第633話 なんだよこれ……
南の領地に慌てて向かう俺に皆は付いてきた。
良かった。海釣り公園も無事だし、引き波も来ていない。震源地はここじゃなかったか。念の為に漁村に行くと揺れとかはなかったと言う。
「ここじゃなかったよ」
「ディノが海から出てくるはずねぇだろ?」
「え? なんのこと?」
「あの揺れはディノが出た時とよく似ていた」
まさか・・・
「じゃ、またあの森に・・・」
「かもしれん。ディノスレイヤに戻るぞ」
「なら、おやっさんも連れていこう」
ドワンはバンデスが結婚式に出るならワシはいいじゃろということで、ドラゴンシティに残っていた。恐らくセントラルと休戦とかしていないので、万が一の時の為に残ってくれたのだろう。
ドアを開いてドラゴンシティへ
ガチャ
「な、なんだよこれ・・・」
「急げっ! 西に逃げるんじゃっ!」
「みなはよ逃げぇ!」
ドワンとミケが皆を避難させている。
「どうしたのっ?」
「この気配に気付かんのかっ! おびただしい魔物がこちらに向かっておる。スタンピードじゃっ」
慌てふためいて逃げる住民に驚いて気付かなかったが、ドワンの言う通り物凄い数の魔物の気配がする。
「まずいな・・・ あのときとは比べ物にならん数だ」
アーノルドはそう呟く。
「チルチル、お前達はこのドアから逃げろっ! ミケ子供達を頼むっ」
「他の住人をほっていけ言うんかっ」
「俺は魔物に応戦するからこのドアをいつまでも開けてられんっ、ぐちゃぐちゃ言ってないで早くしろっ」
「ナターシャ、お前らも頼むっ」
「私も今度こそ戦って皆を守りますっ」
「うるさいっ! 邪魔なんだよお前らっ! さっさと行けっこれは命令だっ」
説得している暇はない。
「ミケ、子供達は頼んだ。俺はお前も住人も守る」
「ダン・・・」
ーセントラル王国ー
「ふははははははっ! 騎馬隊出陣。歩兵はそれに続けっ。飛行隊準備はいいかっ」
「はいっ!」
「全機ウエストランドに向かえっ! やつらを滅ぼすのじゃーーーっ!」
くっくっくっく、あのくそ生意気な使者め。ワシに逆らった事を後悔するがよいっ
ーセントラル王国地下遺跡ー
「ワシの眠りを邪魔したのはお・・前・か・・・」
「エンシェントドラゴンは言葉を話せるというのは噂だったか。何を言ってるのかさっぱりわからんわっ。まぁ、テイムしたから言葉なんぞ無用。さ、飛び立てエンシェントドラゴンっ。人族を滅ぼすのだっ」
「ぐっ・・・これはテイムの・・、貴様、許さんっ 許さんぞぉぉっ! ン ギャァァァァァアッ!!!」
テイムに抗うがごとく大きな咆哮を上げるエンシェントドラゴン
「くっ、お前らっ もっと魔法を掛けろっ。効きが甘いっ」
エンシェントドラゴンに乗ったハイエルフのアルディナはそう他のエルフ達に命令をする。自身も渾身の魔力を込めてエンシェントドラゴンを支配下に置こうとする。
「ン ギャァァァァァアッ」
エンシェントドラゴンはその場で大暴れをした。
ずずーん ずずーん
地下遺跡がその影響で崩れ始める。
「くそっ! 飛び立てっエンシェントドラゴンっ!」
アルディナは全魔力をエンシェントドラゴンに注ぎこんだ。その瞬間、エンシェントドラゴンは羽を大きく羽ばたかせ飛び上がった。
「な、なんじゃこの揺れはっ?」
「王よ、お逃げ下さい」
「余が逃げるじゃと? そんな恥さらしな・・・・」
ドドーンドガドガドカ
その時に激しい揺れと共に王城が崩れ、エンシェントドラゴンが暴れながら飛び出した。
「うぎゃぁぁ」
王城に居た王や王族、それに仕える者達、最後までエンシェントドラゴンにテイムの魔法を掛けていたエルフ達も飲み込んで王城は崩れさる。
「くそっ! 同胞まで巻き込まれるとは・・・ いい加減に言う事を聞けっ」
ードラゴンシティー
「ダン、シルフィード。ドラゴンで地上から攻めてくれっ」
「飛ばさねぇのか?」
「俺は飛行機で対応するっ」
「あれは俺でも操作出来るのか?」
グリムナがそう聞いて来る。そうかグリムナならいけるかもしれない。
急いでドラゴンの操縦を教える。
「この操縦桿から魔力を流して動かすから何の魔法でもいいから流して。あと、これはダン達と会話するものだから。上手く連係してね」
魔道バッグに大量の魔法水を準備してグリムナに渡した。アーノルドとドワンは何も言わずに外へと走っていく。
どーーーーーーん
激しい揺れが発生した後に背筋が凍るような強い気配がした。激しい怒りをぶつけられたようだ。なんだよこれ・・・
いかん、考えるより動け。これはスピード勝負だ。
「グリムナさん、後は宜しくっ」
飛行機を魔道バッグから・・・・
「待って待って待って!」
あ・・・
飛行機を出す前にグリムナは飛び立ってしまった・・・ なんたるミステイク。こんな時にやらかしてしまうとは。
仕方がないので、住民の避難が間に合うように壁を幾重にも作っていく。これでいきなり乗り越えられる事はないだろう。
めぐみならこの状況をなんとか出来るかもしれない。電話で・・・ 魔道バッグの中じゃん。
魔力を込めて呼び出そうとするも反応がない。ゼウちゃんと地球に行ってるとつながらなくて呼び出せないのだ。またなんかマンガかアニメとか見に行ってるのかもしれん。ちっ、バイクで移動するしか・・・
ガッテェェェエエム!
ドアも何もかも魔道バッグの中じゃないか。魔法で浮けるけど、自由自在に飛行したことはない。仕方がないので走って行こうとするとワイバーンの群れがやってくる。空から来られたら壁もへったくれもない。
下から魔法で打ち落とそうとするも前まで倒せた土魔法では落ちて来ない。なんだ異常に強いぞこいつら?
慌てて鑑定する。
【ワイバーン】特変異種
ぶっ! なんだこいつら。全部特変異種じゃないかっ!
ーアルディナとエンシェントドラゴンー
「くそっ! いい加減に言う事を聞けっ」
ンギャァァァァァアッ
激しく首を振りながら身体を揺すり、背中に乗っているアルディナを振り落とそうとするエンシェントドラゴン。が、徐々にアルディナの魔法によって身体の自由が効かなくなっていく。
「貴様っ・・・」
「何をしゃべってるかわからんと言っただろうがっ」
飛び立ちながらもセントラル王国上空でアルディナはなかなか命令に従わないエンシェントドラゴンと支配権をめぐって争っていた。
ーアーノルドとドワンー
「こいつらめちゃくちゃ強くねーか?」
「そうじゃの、ゴブリンですら強いわい。それにこのアンデッドが面倒でかなわん」
大量の魔物が特変異種になり強さが桁違いになっている。アーノルドとドワンは二人で倒すのに困難を強いられていた。
ーメカドラゴンを操るグリムナー
「頼むっ、そんなに急上昇と急降下を繰り返すのはやめてくれ。身体がもたん・・・」
「すまん、こいつの操作が難しいのだ。もう少しで慣れるから我慢してくれ」
ダンはあまりにも激しく動くドラゴンにぐったりし、シルフィードはすでにダウンしていた。
ーゲイルー
「くそっ、こうなったら雷だっ! いい加減にするっちゃーーーっ!」
ちゅどーーーーーん
雷はこのイメージが一番上手くいく。
バンバン雷を落としてワイバーンを落としていった。
くそっ、あっちにもなんか飛んで来やがる。ん・・・・ なんだあれ?
飛んで来るのはワイバーンではない。見たことがある形・・・ 飛行船?
ふよふよと戦隊を組んで飛んで来る飛行船の団体。スピードは遅いが組織化された飛び方だ。もしかしたらセントラルのやつらか? ワイバーンを駆除し終わった次は人間が相手かよ・・・
そう思って飛行船を見てまだ時間があると判断。魔物の気配も近付いているので、どこから先に防衛するか決めるために広範囲に気配を探る。
探った大量の魔物の気配は全部こちらに向かって来るのではなく、ある方向から全域に広がっていく。そう、全部がここを目指している訳ではなさそうだ。南からこちらへ、北へ、そして東へと扇状に散らばっていく。このままだとセントラル王国の庶民も巻き込まれるだろう。それに対応するために出て来たのだろうか?
こちらに近付いて来た魔物を土魔法の雨で討伐し倒していく。一気に辺り一帯を火魔法で殲滅したら良いのだが、アーノルドとドワンがどこにいるからわからない。魔物の気配が多過ぎて二人の気配を探れないのだ。
仕方がないので目の前に来た魔物だけをどんどん倒していく。鑑定結果は全ての魔物が特変異種だ。何が起こってるんだいったい・・・
目の前の魔物を倒しながら飛行船の飛ぶ方向を見ているとウエストランドに向かっているようだ。こいつら魔物から人々を守る気はないらしい。なんて奴等だ。
全て雷で打ち落とそうかと思ったが命令に従ってるだけかもしれないので、地面から土柱をずばっと伸ばして串刺しにしていく。これ以上進軍出来なければ済む話なので細い柱で十分だ。
ズドドドドと魔物を倒しては飛行船をブスブスブスと串刺しにしていく。一応人が乗っているところは避けたけど、ぶっ刺さってる奴もいるかもしれない。まぁ、人を殺そうとするやつは殺される覚悟は持っているだろう。攻めて来なければ死ぬことはなかったんだからな。
さて、グリムナ達のドラゴンはどうなってるかな? 全く空から攻撃している感じがないのだが?
それとさっき感じた激しい気配も今はしない。遥か南に物凄い強そうな気配があるけど、あれとは違った気配だったよな?
ズドドドドっと魔物を倒しながらそんな事を考えていた。
ーグリムナとメカドラゴンー
「ギブ・・・」
ダンはドラゴンの中で死にかけていた。シルフィードはケロッピしながら気絶していた。
ーエンシェントドラゴンとアルディナー
「ようやくか・・・ おっと、油断禁物だな」
だんだんと命令に従うようになっていたエンシェントドラゴン。アルディナはスタンピードから人間を守る気は更々ない。あれはセントラルもウエストランドも全ての人族を滅ぼす為のものなのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます