第731話 歩く道は選べる

ドワン達はまだここにいるらしいのでめぐみの世界に行って魂庫の確認をする。


あ、これ・・・


触って確認すると親方の魂を発見した。


「めぐみ、この魂をおやっさんの所に持って行っていいよな?」


「好きにしていーよー」


いや、ここの魂は昇華寸前の貴重な魂なんだけどな・・・ こいつがこんなんだからせっかく作った魂を平気でどっかにやるのかもしれん。貴重な魂がその辺に落ちてないだろな?


ドワンの世界に移動して生まれてくる所にセットしておいた。これでドワンの星の木工加工技術を発展させてくれるだろう。


他にはないかな・・・


たくさん溜まってるのを全部見るのは結構大変。縁があった魂はなんとなく分かるのが不思議だ。これは俺と縁はなかったけど、気になるな。えーっと・・・


あっこれは・・・


俺はシルフィとグリムナの世界に移動した。


「グリムナさん、これ・・・」


「こっ、これは・・・」


「めぐみの星に生まれ変わらせる? それともそっちで生まれ変わらせる?」


「これは昇華するのか?」


「どんな未練が残ってるかわからないから俺にはわからないや」


「そうか・・・」


しばらく考えたグリムナはこう言った。


「エデンに生まれるように出来るか?」


「多分」


「では頼む」


「導いてあげるの?」


「いや、見守る。自ら昇華しないと意味が無いからな。しかし、エデンならそれが叶う気がする」


「わかった。めぐみの星は出入り自由になってるからいつでも見にきて」


「勝手に行っても問題ないのか?」


「もうほとんど俺が管理してるようなもんだしね、大丈夫だよ」


「ふふっ、そうか。なら遠慮せずにお邪魔させて貰おう」


バンデス夫妻とグローナ夫妻の魂はまだ見つけられていない。グローナ夫妻はダークエルフになってしまったアルディナの事で悔いが残って昇華しなかった可能性があるかもしれないな・・・


めぐみの世界に戻って、ナターシャの魂をエデンの出産間近の人の所に入れておいた。幸せな人生を歩めますようにと願って。シルフィードの母親でもあるし、俺に味噌と醤油を与えてくれた人だからな。


他にも十分休んだ魂を生まれ変わりの所にセットしておいた。


汚魂駆除装置の動作問題なし、洗浄機問題なし、生まれ変わり装置も問題ないな。


「めぐみ、戻るぞ」


「おんぶ♪」


めぐみがどんどんダメになっていってる気がする・・・ いや、なんかこうしてるの嬉しいから俺がこうさせてるんだよなきっと。


星の管理も俺がやっても問題ないし別にいいか。


ドワン達の所に戻ってアーノルドと話をしてみる。


「父さん、俺との戦いさぁ、少し先伸ばしにしようか?」


「怖じけついたのか?」


「いや、今やったら俺が圧勝する」


「ずいぶんと余裕だな。やってみなけりゃわからんだろうが」


「父さん俺の実力知らないだろ? 俺は父さんの全盛期の力は知らないけど、片鱗は知ってる。だから不公平かなと思ったんだよ。この存在になって使える力は増えてるはずなんだけど、今まで使えた力以上の力は出せないみたいなんだよね。でも実体化してる時に付けた力は使えるようになると思うから修行してきなよ」


「その間にアイナにちょっかい出す気か?」


「ちょっかい出す気ならとっくに出してるよ。今回の俺との勝負は父さんの譲れない意地が掛かってるだろ? もう母さんを誘惑したりしても無意味かなと思ったんだ。父さん元に戻ろうと思えば戻れるだろ?」


「・・・・・・どうしてそう思ったんだ?」


「息子だからかな。だから俺がどれぐらい出来るようになったかその片鱗を見て来てよ。ダンジョンタワーを作ってあるからソロで攻略してみて。本番はそれプラス俺の本体が加わるから」


「情けをかけるつもりか?」


「いや、真っ向勝負をする為だよ。俺を舐めてあっさり負ける父さんを見たくないし、俺も万全の父さんを倒したい」


「俺を見下してるわけじゃないんだよな?」


「そんな事するわけないだろ? だけど、タワーに挑戦するのは住民達だけでゴーレムを倒せるようになるぐらいに育てた後ね。あと、魔物の転送ゲートを1つ開けるから駆除も宜しく。安全に慣れて平和ボケしたら後々困るから」


「わかった。これは息子からの父親に対する愛だと受け止めよう。街のやつらはちゃんと鍛えてやるさ」


「母さんは治癒士を育てて。あのシルビアなら母さんみたいに聖女と呼ばれる人にいずれなるかもしれないから」


「わかったわ。シルフィードには何をさせるの?」


「母さんのサポートとエルフ達の導き手をしてもらう。植物魔法を覚えやすいと思うし。チルチルはおやっさん達と物作りを手伝って貰うよ。ここはめぐみの星より少し皆の魔力が少ないから道具に頼らないとダメだからね」


「そこまでやるならゲイルも自分の星を持てばいいのに。自分ではやらないのかしら?」


「めぐみの星も見なきゃなんないし、他にも色々とやることあるからね。そんな余裕ないよ」


恐らくアーノルドと俺が戦うのは実体化が解除されるギリギリのところらへんかな。その頃には訓練した住人が次世代、次々世代になり勝手にそのような文化が育つだろう。


その後は皆の元に戻ってチュール達のご飯を食べた。



「ぼっちゃん、明日釣りにいかねーか ?船じゃなしに防波堤に行きてーんだよ」


「タコ釣りか?」


「そうそう。船の方が釣れるのわかってんだけどよ、なんか釣れて当たり前ってのも面白くねぇんだよ」


「そうだね。じゃ、久々に南の領地の海釣り公園に行く? 前に見に行ったらそのままなんだよ。聖地として立ち入り禁止にしてくれてあるし」


「おー、そうしようぜ」


希望者を聞いたらダン夫妻と俺とめぐみだけだった。ラムザもバイクに乗りたいらしく、アーノルド達も新型バイクが欲しいようでそっちを優先するらしい。



「なんやこんなに人数少ないの久しぶりやな」


「そうだね。たまにはいいんじゃない」


「しかし、釣れんのもつまらんよな」


「釣れ過ぎても面白くないし、釣れなくても面白くないよな」


そう、潮回りがよくないのか全然反応が無かったのだ。明日は潮が入れ替わって釣れるかな?


今は魚が釣れなかったので、ホルモンを焼いている最中だ。


「明日は朝釣りして昼から貝を捕りにいこうか。焼きハマグリ食べたいんだよね」


「おっ、いいねぇ。酒蒸しも作ってくれよ」


「了解。ミケはなんか食べたい物があるか? 一応サバは持ってるぞ。今焼いてやろうか?」


「いや我慢してサバ欲高めてからにするわ。その方が旨いしな。他にやったらエビはあるんか?」


「なら罠を仕掛けておくよ。明日までエビ欲高めとけ。食べ方のリクエストはあるか?」


「焼いてくれたらええねんけど、なんかおもろい食べ方あるん?」


「じゃ、色々作ってやるよ」


やったと喜ぶミケ。


「ぶちょー」


「ん? めぐみも何かリクエストあるのか?」


「イカ食べたい♪」


「わかった。明日頑張って釣るから楽しみにしてろ」


風呂に入ってミケとめぐみを寝かせてダンと二人で飲む。


「ぼっちゃん、なにがあったんだ?」


ダンは本当によく見てるね。


「あぁ、俺の魂をカスに調べて貰ったんだよ。それで疑問に思ってたことが色々とわかってね」


「話せる内容なら聞いてやるぜ? また一人で背負い込むつもりなんだろ? いい加減その癖やめろよ」


「まぁ、母さんと俺の事がどうしても気になってな。親子という倫理観があるのにどうしてこんなに魅かれるのかというのが気になったんだよ。血の繋がりがなくなったとはいえ、俺の意識からしたらあり得なくてな」


「まぁ、親には見えん年齢の姿をしてるしな。ぼっちゃんの好みのタイプだというのもあるんじゃねーか? 俺も可愛いと思っちまったからな。妙に魅かれるってのもわかるぜ」


「うん、俺と母さんの魂ってさ、めぐみが手作りした魂だったんだ。俺はゼウちゃんの星の魂だと思ってたけどちがったんだ。不思議なもんだね」


俺はダンに調べて来たことを話した。


「そうか、ぼっちゃんとアイナさんは運命の魂だったのか・・・」


「驚きだろ? でも男女として出会う事なく、親子として出会った。で、今に至るというわけだ。気が合うのも当然だよね。そういう風に作られたんだから」


「まぁ、今さらどうしようもねぇわな。ぼっちゃん、アイナさんとそういう関係になるつもりねぇんだろ?」


「そうだね、本能と頭の中とは違うからね。俺も母さんも本能に従うにはあまりにも大切な物がたくさん出来てしまった。本能より大切なものがね」


「ま、結論出てんなら別にいいじゃねぇか。その話ならラムザも同じだろ? ダムリンと運命付けられてんのにぼっちゃんを選んで子を産んだ。運命よりそっちの方が良かったんだろ。気にするこたぁねえ。運命なんて自分で決めるこった」


「そっか。自分で決めることか。そうだよね」


「そうそう、未来への道は無数にあって自分で選んだ方が後悔が少ないんだろ? これ、ぼっちゃんが俺に言った言葉だぜ。忘れてんじゃねーか?」


「はっはっはっは、そうだよ。自分の事になるとわからなくなるもんだね」


「そうだ。自分の事になるとわからなくなるもんだ。だから道がわかんなくなったら誰かに聞くのも悪くないと思うぜ」


「俺、やっぱりダンと一緒にいれて良かったわ」


「あぁ、俺もぼっちゃんに何度も助けられたからな。ぼっちゃんを産んでくれたアーノルドさんとアイナさんに感謝だな」


本当にその通りだ。



「あーっ、また男同士でイチャイチャしとるんかいな。ゲイルも〆鯖持ってるんやったら晩飯時に出しぃな」


「サバが食べられない時があったほうが次にもっと旨くなるんだろ?」


「これは焼きサバちゃうからな、別もんや」


そういってダンにあーんして食べさせてもらうミケ。めぐみも起きてきた。


「だし巻き玉子焼いてやろうか?」


「うん♪」


うん、俺も自分で歩きたい道をあるこう。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る