第674話 移住者募集

開発地は順調に進んだ。


人族が少ない特殊な国になっていく。国と宣言してないけど通貨は作った。ウエストランドと同じ材質でデザイン違い。これでこのままお互い流通しても問題ない。


開発地の牛は家畜化して繁殖で増やしている。獣人達が牛、豚、鶏とか全部やってくれてるのだ。動物の気持ちが分かるのか、とても上手く繁殖させてくれた。豚は南の領地の豚だ。代わりにこちらからは牛を提供している。


残念ながら野生の馬はいなかった。シルバーはどこに生まれ変わったんだろうか? 王都やディノスレイヤ領で子馬が産まれるシーズンに見に行ってるけどシルバーらしき馬は見付けられないままだ。



ミートがこちらの牛を気に入ったので、ディノスレイヤ領にも畜産の人に子牛を渡すことにしたので報告をしにいこう。



「よう、ぼっちゃん、新しいとこはどうなんだ?」


「順調に開発出来てるけど人族が少ないんだよね。というか俺達しかいないんだけと」


「はっはっは、他の人種ばっかりか。ぼっちゃんらしいな。どうだ? 人族が少ないなら俺を雇わねぇか?」


「え? ここどうすんのさ?」


「いや、もう子供達に任せててな。俺がいるとうっとおしいだろ。こっちも見てると口出したくなるしよ」


「もうそんな大きくなってるんだ」


「当たり前だろ? 一番上はぼっちゃんより歳が上なんだからよ。ぼっちゃんも若ぇときのアーノルド様とそっくりだ。本当に立派になっちまって・・・」


歳いくと涙腺ゆるくなるよな。


「おっちゃんさえ良ければぜひ来てよ。奥さんも来るんだろ?」


「おぅ、本当にいいのか?」


「願ったり叶ったりだよ。おっちゃんがさばいてくれる肉は世界一旨いからね」


「嬉しいこと言ってくれるねぇ」


移住日を決めて迎えにくると伝える。



その間に店と家を確保しておこう。包丁とか刃物系は来てから作るか。どんなのがいいかわからんからな。


ディノスレイヤ領も人が増えて代替わりが始まってるな。


これは王都もそうかもしれんな。子供に後を継がせたけどまだまだ働ける人はどうしてるんだろうか? ミートみたいに口出したくなるけど揉めるから現役引退とかしちゃうんだろうか?


王都に移動してフンボルトを訪ねてみる。


「なぁ、後を継がせたけどまだまだ働きたい人とかいるか?」


「そりゃあいるんじゃないですかね?」


「後を継げなくて新天地探してるような人とかいる?」


「そんなのうようよ居ますよ。楽団なんてその典型じゃないですか? 今でこそ音楽学校が出来たりあちこちから音楽やりたい人でなかなか入団出来なかったりしますけど」


「もしここで移住者募集しても問題ないか? 後を譲った人とか後を継げない人とか」


「ここで腐っていくより新天地で活躍出来るならいいと思いますよ」


「わかった。エイブリックさんに相談して正式に決まったらまた報告にくるよ」



エイブリックが休みで来た時に相談してみる。


「好きに持ってけ、皆活躍出来る場所があるならその方がいいだろ。仕事がなくなってボケていくよりいい」


ドン爺のこと引きずってんのかな?


「エイブリックさん」


「なんだ?」


「ドン爺はもう生まれ変わって幸せな人生歩み始めてるよ」


「本当か?」


「多分ね」


「多分かよ」


「そう、最後に完全に浄化出来てるからすぐに生まれ変われてるよ」


「そうか、お前がそういうならそうなんだろうな」


ふふっと笑ったエイブリックは少し心が晴れたような気がした。



ドラゴンシティに移動するとチャンプがいない。


「チャンプどこ行ったんだ?」


「さぁ、腹が減ったとどっかに行ったぞ」


燃費悪いなあいつ・・・


めぐみのカスよカスと言ってた意味が少し分かった気がする。ちょっと後で電話してみるかな。


「で、なんか話があるんだろ?」


「あぁ、そうだった。ここは人とか余ってる?」


「いや、今んとこ大丈夫だな。汚魂ホイホイに掛かるやつもほとんどいねぇしな。セントラルも落ち着いたんじゃねぇか?」


「ならいいんだ」


「移住者募集すんのか?」


「別に無理矢理欲しいわけじゃないんだよ。まだ活躍出来るのに働く場を失った人とかチャンスがなかった人とかの受け皿になればなと思っただけで」


「そんな事したら年寄りばっかりになるんじゃねぇか?」


「いいんじゃないそれでも。今迄頑張って来て老後にゆっくりしてもよし、働けるなら働いてもよしだ」


「なるほどな、領地持ちでもその場所離れたら気も落ち着くかもしれんな」


ジョルジオとかもそうなのかな? 息子と一緒に居たら気になるだろうしな。



老後の別荘地とか作ってもいいな。介護メイドや使用人募集したら来るかもしれないし。イナミンにも聞きに行ってみよ。



「ずいぶんとご無沙汰だな、おい」


「いやあ、やることいっぱいあってね。調子は良さそうだね」


「おかげさんでな。出荷が増えまくって大儲けだ」


「そりゃ良かった。引退とかは考えてんの?」


「まぁ、うちは子供が居ないからな。ホーチミンの子供にいつ譲ってもいいんだがどうしてだ?」


俺は開発地の構想を話してみる。


「よし、来年移るわ。アーノルド達も行ってるんだろ?」


「魔物討伐して遊んでるよ。見た目は老けたけど中身は若返ってるんじゃないかな?」


「よし、別荘の方を頼む」


気が早いな・・・


「また構想段階だからね。来年に開発出来てるかどうかは微妙だよ。別荘は後から建ててもいいからその間の代替え居住区は作っておくよ」


ジョンの屋敷に行ってマルグリッドに相談してみよ。



「え? 父が移住したいか聞くんですの?」


「領主やめちゃったから暇でしょ?」


「それはそうかもしれませんけど、私の息抜きの地がなくなってしまいますわ」


「なら、昔みたいに俺の所にマリさんの部屋を作ってあげようか?」


「え? いいんですの?」


「いいよ。個室がいい? それともジョンとの部屋にする?」


「こっ、個室がいいですわっ」


「それか別棟建ててもいいけど」


「いえ、住むわけではないのでゲイルの屋敷の部屋がいいですわっ」


「了解。海の見える部屋にしておくよ。海辺は他の建物を作らないようにしてあるから俺の所だけなんだ」


「何か理由がありますの?」


マルグリットに地震と津波の話をする。


「恐ろしいですわね」


「対策は取ってあるけど、どんなものか知らないと危ないからね。だから俺の所は中心地から離れてるけど。皆遊びにくるからマリさんの部屋があるのバレるとは思うけど」


「ふふっ、バレても問題ありませんわ」


「じゃあ、別にジョンとの部屋も作っておくよ」


「まぁ、ありがとう」



ジョルジオの所にも行ってみる。


「別荘ですか。しかし、領地を離れると言うのも・・・」


「いや、別に売り込みに来たわけじゃないんだよ。ここにいたら息子さんにあれこれ口を出したくなるだろうし、息子さんもそれがうっとうしいとか・・・」


「私がうっとうしいですと?」


「いや、ジョルジオさんが引き継いだ時にそんな風に思わなかったら息子さんもそう思ってないかもしれないね。あくまでも一般論としてね。肉屋のおっちゃんが息子さんに店譲った後もつい口出ししてうるさがられてるとか言ってたから」


「そうですか・・・ 確かに父の事をうっとうしいと思ってましたな。引退したんなら口を出すなと。いや、はっはっは」


「まぁ、土地はたくさんあるから気が向いたらでいいよ」


「ゲイル殿、いつもお気遣いありがとうございます。あとマリの事も」


「あぁ、マリさんの事は気にしないで。俺が好きでやってることだから。義姉さんが出来て嬉しいんだよ。うち男兄弟だけだったから」


「はっはっは、マリは幸せですな。良い旦那と優しい弟が出来て」



さ、帰るか。屋敷の内装急いで貰お。親方また怒るかな? 長い間ワシを放っておきおってってめっちゃ拗ねてたからな。


ゲイルはドワンの弟、大工のミゲルにドワーフが引っ越ししてきたときに声かけたら死ぬほど怒られたのだ。




ピーピー


カチャ


「お掛けになった電話番号は・・・」


プツ


さ、帰ろ。


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