第653話 相談事が大人になっていく

5日調査をして1日は釣りをして遊ぶ生活を続けていく。キンメは釣れたけどノドグロは釣れなかった。今度落ち着いてポイント開発だな。


航空写真に魔力スポットやどんな魔物が居たか書き込んでいく日々が続く。



ー冬ー


「お前、ちっとも来なくなったな」


王に色々と報告して来ると言って一人で来た。


エイブリックは不機嫌だ。領地の実権を引き継いだので王都に来てもシルバーとコボルト達と戯れてエイブリックの所には来てなかったからな。屋敷と王邸には地下道を繋いであるが屋敷にもあまり行っていない。元ベンジャミン屋敷はもうフンボルト屋敷みたいな感じになってるからだ。俺の部屋とかはそのままだけど、なんとなくお邪魔しますと言いたくなるような雰囲気なのだ。


「で、何をしに来たんだ?」


新開発地の事と、ドワーフとエルフ、獣人たちがそこに移り住むことを報告する。


「ドワーフの国は無くなるのか?」


「なんか鉱石が年々採れなくなってるし、武器も昔みたいに売れなくなってるでしょ。だからもうあそこの場所は捨てようみたいな感じなんだよ。こっちもドワーフ増えたでしょ」


「あぁ、西と南に増えたな」


「エルフも新しい場所なら襲撃される心配がないから結界がいらないしね」


一度どんな場所か連れていけというエイブリック。


「王城や王邸に転移の座標を置くのはまずいでしょ?」


「なら、アルの屋敷にその座標とやらを設置しろ。あそこなら問題にならん」


「仕事はどうすんのさ?」


「休む」


言い切りやがったこいつ・・・ ドン爺はほとんど休ませなかった癖に。


夜にアルの所に移動する。



「よう、久しぶりだな」


「おぬし、全く顔を見せぬな。生きておったのか?」


「忙しいんだよっ」


ミグルはずいぶんと成長したな18歳くらいに見えるわ。これがこれからずっと続くのかな? それともこのまま歳を取るのだろうか?


今やっている事をアルとミグルに説明する。直属護衛のジョンは夜には自宅に戻っているらしい。へぇ、朝迎えに来て、送り届けたら屋敷の護衛と交代なんだ。てっきりここにジョンもいると思ってたな。



「父上がここを使って遊びに行く?」


「そうみたいだよ」


「休みが無いのに無理だろ?」


「休むみたいだよ」


「ダメだっ!」


「俺に言うなよ」


「父上だけズルいではないかっ」


「だから俺に言うなって」


という事でアルはそんなズルい事は許さんと座標設置にうんと言わなかった。


「そのドアは座標が無くても繋げられるんだろ?」


「知ってる場所ならな」


「なら、いつでも来ればいいではないか。ゲイルなら突然来てもぜんぜん問題ないぞ」


「座標が無かったら高確率でイベントが発生するんだよ」


「イベント?」


「あぁ、ミグルが風呂に入ってるところに繋がる可能性が高い。自分の嫁はんが覗かれんの嫌だろ?」


「なんじゃ、ワシの豊満なワガママボディに興味が出てきたのか?」


元の世界の高校生くらいに見えるミグルがニヤニヤ笑いながら少ない胸をゆさゆさする素振りを見せる。


なまじ中学生の時に好きだった娘に似ているし、昔みたいに幼稚園児体型でもない。俺は思わず赤面してしまった。


ミグルも俺の予想外の反応に真っ赤になる。誰がお前の裸に興味があるかっと言われるかと思ったのだろう。


「ま、ま、ま、ま、まさかっゲイルは人妻にしか欲情せんのかっ! そういえばミーシャも・・・」


べしっ


「あ痛っ! 何をするのじゃっ」


「いらんことを言うからだ。アルも複雑な顔してんだろがっ」


そりゃ昔からの知人に自分の奥さんに欲情したとか言われたらこんな顔になるだろう。


「という訳で座標を設置しないならここにはドアで来ないからエイブリックさんと話をしとけよ」


「わ、わかった。あとジョンにも会いにいってやってくれ。あいつ疲れてるみたいだからな」


どうやらマルグリッドが商売に目覚めたらしく稼ぎまくっているらしい。ロドリゲス商会とタイカリン商会のデーレン、マンドリンを使って貴族街のイベントを牛耳っているみたいだ。


俺も結婚式からジョンの所に行ってないからな。式場にドアで行ってから行ったら近いな。



じゃ、とアル達に挨拶をして外に出てから貴族街の結婚式場を指定してドアをガチャと開けるとマルグリッドが風呂に入っていた。


「キャッ・・・ ゲイル?」


「ごめん、義姉マリさん・・・」


バタン


俺は実兄ジョンの奥さんの裸をバッチリ見てしまった。


結婚式場を指定したはずなのに・・・


ここで逃亡するより、ちゃんと詫びた方がいい。アルの私邸から慌ててジョンの屋敷に走っていく。ジョンがめちゃくちゃ怒りそうだからな。



「突然悪い。ジョンとマリさんいる?」


ようこそと門番に中に入れてもらい、執事とバトンタッチして屋敷の中へ。


「ゲイル、髪の毛を乾かしてくれるかしら?」


奥様お止めくださいっとメイドに止められながらマルグリッドが濡れた髪のままやってきた。


言われた通りに温風で乾かしていくと風呂上がりのいい匂いがする。マルグリッドは昔から綺麗だったけど、すっかり美しいご夫人になったな。


「さっきはごめんね。覗くつもりはなかったんだよ」


「あら、ジョンから私を奪いに来たんじゃないのかしら?」


そんな訳ないよと答える。


「じゃ、どうだったかしら?」


「何が?」


「私の全てをご覧になったのでしょ?」


え、あ、うん・・・


「た、大変お美しゅうございました」


「まぁ、良かったわ。少し恩返しが出来たかしら?」


そう言ってクスクスと笑うマルグリッド。ぜんぜん変わってないな。


パッパッと手を振り、人払いをさせたマルグリッドがはぁーっとため息を付く。


「どうしたの?」


「ねぇ、ゲイル。私のあらわな姿は美しかったのよね?」


「えっ、はい・・・ ご馳走様でした」


「男性から見て魅力的かしら?」


「ハイ ミリョクテキダトオモイマス」


俺は何を聞かれてんだ? 口が上手く動かん。


またはぁーっとため息を付くマルグリッド。


「ジョンは?」


「同僚とのお付き合いだと毎晩飲みに行ってますわ」


「毎晩?」


「そう毎晩ですの」


真面目なジョンは浮気とかではなさそうだな。もし浮気してたらマルグリッド相手に隠し通せる訳がない。


「・・・私はゲイルから見てどうかしら?」


「どうって?」


「よ、欲情したりしますのっ?」


真っ赤になってそんな事を聞くなよ。こっちも照れるじゃねーか。


「お世辞抜きで綺麗だし、魅力的だと思うよ。昔から・・・」


いい匂いしてるしとかは言わない。良い悪いではなく、匂いの話は厳禁なのだ。


「そう・・・ ありがとう」


・・・

・・・・

・・・・・


マルグリッドが黙ってしまったので少し飲む事に。二人とも軽く酔ったところで話を切り出してみる。


「こ、子供はまだまだいらない感じ? アル達もまだまだみたいだけど」


そう言うとワッと泣き出したマルグリッド。しまった、子供が欲しくても出来なかったのか? いらぬ事を言ってしまった。めぐみがデイリーガチャをせっせとやってるからあちこちでベビーラッシュなのだ。新しい魂がたくさんスタンバってるから妊娠確率が確変に入ってるからてっきりそろそろかと。


「もうずいぶんとご無沙汰ですのっ」


え?


「新婚当初はまるでエイプのように毎晩毎晩・・・」


聞きたくないっ、聞きたくないっ。肉親の嫁、しかも子供の頃からの知り合いのそんな生々しい話は聞きたくないのだっ!


「ジ、ジョンはつ、疲れてんじゃないのかな?」


「私もそう思って精の付くものをコックに毎晩作らせて・・・」


これ見よがしにそんな事をするからだ・・・ だからジョンは毎晩飲みに行くんだな。


「ねぇ、ゲイル」


「はい」


「私のどこがダメなのか抱いてみて下さらない?」


酔ってるとはいえなんて事を言いだすんだアンタは? これだけで立派な歌劇のネタになんぞ。


「そんな冗談は置いておいて」


「冗談ではありませわっ。こんなことゲイルにしかお願いできませんものっ。そ、それにゲイルとなら・・・」


ダメだ酒を飲ますんじゃなかった。泣きながらしなだれ掛かってきたマルグリッドをトントンして寝かす。我ながら素晴らしいスキルだ。


スースーと気持ち良さそうに寝たマルグリッドをソファーに寝かせてビトーを呼びに行く。


「ビトー、マリさん酔って寝ちゃったから寝室まで連れてって」


そういうとメイドが二人がかりで連れていった。


ビトーに飲めと言ってジョンの様子を聞くことに。


「ゲイル様が来て下さって良かったです。我々にはどうすることも出来ず・・・」


マルグリッドが商売に目覚めて少しずつジョンの飲みに行く回数が増えて最近では毎晩らしく、夜中に帰って来て早朝出て行くらしい。仕事には差し支えないように酒臭くなるまで飲んでるわけでもなさそうだ。単に家に帰りたくない病だなこれ。


「マルグリッドはなぜそこまで稼ごうとしてるんだ?」


「はい、ここのお屋敷は貴族街の中でも一等地に有り、使用人も多いのでその維持費が・・・」


スカーレット家の援助はこの屋敷を建てたとこで終わり。ジョンがそのあとは断ったらしい。ジョンは高給取りだけど、領地や商売の利権も持ってないからこれだけの屋敷を維持するだけで精一杯だろうな。社交会とかそんな所まで費用は出せんだろう。


しかし、ジョンは護衛団に入ってそのまま王子直属護衛の超々々エリート。妻は名門東の辺境伯の長女。貴族としての見栄もある。それをマルグリッドの稼ぎで補ってるのか。


「ゲイル様はドラゴン金貨はご存知ですよね?」


俺が作ったから勿論だ。


「あれ、もう流通してないでしょ?」


「はい。あのドラゴン金貨が貴族の間で非常に高額で取引されておりまして、マルグリッド奥様は未使用金貨をたくさんお持ちなのです」


そういや実家と合わせて3000枚交換したな。


「高額ってどれぐらい?」


「未使用金貨は最低でも10倍の値が付きます。奥様は時々それをオークションに出されてこの屋敷の資産に・・・」


「ジョンはその事を知ってる?」


「はい」


なるほど、お前を守ると宣言して結婚したのに、生活基盤をマルグリッドが支えている後ろめたさとこれみよがしな精力料理にダメージ受けてるんだな。


俺の持ってる金のインゴットを上げてもいいけど、受け取らないだろうし、人の金では解決しないな。


これは放っておくと本当にレスになってしまう。レス期間が長いと復活しないだろうからな。


しょうがない。一肌脱ぐか。


「ビトー、今日は帰るけど、明日の夜にまた来るから朝にジョンにそう伝えて。たまには兄弟で飲みに行こうって」


「かしこまりました。必ずお伝えいたします」



俺はその後、プラプラと西の街に向かい、めぐみを呼び出してラーメンを食べて帰った。






















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