第717話 奥さん達に解決してもらう

「アーノルド様よ」


「もう様はいらんぞ」


「じゃあアーノルドさんでいいか?」


「その方が呼びやすいならそれでいい」


「あのぼっちゃんの言ってた意味と行動の意味がようやく解ったわ」


二人は不味いワインを飲みながら語らう。


「そうだな、俺もアイナと一緒にいるのが当たり前だと思い込んでたわ。それがそうじゃなくなるかもと思ったらな・・・」


「アイナさんに女は感じたか?」


「いや、可愛いと思うだけで何も・・・」


「俺もだ。ミケを撫でても何とも思わんし、ミケも何も嬉しそうにしない。なんだかそれが妙に寂しくてよ・・・」


「ゲイルといる時は楽しそうなんだよアイナのやつ・・・」


「ミケもだ」


「ぼっちゃんはライバルだと言ったよな。あれは本気だ。多分手を抜かねぇ。元々ミケの事も気に入ってたしな」


「アイナもそうだ。あいつの言うとおり俺とゲイルの好みは似ている。それに今のあいつは俺より歳上の見た目だ。アイナは本当はそういうのが好きな気がする。それに昔からゲイルと笑うポイントとかも同じだからな。親子関係、年齢とか全てゲイルはクリアしたんだ」


「ぼっちゃんにはもう3人の嫁がいるから今さら何人増えても受け入れられるんだろな。本気だよと言ったのは本当だろう。シルフィ達にもすでに言い含めてあるんだろ。ミケとじゃれてるの見てもなんにも言わん」


「本当にまずいな。このワインより不味い」


「あぁ、本当に」



「なんや二人で楽しそうにキャッキャうふふして風呂はいってんのか? ウチも入ったろ」


「ミケはダメだよ。あっちにも風呂作ってあるからダンと入りなよ」


「そんないけずいいなや、今さら嫁が1人2人増えてもええやんか」


「ダンがいいよって言ったらね」


「言うんちゃう?」


「そうかな? 帰って来たら試しに俺と一緒に風呂入っていいか聞いてみたら? それでOK出たらね」


「しゃーない。ダンがOK出したらちゃんと約束守りや」


OK出したらな・・・


今の俺とシルフィは子供ボディだ。シルフィの姿をこうなって欲しいとイメージしたらちゃんと変わるのが面白い。


「ゲイル」


「何?」


「これぐらいの年齢が良かったの?」


「違うっ!」


やめろ、また変態ロリ王の称号が付いたらどうすんだ。



「なぁ、ダン。ウチもゲイルと一緒に風呂入ってもかまへんよな? シルフィードと楽しそうに入っとったから一緒に入ったろ思たらあかん言いよんねん。ダンが許可せん限りあかんねて」


「ぼっちゃんが俺の許可を取れだと・・・?」


「せや。それに試しにダンと一緒に入れやて。ダンはウチと風呂に入りたいか?」


ダンは理解する。ゲイルは本気だがちゃんと事前に説明し、今も筋を通している。俺達をなんとかしようと思ってるのだと。そしてこの状態の問題は自分にあるのだと。


「あぁ、たまには入ろうか。昔は一緒に入ることも多かったからな」


「いや、ダンがウチと入りたいんやったらかまへんけどな」


そしてダンはミケの身体を見て気付く。昔の通りだ。自分の身体が変わって、あるべき物が無くなってしまっても排泄することもないからまったく気にしてなかったのだ。


「なぁ、ミケ。俺の事今でも好きか?」


「好きは好きやけど、正直言うてトキメキはないな。あんたもそうやろ?」


「ぼっちゃんはどうだ?」


「そやなぁ、昔から好きやったけど、今のダンに対する感じと似てるな。そやけど最近ちょっとちゃうねん。もっと構うて欲しいとか思うわ。特に魔王ゲイルにな。ケイタには懐かしい感じや。拾ろてもろた頃のイメージが強いんやろな。ミーシャとか他のやつらが無理やり風呂入りにいってた時に一緒に混ざって怒らすのおもろかってん」


「ミケ」


「なんや?」


「頼む」


「何をや?」


「お、俺とずっと一緒に居てくれ・・・」


「別にかまへんけど、ゲイルと風呂入りに行ったりするんはええんやんな?」


「ダメだっ」


「なんでなん? 別にかまへんやん。こないしてウチと風呂入っててもなんも嬉しないんやろ? ぜんぜんそんな感じ伝わってけぇへんもん」


「嫌なんだっ。ぼっちゃんとミケがそんな風になるのが嫌なんだっ」


「なんでなん? 今までそんなん言うたことないやん」


「そ、それは・・・」


「それは?」


「ぼっちゃんが今までお前を女として見てなかったからだっ。でも今は違うっ」


「何言うてんねんな。そんなことあらへんわ」


「魔王ゲイルが来たときイチャイチャしてんじゃねーかっ」


「そやで、ゲイルはウチを満足させてくれんねん。でもそれは昔からやで。ウチがしんどい時はなんも言わんとそばにおってくれたり、美味しいもん作ってくれたり、自信が無くなった時はそれとなく褒めてくれて、ウチの活躍出来ることさせてくれたりとかな。それはずっとや」


「え・・・?」


「自分で言うのもなんやけどな、ウチの事は可愛いと思てくれてるとは思う。気にも入ってくれてるとも思う。そやけどな、男と女のそれとちゃうねん。匂いも好きやというけど陽だまりの匂いみたいで好きとしか言わんやろ? ウチもゲイルの匂いは好きや。優しい匂いやからな。安心する匂いや。ウチは昔のダンの匂いに魅かれる。発情したときもわかるし、嬉しいとも思う。あぁ、ウチの事を好きなんやなぁって」


「ミケ・・・」


「でもな、今はそれがなんもない。かもてもくれへん、言葉にも出してくれへん、ウチに発情することもあらへん。あー、もう興味無くなったんやなとしか思えへんやろ?」


「すまん・・・」


「別に謝らんでもええ。ウチらは魂で繋がってるとゲイルは言うてくれた。せやけど今は魂が無いんやろ? そやから記憶でしか繋がってないんちゃうかな? ダンがウチに興味無くしてもしゃーないんちゃう?」


「そんな事は無いっ。でもこの身体じゃ・・・」


「別に身体はどうでもええねん」


「え?」


「そういうこと無くてもかまへんて言うてんねん。せやけどな、ウチの事を思ってくれてへんねんやったら別に気ぃ使わんでええねん。この前撫でてくれたときも別にダンは嬉しなかったやろ? 義務みたいな感じでされてもこっちも嬉しないねん。そやけどゲイルはウチの事を嬉しそうに撫でてくれんねん。だからウチも嬉しいんや」


「俺はミケが好きだ」


「そう言うてくれんのは嬉しいんやけどな、記憶がそう言わしてるんちゃう? もう一回ちゃんと自分の気持ちを見直してみた方がええで。心配せんかてゲイルとはそういう関係にはならん。慌てる必要はあらへん。ウチの事はな」


「どういう意味だ?」


「アイナとマルグリッドはどうするか、はよはっきりさせた方がええと思うで。マルグリッドは昔からゲイルのこと好きやろ? ジョンがその想いより上いきよったから良かったけどな。今はその想いないやろ? そしたらあっさりゲイルんとこいくわ。ゲイルはその気ないかもしれんけど、そうさせたんは自分やから受け入れると思うで。アイナはもひとつヤバいんちゃう? ゲイルの好みさかいな。匂い嗅いだ時もびっくりしてたからオカンやのうなって女として意識したんちゃう? あの2人は相思相愛や」


「しかしアーノルドさんとあんなに・・・」


「ウチはこう思うねん。もし、アーノルド、ゲイル、アイナの出会いが同条件やったとしたら取り合いになるやろ? どっちが勝つと思う?」


「アーノルドさんじゃねぇのか?」


「ウチはアイナがゲイルを取ると思う。今回も親子の記憶なかったらアーノルドはアイナを繋ぎ止められへんかったんちゃう?」


ミケは現状を冷静に判断していた。ダンが本当に自分に興味がなくなってしまったままなら悲しいけど、その時は女体化したのを元に戻せるかゲイルに相談しようと思っていた。



「アーノルドさん、事態は相当まずいらしい」


「俺もアイナと話した。親子の記憶が勝ってるうちしか待てないわよと言われたよ」


「ミケの勘だが、ぼっちゃんとアイナさんとは相思相愛かもしれないと言ってた」


「だろうな。しかし、絶対にアイナは渡さんっ」




「な、ダンは許可しなかったろ?」


「うん・・・」


「なぁ、ゲイル、頭撫でてぇや」


俺はミケをよしよししてやる。


「ウチの身体元に戻せるんやろか、あのなんもない身体に・・・」


「ミケ、ダンを信じろ。今はやり方が見付からんだけだ。俺もダン達を男の身体に戻すのはこんなやり方しか思い付かなかったからな。自分の状況を自覚したならすぐに見つけるさ」


「元に戻ったらまたこんな風に撫でてくれるんやろか?」


「俺はダンが一番初めにそうなると思ってる。次がジョンかな。で、最後は父さんだ」


「アーノルドが一番ちゃうん?」


「俺と母さんって昔からどっかで繋がってるんだよ。俺の思考読まれてるからね。それがなんなのか分からないけど。だから本気で取り合ってみるよ」


「それでアイナがあんたを選んだらどうするん?」


「父さんは俺に勝つまで止めないよ。だから俺は勝てない。ミケも決戦を楽しみにしてろよ。見世物としたら面白いと思うぞ」


「そうか、ほならウチも楽しんで見とくわ」


「おう、楽しみにしとけ」


「なぁ」


「なんだ?」


「あんたええ男やな」


「ミケもいい女だぞ」


「ダンが元に戻らんかったらウチの事をもろてくれるん?」


「あぁ、また拾ってやる」


「あんた酷い言い方するなぁ」


「こんな言い方じゃないと惚れるだろ?」


「ほんまやな」







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