第667話 どうしたんだろう?
「遅くなりました」
デーレンがやって来た。
「へ、陛下! 失礼致しましたっ」
「デーレン、プライベートだから平伏しなくていいってよ」
なぜかゲイルが平伏不要の許可を出す。
「あ、ゲイルはもう来てたの?」
「試さないといけないものがあったからね」
「遅く、殿・・陛下」
「ポットか、ここで何をしている?」
「つわりの方が食べられるお菓子作りです」
「ほう、どんなのだ?」
「ゲイルさんに手解きを受けています。召し上がられますか?」
「そうだな。ちょっと持ってきてみろ」
ポットが持ってきたのはチョコムース。豆乳ココアのゼリーみたいなもんだけどね。トッピングはバナナだ。
「ずいぶんとあっさりしてるな」
「胃腸に負担がかからないように乳製品を使ってません」
「なるほどな。こういうものを開発しているのか」
「はい。新しい発見があって楽しいです」
「ゲイル、あの椅子かベッドか分からんものはなんだ? 土で作ってあるからお前が作ったのだろ?」
「頭を洗うためのもの。マリさんが下向いたら気持ち悪いんじゃないかなと思って仰向きになって髪を洗えるものなんだよ」
「ほう、試しにやってみてくれ」
「おっさんの頭を洗うなんてやだよ」
「誰がおっさんだっ!」
「あ、マリさん付きのメイドさん。ちょっとエイブリックさんで練習しようか」
「えっーーーーっ」
「大丈夫、大丈夫。男の人の方が髪の毛短くて簡単だから」
ガチガチに緊張しながらエイブリックの頭を洗うメイドさん。
頭は自分で拭いてもらい温風は出してやる。
「確かに気持ちいいな」
やりきったメイドさんはくたくたになっていた。
ぴーぴー
「どうした?」
「ぶちょー、髪の毛洗って♪」
「今、人の家だから明日にしてくれ」
「えー、別にいいじゃない。誰も見えないんだから」
「いや、今日はまず・・・」
ポン
「お前、人の家だと言っただろ?」
「別にいいじゃない」
「め、女神様・・・」
「えっ」×全員
あ、エイブリックには見えるんだった。
「あー、もう。洗ったら帰れよ。あと寝るなよ」
「それはわかんないわよ」
「我慢して帰ってから寝ろ」
「ち、父上、女神様とは・・・」
「言葉通りだ。今、ゲイルが女神様の髪の毛を洗っている」
皆が固唾を飲んでその様子を見守る。
「ぶちょー、気持ちいいね♪」
「しゃべったら口の中に泡が入るからしゃべんなって言ったろが」
すーすー
もう寝やがった・・・
あー、もうっ!
ぐらぐらのめぐみを抱き抱えて頭を拭いて温風で乾かす。そのまま抱き抱えて部屋に寝かせに行った。
「お待たせ。さ、お菓子を作ろうか。今日は柚子の・・・」
「待て待て待て待てっ。女神様はどうしたのだ?」
「寝たよ。ベッドに寝かせたから後は勝手に帰るよ」
「ゲイルさん、女神様が来られてたんですよね?」
「あ、この前のケーキはほとんどめぐみが食ったぞ。俺の分までな」
「本当ですか?」
「旨そうにバンバン食ってたからな」
「よしっ!」
「ゲイル、女神様って本当に・・・」
デーレンはポットの話を疑ってた訳ではないのだが、シャワーのお湯が不自然な動きをしたので本当にいると確信した。確かに泡も人の頭を型どっていたのだ。
「マリさんを洗う前にめぐみを洗ったんだよ。そしたら気に入っちゃってな。この調子じゃ毎日来るかもしれん」
あれやこれや質問されて今日はお菓子作りどころではなくなってしまった。
「ゲイル、わ、ワシも洗ってみてくれんか?」
ミグルが自分にもやれと言う。
「アルにやって貰えよ」
「マルグリッドは洗ってやったのじゃろ?」
「マリさんはつわりだからだ。もうメイドさんに教えたから、実際にやってみて問題なければ俺の出番は終わりだ」
「ワシがつわりになったらやってくれるのか?」
「はじめだけな。だいたい、お前の頭を洗うとかアルが嫌がるだろが?」
ジョンは多分大丈夫だけど、アルは焼きもちを焼きそうなのだ。
「アルよ、ワシがゲイルに頭を洗われたら嫌なのか?」
「べ、別に・・・」
ほらな。気軽に引き受けなくて良かったよ。
その後も色々とめぐみの事を聞かれたが、特に何かをしてくれる訳じゃないといっておいた。めぐみも人にあまり興味ないからな。
「ゲイル、明日開発地にも女神様はこられるのか?」
「どうだろ? 本来、こっちから呼ばないとあまり来ないんだけどね」
「よく呼ぶのか?」
「なんか美味しい物を食べる時だけかな。呼ぶと俺が面倒みないとダメだからね。子供と一緒なんだよ」
俺が子供化させてるかもしれないけど。
結局何も出来ず解散。皆このまま泊まる事に。マルグリッドもすやすや寝ているのでジョンもゆっくりと寝れそうだ。
部屋に戻るとめぐみはすーすー寝ている。
ベッドは2つあるので別々だ
うとうとっとした時にめぐみに起こされる。
「ぶちょー、目が覚めちゃった」
「なら、帰ればいいだろ?」
俺は意識が朦朧としている。
「まだもうちょっと寝たいの。トントンしてよ」
あー、もう好きにしろ。トントン。
ポテッ すーすー
俺もそのまま寝てしまった。
朝起きるとまだ横ですーすー寝ているめぐみ。
「起きろ。朝だぞ」
すーすー
ダメだ。何度起こしても起きない。
どうするかな。このまま寝かせておくしかないか。
「ゲイル、おはよう。昨日はありがとう。とても良く寝られて元気になったわ」
すっかり顔色がよくなったマルグリット。
「良かったね。髪の毛を洗うのはメイドさんにも教えてあるから。でも洗いすぎには注意ね。髪の毛が痛むから」
朝食を食べた後、皆を連れて開発地に。
「ゲイル、女神様は帰ったのか?」
「まだ寝てるよ。そのうち帰るんじゃない?」
エイブリックはめぐみが気になって仕方がないらしい。
「おっ、エイブリック、お前らも来たのか?」
「休みにしたからな。案内してくれるか?」
「いいぞ。ゲイル達と俺達は別れて調査しているからな。どっちに行く?」
「こっちは鉱山だから面白くないかも」
なら森だなと消えて行った。エイブリック達にとったら調査も遊びみないなもんだからな。
ジョンはマルグリッドと留守番してるから二人でのんびりしてるだろ。
晩飯を食べながら調査報告をまとめていく。事務仕事からしたら冒険の続きみたいなもんだから働かされた気にはなってないだろ。次回から違うところ調べて貰おう。
ジョンの屋敷に送ろうとすると、アルの所へ送れという。ミグルがここにいるから問題ないか。そしてイベントが発生することなく無事に到着。アルにもいつも使ってる部屋をもらってしまった。座標部屋だな。
ジョンの屋敷に行く。
えっ? まだ寝てる。
もしかして異常が発生してるのだろうか?
すーすー
取りあえずポットとデーレンに柚子の豆乳アイスを教える。マルグリッドは今日も調子が悪かったそうだ。昼間にメイドさんに髪の毛を洗ってもらって気持ち良かったが寝ることはなかったみたいだ。
「ゲイル、気持ちが悪いですの・・・」
「ゲイルなんとかならんか?」
「じゃ、俺が寝室に入って問題ないか?」
「何かするのか?」
「寝かし付けてあげるよ。子供達を寝かし付けているうちに上手くなってね」
「まぁ、子供みたいにしてくださるの?」
クスクス
「そうだよ」
という事で寝室へ。
ベッドに寝て貰って子守歌を歌いながらトントンするといちころだった。とても気持ち良さそうに寝ている。
「お前すごいな」
「俺も驚きなんだ。安眠スキルってのが付いてね。こう神経が高ぶって寝れない時とか自分にも使えて便利なんだよ」
「そうなのか?」
「ジョンももう寝るならやってみてやろうか?」
「た、頼む」
トントン
ぐぉー
部屋に戻るとめぐみは寝っぱなしだ。
どうしちゃったんだろう?
ゼウちゃんに相談しようにも直接連絡を取る術がない。お供えで連絡出来てもゼウちゃんだけでこっちに来れないしな。
しばらくめぐみをみていたが苦しそうな様子もないので、取りあえず隣のベッドに横になって一晩中みていた。
翌朝になっても起きない。
ジョンとマルグリッドは元気になっていた。
「ごめん、明日から来れないかもしれないんだ。食べられそうなものはポットとコックに教えてあるから。あと気持ち悪いときはこれの匂いを嗅いでみて。ちょっとマシになるかも」
「これは何かしら?」
「ミントオイルだよ」
「ありがとうゲイル」
俺は部屋に戻り、めぐみを抱き上げる。
ん?
前より重くなってる気がする。
屋敷に行って自分の部屋にめぐみを寝かせた。
フンボルトはこの屋敷を貰うつもりはないらしく、そのうち庶民街に屋敷を建てるそうだ。
寝ているめぐみのことは誰にも見えないとはいえ、他の人の屋敷では心配だからここに寝かせておこう。
一睡もしていない俺は自分に回復魔法を掛けて開発地に向かったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます