第672話 男兄弟
ー星を作りしものの世界ー
「別に私の世界に干渉してもいいじゃない」
「他のところまで影響が及んだらどうするんだっ」
「ぶちょーはそんなことしないわよっ」
この問答がずっと続いてるめぐみと星を作りし者とのやり取り。
くそっ、こいつは絶対に言うことをきかなさそうだ。仕方がない。
星を作りし者はめぐみの星の時間をこっそりと進めていく。気付かれないようにゆっくりと。
こいつがここに来ている間は魂の洗浄も生まれ変わりも全て自動にしてきているはず。このゲイルが死んで魂が帰ってきたら記憶がリセットされてこいつらの事を忘れるだろう。そうすればこいつらもこの魂に執着しないだろうからな。
ー開発地の屋敷ー
「ゲイル、ちょっと飲まないか」
「よぉ、ベントがここに来るなんて珍しいな。子供も大きくなったろ?」
「あぁ、ヤンチャ盛りだ。父さんもそろそろ稽古付けてやるとか言ってるからな」
「お、ベントも来てたのか。珍しいな」
「ジョンも来たのか。兄弟が揃うなんて久しぶりだな。シルフィ、ちょっと飲んで来るわ。皆に伝えておいて」
「はーい」
「良い眺めだなここ」
「海の見えるラウンジだ。月明かりの海もいいけど、夕方はもっと綺麗なんだぜ。まぁ、男3人でそんなの見てもしょうがないけどな」
「全くだ」
「何飲む?」
「ブランデー貰おうかな。良い奴あるんだろ?」
「ベントは?」
「俺も同じの」
ゆっくりと話したいみたいなのでカウンターからソファーに座り直して飲み出した。
「これ旨いよなぁ。売らないのか?」
「ばっか、俺がせっせと小さいころから作ってた年代物だぞ。売るわけないだろ? まぁ、欲しいならお土産に1本ずつやるけどな」
ゆっくりと酒を味わっていたらまずベントがはぁーーーっと深いため息をついた。
「なんかあったのか?」
「いや、サラがさぁ、どんどん口うるさくなってきたんだよなぁ」
「昔っからだろ?」
「そうなんだけどさ、あれやったの? とか寝るならここで寝るなとないちいちうるさいんだよ。ちょっとうたた寝したい時もあるっての」
「うちも一緒だ。帰って来てソファーでうとうとしたら、眠いなら早く寝に行けと言うわ。あのうとうとが気持ちいいのにな。ピリッとした声で言われたらいっぺんにそんなのどこかに消えるのだ」
「その点、ゲイルはいいよなぁ。シルフィードはいつまでも昔のまんまだし、飲みに行ってくると言っても嫌な顔をしないし」
「俺達は結婚してないから仲間のまんまだからね」
「結婚しないのか? というか何もしてないのか?」
「しないし、手も出してないよ。シルフィも他に好きな奴が出来たら俺から離れるんだろうけど、あの感じじゃ俺が死んでからになるだろうな」
「可哀想なことしてやるなよ」
「シルフィにはずっと言ってるんだけどね、いいのっ! の一点張りだ」
「いや、結婚してやれって言ってるんだよ。それとも他に好きな人がいるのか?」
「シルフィの事は好きだし大切だけどね。俺が死ぬ時でもあのまんまだろ? 年頃の時にジジイの旦那が死んで未亡人とか可哀想じゃないか。だから結婚はしない」
「誰かに盗られても平気なのか?」
ジョンにそう言われて他の男と一緒にいるシルフィードを想像するとキュッと胸が痛む。
胸がキュッとするということは俺はシルフィードの事を女性として好きなのだろう。匂いも好きだしな。だがそれは誰にも言わないで死ぬまで胸の中にしまっておく。生まれ変わって20数年経った頃に別に再婚してもいいのでは? とも思った事もあったけどね。
「出来れば同じぐらいの寿命で父さんみたいにずっと大切にしてくれる人がいいね」
「はー、お前は変わらんな。変わるのは嫁ばかりか」
「子供が生まれたら旦那も子供みたいなもんだからな。向こうは向こうでお前達に愚痴ってるよ。お互い様だ」
「そうかも知れんな」
あーはっはっはと笑い合う。
「ゲイル、今度マリをお前に預けていいか?」
「子供は?」
「俺が面倒を見る。ちょっと一人で羽を伸ばさせてやりたいんだ。そうすりゃあのツンツンしたのがマシになるかもしれん。お前、マリの扱い上手いからな」
「なんだよ、俺にマリさんとデートしろってのか? 焼きもち焼くなよ?」
「誰が焼くか。焼くなら昔に焼いてるわ。お前らめちゃくちゃ仲いいじゃないか」
「まぁ、そうかもしんないね。マリさんてずっと凛としてるだろ? どっかにワガママ言って甘えられる場所が必要なんだよ。その場所が多分俺だ。俺からしたら子供の面倒みてるのと変わらんからな」
「ミーシャとかもそうだけど、ゲイルって人に甘えられるの好きだよな?」
「あー、それはあるかも。俺はこう甘やかしたい願望があるのかもな」
「でも、最近は子供達を昔みたいに甘えさせてないよな?」
「俺さぁ、途中でまずいなと思い始めたんだよ。甘やかせ過ぎて人をダメにしていってるんじゃないかと思って。どんどん依存して俺がいないと何も出来なくなってしまうんじゃないかなって」
「なるほど、だから皆の飯とかあまり作らなくなったのか」
「そうだね。だから俺は俺にしか出来ないことを中心にやってるんだよ。そうすれば皆も仕方がないねって自分の事は自分でするだろ? 俺も寂しいんだけどね。だからたまには誰かを思いっきり甘やかせてやりたいとか思うわけさ。マリさんとデート楽しみしとくわ」
「いや、ほどほどにしておいてくれ。俺に同じ物を求められたらかなわん」
「俺も・・・ とか思うけどサラは無理だな」
「そうだな。サラが俺に甘えるとは思えん」
「はぁーーーっ もう少し俺を放置してくんないかなぁ」
「ベントはそんなことされたら不安になるだろ? 構われ過ぎててちょうどいいんだよ。良かったな奥さんがサラで」
「なんだよそれ?」
「だってベントはかまってちゃんじゃんかよ」
「そんなことないわっ」
「あ、そうだ。ミグルの面倒はみてやらんのか?」
「なんで?」
「おめでたらしいぞ」
「マジで?」
「あぁ、なんか調子が悪いと思ったら出来てたらしい」
「そうか、種族が違うから子供出来にくいかもと言ってたけど良かったな」
「で、行ってやるのか?」
「アルが頼んで来たらな。あいつ焼きもち焼くだろ?」
「あー、かもしれん」
「それにシルフィもミグルには焼きもち焼くと思うんだよな」
「そうなのか?」
「ミグルは俺の好みの顔立ちなの知ってるからな」
「そうなのか?」
「ほら、母親の顔立ちが好みになるやつ多いだろ?」
「あぁ、そういや、母さん、ミグル、ミーシャとか童顔で目パッチリ系だな。シルフィードは美人系になるのかな? 今は可愛い系だけど」
「ミケとかチルチルみたいな顔立ちも好きなんだけどな」
「じゃ、何でもいいんじゃないか」
「そうかも知れんな」
「なんだよそれ?」
アッハッハッハと笑い合う兄弟。
「女神様ってどんなんだったんだ? 陛下が凄い会いたがってるんだが」
「めぐみの事か?」
「二人いるんだよな?」
「エイブリックさんは確かめぐみしか見えなかったと思うんだよね。ドン爺が亡くなった時に見えるようにしたから」
「そうなのか?」
「ドン爺の魂を丁寧に持って帰れと言ったのにポケットに入れるようなやつなんだよあいつは」
「魂をポケットに・・・」
「見た目は?」
「あー、エイブリックさんの好みの顔だ」
「つまり・・・ 」
「母さん系だな」
「それ言っちゃダメなやつだろ?」
「皆知ってるからいいんじゃない?」
「あれから来てないんだよな?」
「マリさんが妊娠中に来たのが最後だな。しばらく調べものしてくると連絡があったきりだ。あいつのしばらくは100年単位だからな。もう会うことも連絡することもないんじゃないかな」
「そうなのか・・・ しょっちゅう来てたんだろ? 寂しくないのか? 仲良かったんだろ?」
「まぁ、神さんと交流あるのが異常だったんだよ。普通に戻っただけだ」
「そうか。そうだな」
「じゃあ、今度マリさんにデートしようと言っておいてくれ」
「おう、わかった」
「ベントはサラと子供連れて来いよ。釣りしてもいいし、海岸で遊んでもいいんじゃないか?」
「二人とも領を離れるなんて・・・」
「大丈夫だって。どうしても心配ならその間俺が領主代行してやってもいいぞ」
「止めてくれ。ただでさえお前を信仰してるやつ多いんだから。居場所がなくなるじゃないか」
ベントが怒らずにこんな風に返せるなんて自信が付いた証拠だな。
「1日2日居なくても大丈夫だって。近々連れて来いよ」
「あぁ、そうさせて貰うわ」
「ぼっちゃんここに居たか」
「ダン一人か? ミケとテディは?」
「それがよー」
ダンもミケの愚痴を語り出した。
女性は皆、彼女→嫁さん→オカン こう変化していくのだ。いつまでも子供の男はオカンに叱られる運命にあるんだよ。
まぁ、死ぬ時はそれも良かったと思えるから今のうちに愚痴っとけ。嫁さんの愚痴も聞いといてやるから。
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