第659話 実はすごいお守り
鰻パーティーの後は開発調査をスピードアップ。まず獣人達の移住場所を確保してやらねば。
アーノルド達と魔物の状況や気温等考えてディノスレイヤ領よりやや温暖な地域に決定。食料になる魔獣は多いし、さほど強い魔物もいない。万が一津波が来たときのために高台をいくつか作っておく。なんならここに住みかを作ってもいいので、何段かに段差の広場を作っておいた。揺れ対策はまだ取れていないけど、飲み込まれるような地割れが発生しない限り揺れで死ぬことはない。崩れるような建物はないからな。
そして今俺はデーレンのお守りを作っている。指輪型も考えたけどペンダントにした。
老眼ではないこの目は細かい作業でも大丈夫。問題は魔石だ。ペンダントに収まるサイズで大量の魔力を持たせるのはどうしたらいいだろうか?
いつもは魔法水に魔力を注ぎ続けて魔石にしていた。これで魔物から取れる魔石と同じ位の蓄魔量の魔石になるのだ。つまり、俺の考えている魔法陣を動かそうと思うとめちゃくちゃデカイ魔石が必要なのだ。
砂糖水や炭酸。醤油味噌とか身近にあるものを試すも全てダメ。水と変わらないか余計にダメなのだ。これは水分は純水が一番いいんだな。
次は金属、鉄、銅、銀、プラチナ、金、ミスリルを試す。うーむ。銀までは魔石になることがわかった。しかも個体のままでは魔石にならず、熱か錬金魔法で溶かしてやると魔石になるのだ。しかも普通の魔石より断然蓄魔量が多くかなり使える。でもまだ足りない。
魔導線と同じ考え方をしていく。魔法のある世界しか存在しないファンタジー金属のミスリル。絶対にこいつは外せないはずだ。魔石になる銀とミスリルを混ぜていく。が上手く混ざらないな・・・ マヨみたいなもんか? ぽちょぽちょと油代わりに金をいれていくが金とミスリルだけが混ざってしまう。金とミスリルの相性は良いみたいだ。
全部分離してやり直し。銀とプラチナとミスリルで試す。おっ! 綺麗に混ざった。そのまま魔力を注いでいくとどんどんと吸い込み魔石になる気配がない。
指輪を外して一気に魔力を注ぎ込んでいくとごろんと固まった。
【魔金】150658/150658
ブッなんだよこれ。魔金なんてあるんだ。
人の魔力は9999しか表記できないのに、こういうのは違うんだよな。魂管理はめぐみ、こういう物の管理は星の製作者が管理してるのかもしれん。めぐみにこれなんだ? と聞いてもしらなーいっていうだろうからな。
まぁいい。取りあえずこいつで起動確認だ。
「ごめん、ちょっとドラゴンシティに行ってくる」
「ダン、汚魂たまってる?」
「3人いるぞ」
ちょうどいいわ。温玉するとこってり1とこっさり2だな。
ギャーギャーわめくコッテリを腹パンで黙らせて髪の毛を持ってズルズルと引っ張って外に出す。何も言わずに宙に浮くぐらい腹を殴られるのを見て残りの二人は震え上がる。何も聞いてもらえない、何も言わせてもらえないのが理解したようだ。
「ぼっちゃん、何すんだ?」
「お守りのテストだよ」
こいつの近くに立ってペンダントを近付けるとポンとこってりがイケスに転移した。使った魔力は20000。もう一度こいつを引っ張って開発地に戻りペンダントを近付けると転移した。ドラゴンシティに戻るとちゃんとイケスに入っている。
「おい、出てこい」
こっさり二人は震えて出て来れないので二人とも髪の毛を持って引っ張りだす。嫌だぁぁと叫ぶけど気にしない。
二人同時だと20000だが、タイミングがずれると倍魔力を使った。転移1回に付き20000で固定だな。
「ラムザ」
ガチャとドアを開けて魔界へ。
「おう、ゲイル。飯か?」
「こってり魂とこっさり魂があるけどどうする?」
「もうヤギに食わせる。ゲイルの飯の方が旨いからな」
「そしたらさぁ、今度、ヤギの召喚魔法陣教えてくれないかな? いちいち頼まれんの面倒臭いだろ?」
「いや、こうしてゲイルに会えるからまったく気にならんがな」
なかなか可愛い事を言ってくれるじゃないか。
「ゲイルが好きにヤギを呼び出したいなら教えてやるぞ」
じゃ、今度飯食いに来た時にお願いと言ってヤギを一匹連れて帰る。相変わらず魂が震える強烈な嫌な感じがする。やめてスリスリしないで、怖いから。
「ほら、いいぞ」
「ひやぁぁぁぁぁ」
と汚魂達は逃げ回るけど、ヤギは見た目と違ってめっちゃ素早い。ベンっと前足で地面に押さえ付けて魂を咀嚼していく。こっさりは断末魔を上げる。それを見ていたもう一人のこっさりは恐怖で動けなくなりそのまま魂を咀嚼されていく。
こってりはまだ気絶しているので、ビンタで起こす。寝たまま知らない間に逝けると思うなよ。
「ヒィィィィィィッ」
こってりはヤギにゆっくり楽しむように咀嚼されていく。ヤギもなかなかやるな。
「はい、もうお仕舞いだ。そんな残念そうな顔をするな。また呼んでやるから」
次も君とは限らないけどね。
ラムザにありがとうねとヤギを返して、次のテストに移る。
魔金を押すと俺の携帯にSOS信号が送られ警報と共に携帯にデーレンと表示されるのだ。
「ダン、10秒後にこれを押してくれる?」
「いいぞ」
ガチャと開発地に戻って待つとビーーーーっという警報と共にデーレンと表示された。使用魔力は100。
戻ってダンと話をする
「ほう、すげえもん作ったなぼっちゃん」
「今度皆の分も作るよ」
「そりゃ心強いぜ。用があったらこいつを押せばいいんだな?」
「絶対にそんな使い方すんなよ。緊急事態の時だけだ」
皆には携帯は渡していない。鳴りっぱなしになるのが目に見えてるからだ。渡してあるのはめぐみにだけ。皆には神様と通信する魔道具だと説明してあるのだ。
また次の休みになとダンとバイバイして王都に向かう。屋敷に行ってからロンの所へ。
「よう! 元気か?」
「ご無沙汰していますっ! 聞いて下さいっ。素晴らしいデザインのお仕事を頂いたのです」
「へぇ、どんなのだ?」
「ドラゴンのデザインです。マルグリッド様からの依頼なんですよ」
あー、あの純金をドラゴン像にするのか。なるほどそれをオークションに出したら金より価値が出るな。
デザイン画を見せてもらう。
フムフム、チャンプみたいなタイプだな。
「何パターンくらい必要なんだ?」
「最低10パターンと言われてます。なかなか難しいんですよ」
「全部同じドラゴンなのか?」
「いえ、ドラゴンとしか言われてませんのでおまかせだとは思います」
「ドラゴンってな、こういうタイプはこの前王都を飛んだの見たろ?」
「はい」
「どこにいるかはわからんが違う種類もいるんだよ」
「えっ?」
「古代語で龍と呼ばれてるんだがな、こんな感じの奴だ」
いわゆる蛇みたいなタイプの方を教えてやる。
「こんなのがいるんですか?」
「俺もみたことがないからな。こいつはこう宝玉を持っててな、この宝玉を7つ集めて渡せば願い事を叶えてくれるという伝説があるんだ」
「本当ですかっ?」
「伝説だよ、伝説。俺もこいつは実物を見たことがないからな。これのデザイン画もいいんじゃないか?」
「ありがとうございます。創作意欲が湧いてきましたっ」
「この宝玉を集める冒険話を板芝居にしても面白いかもな」
「えっ?」
「これを純粋に集める冒険に出る少年と悪いことに使おうとする悪いやつがいて玉をめぐって戦いになるとかな」
「うぉぉぉおっ! 面白いです。描きます。絶対に描きますっ」
「いきなり冒険に出るより、修行して強くなってから冒険に行くとかだな。いきなり龍を出すよりいいと思うぞ」
「ど、どうしよう! どんどんイメージが湧いてきましたっ」
「板芝居に出てくる龍が人気になったら、その像を持っているマルグリッドも喜ぶと思うぞ」
「はいぃぃぃぃっ」
魔女っ娘は女の子向け、龍の玉のやつは男の子に人気が出るだろう。頑張ってくれたまえ。
「あ、本題を忘れてた。このペンダントを俺の紋章のデザインに加工できるか?」
「この真ん中に埋められている宝石はなんですか? 見たことがない不思議な赤色をしてますけど・・・」
「宝石じゃない。これ龍が集めている宝玉かもな」
「えっ?」
「嘘だよ。まぁ、秘密のものではあるけどな」
「デザインは出来ますけど、この色は出せません・・・」
「なら、そこにこれと同じの張り付けるからデザインと名前をここに入れてくれるか?」
「どなたのお名前を?」
「デーレンだ」
「えっ? タイカリン商会の?」
「知り合いか?」
「いえ、大手商会の娘ですからね、やり手で有名ですよ。あっ・・・」
「なんだ?」
「もしや結婚されるのですか?」
「誰が?」
「ゲイル様とデーレンさんです」
「あほか。これはお守りだ。あいつとは同級生なんだよ。マルグリッドの所に出入りしてるだろ? マルグリッドは俺の義姉だからな、万が一の事がないようにってことだ。俺の紋章を身に付けてたら悪さするやつおらんだろ」
「そ、それはそうですね」
ロンはその場でデザインと名前を入れてくれた。
屋敷に戻ってそのデザインに張り付け用の魔金を作っていく。魔金は錬金魔法を掛けたらちゃんと溶ける。これはいい。魔力を貯めておく物の形が自由に変えられるのはとても便利だ。
細かい所に上手く張り付けるのはなかなか難しいけどなんとか出来たな。
紋章の模様も魔力があるから合計200000くらいの保有魔力だ。ミグルが
ドアを使わずにジョンの屋敷に歩いていく。デーレンが居なければマルグリッドにことづけよう。
門番に中へ入れて貰うとマルグリッドとデーレンが両方いた。
マルグリッドに挨拶してお茶飲みながらデーレンにペンダントの説明をする。
「本当に作って来てくれたの?」
「約束したからな。これを身に着けておけばまず心配ない」
「ゲイルの紋章みたいだけど私が着けててもいいの?」
「俺の紋章は魔除けだと思ってくれ。西の門なら時間外でも通れるオマケ付きだ」
「許可いらないってこと?」
「そうだ。俺の紋章を持ってる奴はそうなってる」
「だからロドリゲス商会は遅い時間でも通れるのね」
「お前に渡すのはタイカリン商会向けじゃなくデーレン個人だからな商売で使うなよ。だからオマケといったんだ」
「ケチ」
「おまえなぁ・・・ これ作るの苦労したんだからな」
「嘘よ。本当にありがとう。大切にするね」
ギュッとペンダントを掴むデーレン。
ビーーーーーっ
「きゃぁぁぁぁぁっ。何っ?」
携帯を出して警報を止める。
「お前が本当に危ないと思ったらその真ん中の玉を今みたいにギュッと押せ。助けに来てやるから」
「え?」
「それを押したら俺の所に警報が鳴るようにしてある」
「お守りって紋章だけじゃないの・・・」
「あと、本当に悪い奴がお前にここまで近付いたら目の前から消える。もしそんな事があった時にも玉を押せ」
「消える?」
「あぁ、人を殺してるようなやつがお前に近付いたら、目の前から消えて地獄に送るようにしてある。10人くらいまでは地獄送りに出来るけどそれ以上は魔力を使いきって無理なんだよ。だから目の前から人が消えたら迷わず押せ。仕入れで他の街に行ったりすることもあるだろ? 最後の仕掛けは治癒だ。攻撃を食らっても致命傷クラス2回分は自動的に治癒される。いきなり首を切られて即死したら無理だけどな」
「そんな凄いペンダントを・・・」
「ま、この前裸を見た詫びだ。お前を守る男が出来るまではそれを身に着けてろ。通常は見えない位置まで下にくるサイズに調整してあるからあんまり他のやつに見られんなよ。男が寄って来なくなるぞ」
「ありがとうゲイルっ。私の為にここまでしてくれてっ」
「さっき言ったみたいに危険な時は迷わず押せ。それ以外に押したらデコピンくらわすからな」
「うんっ」
「ゲイル、私の裸には何があるのかしら?」
「それも手配済み。マリさんを守るのはジョンの役目だから他のにしたよ。2~3年後に分かると思うよ」
龍の純金像はおそらく死ぬほど価値が出る。楽しみにしておいてくれ。
デーレンが仕事に戻った後にマルグリッドと話す。
「あれはいったいなんなのですの?」
「開発したんだよ。他の皆にも後から配るけどマリさんもいる? 紋章無しバージョンで作るけど」
「下世話な話で申し訳ないのですけど、買えばどれくらいの金額になりますの?」
「お金で買えないぐらいの価値があるよ。遺跡からも出ないと思う。悪人を地獄に送る魔法陣は神様の魔法陣なんだ。だから他の人には作れない」
「神の・・・」
「俺は今神の代行者ってのをやらされててね。人殺しをするようなやつらを全部消滅させてるんだよ。もう自分自身が人かどうか判んなくなってるくらいなんだ」
「ゲイル・・・」
「あ、ごめん。へんな話をして」
「いいえ。とんでもありませんわ。この事はジョンは知ってるのかしら?」
「どうだろ? 知らないかもしれないね。詳しく知ってるのはダン、ミケ、シルフィード、おやっさん。だいたい知ってるのは父さん達とエイブリックさんかな」
「私に話しても良かったんですの?」
「マリさんは余計な事を言う人じゃないからね。心配はしてないよ。悪人を地獄に送るところは見せたくないけど」
「そう言われるとちょっと見てみたい気もしますわね」
「恐怖で眠れなくなるからやめておいた方がいいよ。断末魔がずっと耳に残るから」
まぁ、怖いもの見たさってのはあるけど本当に止めといた方がいいと念をおしておいた。
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