第639話 スキルが付いた

ラムザは全ての盗賊どもの魂を食ったようなので壁を解除して俺たちは戻った。


「久しぶりに堪能したぞ」


そりゃ、よござんした。


「時々食べに来てくれないかな?」


「構わんぞ。もっとあるならヤギ達にも食べさせてやりたいからな」


そういやあの気持ち悪い奴等もこってり好きだったな。


「ラーメン食べていく?」


「おお、頂こう」


ドラゴンシティに戻ってこってりラーメンを作っていく。夜中なのにみんな食うのね・・・


「うむ、始めて食べる味だが旨いな。ここにはこんな物があるのか・・・」


この食べっぷりだとラムザもちょくちょく来るようになるかもしれん。


「何食べてるの・・・?」


目を擦りながらチルチルが起きてきた。なぜか大人が夜食食べてると子供って起きて来るよね。


「チルチルはこんな夜中にラーメン食べちゃダメだよ」


「ズルい」


まぁ、そう思うよね。


「えっ? 誰・・・?」


ラムザに気付いたので紹介してやる。ラムザの胸を見て、俺にぎゅっと抱きつく。取られまいとしてるのか。


「珍しい果物剥いてやろうか?」


と、チルチルの気を逸らせるが魔界の果物だけど大丈夫かな?


金色の皮をしゅるしゅると剥いてやる。食感は洋梨と桃の間くらい。風味もそんな感じだ。それプラス激甘なのだ。


「うわっ 、あっま・・・」


「ラムザの国の果物だよ。魔力が大きく回復するから食べ過ぎちゃダメだよ」


どれどれと皆食べていく。


「うわ、これ旨いわ。当たりや」


ミケの当たりやを久々に聞いたな。ダンは甘過ぎてダメのようだ。シルフィードも好きらしい。


ミケはお腹の子供が求めるのかばくばく食っていた。変異種になるぞ?


「そんなに気に入ったなら何時でも取りに来ればいい」


ラムザは自分の所の果物が喜ばれて上機嫌だ。それにこっちの世界が気に入ったらしい。他の世界で魂を食うとそこの神と呼ばれる者と戦いになるらしく、疲れるとのこと。全戦全勝らしいけど。


魔王討伐はこれが原因で各星のイベントになるんだろうな。魂の見えない人から見たら単に人を襲ってるだけだからな。死んだ奴等は凄まじい形相をして死んでるし。魔王=恐怖の対象だろうな。


そんな事を思っているとラムザが話し掛けてくる。


「ゲイルよ、お前はすぐに死ぬのだろ?」


悠久の時を生きる奴の感覚からしたらそうだろう。


「そうだね」


「うむ、それまで一緒に居てやろう」


は?


「いや、一緒にいるって?」


「魂以外にこのこってりを食べさせてくれる期間が僅かしかないからな。一緒に居た方がいいだろ?」


「食べたくなったら遊びに来れば良いじゃん」


「気が付いたら死んでるではないのか?」


それはあるかも知れん。チャンプも昼寝程度の感覚でいつまでも起きて来ないし。でもずっと一緒に居られても困る。シルフィードからの冷気で凍ってしまう。グリムナとこういうところそっくりなんだよな。


「呼びに行くから」


「何っ?」


「ちゃんと俺が呼びに行くから大丈夫っ」


「本当だな?」


「本当だよ。めぐみもしょっちゅう食べに来てるから。その時に呼ぶから」


「ふむ、ならそうするか。手間を掛けるな」


「いや別にいいよ。ずっとこんな生活なんだから」


「そうか、なら手間を掛けさせる分対価をやろう」


「お金はもうあるからあの果物をくれるだけで十分だよ」


「果物ではない。人間はこういうのが嬉しいのだろ」


パフパフ


ダダダーン ダッ ダ ダ ダーン♪

暴れんぼー・・・


危うく溺れそうになってしまう。

魔王の魅了は強烈過ぎる。


シルフィードから出る物凄い冷気で我に返る。チルチルもしっぽを膨らませてシャーってなってる。


「うむ、続きはまたやろう。ではちゃんと呼びに来いよ」


とラムザはゲートを出して帰って行った。


あぁ、みんなの視線が痛い。


「ゲ、ゲイルはあんな事をされて嬉しいの? や、やってあげようか?」


いや、シルフィード。君のではあれは無理なのだよ・・・


「いや、別に嬉しくはないから大丈夫・・・」


俺は嘘を吐いたのであった。



翌朝ダンと相談する。


「弾くだけじゃまた盗賊化するよね?」


「そうだろうな。そんな奴を弾く為の門だろ?」


そりゃそうだ。


「向こう側はセントラル側というだけで、セントラルの土地じゃないと思うんだ」


「あ? どういうことだ?」


「いや、ここからずっと東に行くと砂の国があるんだけどね、そこまでの道はセントラルの土地じゃないと思えばいいかなって。ほら、魔物にやられてあの辺り一帯は壊滅してるし」


「土地を奪うのか?」


「いや、もう誰の土地でもないと思うんだよね。だから街道を整備して宿場町とか作ればいいんじゃないかと思ってる」


スパイスの流通も今は俺がやってるけど、ずっとこのままやるつもりはない。商人が安全に運べる道を作ってやれば流通が発達するはず。


「宿場町は誰がやるんだ?」


「セントラルから来る人達がやればいいんじゃないかな? 整地して水と場所を確保してやれば勝手に誰か住み着いてやってくれるかも」


そんなにうまく行くか? とか言われたけどやってみよう。もうセントラルも100年とか時間が経たたないと発展しないだろうから今のうちにやってしまう。


飛行機はもうバレても問題ない。戦争の危機は回避したし、すでに飛行船が開発されてたから隠す意味がなくなった。人類は空を飛べる可能性に気付いたのだ。



飛行機に乗り、ゆっくりと飛びながら片道2車線プラス歩道を作れるぐらいの道をドラゴンシティから砂の街まで作っていく。馬車で1日1回泊まれる地点には大きめの宿場町、その間は簡易宿泊施設を作っていく。街は全て壁で囲って安全を確保。ドラゴンゲート改を設置してこっさり以上の者は牢に誘導する仕掛けを作った。これはドラゴンシティにも同じ仕組みを導入した。


めぐみに電話をして汚魂がどんどん減っても問題ないか? と聞いてみると、ずっとやってなかった魂ガチャをやって補充するから大丈夫とのこと。デイリーボーナスで回せるノーマル魂が当たるガチャをしばらくやってなかったらしい。経験を積んだ魂は能力が上がっていくらしく、新しい魂は役に立たないのよねーとかほざいていた。しかし、汚魂洗浄するより楽かもということで汚魂は現世で滅することに。


酷い神様だ。悔いて反省させるような道をあっさりと捨てやがった。


ドラゴンゲート改は汚魂ホイホイになり、ラムザ達のおやつ養殖場と化していくだろう。こんなシステムを作る俺も人間の感覚ではないよな・・・


魔法能力が人間離れしているだけでなく、考え方も行動も人間離れしていくのを自覚したゲイルは久々に自分を鑑定した。


【スキル】めぐみの代行者


おぅ・・・  称号がスキルに昇華してやがる。


なるほど、称号はスキルになる可能性があるもののリストなのか。称号は誰かが強い認識をしたりとか、自分の行動によって付いたりする。それをそのまま続けるとスキルに昇華したりするのか。


他にも称号がいっぱい付いていた。ドラゴンテイマー、デストロイ。この辺はなんで付いたかわかる。で、パフパフ好きってなんだよ・・・ これ何回もされて【スキル】パフパフ好きとかになったらどうしてくれるんだ? 他はなんかヤバイのないかな?


ハーフエルフマニアと変態ロリ王は消えてる。これは良かった。他には・・・?あ、魔王の下僕とか付いてやがる・・・


もう見るのやめよう。称号って付いたら嬉しいものなんじゃないのか? なんでこんな戒めみたいなものばっかなんだよっ。


ゲイルは納得のいかないまま日々街道と宿場町を作っていったのであった。












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