第651話 ゲイルとめぐみ
「めぐみ、なんであんな言い方したのよ?」
「だって事実じゃないっ」
説教食らっためぐみは泣いて帰ったのだ。
「ゲイルくんに喜んで欲しかったんじゃないの?」
「そんなことないっ!」
「なら、他の姿になりなさいよ。別に他の姿でもゲイルくんなら優しくしてくれるんじゃないの?」
「そんなのわかんないじゃないっ」
「私にも優しいわよ。わたしが先に戻ってもめぐみと同じ朝ごはんとかお供えしてくれてるのよ」
「そうなの?」
「そうよ、だから別にどんな姿でもいいんじゃない?」
・・・
・・・・
・・・・・
「嫌っ。このままでいい・・・」
皆に女神を説教して泣かせるとか酷くないかと言われた。
めぐみが泣いて帰った後、よくよく考えると別にめぐみは悪くないのかもしれない。俺が勝手にドキドキして勘違いしただけだ。
何が誰とも結婚しないとか、気持ちは既婚者だとかどの口が言ってるんだ俺は?
正直、めぐみが嬉しそうに飯を食ってるのを見るのが俺は好きだった。性的になんかしたいとかではない。あいつマネキンボディだしな。
別にめぐみが好みの姿でなくても俺は同じ事をしていただろう。男神なら焼いてやったりとかしなかっただろうけど飯と酒にはもっと気軽に誘ってたかもしれない。
めぐみがわざわざ好みの姿になってくれたのは俺への礼だと考えると悪いことをしたと思う。
あー、感情的になってしまったな。せっかく嬉しそうに飯食ってたのに。
「ちょっと出掛けて来るわ」
ミーシャ達を送った後に、明日には帰ると伝えて開発予定地に移動する。ちょっと一人になりたいのと・・・
ピーピー
カチャ
お客様のお掛けになった電話は電源が入っていないか電波の届かない所に・・・・
ピーっ
「さっきは怒って悪かった。また誘うから飯を食いに来てくれ。それと・・・」
「いつよっ?」
こいつ留守電聞いてやがったのか。
「いつでもいいぞ」
「今どこ?」
「まだお前の知らない場所だ」
「なんでそんな所にいるのよ?」
「新しく開発する場所だ。南北に長い場所だから色々な物を育てたり、釣ったり出来るようになるはずだ」
「ふーん。いつ出来るの?」
「さぁ、俺が死ぬ時くらいにはどうにか形になってんじゃないか。数年である程度作ったら後は誰かやってくれるだろ」
「ぶちょーは何すんのよ?」
「のんびり釣りするわ。あちこちに釣り公園と船作る予定にしてるからな」
「イカとか釣れるの?」
「ここでも釣れるんじゃないか? 良さげなポイントあるから」
「ふーん」
「なんだよ?」
「悪いと思ってるの?」
「あぁ、俺が怒ったのは勘違いだった。すまん」
「・・・私に食べに来て欲しいの?」
「そうだな」
「ちゃんと言いなさいよっ」
「あー、めぐみにご飯食べに来て欲しい。これでいいか?」
ポンッ
こいつ・・・ 目が真っ赤だな。まだ泣いてたのか。
「早くイカ食べさせてよっ」
は?
「ここに無いぞ」
「釣れるんでしょ? 早く釣ってよ」
「もう少し南に行かなきゃならんぞ」
「行けばいいじゃない」
ま、いっか。
魔道バイクを出して釣れそうなポイントを探して南下するか。
「後ろに乗れ。それとも移動してから呼んでやるからそれから来るか?」
「何これ?」
「魔道バイクだ。一緒に来るなら、後ろにのって落ちないようにちゃんと掴まってろよ」
「わぁ、ぶちょー、これ気持ちいいね」
「そうだな。道がちゃんとしたの出来たらもっとスピード出せるぞ」
「いつ出来るの?」
「まだ何年も先だ」
「何年かならすぐだね」
「めぐみからしたらそうだな。そうだ、この前食ったメバルの煮付け旨かったか?」
「うん」
「今、おやっさんに船作ってもらってるんだよ。それ使ってもっとこってり系の煮付け食わせてやるよ」
「美味しい?」
「めちゃくちゃ旨いぞ。次に寒くなる頃になるけどな」
「他にもなんかあるの?」
「秋にイクラが食えるかもな。イクラどんぶりとか旨いぞー」
「早くそれも釣ってよ」
「イクラは魚の卵だ。イクラは秋、こってり煮付けはその後の冬にかけてだな」
「ふーん」
よし、この感じの所なら接岸してそうだな。
そこで大きなアオリイカを釣り、刺身とイカバター炒めにしてやる。
肌寒いから熱燗だ。
「ぶちょー、美味しいねっ♪」
「ほら、熱燗と一緒に食うともっと旨いぞ」
「わぁー本当っ。なんかこうお腹にグッと来るわね」
うん、めぐみは本当に旨そうに食うな。
ゲイルは嬉しそうに美味しいね♪ というめぐみを嬉しそうに見ていた。
酒を飲まなかったゲイルはめぐみを飛行機に乗せて月夜の中、ここはこんな感じで、こっちはこんな風にと開発する構想をめぐみに教えていた。
満足しためぐみはまったねー♪ と泣いてたのが嘘のように元気になって帰っていった。
このままもうちょっと飛んでみるかな。
ゲイルはのんびりと朝まで飛行機を飛ばしたのであった。
翌日からの魔物調査はダンとシルフィード、ドワンを交えて行い、晩飯はミケも呼んで狩った獲物を食べた。
「ハイ、ウチ食べなあかんから」
俺はこうして毎晩テディをアバアバしている。こっそりテディの体を通じて土魔法の玉を撃ったりして英才教育しておこう。ダンより強くして驚かせるのだ。
「ゲイル、抱っこ」
チルチルはテディをあやし終わるとすぐに抱っこをせがむ。もうそんな歳じゃないだろ? とは言わない。こんな事をしてやれるのもあと1~2年だろう。獣人ほどじゃないけどハーフ獣人の成長は早い。もうすぐミケと初めて会った時の年齢になるからな。
「チルチル、夏休みになったらここで一緒に魔物調査をやるか?」
「本当っ?」
「学校が休みの間だけな」
本当はもう義務教育には行かなくていいけど、学校は経験しておかないとダメだからな。
それからは魔物調査はアーノルド達に任せ、俺とドワンとシルフィードは鉱山調査をしていくことになった。
ー秋ー
「やっぱりこいつが居ると思ったんだよね」
「この魚はなんじゃ?」
「鮭だよ。これは身も食べるけど卵が旨いんだ」
遡上を始める前の鮭を釣り、筋子からイクラに仕込んでいく。生イクラ食べ放題なんて夢のようだ。
あとは塩鮭とルイベにしてみよう。鮭はムニエルとか色々な食べ方出来るな。
「おーい、めぐみっ。イクラ出来たぞっ」
「わぁー綺麗ねぇ。ゼウちゃんこれ知ってる?」
「知ってるけど初めて食べるわよ。ゲイルくんどうやって食べるのかしら?」
「味付けしてあるから丼だね。お代わりたくさんあるからどんどん食べて」
「ぼっちゃま、お肉も焼いて下さい」
ミーシャは肉か。
「がーはっはっはっ。こいつはワシが釣った鮭じゃ」
「うむ、ドワンはいつも大物を釣るようだな」
「ゲイル、はいご飯」
「ありがとうシルフィ。これにイクラをがーっと乗せて食えっ」
「うんっ」
「ぶちょー、ぶちょー、早くっ」
「おりゃっ」
「もう一丁っ」
「どりゃっ」
「いっただきまーす。むぐむぐむぐ。ぶひょーおいひぃねっ♪」
「ぼっちゃま、ぼっちゃま、マリアにもー」
ハイハイ。
「私にももう一丁してっ」
ハイハイ
「ゲイル、鮭の塩焼きでおにぎりしてやっ」
ハイハイ
「ぶちょー、お代わり頂戴♪」
おい、俺にも食わせろっ。
めぐみの丼飯にイクラを入れるのと同時に自分のにも入れる。
旨っ!
「ぶちょー、美味しいね♪」
「本当に旨いなーっ」
ゲイルたちは生イクラを皆で旨い旨いと気分が悪くなるまで食ったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます