第701話 魂に刻まれていた

「えっ、召喚者?」


俺は4人に初めから隠さずに話す。もう隠す意味はない。


「そんな事を信じられるわけないだろが」


「だろうね。でも俺には分かる。お前たちと俺は繋がっている」


「気持ちの悪いことを言いなや。まだ会うたばっかりやのに」


「なら、なぜ俺に付いて来た?」


「それはあんたに無理矢理連れてこられたんやろ?」


「嫌だったか?」


「別にそんなことあらへんけど・・・」


「俺は不満だ。勝手に仕切りだしやがって」


「じゃ、お前に良い人に会わせてやる。だけど惚れても無駄だからな。それと俺がお前の相手を見つけてやる。まだ独身だろ?」


「なんだそれ?」


「私はケイタくんがいいなぁ。独身なんでしょ?」


「心配すんなお前はすぐに俺に呆れるからそんな気持ちは消える」


「何を言ってるかさっぱりわかんねぇぞ」


「ま、すぐに分かる。めぐみ、皆の魂に触ってくれ」


ペロン


「わっ ・・・・・・キュンっ」


「だから惚れんなと言っただろ? 神様のめぐみだ。可愛いだろ?」


「えっ、あっ、うん・・・」


「めぐみ、ゼウちゃん呼んで。飯を一緒に食おう」


「わかった♪」


ポンっ


「あら、ゲイルくん。良い顔になったわね」


「ありがとう。ゼウちゃんのお陰だよ」


そしてゼウちゃんにも皆に触ってもらう。


「俺が居た世界の女神様だ。めちゃくちゃ美人だろ?」


「まぁ、ゲイルくんはお上手ね」


4人は口をパクパクさせる。


「で、次は魔王を紹介する」


「は?」


ブゥンと魔法陣を空中に描き頭を突っ込む。


「ラムザっ、飯食おうぜ」


「おっ、少したくましくなったか?」


「話は後だ。早く食おうぜ」


「うんっ」


あ、可愛い・・・



「うわぁーー」


「何を怖がってんだよ。可愛い顔してんだろがっ」


「いや、ものすごい威圧感が・・・」


「そんな風に感じるのはまだ修行が足らんからだっ」


その後はめぐみに食べたいものをあーんしていく。うん、この顔を見られるのは幸せだ。


「いいなぁ・・・」


「じゃ、チルにも食べさせてやる」


「ねぇ、ケイタさん。なんで私の名前は知ってるの? 名乗ったけ?」


「え? 名前チルっていうのか?」


「うん、孤児で名前わからなかったから自分で付けたの。愛称はチルチルよ」


「ダン、お前の名前は?」


「ベアットだ。勝手に他の名前で呼ぶなっ」


「ミケ、お前は?」


「ウチはフランや」


そうか、あの時に遂げられなかった思いを今世で・・・ しかも寿命が同じぐらいの種族でか。


ちょっと泣きそうになる。エーノルドはアイナへの想いを引き摺ってるからアーノルドに似た名前なのか。やっぱりこの世界は面白い。


「ねぇ、ゲイルくん。あのパイナップルとオレンジのお酒飲みたいわ」


「ダン、このパイナップル搾ってくれ」


「そんなもん出来るかよ。それにダンと・・ ちっ、ダンでもいいわっ。なんか妙にしっくりきやがる」


「そうだろ? このパイナップルを両手でフンッてやれ。絶対出来るから」


フンッ ぼたぼたぼたっ


若い頃のダンとそっくりだな・・・ 凄く嬉しいわ。


「ほれよ、ぼっちゃん」


「ありがとう・・・・えっ?」


「ぼっちゃんが搾れって言ったんだろが」


「ダン・・・ お前・・・」


「泣くなよっ。こっちまで泣けて来るじゃねーかよっ」


俺はダンに抱きついた。


「会いたかったんだ。会いたかったんだよお前にっ」


「だから泣くなっていってんだろがっ」


ダンもぼろぼろと泣いた。ダンは昔の記憶を取り戻した。


「ど、どないしたんやっ」


「お前はぼっちゃんにサバを焼いて貰え」


俺はサバを焼いてやると、食べた瞬間いきなり当たりやっと言い出した。


「えっ? なんなんこれ? ・・・うち、うち、涙が勝手に・・・」


ミケも記憶がインストールされるかのようにゲイル達と過ごした楽しい日々が甦ってくる。


「うははははっ! ゲイルやん。なんや懐かしい思てん。サバめっちゃ旨いわっ」


「おいっ、どうしたんだよお前らっ!」


「ぼっちゃん、こいつはエイブリック様なんだよな?」


「それしかないだろ? で、こいつは娘のチルチルだ」


「えっ? 娘・・・ 違うっ。私は私は・・・・ うゎーーーん、ゲイルぅぅぅ。会いたかったぁぁぁぁ」


「どうしちまったんだよ、お前ら・・・」


エイブリックは記憶が甦らなかった。多分ドン爺のビデオを見せたら思い出すだろう。だが、アイナへの想いを上書きするまでは思い出さない方がいいと思う。大切な記憶は時に新しい出会いの邪魔をするからな。


エーノルドだけ思い出さないまま。昔のように楽しく食事をする。


めぐみとラムザが俺にべたべたしても拗ねるシルフィは居ないけど。


「ゲイル、今度はお嫁さんにしてくれるの?」


「お前は娘だと言ったろ? それに俺に呆れると」


「何に呆れるの?」


「それはそのうちに分かる」


「あっ、そうだ。ゲイルくん。カスが一度ラムザの星に来てくれだって。めぐみの所だと話にならんって言ってたから」


「カス?」


「色々とやってくれてる者の名前よ」


星を作りしものの名前か。酷い名前だ。めぐみが付けたに違いない。


「じゃ、食べ終わってラムザを送って行くときに行くよ」


「おっ、いよいよだな」


「もう少し待てよ。この身体ショボいんだよ。いくら鍛えてもなかなか思い通りに動けないんだ」


「あっ、私の星の身体だからじゃない? めぐみの所の身体と似てるけど少し違うのよね」


あー、なるほど。やっぱり違うのか。


「ゼウちゃん。じゃあこれ以上鍛えても無駄? 前みたいにならない?」


「無理だと思うわ」


そうか、もしかしたらと思ってたけど。それならもっと早くに魔法に切り替えてめぐみに好きな物を食わせてやれば良かった。甲斐性無し旦那ですまん。


って、旦那てなんやねんっ。


そんな事を思ってるとゼウちゃんが手招きする。


(ゲイルくん、ゲイルくん)

(何ゼウちゃん?)

(めぐみとしちゃった?)

ぶーーーっ

口に含んでた物を吹き出してしまう。

(すっ、すっ、するわけねーだろっ)

(じゃ良かった。初めにラムザとしてね。それが今回のカスとの約束なの。その前にめぐみとしちゃったらまずいらしいの)

(ラ、ラムザとはともかく、めぐみと出来るわけないだろっ)

(でも、求められて嫌じゃなかったらしてあげてね)


あんた神様が神様に何をしろと言ってるのかね? 確かにめぐみから良い匂いがしてソワソワしたりするけど、マネキンボディと出来るわけないだろっ。それにもし一線を越えたら・・・・


「ねー、ぶちょー。なんの話をしてんの?」


「何でもなーいっ」


俺、真っ赤になってないだろうな?



エデンの屋敷に皆の部屋を選んでもらってここに住んでもらうことに。


「じゃ、ラムザ送って行くわ」


ラムザは俺に腕を組む。まだやめて。我慢出来なくなるから。


ラムザの星に来るとなんか身体が光りだした。


それが収まると身体がとても軽くなる。


「これ、何が起こったかわかる? スッゴク身体が軽くなったんだけど」


「ブラッシュアップ? バージョンアップったけな? なんかそんなのするとか言ってたわ。それをやりかけたらめぐみの星にいっちゃったから終わらないって言ってたのよ」


あー、めぐみの所はメモリとかショボいからな。


取り合えず自分を鑑定。ローディング中だったのはめぐみのせいだったか。


【名前】_ _ _ _


自分で決めろってか? もうゲイルでいいわ。


【名前】ゲイル


【種族】神(仮)


は?


まぁいい。もう気にしても仕方がない。


【魔力】無限/無限


0000とはどう比較していいがわからんが、治癒魔法とか指輪の事を忘れててそのままやっても問題なかったから、ちゃんと1から無限までにしてくれたのか。これは助かる。


【使用魔力】_ _ _ _ _ _ _ _ _ _



素晴らしい。どれだけ使うか見えるのか。凄いじゃんカス。


で、スキルはどうなってるのかな?


えっと増えてるのは・・・


【スキル】ワガママボディ



なんだこれ? チラッと自分の胸を見るが別にきょぬーにはなっていない。


「ゼウちゃん。今度カスにあったら、ワガママボディってなんのスキルか聞いておいてくれない?」


「あ、それ聞いてあるわ。なりたい年齢の肉体になれるそうよ」


は?


「どういうこと?」


「一応ゲイルくんの寿命が無くなったの。何度もやり直すの面倒でしょ? こっちも大変だからって。でもどうしてももう生きてるのが嫌だってなったときに肉体を終わらせる年齢迄自分で進めてくれだって。魂もそれに合わせたから、肉体が滅びる時に魂が壊れるか、昇華するかはゲイルくんしだいよ」


つまりもう生まれ変わりはせずに、任意で選べるのか。ずいぶんとサービスがいいな・・・ 先にブラッシュアップが終わってこれを知ってたらすぐに滅びを選んでたかもしれん。


よし、これで皆の昇華を見送ってやれるな。


「でね、これには条件があってね、ラムザとの子供を出来るだけたくさん作ってくれって。だから遠慮せずにバンバンやってね。もう宿命でも義務でもいいから」


あんた、女神がバンバンやれとか義務とかいうな。ラムザを義務で抱くかよ。


「あと、それまでは絶対にめぐみを抱かないでね。なにが起こるかわからないからだって」


「抱けませんっ」


物理的にもマネキンボディなんだから。



「ではゲイルよ。まぐわうか?」


「ちょ、ちょっと待って。まだ心の準備が・・・ でも吸ってくれるとありがたい」


ラムザにじゅるるるるっと吸ってもらった。もらったはずなのに・・・


これ、ヤバいかも・・・ そっちも無限になってんじゃないのか?


「あ、ありがとうラムザ。また呼ぶよ・・・」


ゼウちゃんとラムザにバイバイして屋敷に戻った。



「したの?」


「何を?」


「ラムザと」


「まだしてませんっ! 身体のブラッシュアップというのをやってもらったんだよ。お陰で軽くなった。前みたいに動けるみたいだよ」


「そっか♪ してないんだ」


何喜んでんだよ?



はぁ、ここの風呂は俺のプライベート温泉。久々にお湯に浸かろ。めぐみも寝かせたから来ないだろ。



ふぁー気持ちいい。やはり風呂はいい。生き返るわ。生き返ったけど。


しかし、この状態がラムザとの子供を作る条件になってるとは・・・ しかもラムザに吸ってもらっても減る様子がなかった。これは子が出来るまでやり続けろってことなのだろう。


しかし、ゼウちゃんはなぜ何度もめぐみと先にするなと言うのだろう? そんな事が出来ないの知ってるはずなのに?



風呂からあがって部屋に戻るとめぐみが起きていた。


「自分だけお風呂にはいったの?」


「起きてるなら入って来いよ」


「いい。頭洗って」


もう一度風呂場に戻って洗髪専用洗面台でめぐみの頭を洗ってやるとスースー寝たので乾かして抱き上げる。


え?


なんだよこれ・・・?


軽いけどまた重くなってる・・・ またこいつ、起きないんじゃ・・・



ゲイルはめぐみをベッドに寝かせた、心配で朝までずっとめぐみの横で見守り続けたのであった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る