第703話 なんで…
翌日からエルフを探しにいった。おそらく残念ながらエルフの集団の中には居ないだろう。もし居たらグリムナが気付いているはず。可能性が高いのは王都かセントラル。寂しがりやだから人の多い所。で、じめっとしてるところにいる気がする。それにエイブリックと共に昇華するならそこそこの年齢のはず。
初恋の似た人に酷いプロファイリングをしていくゲイル。
「王都に行こうか」
「また列車に乗るのかよ」
「じゃ、セントラルに飛行機で行こうか」
魔道バッグに入っていたのを使う。転移だと見られるかもしれないからな
「ぶちょー、あれなに?」
「チャンプの寝床だよ。まだどっかで寝てるんじゃない?」
「あいつ、本当にカスよねぇ」
運転席は単座だからめぐみは俺の後ろから俺に抱き付くような感じで纏わり付いている。
「ぼっちゃん、女神さんはえらくべたべたするようになったな」
「めぐみはずっと一緒にいる気だからね。気にせず慣れて」
「ほならウチらもこうしてよか?」
ミケもダンに腕を組んでベタっとする。
哀れエーノルドは一人きり。記憶も戻らないので話にも付いていけずブスッと拗ねていた。うむ、早く残念なのじゃを見付けてあてがわねば。
セントラル郊外に降りて、門から入る。皆はA級冒険者、おれはS級治癒士だ。ゲイルの名前はヤバいかなと思ってたらとてもポピュラーな名前になっていた。もしかしたら生まれ代わりかもと名付ける親が多くそれが定着したようだ。
派生した名前も多い。ゲール、ゲイルン、とかアーノルドと混ざったゲーノルドとか。
セントラルはちゃんと復興していたがドラゴンシティと少し仲が悪くなっていた。
セントラルから見たらドラゴンシティは裏切り者で魔力を奪っていく存在のようだ。当時の事はちゃんと教えられているが喉元過ぎれば熱さ忘れるとはこの事だ。ドラゴンシティの方がはるかに発展しているのも原因だろう。あれから300年ぐらいたってるのだろうか?
この問題は争いの火種になるかもしれん。そのうちチャンプを呼び出してこの辺りを飛ばさせよう。歴史は本当だということを実感させねば。
汚魂ホイホイももう掛かる奴はおらず、掛かっても俺が居ない間は処理されてなかったみたいで単に閉じ込められて死んでいくようだ。
汚魂増えてるだろうな。そのうちヤギを放ってみるか。
山の北側は恐怖の伝説として残ってるだろうが、ここではヤギを放ってないからな。
ちょっと温玉するとあっさりとこっさりの間ぐらいのいるわ。めぐみは戻る気なさそうだからまたやるしかないか。
「魔道具ショップや魔法陣を扱っているところを探そう。しかも怪しげな所を中心に」
ギルドに行って情報収集する。AランクパーティーにS治癒士が来たとあってギルドが騒がしくなってしまった。S治癒士は伝説となっていたのでかなりヤバイ。Aにしといてもらったら良かった。
「猫の手の皆に是非受けてもらいたい依頼が・・・」
ダン達のパーティー名は猫の手だった。
「いや、俺達は他の仕事をやっててな。新規の依頼を受ける訳にはいかねぇんだ」
とダンは断る。だが、これはイベントのような気がする。
「依頼内容は?」
「おいおい、ぼっちゃん。聞いてどうすんだよ?」
「受けるかどうかは内容による。依頼内容は?」
「盗賊団の調査及び討伐だ。最近かなり被害が出ててな」
「衛兵だとダメなのか?」
「山に潜伏してる可能性が高くてな、冒険者じゃないと手が出せんだろう」
「わかった。想定場所を教えてくれ」
「お前なに勝手に決めてんだ。リーダーは俺だぞっ」
「わかった。これはソロで受ける。お前らは探しものをしててくれ」
「おい、ぼっちゃん」
「俺はこのパーティーでは新入りの臨時だからな。リーダーじゃないからこうするしかないだろ。それにこれは俺の仕事だ」
「勝手にしろっ」
「ぼっちゃん、俺は手伝うわ」
「いや、ダン達はエーノルドとそっちを頼む。おいギルマス。この依頼はソロで受けて殲滅してやる。その代わりどうやったかとかは詮索するな」
「Sったって治癒士だろ? 無理だ。ソロなら任せられん」
「なら被害が集中してる場所だけ教えろ。報酬はいらん」
「おい、ぼっちゃんっ」
俺を呼び続けるダンを無視して場所だけ聞いた。
「おい、ぼっちゃんってばよ。何で一人でやろうとするんだよっ」
「エーノルドの言うことはもっともだしな。それにこれは俺の仕事だ」
「さっきから俺の仕事ってなんだよ?」
「汚魂の駆除だ。俺がずっとやってたの覚えてるだろ? 今めぐみはここにいる。だから汚魂は俺が駆除しないとなくならない」
「あんときゃ女神さんがどこに行ったかわからんかったからだろ? 今ここに女神さんいるじゃねーか」
「ダン、めぐみは俺とずっと一緒にいると言った。俺もそれを望んだ。だから俺がやるしかないんだよ。俺はめぐみがやりたいことをさせてやりたい。それにめぐみを守ると決めたんだよ。この世界はめぐみそのものだ。だから俺はこの世界を守る」
ドクンッ
「ぶちょー・・・」
「心配すんな。お前ずっとこっちにいたいんだろ? お前の代わりは俺がやってやるからここにいろ」
「ぶちょーっ!」
「こらっ、抱き付く・・・な」
俺は抱き付いて来ためぐみを抱き上げる。
また重さが増している・・・。
「おいおい、ぼっちゃん。シルフィがいなくなったからって人前でそんなに女神様といちゃつくなよ」
ズキッ・・・
ダンはゲイルの暗くなった顔に気付いた。
「えっ、ああすまん。そんなつもりじゃなかったんだ」
俺は抱き上げためぐみを下ろした。
そう、俺はずっとシルフィードと一緒にいた。端から見たら嫁がいなくなったとたんに女神とはいえ他の女といちゃついているようにしか見えないだろう。ダンに悪気はない。そう思って当然だ。
「ぶちょー? どうしたの?」
「あぁ、大丈夫だ。もう俺は死なないから」
「うん♪」
「けっ、勝手に一人でやってろっ。ベア、行くぞっ」
「あっ、ああ。ぼっちゃん、悪いこと言っちまった。すまん」
「いや、ダンの言う事はもっともだ。謝る必要はない。3日後にギルドで落ち合おう」
(何であんなこと言うたんやっ。ゲイルの顔みたかあんたっ)
(いや、ぼっちゃんが女神さんを気に入ってたんは知ってたんだけどよ、あんなに恋人みたいになるなんて思ってなかったから驚いちまって)
(シルフィードはもうおらん。ゲイルも探そうとしとらん。それがどういうことかわかるやろっ)
(どういうこった?)
(もう生まれ変わってこうへんのちゃうか? ゲイルはそれを知っとるんやろ)
(そうだったのか・・・)
(ゲイルは誰かを守ってなあかんのや。その為に力を持った。昔は周りにいる皆をその力で守ってた。それやのに今はウチらとしか関わらんようにしとるような気がする。色んな理由あるんちゃうか)
(そうか、ぼっちゃんは自分の辛いとこ隠すんだったな。悪いことしちまったなぁ)
「おいっ、何こそこそしゃべってんだ。行くぞっ」
「ぶちょー、どうしたの?」
「大丈夫だ。心配すんな。今から汚魂駆除に行く」
「どうすんの?」
「ラムザのヤギを呼んで一網打尽にする」
「ラムザも呼ぶの?」
「いや、これぐらいならヤギだけで充分だ。今までもほとんどヤギにやっててもらってたからな」
「ふーん」
盗賊共が出るところをうろつく。あー、いるな。
「ヤギ、
10匹程のヤギを呼び出す。みんな嬉しそうだ。
「この辺りにいる奴を食ってくれ」
めぇ~ めぇ~ めぇ~
あちこちで悲鳴が聞こえ出す。
この気配・・・
ばっと土魔法でその気配を拘束する。姿を見る前から涙が溢れる。土魔法で拘束した二人をヤギが食おうとする。
「待てっ、そいつはまだ食うな・・ 俺がやる」
「クソッ! 離せっ!」
「なんだよっこいつっ」
「お前らっ! なんで、なんでこうなってんだよーーーーっ!!!!!」
ゲイルは二人を見て大声で叫んだ。
「何をやったんだよ・・・ キキ、ララ・・・」
ゲイルが拘束したのは魂の汚れたキキとララの生まれ変わりだった。
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