第702話 神(仮)

めぐみは翌朝起こしたらちゃんと起きた。良かった。


だし巻き玉子を旨そうにむぐむぐ食っている姿を見てほっとする。


「ぼっちゃん、俺達に何をやらす気だ?」


「皆を探そう。多分みな生まれ変わってたら近い場所にいると思うんだよね。ここ、ディノスレイヤ領、王都、ドラゴンシティ。南の領地とかだね。縁の有るところにいる可能性が高い。で、居なかったら他探しに行こう。まずは魔法が凄く使えてちょっといじめられているような人かな。エルフに生まれてるかもしれない」


「あー、誰かわかったわ。で、ぼっちゃんはどうすんだ?」


「ちょっと調べ物したいから夜にここで」


という事で別れて行動をする。俺はカスに色々と直接聞きたいのだ。もう俺にされたことを文句を言うつもりはない。ただ何がどうなってるのかを確認しておいた方がいい。


「めぐみ、カスってのに会えないか?」


「えー、あいつに会うのぉ?」


「色々と確認したいことがあるんだよ」


「呼ぶだけだからね。ちょっと時間掛かるかも」


「ちょっとって200年とかじゃないだろな?」


「すぐよ」


「10年とかか?」


「1日ぐらい」


おー、だいぶ感覚がすり寄ってきたぞ。


「わかった。じゃ呼んで来てくれ」


「なんか美味しいの作ってくれる?」


「何が食べたい?」


「じゃあ、焼き鳥っ!」


「わかった。たくさん仕込んでおいてやる」


皆が帰って来るまでせっせと焼き鳥を仕込む。今日戻って来なかったら晩飯は唐揚げにしておこう。エーノルドが喜びそうだから。塩、ニンニク醤油、カレー味だ。


あまり新しい人に関わりを持たないように食材を買いに行ってもコミュニケーションは極力取らない。肉屋のホルモンも買っておいたけどミートに比べたらまだまだダメだ。自分でクリーン魔法を掛けて残ってる汚れと臭みを消しておく。


アーノルド達やドワンとか早く神様になればお供えしてやれるんだけどな。シルフィードもそこに混ざったのかな?



めぐみは急いだみたいで夕方にカスを連れてきた。カスはもやっと人型の光の存在だった。まだ皆が帰って来てないので先に話をすることに。


「あんたがカス?」


「そうだ」


光から声が聞こえるのは不思議だ。


「酷い名前つけられたな。これ名付けたのめぐみだろ?」


「酷い? カスとはどのような意味だ? 嫌な響きだとは思っていたが」


「どうしようもない捨てる物を指すような意味だ」


「なんだとーーーっ」


「俺に怒んなよ」


「しかしだな・・・」


「じゃ名前自分で変えろよ。こう呼べって言えばいいだろ?」


「いや、あ、うむ・・・。まぁ、もう登録したからこれでいくしかあるまい」


「わかった。じゃカス。今回のことでどうしても確認しないといけない事がある。ラムザとめぐみの事だ。俺は二人と営むようにプログラムされたのか?」


「違う。そういうものではない。ただ、俺の星の人数を増やして欲しいだけだ。オスとメスを配置したがまったく増えん。理由がわからんのだ」


「あー、それはラムザ、メスの方ね、そいつがオスの方の臭いが嫌いなんだよ。だから子供を作ろうとしない。これはカス達みたいに子孫を残す必要がない者達には理解出来ないものだ。もう一体オスを配置すればいいじゃないか」


「俺の星は各星のバランスを取る役目と新機能をテストするための星だ。それに大半のリソースを振ってある。だから自然と増えてくれないと無理なんだ。魂を送れる数も少ない。あと5体でマックスだ」


「だから俺に子供を作らせたいのか?」


「あのメスに匹敵、いやそれ以上の者はお前しかおらん。もし他の者と営んでも子供は出来ないだろう。それにあのメスに他のオスが近付けないよう恐怖を感じる存在にしてある。なぜお前にそれが機能しないのかわからんがな」


「俺はラムザの事が好きだからな。別に強制されなくてもいいんだけど、めぐみがなんか嫌そうなんだよね」


「めぐみとはあのあほのことだな?」


あほとかやめたれ。


「そう。あいつはあれでいい。あのあほさにずいぶんと救われたからな。で、ラムザと子を作る前にめぐみと営むなとはどういう意味だ?」


「あのメスはお前と同じ生物だ。が、あのあほは違う。もしあのあほとお前が生物のまま混じると我々でもない、生物でもない何かになるかもしれん。そうなってしまうと星の管理も出来なくなり、全てが消滅する恐れがある。何が起こるか予測が出来ないのだ」


「俺がめぐみと営めるかどうかは別して先に伝えておかないとまずかった事項じゃないかそれ?」


「もう一人がそれを伝えたはずだが?」


いや、ゼウちゃん。もっとちゃんと説明しようよ。


「で、ラムザと子供を作ったらなぜそれが解消される?」


「お前の未練が無くなり、(仮)が取れて俺達と同じ存在になる。そうなれば別に混じり合っても問題はない。貴様があのあほとひとつになるだけだ。まぁ、実際になるかどうかはわからぬがな」


そうか、俺がめぐみといたすとあほになるのか。


「あとあのあほが大切なら、早めにメスと子供を作れ。で早く(仮)を取れ」


「どういうことだ?」


「あのあほは自ら生物に近付こうとしている。このままだとさっき言った我々側でもない、生物でもない何かになる恐れがある。その場合はこの星だけで済むから別に構わんがな。お前を失なうのはもったいないと思うが」


ヤバいっ。めぐみは重みが増えている。こいつの言うことは俺が前に危険を感じたことだ。しかし、もうめぐみを遠ざけても遅いだろう。俺達は繋がり過ぎた。


「わかった。色々と教えてくれてありがとう。ちなみに俺の未練がラムザとのことで解消されて神になったとするだろ? それで肉体を滅びさせたらどうなる?」


「未練が無くなってれば昇華する。今お前と繋がりがあった魂が昇華して混じりあってる最中だ。おそらくそこに混ざって俺達とまったく同じ存在になる」


「滅ぼさなかったら?」


「気のすむまでそのままだ」


「未練が残ったまま滅びたら?」


「魂は昇華せずに壊れる」


「うん、わかった。ここまでしてくれたのと教えてくれた礼に飯食ってけよ」


「お供えシステムの事か?」


「お供えされるより自分で食いたいもの食った方がいいだろ? その姿で食えるかどうか知らんけど」


「む、あのあほみたいに姿を作れというのか?」


「お前も一度、自分の作ったシステムの中に入って体験してもいいんじゃないか? ラムザとかお供えしないだろ?」


「しかし、お前はつくづく変わってるな。自分が作られた存在に疑問は持たないのか?」


「まぁ、楽しいも辛いも旨いもまずいもあるからな。例え俺がプログラムだとしても俺はここにいる。何も変わらんよ」


「俺に何かをしてくれとか頼まないのか?俺はカスタムしてやれる存在だぞ?」


「いや、今回色々と聞いて充分やってくれたから大丈夫だ。気の合う仲間と飯が食えて、そいつらが幸せの証として昇華するのを見届けるようにしてくれただけで感謝してる。あと自分で滅びを選ばせてくれるようにしてくれてあったことも」


「そうか、やはりお前が今までしてきた事と同じことをするのだな。よし、では礼にお前の好む姿になってやろう」


カスはふわふわと形を整えていく。


・・・

・・・・

・・・・・


「どうじゃ?」


ふはははははっ


「何でおやっさんの姿なんだよっ」


ゲイルはこいつはドワンと違うと解っていても泣いてしまった。



俺はカスに皆に触ってもらって姿を見えるようにしてもらった。


「お、おやっさん・・・」


「ダン、おやっさんじゃない。おやっさん(仮)だ」



カスは焼き鳥と強い酒をことのほか気に入り、ここにちょくちょく来るようになった。


こいつらは人の心を弄んでるのではなく、好意でこういう行為をしてくれるのだ。素直におやっさんと再会出来た事を喜ぼう。



その夜


「めぐみ」


「何?」


「お前、俺の事好きか?」


「うんっ♪」


「飯食わしてくれるとか髪洗ってくれるとかじゃないぞ。男としてだ」


「男として? えっとね、ぶちょーとして好き♪」


なんだよそれ・・・


ゲイルは相変わらず斜めの上の回答に笑いだしてしまったのであった。



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