第734話 唇が腫れる

質問がある人はそれぞれの所に来て話をすることになった。当然俺の所に来る人は多い。チルチルも俺の所に来ている。シルフィ達が俺を取り合いしているのに参戦したのだ。



「だから、ゲイルにはもうこれ以上お嫁さんはいらないのっ」


「3人も4人も変わらないよね?」


「変わるのっ」


「どうして? 私はシルフィとお揃いだったら嬉しいな♪」


「え、あ、うん・・・ でもダメっ」


「ゲ、ゲイルはダメっ。私でもお嫁さんになれなかったのにっ」


「それは努力が足りなかったんじゃないかな?」


このシルビアって娘面白いな。この歳でこんな事を言えるのか。


「魔王パパ、私はスッゴく頑張れると思うんだ。だからいいよね?」


チルチルがムキーッと怒ってる。


いや、面白がってる場合じゃないな。


「シルビア、俺のお嫁さんは神様と魔王なんだよ。人だと無理だよ」


「試したことあるの?」


「いや、ないけど・・・」


「じゃあ、お試しでもいいと思うんだ。ダメかな?」


「シルビアはまだ子供だしね。こういう話はもっと大きくなってからじゃないと」


「あーあ、ゲイル。あかんでそんな事を言うたら。シルビアが大人になったらほんまに考えたるんか? そんな気無いなら無いてちゃんと言うたり。変に気ぃ持たしたったらあかんわ。嫁に貰たるつもりならかまへんけどな」


それもそうだな・・・


「シルビア、ごめん。俺はもう他の人と結婚するつもりは無いんだ」


「わかった・・・・」


「ゲイル、未練が残ったまま魂の寿命を迎えたらどうなるの?」


「魂はそのまま寿命を終える」


「神様になれないってこと?」


「そうだね」


「じゃ、私は無理そうね・・・」


デーレンとポットもここに来ていて、デーレンがそう言う。


「何か未練があるのか?」


「そうよ。ゲイルの事が未練なのっ」


「ポットがいるじゃないか? お前ら結婚したんだろ?」


「それなら僕も無理かな・・・」


ポットはマルグリッドの事か・・・


「わっ私もゲイルに未練があるのっ。だからもうすぐ消えちゃうかもっ」


チルチル参戦。


「あのなぁ・・・ もう消えるわけないだろ。それにデーレンもポットもお互いでなんとかしろよ。ちゃんと愛しあって結婚したんだろ?」


「それはそうなんだけど、それとこれとは違うのっ。キ、キスもおでこにしかしてくれなかった癖に」


「ゲイル、デーレンのおでこにキスしたの? いつ?」


シルフィがそんな事をしてたんだという目でみる。どんどんドロ沼にはまっていくゲイル。


あー、魔王のまま君臨してれば良かったよ・・・


「チルチルは娘、デーレンは友達、シルビアはシルフィとキキララの友達。俺にはそれ以上無理だっ」


「じゃあ、祝福してよっ」


チルチルが拗ねてそう言う。


「祝福って何?」


チルチルがエデンでの祝福をデーレンに説明する。


「えっ? 誰もがして貰ってたの? ズルイッ」


「しゅっ、祝福なら仕方がないかな・・・」


シルフィードもそれならと言い出す。


「あら、またあの時みたいになるのね」


クスクスクスクス


「あれ、マリさんこっちに来たの? ジョンは」


「私のファンと戦ってますわ」


と言うのでジョンの方を見ると木剣でファン達と立ち合ってた。なぜかジョンに勝てばマルグリッドと一緒にいる権利を貰えるとなってしまったらしい。


ドワンも同じくゼウちゃんをめぐって立ち合ってた。


アーノルドも・・・


何やってんだあいつら?


「ダン、ミケを巡って似たような事になるんじゃねーか?」


「ウチはダンに剣で勝っても興味あらへんからな。それに誰も勝てへんやろ?」


まぁ、ここのメンバーに勝てる奴なんて誰もおらんわな。


「ゲイル、早くしてよっ」


チルチルが待ちくたびれて機嫌が悪いので、神ゲイルを出して祝福しておいた。


んふふふっと機嫌が直る。


「わっ、私もっ。祝福、祝福なら良いのよねっ」


デーレン参戦。もう面倒なのでチュッとしておいた。


「じゃ、私も久しぶりに」


チュッとマルグリッドにされた。


「あっ」


ポットはそれを見ていた。


「あら、ポットは私から祝福が欲しいのかしら? たくさんケーキを頂いたお礼もできてませんでしたしね。いつも美味しいケーキをありがとう」


チュッ


ポットはそのまま嬉しすぎて気絶してしまった。


まぁ、ジョンも見てなかったみたいだし、マルグリッドも神様になったから別にいっか。


「シルビアも祝福で我慢する」


あー、もういいわ。


チュッ


「ゲイル、私には祝福じゃないのをして」


シルフィにはムチューっ。


「ぶちょー」


「ん?」


ブチューーーーっ


実体化してるめぐみとのキスは生々しかった。


「こうやったら返して貰えるんだよね?」


「う、うん・・・」


「坊主、何を赤くなっておるんじゃ?」


「えっ、あ。おやっさんは終わったの?」


「全員ぶちのめしてやったわい。ワシに挑戦しようなんざ千年は早いわい」


「ゲイルくん、ドワン強かったわよ」


「そりゃそうさ。俺を守ってくれるぐらい強いんだから。ゼウちゃんも勝者に祝福のキスでもしてあげたら?」


「ふふっ、それもそうね」


「こ、これっ。坊主何を余計なことを・・・」


チュッ


ゼウちゃんから祝福のキスを貰ったドワンは気絶してしまった。


ドワンもポットも純情だな。


「パパー、私達もー」


キキララにもチュッとしておく。


そして、その様子を見ていた者達が魔王に祝福して貰えると聞いて並び始めた。また老若男女問わずだ。マルグリッドとゼウちゃんはドワンとジョンに勝たないと無理となった。アイナは更にハードルが高い。アーノルドに勝ってアイナにも勝てないとダメなのだ。


神ゲイルの祝福を受けるのに行列が出来る。長くなりそうなので、人ゲイルは子守、魔王ゲイルはラムザの相手をする。


神ゲイルの祝福に混じってめぐみにチューして貰おうとしたヤツには闘魂チュー入しておく。めぐみにおいたする奴は神の怒りに触れるのだ。


男の子達がシルフィードの前に並ぶので、人ゲイルに勝ったらという事にする。


ラムザの色香に惑わされた者は魔王ゲイルが威圧を放っておいた。


神ゲイルの唇が腫れ上がる頃に祝福騒動が終わり、ぐったりした俺は魔王城に戻る事に。


ちょっと旨いもので口直しをしたい。


皆も自分だけズルいということで付いてきた。


「チュール、ブリック頼んだ・・・」


人数が多いのでやっぱり焼き肉になってしまったがまぁいい。


「ゲイル、どれぐらい祝福したのかしら?」


アーノルドとアイナは住民をぶちのめしては治すをしていたのでどれだけの人数を祝福したのかは知らない。


「もうわからないよ。しばらく向こうに行くのをやめとくわ」


神の愛には限りがあることを知って貰おう。


合体してめぐみに食べさせるのと自分で食べるのを交互にしてるとふと違和感に気付く。


あ、シルフィードとキキララがシルビアを連れてきてるじゃないか・・・


まぁ、ポットとデーレンもいるしな。もう気にしないでおこう。


「ゲイル、はいご飯」


「あ、ありがとう」


焼き肉にエールもいいけど、やっぱり白飯は旨いな。


「おっ、ぼっちゃん久々に飯食ってんな」


「うん、焼き肉にはご飯欲しいんだよね」


「最近焼き肉の時も全然食ってなかったじゃねーか?」


「ゲイル、ご飯好きなのに食べてなかったの?」


「う、うん・・・」


「シルフィードの炊いた飯ちゃうかったから食わんかったんやろ? 今日のはシルフィードが炊いたんやんなぁ?」


「そうだよ」


「あんた愛されてんなぁ」


そう言ってニヤニヤ笑うミケ。


それを聞いたシルフィードはそっか、そっかと嬉しそうだった。


ダンとミケって本当に良く見てやがんな。シルフィードに直接そんな事を言うなよ。恥ずかしいだろ?



俺を赤面させた仕返しにこっそりサバを焼いて自分だけ食べてやる。ダンと楽しそうに焼き肉食ってるから気付いた時は匂いだけだ。クックックッ


さ、焼けた・・・


「あーんっ」


こいつ、焼けるまで気付かないフリしてたのか。


めっちゃ嬉しそうな顔で口を開けるミケにこれ以上意地悪する気も消え、フーフーしてから食べさせてやった。


「ウチの祝福はゲイルのもんやっ」


ムチュッ


「ミケの奴、サバ持ってこられたら全員に祝福するつもりじゃねーだろうな?」


ダンはそう言って呆れていた。


それを見ていた子供達とデーレンが食べさせて貰っては祝福をしていく。もう勘弁してくれ・・・ これ神ゲイルじゃないんだからね。


「はい、どんどん♪」 


その横ではシルフィードがワンコそばスタイルでご飯を入れてくれる。


ゲイルは愛でお腹いっぱいになっていた。


晩飯後に皆を街に送り、ラムザとめぐみと3人になる。シルフィードは人ゲイルを置いていってといったので、また分裂している。


魔王ゲイルはラムザに連れて行かれた。



「ぶちょー」


「なんだ? 髪の毛でも洗って欲しいのか?」


ムチュッ


俺は皆に祝福を与えた分、めぐみに上書きされていたのであった。























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