第658話 発情期

夜遅くまで飲んでみなここで泊まると言うので、大きな建物を作り風呂を作る。めぐみ達も入りたいというので、男、女、神&魔王、俺と子供達用と4つに分けた。


海を見ながらの風呂だ。


「私もゲイルと入りたい」


「チルチル、もう大きいんだからミケ達と入りなさい」


「えーーっ」


少し胸も出てきてるんだから恥ずかしがりなさい。ほら行くでとチルチルはミケに連れられて行った。


まずドゥーンをアバアバしながら洗って、次はテディだ。


「マリア、テディの顔にお湯かけちゃダメだよ」


洗ってやってくれてるつもりなんだろうけど、窒息するじゃないか。


ドゥーンとテディをベビーベッド代わりのマットに寝かせてマリアと風呂に浸かる。俺に合わせて深目の風呂だから身体の上に座らせてやるとちょうどだ。


「お馬さんの歌を歌ってー」


お馬の親子は♪ と日本語で歌うと一緒に歌うマリア。すっかりこの日本語の歌を覚えてしまったな。


意味を教えてやるとシルバーとクロスが大好きなマリアはすぐに覚えたのだ。


ポックリならぬこっくりこっくりと寝てしまったので身体を拭いて温風で乾かしてやる。


風呂でも飲んでるだろう皆はまだ出て来ないので子供達を並べて寝かせて俺も横になった。子供達の寝顔を見てどんな風に育っていくかなぁと想像してみる。


「ゲイルー、乾かしてぇ」


しっぽがびちゃびちゃのままあがってきたチルチル。まずタオルでよく拭いてブラシをかけながら温風で乾かす。


チルチルは毛並みというか模様というか綺麗だな。蛇に食われなくて本当に良かったと思う。


「抱っこして」


おねむの甘えたモードだ。抱きつき抱っこになり寝ようとした時に耳がぴくんとなる。


スンスン


「どうした?」


「知らない女の人の臭いがする」


げっ


「こ、香水の匂いかな? 俺の兄貴の奥さんが香水付けてたんだよ。今朝一緒にご飯食べてたからね」


「ふーん」


トントン トントン


くかーっ


ハーフ獣人の嗅覚は恐ろしいな。もし、チルチルみたいなのが嫁さんなら毎晩臭いチェックされんだろうな。


寝たチルチルをそのまま抱っこしてると、ミケが出て来て乾かしてぇなと言う。


なぜ人妻の毛をブラシをかけながら乾かさなきゃならんのだ。ダンは別に昔からこうだから嫌がらんだろうけど。こっちが気ぃ使うわっ。


「なぁゲイル」


「なんや?」


「これ、誰の臭いなんや?」


げっ


「ま、マリさんの臭いじゃないかな・・・」


「マルグリッドの匂いくらい知っとるわ。他の女の臭いもしてんで」


うそん・・・ こいつらどんな鼻してんだよ。


ニヤニヤ笑って聞いてくるけどカマ掛けられてる雰囲気でもなさそうだ。


「ジョンの屋敷にデーレンって元同級生が出入りしてんだよ。一緒に飯食ってたからじゃないか?」


「ホンマにそれだけかぁ?」


スンスンと俺の胸もとの匂いを嗅ぐミケ。


「ほならなんで、胸もとに匂いが残ってんねやろな? しかもマルグリッドと違う女と両方の臭いや」


しまった。服はクリーン魔法しか掛けてない。身体はしっかり洗ったけど服は洗ってない。寝室に行った時もそのままの服で行ったからな。


「ふふふふふ不可効力だよっ」


思いっきりどもる俺。


「まぁ、あんたのこっちゃから変な事をしてへんと思うけど気ぃつけや。女はそんなところに敏感やねんで」


あんな状況どうやって気を付けろというのだ。


ん? スンスン


「なっ、なんやっ?」


「お前、乳臭いな」


「まだ乳出とんねからしゃーないやろっ。しかも臭い言いなやっ」


いつものミケは陽だまりにいたネコと同じような匂いがする。俺はあの匂いも結構好きなのだ。しかし、今はそれと違う臭いだ。もうそろそろ授乳期間も終わるだろうけど、オスにまだおいたしちゃダメよというお知らせみたいなものなのだろう。


同じミルクの臭いでも子供からする匂いはそんな臭く感じないから不思議だ。


「ぼっちゃん、ミケの匂いまで嗅いでんのか?」


げっ ダンに見られた。


「聞いてぇやっ! ゲイルがウチのこと乳臭い言いよんねんっ」


「現に乳臭いじゃねーか」


バキッ


ダンはミケにグーでいかれた。


プリプリ怒ってふて寝したミケ。


ザックとミーシャは触らぬ神に祟りなし状態でさっさと寝た。


「何を揉めておるのだ?」


ラムザとめぐみ達が風呂からあがってきたので乾かしていく。


「ほう、匂いか。そうだな。匂いで分かる情報もあるな」


皆を乾かした後で飲みながら匂い談義に。


俺は少し甘い酒が飲みたくなり、パイナップルとオレンジジュースを混ぜてそこにラム酒を入れた。氷はクラッシュアイスだ。なんとなくぐい飲みするのも違う気がするので土魔法でストローを作って飲んでみる。うん今はこのマイタイみたいなやつが旨い。


男性は蒸留酒のソーダ割、女性達はリンゴのお酒だ。ふて寝しているミケはパタンパタンとしっぽを動かしている。タヌキ寝入りがバレバレだ。


「ぶちょーが飲んでるの何?」


「マイタイっていうのかな? ちょっと違うかもしれないけどね」


「なんで棒を咥えてんの?」


「ストローって言ってこんな風に穴があいてんだよ。」


「へぇ、私にも作って」


リンゴの酒にはいらんぞと言ったけど作れと言われて作ってやる。


プスッ あっ


俺の酒にストロー突っ込んでチューチュー飲みだしやがった。負けじと俺も飲む。


端から見たらとんだ馬鹿っプルだ。


二人で競争するように飲んだのをみて女性陣が同じものを飲みたいというので、ジューサーダンにパイナップルとオレンジを搾ってもらう。パイナップルを両手で持ってフンっ ボタボタボタっと一気に搾られる様は圧巻だ。


アイナがラムザに匂いで分かる情報って?と聞く。


「主にオスの情報だ。ダムリンは年中発情してるから臭くてたまらん」


なるほど、ラムザの世界を作った神はつがいのつもりでラムザとダムリンを誕生させたのだろうけど、相性が悪かったのか。めぐみも匂いの重要性を知らなかったからラムザの神も気付いてないだろうな。


「それに比べてゲイルの発情の匂いは私も魅かれるモノがある。どうだ? つがいになってみるか?」


あんたなんて事を言い出すのだ?


女神達以外、皆俺をジト目で見る。


「は、発情なんてしてないからっ」


「うむ、それは感じる。ある日を境に発情の匂いがしなくなってしまった。人間には発情期とそうでない時があるのか?」


色気耐性が付いた時からだな。それまで暴れん棒してたのバレてたのか。というかバレてるとは思ってた。


「ぶちょー、発情ってなに?」


「ゼウちゃんに聞けっ」


ふいにカバッとミケが起き上がる。


「人族にも発情期とそうじゃないときあるんかっ?」


だから俺に聞くなっ。


「知らんっ」


「ミケ、人族には明確な発情期とかはないわよ。子供が生まれてくる時期がばらばらでしょ?」


「ほなら、ほなら、なんであんな発情した臭いさせてたダンからぜんぜんせぇへんようになったんやっ」


ダン真っ赤々。


あー、知り合いのこんな話は聞きたくない。ミーシャ達は寝てて良かったよ。


「げ、ゲイルが私をフンフンしてたのは、わ、私に発情し、してたのかな?」


そんな真っ赤な顔でそんな事を聞くな。


「違うっ!」


思いっきり否定するとシルフィードは拗ねてしまった。


あー、もうっ!


めぐみはゼウちゃんから発情とはと教えて貰っている。


「ミケ、妊娠中とか授乳している相手には発情しないものなのよ」


「え?」


「多分、妊娠中は危険だから、授乳期間に妊娠したら母体に良くないからだと思うわよ。人の身体って上手いこと出来てるわよね」


「そ、そうなん? ダンほんまか? ウチに飽きたとかちゃうんか?」


「そんな事あるわけねーだろっ」


「ラムザも言ってたけど、匂いってそういうものがあるのかもね。私も妊娠中はアーノルドの臭いが嫌だったわ。授乳が終わったらそんな風に感じないから不思議ね」


「う、ウチはダンの臭いが嫌やと思ったことないで・・・」


「ハーフ獣人はもしかしたら連続で妊娠しても問題ないのかもしれないわ。獣人達も子供が生まれるスパン早いしね」


なるほど、種族によって違いがあるのかもしれない。ミケはちょー安産だったしな。


しかし、親と子供の頃からの仲間とこんな話をするとは思わなかったな。まぁ、重要な話ではあるんだけど。



「ねーねー、ぶちょー」


「なんだ?」


「私に発情したりするの?」


ぶーーーーーっ


飲んでたマイタイを吹き出してしまった。シルフィードはワナワナ震えてるし。


「するかーーーーっ!」



今日はめぐみにでなく、どんな教え方をしたんだとゼウちゃんに日本語で説教をするゲイルなのであった。









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