第670話 星を作りしもの
「めぐみっ! いい加減意地張るのやめなさいよっ!」
「意地なんて張ってないっ!」
もう・・・
「ゲイルくん、めぐみが寝て起きなかったの自分のせいだと思ってるんでしょ」
「知らなーい」
「そうだとしたらゲイルくんからはずっと連絡来ないわよ」
「え?」
「当たり前でしょ? 自分のせいでめぐみが起きなかったのに、また連絡したら同じ・・・ いえ、もっと取り返しの付かない事になるかもと思ったら連絡出来るわけないじゃない」
「ぶちょーは私にもう連絡して来ないの?」
「このままだったらね」
「ぐすっ、ぐすっ、うわーーーーーん」
「泣くぐらいなら、さっさと連絡しなさいよっ」
「絶対、なんか解ってから連絡してこいって言われるもんっ」
あー、言いそうね・・・
「なら、星を作ろうを作ったやつに聞きに行く?」
「嫌よ、あいつすぐに怒るもん」
「私達で分かんないんだから仕方がないでしょっ。このままだとずっとこのままよ。あいつの所に行って、問題ないって分かったらすぐに行けるわよ」
「本当?」
コロッと機嫌が直るめぐみ。
「分かったらゲイルくんに連絡しなさい。あいつの所に行ってる時はこれ繋がらないんでしょ?」
「デイリーガチャとかどうすんのよ?」
「あれ、自動で出来るの知らないの?」
「そうなの?」
「魂洗浄も自動設定しておいたら? 汚ったないのはゲイルが処分してくれてるから問題ないでしょ?」
「わかった! じゃ聞きにいこっ! ぶちょーに連絡してくるっ♪」
はぁー、まったく世話の焼ける子だわ。昔からこうだったけど、 ゲイルくんのところに行くようになって益々子供みたいになったわね? もしかしたらゲイルくんの想像が当たってるかもしれない?
適当に聞いて帰って来ようと思ったけど、ちゃんと聞いた方がいいかもしれないわね。
「あっ、ぶちょー。自分達で調べても分かんなかったから、星を作ろうを作ったやつに聞きに行ってくる。しばらく居なくなるから電話くれても繋がらないから。なんか分かったら連絡するねー!」
ガチャ
「ゼウちゃん、連絡したー。行こっ♪」
「はいはい」
ー星を作ろうを作ったやつの世界ー
「はぁ? そんな事があるわけないだろ?」
「だってぶちょーがそう言ったんだもん」
「でも気になるからちょっと見てくれないかしら?」
「で、めぐみとゼウってなんだ?」
「私達の名前よ」
「名前なんて時々発展した星のやつらが付けるシステムだろうが。真似してんのか?」
「そんな感じかしらね」
「いらねーだろ? こんな風に他の奴の所に来ることねーんだから」
「別にいいじゃない。住人とのコミュニケーションも面白いわよ」
「はーん、まぁ、俺の作った物をそこまで気にいってくれてる奴も珍しいからいいけどよ。で、どいつを見ればいいんだ?」
「私の所にいるぶちょーを見て欲しいの」
「ぶちょーなんて名前の奴いねーぞ」
「ぶちょーはめぐみが勝手に呼んでるだけ。ゲイル、ゲイルなんだったかしら?」
「ゲイルね。こいつか? ん? こいつ何で名前が二つあるんだ? あっ!」
「何よ?」
「これどこの魂だ?」
「私の所よ」
「元々はどこのだ?」
「えっ? あー、えへへへへ」
「勝手に他の星の魂持っていくの禁止にしてあっただろうがっ。何をやってんだお前らはっ!」
「ほら、こいつすぐに怒るから嫌なのよねっ」
「お前が禁止してあることをやるからだろうがっ! 召喚システム作ってあるのにそれを使えっ」
「そんなのあるの知らなかったんだもん。しょーがないでしょっ」
「あれ通さないと魂のセッティングが微妙に異なってたりするからエラーやバグが出るんだぞ。魂がすぐに壊れてもしらんぞっ」
「え? 10回ぐらいは生まれ変わらせても壊れないんじゃないの?」
「それは平均だっ。実体がある時の経験数とか汚れ具合とかで変わるからすぐに壊れるやつもあるし長持ちするやつもある。記憶リセットしなかったらすぐに壊れたりするだろ?」
「そうだっけ?」
「ちっ、まぁいい。えーっとゲイルのログは・・・ はぁ? なんだこいつ?」
「へっへーん、凄いでしょ。初の限界突破者なんだー!」
「いや、普通は勝手に持っていった他所の魂がそんなのに耐えられる訳がない・・・ お前、他にも魂持ってきってるだろ? それはどうなった?」
「能力の高いのはだいたい死んで壊れたわよ」
「当たり前だ。でもなんだこいつ? 自力で耐えたのか・・・? いや、一度壊れかけた形跡があるぞ。この時に元の所に戻っていれば・・・ いや、なんだこれは・・・?」
「ねぇー、何ぶつぶつ言ってんのよ?」
「うるさいっ!」
「他には・・・ あっ、こいつ自力でこの星に行ってやがるじゃないか?」
「この星? なにそれ?」
「ここに見覚えないか?」
「あー、ラムザの所? 魔王だっけ? そこにしょっちゅう行ってるわよ。むこうからも来るし」
「お前が連れていったのか?」
「勝手に行ったのよ」
「あそこはテスト用の星で特殊な設定なんだ。召喚と転移のテスト、後は他の星を守る為の世界なんだ」
「ふーんそれで?」
「後はお前達何をやった?」
「お供えしてもらったり」
「それはシステムにあるから大丈夫だ。それを楽しむためのものでもあるからな。他は?」
「遊びに行ってご飯食べさせてもらったりー」
「他は?」
「寝かし付けてもらったりー」
「はぁ?」
「こう、ぶちょーがね、トントンってしてくれると眠くなるの。知ってる? 眠るのってすっごくスッキリするの」
「こいつはそんな事が出来るのか?」
「髪の毛を洗って貰っても眠くなるの。今回はそれでしばらく眠ったらしいのよね」
「えーっ、こいつの能力・・・ なんだ? こんな能力作った覚えない・・・ぞ」
「どうしたの?」
「・・・・加護。お前、こいつと関わるのやめろ。魂が戻ってきたら処分しろ。危険だっ」
「嫌よっ」
「何が起こるかわからん。絶対に処分しろ」
「絶対に嫌っ!」
「なら、俺が今やるっ」
「やめてよーっ! ねぇっ、やめてってばーーーーっ!」
星を作ろうを作った奴はゲイルの魂を処分しようとしていた。禁止事項をこっそりと破っていためぐみとゼウちゃん。製作者はそういうことを見込んで能力値の高い魂を無断でやり取りした時に壊れやすくしてあった。しかし、なかなか発展しなくて止めてしまう者が多く、新たに召喚システムというのを作り、その時にチート能力を授け発展を促すプログラムを組んだのだ。
また星を大きく発展させる魂は多かれ少なかれ汚れていく。汚れ過ぎた能力の高い魂は星そのものを壊してしまう可能性があるためそれを食う為の存在として作られたのがラムザ達だ。
星の持ち主達はそれを知らないので発展させる魂を食われまいと排除しようとする。それに対抗する為に膨大な魔力を与えてある。通常はそこまで魔力を上げると知力を上げられないので、存在出来る魂のリソースを削減して対応した。
今の所ラムザとダムリンと1匹のヤギだけ。魂はもう少し配置できるのでスタンバイさせているが、つがいの二人は上手く繁殖出来ずに2人のままだ。
「いいか、この魂はエラーとバグを自分で修復して俺が作ったプログラムじゃないものまで作り出している。星の中だけならお前の星が壊れるだけで済む。しかし、こっちの世界にまで影響を及ぼしたらどうするんだっ」
「ぶちょーはそんなことしないわよ」
「現にお前は影響を受け始めてるだろうがっ。初めに聞いた時はそんな馬鹿なと思ったがこの状況ならあり得るっ」
「ゲイルくんはそれを心配してめぐみに来るなと言ったの」
「は?」
「自分のせいで私が元の世界に帰れなくなったらどうするんだと言われたの」
「お前を取り込もうとしているんじゃないのか?」
「ゲイルくんは優しいのよ。星の皆のことだけじゃなしに私達にもね。色々と楽しい事や美味しい物をくれたりするけど、見返りは何も求めないわ」
「何も見返りを求めない? 力をくれとか言わないのか?」
「一回もないわ。こういうことが出来るかとかは聞いてくるけどね」
「どんな事だ?」
「腐った魂の処理とか汚れた魂の処理とかよ。元々はめぐみが自分でやるのが面倒でゲイルくんにやらせたんだけど、洗っても落ちない魂ならいらないだろって。今はゲイルくんが汚れた魂をラムザやヤギに処理させて、めぐみには新しい魂ガチャをたくさんやって入れ替えてるの」
「魂の経験がリセットされるだろ?」
「いくら能力が高くても汚れた魂は悪影響を及ぼすって言ってたわ。能力が高ければ高いほどね。だからいらないだろって」
ゲイルの発想はラムザ達を作った発想と同じだ。
「星の住人に魂の管理をさせてるのか?」
「なんか色々と面白い物を作ってくれるんだぁ。汚魂ホイホイとか」
「なんだそれ?」
「あっさり、こっさり、こってりに分けてぇ。あっさりは洗えば綺麗になるからこっさりとこってりはヤギ達に食べさせるの。こっさりとこってりが転移の魔法陣に乗ったら一ヶ所に集められるのよ。凄いもの考え付くよねぇ」
「・・・星の管理者がやることを住人がやってるのか?」
「そーだよ」
「どうやって魔法陣で魂の汚れを見分けている?」
「洗浄機とリンクさせて見分けてるわよ」
「は? 星とこっちの世界を繋げてるのか? どうやって?」
「さぁ? 電話で連絡くれたりするからそれと同じじゃない?」
「連絡をくれるとは?」
「これに電話かけて来てくれるの。飯食いにくるかっ?って」
「向こうから連絡が来るだと? どうやってだ」
「そんなの知らないわよ。これ持ってろと渡されただけだから」
やっぱり危険だな・・・ その内自力でこっちに来るかもしれん。
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