。エネルギーって魔力と変わらないし。ほら俺の魔力って無限だから」
「なるほど。お前を殺せるやつはいるのか?」
「ラムザなら俺を殺せると思うよ。殺したくなったら俺の魂を壊せばいい」
「人ゲイルはそれで死ぬとは思うが、神ゲイルと魔王ゲイルが残るのではないか?」
「いや、分裂しているだけだから魂が壊れたら皆消えると思うよ」
「なにっ? それは本当か?」
「多分ね」
「それなのにアーノルドと戦うつもりなのか?」
「あー、そういやそうだね」
「嫌だっ! ゲイルが消えるなんてダメだっ」
「泣くなよラムザ。俺は負けないって」
「だって、だって・・・」
「大丈夫。勝負には負けるかもしんないけど、試合には勝つから」
「本当だな?」
「本当だ」
まだぐすぐす泣くラムザとキキララを慰めて寝かせておいた。
「ぶちょー」
「何?」
「ぶちょー!!!!」
今の話を聞いていためぐみも泣き出した。
「だから負けないって」
「本当?」
「本当。俺が死んだらめぐみがひとりぼっちになるだろ? そんな事はしないよ」
それでも抱き付いて離れないめぐみ。
いらんこと言っちゃったな。
なんかそれから皆が俺から離れなくなったので、魔王ゲイル、人ゲイル、神ゲイルに分裂してずっとくっついて過ごす事になってしまった。
何が本業に戻るだ・・・
ただくっついて過ごすのが次の休みまで続いたのであった。
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