第645話 セントラルの立て直し

ドラゴンシティに行くとチャンプが飛んで来た。元大N国の魔力を吸い付くしたとの事。


「あの金ぴかのタワーをワシのために作り直してくれたのか?」


「狭い?」


「いや、丁度いい」


チャンプはニャゴヤタワーを気に入ってくれたようだった。


飯を食いながらチャンプに魔力を与える。こいつに飯の味を覚えさせたら底なしに食うだろうからな。


「チャンプは前までどこで寝てたの?」


「ワシを操ろうとしていた所だ」


「そこはもしかして魔力に溢れてる?」


「おぉ、良く解ったな。あそこだと勝手に魔力が補充されるからいつまでも寝ていられる所でな」


魔力スポットじゃん。それも強烈な・・・


「父さん、明日セントラルの様子を見に行くの付いて来てくれる?」


「そうだな。皆で行こう」


セントラル王都はもう魔物で溢れかえってるかもしれない。今まで無事だったのはチャンプがずっとそこで寝て魔力を吸収していたからだ。セントラル王都は遺跡の上に建っていると聞いたからな。


ちなみにダンはなんの手伝いもしてないからとアーノルド達からのお宝のお裾分けを断っていた。



翌日、チャンプが案内してやるとの事で皆を背中に乗せてセントラル王城のあった所へ飛んでくれた。


ドラゴンが飛来したことで阿鼻叫喚になる人々。それに思った通り魔物が街中に出ている。壊れていない王都の貴族街の壁の内側は魔物だらけだ。


開けた所に降り立つと槍や剣を持った鎧を来たやつらが寄ってくる。ドラゴンから皆を守ろうとするとは良い根性をしている。他の者は住民を避難させていた。


「ドラゴンに攻撃をしないで、イラッとしてプチッとされるから」


俺たちはチャンプから飛び降りて鎧騎士達にそう告げた。


「あっ、あなたは・・・」


おぅ、こいつは俺が説教した騎士団長じゃん


「久しぶりだね」


「使者殿・・・ いやゲイル様。ご無沙汰しております。ずいぶんと大人っぽくなられて・・・」


ここでこいつに会った時はまだ未成年だったしな。


「このドラゴンは仲間だから危害を加えない限り攻撃をしてこないから大丈夫」


「しかし、ドラゴンは王都を破壊して・・・」


これまでのいきさつを話してやる。


「そ、そんな事が・・・」


「で、ドラゴンが魔力を吸わなくなったから魔物が溢れてんじゃないかと思って様子を見に来たんだよ。不法浸入とか言わんでくれよ?」


「いや、そのような事を申し上げることは・・・」


「で、魔物は上手く討伐出来てるの?」


「正直申し上げて苦戦しております。日に日に壁を越えてくる魔物が増えており、ここを捨てようか判断しかねております」


王都は人が多いし、家とかもあるから捨てるに捨てられないのだろう。


「チャンプ、またここで寝てるか?」


「いや、せっかくお前みたいな者と出会えたのだ。寝るのはもったいない」


いや、寝てたよね?


「ここは魔力スポットといってな、魔力が溢れ出る場所なんだよ。魔物はそこから生まれてくるから討伐してもしてもキリが無い。今まで問題なかったのはこのドラゴンがその魔力を吸ってくれていたからなんだ」


「えっ?」


「それをセントラル王達がドラゴンの力を利用しようとして無理矢理起こしたのが王都が崩れた原因だ。その影響は未来永劫続く事になる」


「ドラゴンが破壊したのでは・・・」


「破壊どころか守り神だった訳だよ。愚かな事をしたもんだな。もうドラゴンもここで寝るつもりはないみたいだけどどうする?」


「そ、そんな・・・」


「助けが必要か?」


「えっ?」


「セントラルからの移住者を受け入れてはいるが、元々ウエストランドより人口が多いからな。全部受け入れは不可能だ。ここで生活出来るなら皆もその方がいいだろ?」


「そ、それはっ勿論」


「なら、どうするか決めろ。条件は不可侵条約と砂の国までの街道の権利。もう整備してあるけど通行料とかはいらん。街道は皆が自由に使えばいい。セントラルとして権利を主張しないという条約を結べ」


「そ、そんなことでいいのですか?」


「ただ、お前らはいま国として成り立ってないだろ? 誰か王でも代表でもいいから決めておけ。1ヶ月後にその代表を迎えに来る」


「たった1ヶ月で・・・」


「それぐらいのスピードでやらないとほんと壊滅するぞ。なんならお前がやったらどうだ? 部下からの信頼も厚そうだし、ちゃんと守るべきものを今度は間違えないだろ?」


他の騎士達もざわざわしだす。


「ゲイル、溢れてきた魔物を討伐するぞ。変異種が混じってるから、こいつらには荷が重いかもしれん。お前は壁の中の魔物を一掃しろ」


アーノルドとドワン、シルフィードは溢れ出てきた魔物を討伐しにいった。


「今のはぶちょーに中のを殺れと言ったのか?」


「父さんの言葉が解ったの?」


「なんとなくな。アイツの言葉には魂に直接響いてくるような感じがするのだ」


アーノルドすげぇな・・・


「そう、俺に中のを全部倒せと言ったんだよ」


「ワシがブレスでやろうか?」


「いや、チャンプがやったらこの辺消え去るかもしれないから俺がやるよ」


アーノルド達は溢れ出る魔物をものともせずにバッサバッサとやっつける。アイナは怪我人を治療していた。


「ゲイル様、あの方々はいったい・・・」


「俺の父さんと母さん。シルフィードとおやっさんは前に一緒に来てたでしょ。ドワーフの王子とエルフの姫だよ。これぐらいの魔物なら問題ないから。俺は今から中の魔物を殲滅してくる」


ひょいと浮いて壁の上に登って火魔法でごーーーーっと焼いていく。死体を焼かなくていいから一石二鳥だ。


こら、チャンプ。ウズウズするんじゃない。


セントラルの騎士達はこんな人達を国が敵に回したのかと愕然としていた。


壁の中にアンデットもいたけど気にしない。汚魂でめぐみが回収してないかもしれないから、温玉しながら火魔法とクリーン魔法を併用して焼き尽くす。


よし、アーノルド達も終わったようだな。これでまた溢れ出すまで時間が稼げるだろ。



「じゃ、終わったからまた1ヶ月後に来るよ。あと追加だけど、イーストランドをどうするかどうでもいいけど、通貨は他の国でも使えるものに戻すこと。砂の国はもう王が別にいるから手を出さないこと。近々砂の国とウエストランドは同盟を組むことになると思うから」


「か、かしこまりました」


チャンプに乗ってドラゴンシティに戻る。


「坊主、あの魔力スポットをどうするつもりじゃ?」


「魔力の供給源として頂こうかと。戦利品だよ戦利品」



翌日、エイブリックのところに行き、セントラルの事を報告。アル達も同席している。


「魔力スポットがあるのか」


「地下遺跡は全部そんな感じなのかな?って思ってる。魔道具を動かすのに魔力が必要だからね」


「で? 何をするつもりだ?」


「ドラゴンシティまで魔道線を繋げて魔道具をバンバン使える街にするよ」


「それ、王都より発展するんじゃないか?」


「そのつもりだけど?」


「ったく・・・ そのうち王都移転とかになるんじゃないだろうな?」


「その辺はダンと打ち合わせて。俺は仕組みを作るだけだから面倒なのは任せるよ」


便利なだけが発展じゃないからな。それぞれの領地はそれぞれの良さを作って行けばいい。


「後さ、褒美を貰えない?」


「何か欲しい物があるのか?」


「宝物庫にあるこの国の歴史が書かれた物を読みたいんだよね」


「前に聞かせただろ?」


「セントラルも地下にドラゴンが寝ている理由とか知らなかったわけじゃん? ここもなんかあるかもしれないから調べておきたいんだよ」


俺はセントラルとの不可侵条約を結ぶのと砂の国との同盟締結の褒美に宝物庫の禁書を読む褒美を極秘で貰ったのであった。


セントラルとの条約締結まで、せっせとドワンと魔道ケーブル作り。ドラゴンシティ内にも魔道線を張り巡らせていく。それは全て地下に埋めた。


出来た魔道ケーブルもセントラルまで地下に埋めておく。条約が締結され次第魔力スポットを頂くのだ。魔道具があまり使われない間の余剰魔力はニャゴヤタワーのてっぺんでチャンプが吸い取ってくれるようにしておく。居ない時は魔石に補充だ。



セントラルと無事に条約が結ばれ、セントラルの代表はあの騎士団長だった。国王ではなく代表というので、首相にしたらと言っておいた。内閣を作りたまへ。


今、セントラル王城跡の地下でアーノルド達に魔物を倒してもらっている間に魔力を吸収する魔法陣描いていく。それに魔道ケーブルを繋いで完了だ。


セントラルはこれから首相の元で再建されて行くだろう。相変わらず減らない汚魂達はホイホイに掛かってヤギのおやつになっていく。ラムザは俺の作る飯の方がいいみたいだ。


ラムザが来る度にぐっと色気に惑わされないように耐えていたら、魔王の下僕になる前に【スキル】色気耐性 というのが付いた。ちょっと残念な気もする・・・ 将軍がもう馬に乗る事はないのだ。自分で千切ろうかと思ったぐらいだからいいけど。


明日からは宝物庫の禁書を読んで地下に何かないかを確認。問題が無ければあの湖に行こう。マス食べて、かも鍋と蕎麦食って、風呂で雪見酒だな。春になったら獣人達の新天地でも探しに行こう。


ドゥーンをアバアバしながらゲイルは予定を組んで行くのであった。


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