第666話 人をダメにするゲイル
土魔法で洗面台と椅子を作っていく。
「まず誰からやる?」
「はいはーい! で、次はゼウちゃんね」
はいはい。
めぐみを仰向けに寝かせて新兵器のシャワーヘッドだ。
こいつは温度調整以外に炭酸水が出る優れものなのだ。シャンプーでは落としきれない毛穴の汚れを炭酸の泡が落としてくれるはず。
ん? スンスン。焼き肉食ってたのにめぐみからリンスの匂いしかしない。焼き肉の匂いに俺の鼻がバカになってるのかもしれん。
しょわしょわしょわとめぐみの頭に炭酸シャワーをかける。
「何これ? 昨日と違うっ!」
「昨日?」
「し、新作シャワーヘッドだからな。機能が違うんだ・・・」
悪いことをしていないのに後ろめたい。
「気持ちいいー♪」
めぐみのシャンプーとリンスが終わる。
スースーっ
寝てやがる・・・
皆が俺に寝かせに行けと目線を送るのでお姫様抱っこして小屋に寝かせにいく。
ゼウちゃんも気持ちいいーと言って寝ていったのでめぐみの隣に寝かせる。
「次にやって欲しい人は?」
「じゃあ、お願いしようかしら」
アイナを洗っていると予行演習みた・・・いでででっ
「すっきりするわねぇ。本当に気持ちいいわ」
アイナは寝なかった。アーノルドはアイナを抱っこするつもりだったので肩透かしを食らう。
「次は?」
「うちもやってぇな」
チラっとダンを見るとやってくれみたいな目線を送る。
ミケの場合は耳に水が入らないように気を付けてと。
カーッ
ミケは寝た。テディを受け取りダンに寝かせに行って貰う。
「次はシルフィ?」
「えっ、あ、うん」
シルフィードも寝たので抱っこして寝かせに行く。
「最後はラムザかな? 角とかどうやって洗えばいいんだ?」
「ガシガシ洗ってくれて良いぞ」
角の内側って洗いにくいな・・・
ラムザも撃沈。よいしょっと持ち上げて寝かせにいった。これで終わりだ・・・
「私も」
チルチル、君寝てたよね?
チルチルは洗ってる最中に寝てしまった。
「寝なかったの母さんだけだね」
「そうね、でも気持ち良かったわよ。週一ぐらいでお願いしようかしら?」
一人二人ならいいけど、この人数を毎回するのはしんどいな。美容師ってすげぇな。
落ち着いたところで起きてる者で飲み直し。
「なんで人の頭を洗おうと思ったのかしら?」
シルフィードがいないので正直に話す。
「実は昨日めぐみに用があって呼び出したんだけど、焼き肉臭かったんだよね。で、風呂入らせたんだけど、臭いが取れなくて頭を洗ってやったんだよ」
「坊主はいつも女神を子供じゃと思っておるのか?」
「風呂から出て来るときも髪の毛べっちゃべちゃだし、食べさせてとか言うからマリアとチルチルみたいなもんだよ」
「坊主が構う者は皆子供みたいになるの」
はっ? 俺か、俺のせいなのか?
【スキル】子守
なんだよ・・・ いつの間にこんなの付いたんだ?
あ、称号に人妻キラーといくじなしとか付いてる・・・ ヤバいな。称号まではただの表記だ。しかし、スキルに昇格したら・・・
「どうした?」
「いや何でもない」
髪の毛を洗われて寝なかったのはアイナだけ。親子だからかな?
「このシャワーヘッドは市販するのか?」
「どっちでもいいけどね。明日マリさんにプレゼントしようとは思ってる。母さん、つわりの時にうつむいたりしたら気持ち悪かった?」
「あー、そうだったかも」
「マリさんもそうかもしれないなと思って。メイドかジョンが洗ってやればいいだろ?」
「それはいいかもしれないわね。自分で何かするのおっくうになるし、頭を洗って貰えたら嬉しいわ」
その後も飲んで色々と話をした。
屋根の上の風呂に入って考える。俺はもしかしたら皆を甘やかし過ぎてダメにしていってるのかもしれん。
スキル子守が子供をあやす能力が高くなっただけならいいけど、対象人物を子供化させる物だとしたらまずいよな。
与えしモノも同じようなものなのだろうか?
マリさんはつわりが落ち着くまでは仕方がないけど、他の皆を甘やかすのは止めておこう。
それに・・・
【種族】ぼっちゃん
なんだよこれ?
ーザックの家ー
「マリアがパパの事を好きで良かったですね」
「そうかなぁ。ぼっちゃんの方がよっぽど懐かれてるだろ?」
「ぼっちゃまはマリアをよく可愛がってくれますからね。でも、パパの為にあんなに一生懸命怒ってくれたんですよ」
「うん、嬉しかったよ」
「ぼっちゃまの言う通りもっと遊んであげて下さいね。シルバー達も居なくなっちゃったので」
「そうだね。今度ぼっちゃん達が釣りに行く日を休みにしようかな?」
「はい、たくさん釣って下さい。マリアも喜びますよ」
ーアルファランメル私邸ー
「だから月に1日や2日休んだ所で問題が無いと言ってるんだっ!」
「ダメです。王は常に君臨しているものなのですっ」
「お前が王になったらそうしろっ」
「陛下、殿下」
「なんだジョン?」
「私は週に1日お休みを頂きます。護衛団と日程を調整しておりますので、お二人はお休みが無くても問題ありません。ミグルも休めるよな?」
「ワシもいい加減ここと研究所の行ったり来たりは飽き飽きじゃ」
「なら俺と休みを合わせろ。うちに遊びに来てくれたらいいし、今はゲイルがしょっちゅう来てくれてるからな。マルグリッドが落ち着いたら遊びに連れてっていって貰おう」
「おーおー、良いのう。ゲイルはどうやってジョンの家に来ておるのじゃ?」
「ゲイルの部屋を一つ作ったんだ。そこは自由に使ってもらってるからな。今日も来ると思うぞ」
「なら今日泊まりに行ってもよいか?」
「おお、来い来いっ。いつでもいいぞ」
「と、言うわけじゃ。二人は延々と仕事をしているが良い」
「ずっ、ズルいぞっ」
「何がズルいのじゃ? 王にずっと君臨せとよ求めるのであれば王子も同じじゃろ。ワシはこれから毎週ジョンとマルグリッドと遊ぶ。ゲイルの所にも行くのじゃ」
「ぐぬぬぬぬ」
「ほら見ろ。ここに座標を設置させなかったからジョンの所にとられたじゃねぇか。あれからゲイルはここに来てないんだろ?」
「いつでも来て良いといってあるよっ」
「質問に対して違う答えを出すな。ここに来たか来てないかを聞いたんだ」
「き、来てない・・・」
「もうお前の所に座標はいらん。俺もジョンの屋敷に行く」
「えっ?」×2
「陛下が来られるのですか?」
「不服か?」
「い、いえそのような事は・・・」
「俺も行くっ! みんなズルいっ」
「ぶちょー、おはよー!」
「もう起きたのか? まだ暗いぞ」
「スッキリしたから大丈夫。ゼウちゃんももうすぐくるから」
スンスン。よし、焼肉の匂いはしてないな。炭酸シャワーにして正解だ。
「今嗅いだ?」
「焼き肉の臭いがしてないか確認しただけだ」
「良い匂いしてる?」
「リンスの匂いだな。俺も同じ匂いだから特別どうということはないぞ。みんな同じ匂いだ」
「ふーん」
「おはよう。ゲイルくんすごくスッキリしたわ」
「ゼウちゃんも頭洗うと寝るんだね」
「そうみたいねぇ。自分でも知らないことあって驚きよ」
ん? ゼウちゃんからはリンスの匂いがしない。同じように洗ったんだけどな?
「おはよう。いつも早いね」
「朝飯作らないとダメだからな」
「ご飯でいい?」
「あぁ、お願い・・・」
スンスンっ
「だから嗅がないでっ」
「あ、ごめん。ちょっと確かめたくて」
シルフィードはリンスの匂いしてるな。
朝ごはんの用意をしてるとみな起きて来たけど全員リンスの匂いがしていた。
めぐみのリクエストでまたもやだし巻き玉子。チルチルとゼウちゃんはふわふわのスクランブルエッグだった。
「ぶちょー、ケーキはいつ食べるの?」
「あっ、忘れてた」
ミーシャ達のはまた別に買っていくか。
「みんな朝からケーキ食べる?」
アーノルドとドワンはいらないらしい。
俺も朝っぱらからいらないけど、ポットに感想を言わないとダメだからな。
先にチルチルに選ばせてやってからゼウちゃんとラムザに聞く。子供、お客さんの順だ。
「えーっと、私はこれとー」
「めぐみのはこれだろ? よけてあるから先にゼウちゃん達に選ばせろ」
まったく。
「なんでめぐみさんのよけてあったの?」
「先に選んでたんだよ」
「いつ?」
「あ、うん、これ貰ってきた時にね」
「ふーんそうなんだ」
「めぐみは子供だからな。先に選ばせてあげないとな」
「誰が子供なのよ?」
「お前に決まってんだろ?」
それぞれが選んで余った分は全部めぐみが食った。俺が食ってたやつもだ。
「まったねー!」
ラムザは帽子をかぶって帰った。もう必要ないぞ?
開発の仕事を早めに終えて晩飯の用意だけしてジョンの屋敷に行く。マルグリットはやっぱりしんどそうだな。
土魔法の洗面台と椅子を出してメイド達を呼ぶ。
「マリさん、気分転換に髪の毛を洗ってあげるよ」
「一緒にお風呂に入りますの? 流石にジョンに怒られますわ」
止めてくれ。誰が義姉に一緒に風呂に入ろうと誘うんだ。人妻キラーがスキルになるだろうが。
「いや、ここで洗うから」
メイド達にシャワーヘッドの使い方と洗い方の注意点を教え、自分達で洗い合いして問題がなくなったらマルグリッドを洗ってやるように言っておく。
「こんな洗い方がありますのね」
マルグリッドはそう呟いて寝てしまった。髪の毛を乾かしたけど、寝室に運ぶのはメイド達に任すの怖いな。もしこけたら危な過ぎる。ビトーに頼もうとしたら物凄く緊張したので俺がマルグリッドを抱き上げ、メイドに案内して貰って寝かせておいた。寝不足みたいだからゆっくり寝られるといいな。
「誰かどんな感じか体験した方がいいから、一人ここに座って」
そんなゲイル様に洗って頂くなんてとか言うけど、仕事だと言っておく。
座ったのはマルグリッド付きのメイド。若いけどしっかりしてるんだろうな。
「ゲイル様、恐縮ではございますが御指南のほど宜しくお願い申し上げます」
おぉ、ミーシャとは全然違うな。
他のメイドにおさらいをしながら洗っていく。
すーすー
(おっ、起きなさいっ。何寝てんのよっ)
「大丈夫、大丈夫。なんか俺が洗うと眠たくなるみたいなんだよね」
髪の毛を乾かしているとメイドさんの目が覚めた。
「もっ、申し訳ございませんっっ。あんまり気持ちが良くてつい」
「気にしなくていいよ。母さん以外、みんな寝ちゃうから」
「よっ!」
「あれ?エイブリックさん、何しに来たの?」
ざっと、ビトーを筆頭にメイドと使用人が跪く。
「ゲイル、久しぶりじゃの」
「アルとミグルも来たの?ジョンは?」
「使用人にエイブリックが来た事を伝えにいったのじゃ」
突然来たのか・・・
「ゲイル、マルグリッドはどうした?」
「寝てるよ。だから静かにしてあげてね」
ジョンが慌ててやって来た。
「ゲイル、来てくれてて助かった」
「ジョン、いきなり王様連れてきたらダメじゃないか。みんな固まってるぞ」
「俺のせいにすんなよ・・・」
「エイブリックさん、皆に平伏やめさせなよ。いきなり来て迷惑なんだから」
「おおそうだな。皆、平伏する必要はない通常業務に戻れ。俺の相手はゲイルがする」
なんだよそれ?
「ゲイル、マルグリッドはどこだ?」
「今寝てるよ」
「そうか。昨日ずっと気持ち悪くて寝れなかったみたいでな、良かった」
「ジョンも付き合って寝てないのか?」
「心配でな・・・」
「なら俺が今夜泊まって様子をみてやるからちゃんと寝ろ。身体が持たんぞ」
「ありがとうなゲイル。明日は休みにしたから大丈夫だ」
「俺達も休みだ。開発地に連れて行ってくれ」
エイブリック、アル、ミグルも休みか。
「いいよ」
明日は仕事の日だから手伝わせよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます