第687話 見つからないわけだ

翌日から管理下に置いた科学者達とバンデス達に色々と作ってもらうことに。俺が考えるより良いものが出来るだろう。こういう魔法陣や浮遊石、魔金があることを教える。作り方は教えない。


「ここにはこんな物が・・・」


「新しい物を作るにはどう人に役立つかを念頭に置いて研究してくれ。便利な物は危険な物と表裏一体。自分達が作り出した物には責任を持て。俺やバンデスが危ないと思った物は研究を止めるからな」


「わ、わかりました」


皆にはここの言葉をインストールしてあるからコミュニケーションに問題はない。元の世界でも欲しかったなこの機能。俺のサイエンススキルはまだnow loading中だけど。



ここに戻って来てからの生活は魂にこびりついた汚魂の子供の泣き叫ぶ声を和らげてくれる。それで俺がやった事が消える訳ではないのだけれど。


晩飯はラムザがこってり希望だったので、サバ味噌、レバニラ、ホルモンの味噌だれ焼き、マッドクラブのクリームコロッケとかを作ってやった。こってりがきつくなってきた面々には〆鯖や一夜干しサバもある。


今日は大勢集合だ。ミーシャ達も来てるので肉を追加。ローストビーフでいいだろう。塊をミーシャの前に置いておくので好きに食べてくれ。


ミーシャはその肉の固まりをはじめ人間かと思うぐらいの厚さで切っていた。それマンモスの肉じゃねーぞ。


「ふむ、どれも旨い。このカニクリームコロッケは初めて食べるな」


「それ作るの結構面倒だからめったに作らないんだよ。今回こってり希望だったから色々なこってりを作ってみたよ」


「うむ、愛を感じる味だ」


なかなか上手いことを言う。確かにラムザの為に作ったからな。これは日頃の俺への優しさへの礼でもある。


「次はいつ頃出るのだ?」


「今チャンプが寝ている所から魔道線を引いたら出ようかと思ってる」


「もう行くの?」


「そうしないと終わらないからね。珍しい物とか見付けたらお土産に持って帰って来るよ」


ここでこの生活をしていたら行きたくなくなるからな。


「ぼっちゃま、あーんして」


マリアはいつまでも俺に甘えん坊だ。思わず膝の上に乗せてぎゅーっとしてしまう。


「ゲイルがべったりすんの女の子ばっかりやなぁ。ドゥーンやテディにはあんましそんなことせんよな?」


もう息子はお腹いっぱいだからな。


「俺、娘が欲しかったんだよ。それに男の子はお母さん大好きだろ? 甘えるのはお母さんに任せるよ。俺は鍛える方に回るから」


「あーーーーっ! ぼっちゃん、テディに土魔法で撃つの教えただろっ」


ちっ、バレたか。


「教えてないよ」


「嘘つけぇっ! この前なんか尻にぺちぺち当たるなと思ったら土の玉みたいなのが落ちてたんだよっ」


「教えてないさ、単にテディの手を通して土の玉を撃ってみただけ。良かったなぺちぺちで済んで。そのうち尻撃ち抜かれて討伐されるかもよ?」


「何で息子に討伐されなきゃなんねぇんだっ!」


「ぼっちゃま、マリアには火魔法を教えましたよね? ドゥーンには?」


「男の子に攻撃魔法を教えたらまずいからね。それより商会運営教えた方がいいと思うぞ」


「そうなんですか?」


「ザックも早く仕事任せられたら早くからのんびり出来るぞ」


「ハハハハっ」


乾いた笑いをするザック。


「ぼっちゃん、子供が魔力切れで倒れたらどうすんだよ?」


「普通の子達より全然多いから大丈夫じゃない?」


「は? なんかやったのか?」


「内緒」


子供達が飲むジュースは甘味料魔力水入りなのは秘密だ。日々過剰回復して魔力がバンバン伸びている。これもそのうち止まるだろうけどね。特にテディはきっとダンの様に戦いに身を置くことになる。魔力はあるに越したことはないのだ。


「ぼっちゃま。マリアは火魔法上手くなったんだよ」


「えっ? 練習してるの?」


「マリア、いつやってるの?」


「へへへ、内緒」


「ちょっとやって見せて」


場所を移動して丸太を置いて火魔法を使わせてみる。


シルバーを焼いた時のように手を伸ばして炎を出すマリア。まだまだだけど・・・ なんだこの色は?


青白い炎? 高熱なのか。いや、ここまで熱が伝わらないからそうでもないのかも。でもちゃんと丸太は燃えた。


なんだこれ?


「あとねー、痛い痛いのも治せるんだよ」


「えっ?」


「ゲイル、マリアに治癒魔法を教えたのかしら?」


「いや・・・」


「ダン」


「なんだよ?」


「ちょっと腕輪貸して」


ダンの腕輪を外させてビッと血が出るぐらい引っ掻いてみる。


「痛っぇぇぇ、なにしやがるんだっ」


「マリア、熊おじちゃんの傷を治してみて」


自分の腕で試せっとダンが怒ってるけど無視だ。


マリアは炎の時と同じように手を出してごぉぉぉおっと炎を出した。


「わっ!」


ダンもまさか攻撃されるとは思っておらずまともに炎を浴びる。


「うわっちちち・・・? 熱くねぇぞ」


「ダン、傷治ってるわ」


「おっ、本当だ。どうなってんだこれ?」


「ダン、今の炎は何色に見えた?」


「さっきの火魔法と同じ赤だ」


俺には青白く見える。なんだよこれ?


マリアを鑑定するとくすぐったそうにする。良かった。また変態ロリ王の称号が付いてしまうところだった。


魔力2754。同じ年頃の子供より10倍以上あるな。こっそり魔力過剰補充したりしてたからな。


マリアに炎を出させてそれを鑑定する。


【火魔法】聖なる炎


ぶっ、なんだよこれ?


あーーーーーっ。マリアにスキルが付いてる。


【スキル】ほぼカミの祝福


あー、ほぼシリーズの時にマリアにチュッとしてやったことあるわ。


マリアの炎は燃やしたり治したり出来るのだろうか? もしかしたらアンデットとかイチコロかもしれん。


「ちょっと変身するわ」


ほぼシリーズになりもう一度鑑定。より詳しく鑑定えるかもしれん。


【火魔法】聖なる炎

悪しきものを焼き払い、そうでないものには祝福となる/アンデッド浄化/魂浄化


ブッ なんだよこれ・・・


「何か分かったのかしら?」


「うん、マリアは凄いや。母さんの聖女を引き継ぐことが出来ると思うよ」


ほぼシリーズになった瞬間に魔力を流すのを止めたから俺はもうすぐ元に戻るだろう。もうカミ慣れしてるから爆発するような事もなくすっと変身出来るようになっていた。


「ぼっちゃま、マリア凄い?」


「めちゃくちゃ凄いよー!」


どの子供も可愛がってはいたが、俺はマリアを溺愛してたからな。それにシルバーを一緒に送ったからかもしれん。


ん?


「マリア、シルバーとクロスの骨とそれを入れ換えたのか?」


「ううん。いつまにかこれになってたの」


シルバーとクロスの骨が真珠のようになっている。


温玉!


・・・


なんだよ、俺よりマリア選びやがって。


ゲイルが見た物はシルバーとクロスの骨が一体化し、そこにシルバー達の魂が宿っていた。


「いつからこうなってたか覚えてるか?」


「わかんないけど、空から怖いのが来た後だと思う」


あー、SOS信号でシルバー達も来たのかもしれん。そうか、お前達にとってもマリアは子供だったか。お前らあの歌好きだったからな・・・ いつでも一緒にか。めぐみがいないからこそ出来たんだろうな。


マリアはそのうちシルバー達を神馬として召喚出来るようになるかもしれないな。近々魔力を人や物に付与するのやってみよ。あと魔金から魔力も吸えるように。



「ぼっちゃん、それはなんだったんだ?」


「多分シルバーとクロスはここにいるんじゃないかな。2頭でマリアを守ってるんだよ。マリアが危険な時には俺とシルバー達が駆けつけると約束したからね。あいつらその約束を守ったんだよ」


「ぼっちゃま、本当? 本当にここにシルバー達がいるの?」


「本当だよ」


マリアはそれを聞いてとても嬉そうに微笑んだ。




将来子供が出来ても馬小屋とか洞窟で出産しないでね

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