第615話 なんたるファンタジー
「なんか最近たくさん咲いてる花って凄い甘い香りがしていいわね」
「こう何か元気が出る気がするんだよね?何の花かな?」
「フッフッフッ、我が魔力が満々ている。ジャック早く対決を組めっ」
「もうそろそろだって言ってるだろ? この前もうすぐだって連絡があったからな」
「じゃあ、本当にもうすぐなのね?」
「そういうこった。これでやっと俺を馬鹿にしてた親父や兄貴を見返してやれるってもんだ」
ジャックことジャンバックは父親を恨んでいた。正妻の子供しか可愛がらなかった父親、そしてそれを当然と思っていた兄貴を。マルグリッドの事は嫌いではないのだが・・・
「なかなか見つからないね」
ゲイル達は銅が取れた所ならともう一度念入りに探すがやっぱり見つからない。金貨を試しに置いて空からレーダーを照射するとちゃんと反応した。
「一応銅からも金と銀は取れるんじゃがの」
「えっ? そうなの?」
「といっても金貨をたくさん作ろうと思えばそうとう大量の銅が必要じゃ。それに坊主は銅だけを溶かして出したじゃろ。だから坊主の持っとる銅には含まれん」
ドワンの説明では粗銅というものから金銀を分離させる必要があるらしい。面倒臭いな。俺は一気に大量の金銀が欲しいのだ。
「全く違う場所に探しにいこうか?」
ということで、ぐっと南下して誰も行った事がない島とかを探していく。海まで来てあちこちを旋回しては見つけた島にレーダーを照射していく。
「坊主、ちゃんと帰れるんじゃろな?」
「どこかに着陸してドア使うから大丈夫だよ」
ダン達にはしばらく戻らないと言ってあるから大丈夫。シルフィードは拗ねてたけど、せっせと小麦と米を育てないと食料が足らないのだ。頑張って育ててくれたまへ。
南下してから東の方へ飛んでいき、今日はここまでにして小さな無人島に着陸した。
「飯は帰ってから食う?」
「いや、せっかくじゃ。ここで釣りをして魚を食うぞ」
ドワンがそう言うので釣りを開始。全く何がいるかわからないので、取りあえずメタルジグを投げてみる。
ゴゴゴゴゴッっといきなり強い当たりだ。
「何が来たんじゃ?」
「わかんないっ。でも青物だとは思う・・・」
姿を見せたのはカツオ? いや、これハガツオだ。
「それはカツオか?」
「いや、ハガツオって別の魚だよ。ほら、歯がするどいだろ」
すぐに血抜きをしてクリーン魔法をかけてから海水氷へ。
ドワンも同じ物を釣った所で反応が無くなったので飯に。
ご飯を炊いて、ハガツオはタタキ、刺身、ニンニク醤油の唐揚げにしてみた。
「こいつは旨いのぅ」
ドワンの言う通り脂が乗っててめちゃくちゃ旨い。大きなハガツオを二人で1匹食べた。残りのハガツオはミケのお土産にする。
翌日もゆっくりと東に飛んで行くと陸地が見えたけど人の気配がしたから離れた。何か独特の臭いと甘い香りが風に乗ってやってきた。
何の臭いだろうか? まぁ、今は金脈探しが先決。ここがどこかはまた今度調べよう。その陸地から離れたついでにもう少し南下してみるか。
けっこう南に飛んだ所にそこそこ大きい島を発見。島の周りは海流が物凄く速いのが空から見てもわかる。この世界の船だと上陸するの無理だろうな。
おっと、ここでレーダー反応有り。この島は陸地からかなり離れているし、海流の影響で誰も来たことがないのだろう。未開発の金脈に違いない。
「おやっさん。発見したよ」
「よし、降りるぞ」
降下していくとバンバン反応が出る・・・ん?
「おやっさん、これ動いているよね?」
降下して行くとレーダーの光が動いているのだ。なんだこれ? 人が住んでて金貨に反応したのか? だとすると着陸するのはまずい。
「しかし、人の気配はせんぞ」
ドワンの言う通りだ。少し様子をみながら降下すると確かに人の気配ではないが何かの気配はする。
「見ないとわからないから着陸してみるよ。やばかったら急上昇するからそれに備えておいて」
旋回して海の方へ移動してから島に近付く。
「あっ! あれ見ておやっさん!」
「な、なんじゃあれは?」
のっそのっそと移動する金。
なんたるファンタジー! ゴールデンスライムじゃないかっ!
形は普通のスライムだけどデカい。
鑑定したら気付かれるかも知れないので速度を落としてもう少し近付いてみる。
「ちょっと攻撃してみるよ」
金のスライムにバルカン砲を撃ち込んでみる。
チュドドドドド
キンキンキンキンキンとすべて弾かれた挙げ句に気付かれてしまった。いきなり速いファイアボールで反撃してくる。
「うわっ」
慌てて急上昇するとドワンがグエッと潰れたカエルみたいな声を出した。
ファイアボールの射程距離外まで上昇してドワンの様子を見ると殺す気かと怒られた。急上昇に備えとけって言っておいたのに・・・・
さて、あの感じからすると物理攻撃は効かなさそうだな。ファイアボールもかなり高威力じゃないと無理かもしれない。外したらあの島吹っ飛びそうだしな・・・ あのスライムがもし金なら勿体なさ過ぎる。
「どうするんじゃ? かなり強そうじゃぞ」
「そうだね。ちょっと錬金魔法で溶かしてみるよ」
金属ボディなら溶けるかもしれないと思い、今度は上空からそっと近付く。
「えいっ」
と気合いを入れて錬金魔法を放つと一瞬ドロっと表面が溶けて固まった。
試しにバルカン砲を撃つが反撃してこない。
そーっと近付いて鑑定すると【24金】と出た。やった純金だ。
「おやっさん。あのスライム純金になったよ」
「なんじゃとっ?」
飛行機から降りて確かめにいくとバランスボールぐらいの金の塊だった。
「おやっさん、これ・・・」
「坊主、どえらいもん発見しおったの。こんなもんがバレたら金が値崩れするぞ」
そうだよね・・・
飛行機と金の塊を魔道バッグにしまい、もう少し島の様子を探るとうようよ金スラがいる。気付かれないように気配を消して倒しては金を手に入れていった。
銀のもプラチナのもいた。せっせっと倒しては回収し、スライムが固まっているところに調査に行くとやはり魔力スポットがあった。
しばらく様子を見ているとポコンと金や銀のスライムが生まれてくる。
・・・
・・・・
・・・・・
「おやっさん。帰ろう」
「そうじゃの・・・」
一応この島に座標を設置してドアで屋敷に戻った。
ドワンと俺は無言だ。
「なぁ、おやっさん・・・」
「言うなっ。虚しくなるじゃろがっ」
ドワンは死ぬほど苦労して金を貯めて夢だった錬金釜を手に入れた。それからも働き詰めで金を稼いでいる。様々な素材を買ったり開発をするためだ。
俺も金が目的ではないが様々な商品や仕組みを作って稼いで来た。しかし、今日手に入れた物はその金よりはるかに多い。しかもポンポンと沸いてくるのだ。
「おやっさん。取り敢えずどんな通貨の模様にするか明日ロンに相談するよ・・・」
「そうか、ならそれが決まったら作るか・・・」
ドワンは一気に老け込んだ気がする。
俺もなんだかどーでも良くなって来たかもしれない。
通貨のデザインが決まったら金貨と銀貨銅貨を作って、それとダンの屋敷に天守閣作って屋根に金のドラゴンがうつ伏せになってしっぽ上げてるやつも作ろう・・・
調味料や酒もここで独自に作ってもらうか。あとはボロン村から遠いから独自の味噌を作らせないとな。
ゲイルはドラゴンシティの食文化をにゃごや飯と名付ける事にしたのであった。
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