第723話 みんなでお休み

皆を集めたダンの家に向かう。


「よう、最近襲撃に来ねぇな」


「街作りには目処が付いたら再開するよ」


「ゲイル、俺達を集めた理由はなんだ?」


「これからの相談もあるけど、息抜きも良いかなって」


「息抜き?」


「ほら、飯も酒もまだちゃんとしたものがないだろ? チュールとブリックも頑張ってるけど、材料がないとどうしようもないからね。久々に旨い酒と飯食いたいんじゃないかなぁって」


「坊主、それは願ったり叶ったりじゃが、全員がここを離れたらおかしいじゃろ?」


「星の時間を一時停止する機能を付けて貰ったから大丈夫。皆をここから連れて出て一時停止。戻る迄に一時停止解除したら数分しか離れてないことになるよ」


「でかしたっ!」


ドワンは俺を抱き締めて喜ぶ。旨い酒が飲めなくて相当フラストレーションがたまっていたのだろう。しつこくでかしたと俺にくっつくドワン。


ん?


「おやっさん・・・?」


「黙っておれ」


「え、あ、うん・・・」


「あ、おやっさんの星の一時停止は俺がやりに行くことになるけどいいよね?」


「当たり前じゃっ」


「俺、魚食いたいんだけど、皆は何がいい?」


「えっ? サバ食わしてくれるん?」


「ミケも食いたいだろ?」


「やったーっ! ウチの事を一番に考えて魚言うてくれたんやろ? やっぱりウチが一番なんやっ」


ミケが俺に抱き付いてほっぺたにチュッチュッしてくる。こんなこと今までしたことなかったのに・・・


シルフィード、アイナ、マルグリッドがぐぬぬっとしている。


「いや、ダンもタコ食いたいかなと思って・・・ 肉とかどこでも食えるだろ?」


俺がそう言うと赤オーガみたいになってたダンの怒りが収まっていく。大魔人みたいだな・・・


「なんだよっ。そういうことなら早く言えよっ」


ぶっきらぼうに笑顔で言うな。


「じゃ、エデンに行こうか。あそこなら色々釣れるし、海岸でも屋敷でもいいし」


俺の屋敷はエデンの代表が変わってもそのままにしてくれてある。グリムナの遺言らしい。


「屋敷がええわ。あそこ遊ぶとこもあるしな。またダーツやろうや」


「了解。いつから行く?」


「今からーっ!」×全員



皆を魔界経由でエデンの屋敷に送り、俺はドワンの星の時間を一時停止をした。


「お待たせ、俺達も行こうか」


めぐみ達を連れて移動する。



「じゃ、まずは釣りをしようか」


「俺達は食材と調味料を仕入れたいんです」


チュールとブリックはちゃんとしたものを作りたくて仕方がないんだな。


二人に魔道バッグを作り冒険者で稼いだお金をドサッと渡しておく。


「全部使ってもいいぞ。また稼ぐから」


二人は喜んで買い物に行った。もう顔見知りは誰もいないから問題ないだろう。



皆で釣りに行くがなんとなくドワンが変だな。久々の釣りで興奮しているのだろうか?


まずは小物とイカ釣り。餌にもなるし大量に釣って貰おう。ダンもタコ釣りが本当に嬉しそうだ。各々が元に戻ったかのようにちゃんと一緒にいる。もしかしたらもう男体化したのだろうか?


その後は大物釣りに移行してブリやカンパチ、ヒラメ、スズキとか釣っていく。


「坊主、マグロを釣るぞっ」


「すぐに食べられないよ?」


「食えるまでおったらええじゃろ?」


気のすむまで遊ぶつもりか・・・ 個人的には2~3日の予定だったんだけどね。


マグロは1匹ドワンが釣った。ファイトを楽しまずに俺に電撃で仕止めさせた。喰う方を優先するとは珍しい。



夜に屋敷でお魚パーティー。


タコわさ、〆鯖、鯛とヒラメの昆布〆を仕込んでいく。それ以外はチュールとブリックがやってくれた。素晴らしい!


キキララは子供シルフィードとキャッキャ遊んでいる。3人とも楽しい子供時代がなかったからな。シルフィードは身体を子供化してから中身も子供化してるよな。


めぐみは俺の膝の上に座ってあーんしている。昔こうやってマリアやチルチルによく食べさせてたな・・・


隣にはラムザとチルチルが座っている。ゼウちゃんはドワンとか。少し座る配置が違うけど、昔のまんまだな。


あー、魚と酒が旨いわ。



「ぼっちゃん、しばらく色々と仕入れたいんですけど、予算ってどれぐらいあります?」


「まだあるけど、ここであんまり大量に仕入れたら変に思われないか?」


「ディノスレイヤと王都、ドラゴンシティ、南の領地にも仕入れに行こうかと思いまして」


「了解。なら、朝送って夕方迎えに行くとかでいいか?」


「出来れば各箇所3日ぐらい回りたいんですよ」


「了解。じゃその予定でいこうか」



これ、かなり買うつもりだな。日中は冒険者で稼がんとな。



しこたま食べた後に鯛茶漬けを食べて気付く。これ、シルフィードが炊いたご飯じゃない・・・ そう思ってふとシルフィードを見るとキキララとふざけて遊んでた。ま、仕方がない。



夜はダーツ大会。めぐみが離れないのでトントンして寝かせておく。


「ゲイルくん、酷くない?」


「最近、ずっとこんなんだから、たまにはいいかなって」


「ふふ、そうね」


そしてダーツ大会が始まる。キキララもはしゃぎ過ぎたのか少し眠そうなのでめぐみのそばに寝かせる事に。


「シルフィも一緒に寝る? お泊まりみたいでいいだろ?」


「お泊まり?」


「普通の子供はな、友達の家に泊まりに行ったり、こんな風に旅行に行ったりしたら一緒に寝たりするのが楽しいんだよ。ここで寝てもいいし、同じ部屋で寝てもいいぞ」


「シルフィ、部屋に寝に行こっ」


キキララにそう誘われて部屋に行くことに。


「ちょっと寝かし付けてくるわ」


「めぐみはどうするの?」


「部屋で寝かせたら起きて来そうだからこのままにしておくよ」


「では我も行こうか。たまには母らしい事もしてやらんとな」


ラムザは基本キキララをあまり構わない。卵性だからかもしれないな。でも何かあると先に逃がしたりしてたし、勇者にやられた時も子供を庇って不覚を取ったからな。愛情がない訳ではないだろう。俺がずっと構ってるのも原因かもしれない。


俺が子供シルフィードを抱っこして、キキララはラムザが抱っこした。



子供達が一つのベッドで寝た後にシルフィードもトントンしてやる。


「なぁ、ラムザ」


「なんだ?」


「キキララの寿命のこと知ってるか?」


「うん?」


「ラムザとダムリンって寿命ないだろ?」


「そうだな」


「キキララには寿命があるんだって」


「やはりそうか。薄々そうではないかと思ってはいたがな・・・」


「ラムザはキキララの事を子供として可愛いか?」


「無論だ。ゲイルとの子供なのだ、可愛くないはずがない」


「そうか、良かった」


「様子が変だったのはそのせいか?」


「そうだね。俺は勝手にキキララにも寿命が無いと思ってたんだよ。ずっとこのままでいてくれるんじゃないかと」


「例え寿命が無くとも子は成長する。人族よりゆっくりだがな。生まれた時より少し大きくなっただろ?」


「そうだね。子が成長するのは嬉しくもあり、寂しくもあるね」


「我は喜びの方が大きいぞ。どのように育つか楽しみだ」


「そっか、そうだよね」


「うむ」


「ラムザ、子供達が大人になるまでもっと構ってやってくれない? この子達には前世の記憶があるけど、親に構われた経験がないんだよ。今父親に構われてる経験してるけど、母親のも経験させてあげたいんだよね」


「ゲイルはそれで良いのか? 娘を構いたいのだろ?」


「俺は甘やかし過ぎるからね。それにこの子達の魂を何とかして昇華するようにしたいんだ。もう消えて無くなって欲しくないんだよ。だからそうなるように色々な経験をさせて、時には厳しく育てないといけないんだ。少しずつパパ離れをさせないといけないと思ってるんだ」


「そうか、ではゲイルの望み通りにしよう。我も子供達中心の生活をした経験がないからな。色々と失敗するかもしれんが構わぬか?」


「失敗も経験のうちだ」


「ふふっ、ゲイルのそういうところが好きだぞ」


むちゅーーーっ


子供が寝てる横ではしないからねっ。



ダーツ会場に戻るとアイナが勝ち誇っていた。


「かぁ・・・ アイナが勝ったの?」


アイナ、ミケ、チルチル、マルグリッドで勝負していたようだ。


「ゲイル、明日から何をするつもりなのかしら?」


「チュール達を送ったあと、冒険者をして稼ぐつもりだけど?」


「あら、ちょうど良かったわ。私とパーティー組みましょ」


「俺、ソロなんだけど?」


「いいのよ、私は登録しないから活動だけ一緒にすれば」



どうやら、ここにいる間は誰が俺を独占するか賭けてたらしい。皆元に戻ったわけじゃないのね・・・


アーノルド達は俺を独占する賭けを阻止出来なかったらしい。


アイナの、


「何が不服なの? 別にいいでしょ?」


の一言で黙らせたようだ。その時の光景が目に浮かぶ。


次の休みは絶対に私がっとチルチルが悔しがっていたのだった。





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