第630話 閑話:昔、こんな目で見られた
西の街にカレーショップをオープンさせ、他にもカレーパンやカレーうどんとか一大ブームが発生する。すぐにスパイスが足りなくなるので追加を仕入れに砂の国へ
「ねぇ、そんなにスパイスって売れるん?」
「今ブームだからな」
「でもこれからはここまでスパイスが手に入らなくなるかもしれへんねん」
「なんで?」
「元々雨はあまり降らへんねやけど、いま全く降らんのよね。他のオアシスも枯れはじめてるし、ここも水の販売制限されてるわ」
雨か・・・
「雨降らしてやろうか?」
「えっ? そんなんできるん?」
「できる。水を出した方が早いけど、雨の方がいいんだよね?」
「雨降らしてくれるんやったら魔法ってバレへんやん」
という事で人目に付かないように夜にスパイス畑のあるところに移動する。
「二人っきりやね」
「他の人にばれたらまずいからな」
「・・・なぁ、こんな可愛い娘が夜に二人っきりやねとか言うたらなんかするやろ?ふつー?」
「するか。これは仕事だ」
「あんた女の子に興味ないんか?」
「毎日子守りでそれどころと違うんだよ」
「あんた子持ちやったん?」
「あぁ、ゴロゴロいる」
「なんや嘘かいな。断るんやったらもっとスマートに断りっ」
プイっと拗ねるシェアラ。そりゃ、俺も前世の記憶が無かったらこんなシチュエーションにドキドキもしただろうけどね。
「雨は降らした事がないから水が十分なら早めに止めてくれ」
「なんや自分、やったことないのに出来る言うたんか?」
「魔法はなんでも出来るんだよ。見てろよ」
シャキールが見せた雷魔法の応用だ。
魔力を空に貯めて細かい水に変換していくとポツリポツリと雨になり、サーッと降り始める。
しまった。自分も濡れるのを想定してなかった。
慌てて土魔法で屋根を作って二人で雨宿り。相合い傘ではない。
「うわぁ、ほんまに雨降って来たわ。それにこの屋根はどうやったん?」
「これも魔法だ」
少し濡れてしまったので寒い。シェアラも寒そうだ。ほら、寒いなら俺の上着を着ろとかはしない。
温風で乾かしつつ暖めてやる。下手に気を持たせてはダメなのだ。
「うわっ、めっちゃ
立ちっぱもしんどいので椅子を作って座りながらやってたから寝やがった。こいつ・・・
シェアラがこてんと頭を俺の方に乗せるとスパイス臭に混じって女の子のフワッとした香りがしてくる。
いかん、ゲイルの体は15歳。気持ちは爺でも身体が勝手に反応する。石鹸やシャンプーの匂いではない女の子の香りはフェロモンなのだ。姉から出たフェロモンは女臭くてめちゃくちゃ嫌だったから不思議なもんだ。あー、まずいな。下半身からターッタターッタタータター♪ とBGMが鳴り出し暴れん坊将軍してる。こんな時に目覚められたらまずい。こういうのは絶対に気付かれるのだ。
これは姉の臭いと同じ、これは姉の臭いと同じと昔嗅いだ姉の部屋の臭いと同じだと自分に言い聞かせる。そうすると暴れん坊将軍は落馬してくれたようで収まった。
「おいっ、起きろっ。あまり水をやり過ぎてもまずいんだろ?」
そういうとパチっと目を開けてチラッと俺の落馬を確認する。
こいつ、寝たフリしてやりやがったな・・・ 危ない所だった。次は将軍が金ピカで踊り出さないうちに終わらせよう。
雨を止めて屋根と椅子を解除。足元が泥だらけになるけどクリーン魔法で解決だ。
帰り道にシェアラがとんでもないことを言い出す。
「なぁ、あんたここの王様になりぃな。金にも困ってへんから水を独り占めせんでもええし、スパイスもようけ売ってくれるからめっちゃええやん」
そういうのはフラグになるからやめてくれ。もう子供の事で手一杯なんだよっ。ここはスパイスを安定供給してくれたらそれでいいのだ。
シェアラの発言をスルーして質問する。
「どうする? 街にも雨を降らしておくか?」
「えっ? ここにも降らしてくれんの?」
「屋根から水貯められるようになってんだろ? 雨水は汚れてるからちゃんと沸かしてから飲めよ」
まぁ、池の水をそのまま飲んで平気な人達だから大丈夫だろうけど。
念のため、初めに出てくる水は捨てるように言っておく。もったいないとかいうけど、水瓶がいっぱいになるまで降らしてやるからと説得した。ここは水瓶という目安があるからどんどん降らせても問題ない。ドジャーっとスコールの様に街中に雨を降らせたのであった。
雨が上がったあと、泊まっていけと言われたけど、暴れん坊将軍が再起動してはいけないのでスパイスを仕入れて帰った。
ドラゴンシティに戻るとハーフ獣人の子供達にフンフンされる。
「知らない女の人の臭いがする・・・」
ハーフとはいえ犬獣人の鼻は鋭い。クリーン魔法を掛けたはずなのに・・・
「ゲイル、知らない女の人って?」
ハーフ獣人はみんな女の子だ。というより女の子しか産まれないのだろうか?
チルチルも含めほかの子達も俺の事をじっと見る。おいっ、シルフィード。なんだよその疑いの目は?
なんでおねーちゃんの店で飲んできた時の様な目でみられなきゃならんのだ・・・
何にも悪いことをしていないのにオロオロするゲイルであった。
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