第643話 うん、なんとなくそうだろうなと思ってた
辺りを探ると崩れた壁の瓦礫の向こうにもうひとつの扉を発見。瓦礫を魔法で取り除いた。
これは普通に開けられた。
ん?
レバーがたくさんあるけど、これスイッチだよな?
このスイッチは各フロアのブレーカーのような役割をしているようだ。というかそう日本語で書いてある。
壱階電灯 壱階空調・・・
「坊主、これは古代語じゃろ? 読めるのか?」
「これ、この建物の魔道具を動かす為のスイッチだよ。一部壊れてるけどね」
えーっと、ここは地下1階だからこれか。
スイッチをバチンバチンと入れてやると灯りが付いた。で、魔動力とあるのが扉のやつかな?
バチンと入れてやるも扉は開かない。
「ゲイル、何か文字が扉の上に浮かんだよ」
シルフィードが教えてくれた所を見ると
【関係者以外立ち入り禁止】
と書かれている。それと扉の所にタッチパネルみたいな物が浮かび上がっていた。
ずいぶんとハイテクだな。
これは暗証番号というよりパスワードを打ち込まないとダメみたいだな。
取りあえず、0000エンター。ダメだな。9999エンター。ダメだ。初期設定されてる番号らしき物を打ち込んでみるが、違いますと表示される。
「ゲイル、これはなんだ?」
「父さん、これは魔法で鍵が掛かってるんだよ。それを解除するためのもの」
「坊主なら錬金魔法でこいつを溶かせるんじゃろ?」
「いや、溶かしたり無理矢理開けたら防犯装置が働いて何がおこるかわからないんだよ。この扉もずいぶんと凝った仕掛けになってるからね」
魔力が流れたら魔法陣が見えるかと思ったけどそれも工夫されてるのだろう。
ノーヒントでパスワードを解除する能力は俺には無い。
でもあのブレーカーというか分電盤みたいな物は日本語で書かれているから日本人が作った物に間違いはない。しかも壱とか文字が古いしな。
漫画だとコ○ミコマンドとかで開いたんだけどな。上上下下とか漢字やひらがなカタカナ、矢印で入力するもダメだ。知ってる限りの呪文を試していく
テクマクマヤコン・・・
エコエコアザラク・・・
ラミパスラミパス・・・
ビビデバビデ・・・・
ダメだ・・・どれも違いますだ。
ドアを開く呪文・・・
あっ!
開けゴマ。エンター。
ウォンウォンウォン・・・
「坊主っ! 開きおったぞ」
なんだよ・・・ めっちゃ単純じゃねーか。
まぁ、なぜゴマなのか俺も知らないからこっちの世界の人も想像付くわけないわな。
扉があいて中にはいると螺旋階段が下まで続いているのは良いけど魔物の巣窟じゃねーかここっ!
皆が剣でバッサバッサやっつけてくれるがキリが無いので魔物の魔力を吸って土魔法を撃ちまくり倒す。火魔法でやると建物に延焼するかもしれんからな。
ぼとぼと倒していくと魔物は出なくなった。ここ魔力スポットだな。これを建物の魔道具を動かすのに利用してたのか。で、魔道具を使ってないから魔物が生まれて来てたのだろう。
俺は扉の外に出て、分電盤のスイッチでオフになっているものは全部オンにする。これで魔力を魔道具が吸うから魔物の発生が収まるだろう。
「ここはなんじゃ?」
「魔力スポットだよ。瘴気の森にあったのと同じ。魔力が溢れ出してくる場所だね。この古代遺跡はその魔力を利用して魔道具を動かしてるんだ」
扉の外に出て一応閉めておいた。タッチパネルに閉じるボタンが表示されていたので簡単だ。
階段を登ると灯りとエアコンが効いていた。
出て来る魔物を倒すと次からは出て来ない。各部屋で壊れた魔道具や断線した所から魔力が漏れて魔物が産まれてたのだろう。モンスターハウスと呼ばれる部屋は魔物を倒してその部屋のスイッチを消してやると魔物が産まれて来なくなった。
ここのからくりを皆に説明していく。
フロアを探索すると踊場みたいな所に小さな部屋がある。
「ゲイル、そこには入るなっ」
「どうして?」
「他の遺跡だとそういう所は転移の魔法陣が仕込まれていて、何処に飛ばされるかわからんのだ」
いや、これエレベーターだよ。
「大丈夫だよ」
中に入ると見慣れたボタンが並んでいた。数字は壱、弐、参とかで表記。わざとこんな風にしてあるのだろうか?
閉を押すと扉が閉まる。
「ゲイルっ!危ないっ」
閉じかけたドアにガションと挟まれるシルフィード。安全放置の不具合だろうか、ちょっと開いてはガションと閉じるを繰り返す。
シルフィードがガションガションと何度も挟まれるのに少し笑ってしまった。
いかん、笑ってる場合ではない。慌てて開ボタンを押すとちゃんと開いた。
「何で笑ってるのよっ!」
シルフィード激オコ。
「ごめん。ちょっと思い出し笑いをしちゃったんだよ。別に痛くなかったろ?」
ー啓太の記憶ー
昔、がら空きの最終電車に飛び乗ろうとした女性が居た。発車のベルがけたたましく鳴り、駆け込み乗車はお止め下さいとアナウンスがあるが、最終電車を逃すまいと駆け込んで来る。車掌も最終電車だから少し待ってやればいいのに扉を閉めた。間一髪間に合わずガコンと挟まれる女性。顔面と後頭部を挟まれめっちゃ痛そうだ。
扉が少し開いた時に身体を滑り混ませようとする女性。それをさせまいとドアを閉める車掌。再びガコンと顔面と後頭部を打つ。助けに行こうとしたらその攻防を女性と車掌が何度も繰り返す。ガコンガコンガコンっ。
初めは可哀想と思ったがガコンガコンされる女性を見て俺は笑ってしまったのだ。あの時の女性の目とシルフィードが俺を見る目がそっくりだった。
「ちょっとは心配してくれてもいいじゃないっ。ゲイルがどっかに行っちゃうと思って飛び込んだのにっ」
「これは階を移動するための魔道具なんだよ。転移とは違う。大丈夫だって言ったじゃないか」
真っ赤になって怒るシルフィード。確かに今のは俺が悪いな。
ごめんと頭をポンポンしてもプリプリが収まらない。
「坊主、これは魔道具なのか?」
「そうだよ。昔リッチーが居たのは最上階?」
「多分そうじゃと思うが、そこまで行くのは大変じゃったぞ」
「父さんと母さんもこれに乗って。これで最上階まで行くから」
はぁ? というアーノルド達に良いから良いからといってエレベーターに乗せて最上階の14階へ。表記は銃死だって。中2病満載だなこれ作ったやつ。いや、扉が開いた瞬間にマシンガンみたいな物で撃たれるのか?
念のため、扉の所に土魔法で壁を作っておく。
チンっ
14階ならぬ銃死階に到着。
ドガガガガガガガッ
壁を作って置いて良かったよ。一応警告のつもりだったのか? この銃死ボタン?
「フハハハハハッ。我が暗号をよく解ったな」
あれ暗号だったのか・・・
「ゲイルっ!あいつがリッチーだ」
うん、マントを着た骸骨だし、しゃべってるの日本語だからそうだろうな。
「お前はいつからここにいる?」
「む・・・・? お前は日本人なのか?」
「さぁね」
「まぁいい。ほら見ろよ! この世を統べる力をっ!」
ぶつぶつと詠唱しだす。アーノルド達は一斉に攻撃を開始する。俺は詠唱を止める為に口に土魔法の玉をぶつけてやる。
ドゴンっ
ぶっ
どくろの首ごと後ろにぶっ飛び、その隙にアーノルド達が切り刻む。
弱っわ・・・
しかし、アーノルド達は警戒を解かない。
「ははぁははぁやふへはふぁは」
は?
口にがっつりと土の玉が挟まったまま復活するリッチー。
「ほぉんふぁほぉうへひは・・・」
「お前、骸骨で声帯とかないくせに、口に玉が挟まっただけで話せなくなるのおかしくないか?」
「む?そう言われてみればそうだな」
どういう理屈で話せてるのかわからんけど、口とか動かす必要ないだろ?
「フハハハハハッ 見よっ! 我が力をっ」
ぶつぶつ・・・
ズガガガガカっと再びアーノルド達に刻まれ、アイナのトンファーに砕かれるリッチー。そしてすぐに再生する。
確かにアホだけどこう再生が早いと厄介だな。
「フハハハハハッっ 見よっ! 我が」
ズガガガガガッ
なるほどアーノルド達は昔に延々とこれを繰り返して疲れた所を魔力を吸われる魔法詠唱をされて撤退したのか。
試しにファイアボールを撃ち込んでみるも再生してきた。
「何をしても無駄だ。神に与えられしこの身体は誰にも壊せん」
鑑定してみると再生スキルを持ってるのか。魔力は9000。元人間だとしたらどうやってここまで魔力を・・・
温玉するとこってりどろこではなく、本当にこれが魂か? というぐらい汚れている。汚れ過ぎて腐らないとかだろうか? もう汚れで魂がコーティングされてしまってるかのようだ。
試しに浄化してみるも汚れのコーティングが想像以上に凄い。
時間掛かりそうだなと、ゲイルは嫌な顔をした。
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